ペコリーヌ「キャルちゃーん☆…って、違う!?」セリカ「ここ、どこ!?」 作:司偵
アビドス高校の校舎の中に入った美食殿一行。簡単に互いの自己紹介を終えた後、彼女達は生徒達と今後の事を話し合う為に会議室へと向かっていた。
「あちこちに砂漠の砂が…この建物が元々砂漠にあったという話は本当のようですね」
コッコロは廊下の隅にたまった砂を見て呟く。
「すみません、定期的に掃除はしているのですけど…あちこちからどんどん砂が入ってきてこうしてたまってしまうのです」
「たしかに砂漠の砂は厄介でございますね…」
「まあ、こうなってしまったので砂の心配だけは無くなりましたが」
窓の外に広がる鬱蒼とした木々を見ながらアヤネは言う。そうして、彼女達は階段を上がっていく。そして、アヤネは会議室の前で立ち止まると扉を開けた。
「どうぞ、お掛けください」
室内に入った美食殿一行は椅子に座る。そして、向かい合った席に座るホシノが軽く咳払い。
「ええと…とりあえず、アビドスにようこそ。改めて、セリカちゃんを保護してもらった上にここまで送ってくれてありがとうね」
「いえいえ、色々と偶然が重なっただけなので」
そうして、話し合いが始まった。すると、ペコリーヌは早速質問を口にする。
「さて、皆さんはこの先どうするつもりなのでしょうか?」
「それは勿論、基本的にはここで待機して元の世界に戻る方法を探す…といった方針です」
ペコリーヌの問いにアヤネはそう答える。しかし、それを聞いたペコリーヌは顎に指を当てる。
「えーと…それはあまりオススメ出来ないと言いますか…」
「それ、どういう事かなあ?」
ホシノが訝しむように問う。彼女のその瞳は先程までと違って若干鋭くなっていた。
「では、はっきり言いましょう…この周囲には全くと言っていい程に人里が無く、水源も食料を得る手段も無いからです!」
机にバシッと手を当ててペコリーヌは言う。そして、それを聞いたアビドスの生徒達の表情は一気に重苦しいものとなった。自分達の想定以上に今のこの状況が悪いという事を実感したからである。
「ええと、何か手は…?」
「そうですねえ…食料、食材…んー」
そうして、ペコリーヌの視線は窓の外へと移る。そして、何か思いついたように手を叩く。
「あ!」
「その反応、何かいいアイデアが!?」
「はい!」
アビドスの生徒達の表情は途端にパッと明るくなった。
「で、その食料を得る手段は?もしや、魔法ですか?」
ノノミが目を輝かせてその案を問う。
「いえ、あれです」
ペコリーヌは笑顔で窓の外へ向かって指を差す。
「え…?」
ペコリーヌの指差す先…そこにあったのはアビドスの生徒達が倒した魔物の数々。
「あ、あの…ペコリーヌさん?冗談ですよね?その、あれを…」
アヤネが引き攣った表情でそう尋ねる。だが、キャルが静かに口を開く。
「こいつ本気よ。本気で魔物調理して食うわよ…」
「はい…ペコリーヌ様は何でも食される御方ですので…」
どこか遠くを見るような目でキャルとコッコロが言う。その言葉を聞いた途端、ホシノは今までの気だるげな口調と一変して質問を飛ばす。
「別の案は!?」
その言葉に対して今度はコッコロが答える。
「それでは…王都であるランドソルに避難し、そこで元の世界に帰還する為の手がかりを探す…というのはいかがでしょう?」
王都というキヴォトスではまず聞く事の無い単語に、アビドスの生徒達からある意味で感嘆したような声が漏れる。
「その王都に行けば衣食住の心配はしなくて済む、ってことでいいのかな?」
「ええ、その点については何とかいたします」
そうして、彼女達は顔を見合わせると強く頷く。
「では、その案で」
「凄いですねえ、この乗り物」
「自動車です。ちょっと前に砂漠で見つけてコツコツと直していたんです」
全く舗装されていない道を一台の四輪駆動車が走る。
「まさかこんな使い方をするとは思いませんでしたが」
アヤネがハンドルを握りながら言う。一方、そんな車内の後席はまさにすし詰めといった有り様であった。キャルとコッコロの二人にアビドスのセリカ、ノノミ、ホシノが押し込まれるような形で乗り込んでいた。そこに貴重品や武器弾薬を入れた荷物の類まである始末である。運転手以外に比較的のんびり座っていられるのは助手席で道案内をするペコリーヌと車体の上で周囲を警戒するシロコぐらいであった。
「ちょっと、もう少し何とかならないの?」
「厳しいかなあ。おじさん、もう圧縮されちゃってるよ」
「まあまあ、キャルさま。もう少しでランドソルでございますから…もうちょっとの辛抱です」
「何あれ、塔?」
「あれこそがソルの塔でございます」
後席からはそんな会話が飛んでくる。遠くの方にはランドソルの象徴とも言える真っ白で巨大な建造物…ソルの塔も見えてきたようだ。すると、突如頭上を叩く音。
「えーと、シロコさん。どうしましたー?」
ペコリーヌが窓の外に頭を出して問う。
「ん、3時方向。車両…いや、戦車が見える」
「え!?」
アヤネが慌ててブレーキを踏む。そして、戦車という単語の意味を理解しているアビドスの面々は慌てて車外に飛び出す。
「なになに!?何事!?」
「あの、どうなさったのでしょうか?」
困惑したように美食殿の三人も車を降りた。
「簡単に言うとね、この世界に無いであろう兵器を見つけたって事だよ」
「ホシノさま、それは…そちらの世界のものという事でしょうか?」
「その通り、ちょっと厄介な事になったかも」
そして、シロコが双眼鏡を覗き込んで戦車の様子を探る。
「ん、他にトラック二両。荷台に機関砲付き」
「どこの学校でしょう?」
「それは分からない…っ!?」
突如、腹に響くような轟音が鳴った。
「ちょっと、今度は何!?」
「戦車が砲撃?何に向かって…?」
アビドスの生徒達は周囲を見張る。あの戦車が何と戦っているのか探る為である。すると、ノノミが何かを見つけて叫ぶ。
「向こうに煙が見えます!」
そして、美食殿の三人はノノミの指差す方向を見て困惑した。
「あの方向…まさか!?」
「ええ、キャルちゃん…ランドソルです。心配なのでちょっと見てきます。よっと…」
すると、ペコリーヌは急いで手近な木に登ると様子を探り始めた。そして、彼女達が戦車と呼んでいたものの姿を目視する。
「鉄の箱…?」
まるで鉄の塊のような姿、長い筒も付いている…ペコリーヌはそれが大砲の類であると即座に考えた。そして、その先にはランドソルの街を囲む城壁があるが…その一部から煙が立ち上っているのが見える。すると、同年代の少女と思しき声が聞こえてきた。
「あー、あー…聞こえるか?今すぐに金品と食料を用意しろ!さもなくば、このまま街に対して砲撃を続ける!抵抗は無意味と考えろ、次は城門を破壊するぞ」
聞こえてきたその声にペコリーヌは驚愕する。あの戦車という物体はランドソルを襲撃しているのである。
「ん、典型的な盗賊」
いつの間にかシロコも木に登って来ていた。
「すみません、あの一団は何者なんでしょうか?」
「不良の類。ほら、みんなヘルメット被ってる」
敵の一団に対してシロコは指を差す。そこにいる人影は妙な兜のようなものを皆被っている様子である。
「とりあえず、敵と考えていいという事ですね。早く何とかしないと」
「その通り」
そして、二人は同時に木を降りた。そして、シロコはホシノに状況を報告する。
「敵はヘルメット団。でも、どこのかは分からない」
「いつもうちにちょっかいかけてくる連中じゃないね。装備が良すぎる」
「ん、どうやら目的地の街を襲っているみたい。城壁に砲撃仕掛けて脅してる」
「そいつは不味いね。早く阻止しないと」
「でも、相手は戦車に機関砲付きのトラック。それに人数も多そう」
「厄介だねえ」
すると、美食殿の三人がホシノにそっと話しかけた。
「倒せる相手でしょうか?」
「一筋縄ではいかないかな、コッコロちゃん。迂闊に突っ込んでも集中砲火を浴びちゃうし」
「そうですか…」
「せめて砲撃みたいに広範囲を一度に攻撃出来ればいいんだけど…」
「あ、それなら…」
ペコリーヌとコッコロがキャルへと視線を向ける。すると、キャルは二度ほど瞬きをした後にこう叫ぶ。
「え、あたし!?」
「街の連中はまだ動かねえか!おい、トラックの機関砲を撃ち込め!」
「流石にやり過ぎじゃ…もしも人に当たったら…」
ヘルメットを被った一団の一人がそう言う。しかし、色違いのヘルメットを被った少女は叫ぶように言う。
「ここに辿り着くまでに何度ひどい目に遭ったと思っている!化け物の襲撃、果ては盗賊なんかのならず者が襲ってきた事もあった!」
「でも、ここは普通の街じゃ…」
「いいか!私達がこの先も生き残るには今の内に金と食料をかき集めなきゃならねえんだ!!弾薬と燃料がある内に!!じゃないと、この先どうなるかも分からないぞ」
意見した少女はその迫力に圧倒され沈黙する。
「あんなどでかい塔と立派な城のある街だ!一生困らん程度には稼げるだろう!!」
彼女が「撃て」と叫ぼうとした途端、周囲一帯が紫色の光に包まれる。
「アビスバースト!!」
謎の光と強烈な衝撃…未知の攻撃を浴びたヘルメットの一団は四方八方にそれぞれ弾き飛ばされ、一気に混乱のるつぼへと叩き込まれた。そして、飛び交う悲鳴と怒号。
「ん、キャル凄い。相手はパニック状態」
すぐさま鳴り響く小銃の発砲音。
「コッコロちゃんの魔法も凄いよ。いつもよりずっと速く動ける…これならおじさん、頑張れちゃうかも」
三人の人影がその混乱の渦中に駆け込んだ。
「ええっと、本当に思いっきりやっちゃっていいんですか?」
「うん、キヴォトスの人間はちょっとやそっとじゃびくともしないから。ペコちゃんのその大剣でぶん殴っても大丈夫」
「ペコちゃん…うん、いいですね☆じゃあ、ホシノさん。全力全開でやっちゃいます!!」
突然の敵襲にヘルメットの一団は困惑しながらも反撃してくる。足元に転がっていた石が相手の銃弾に粉砕され、ペコリーヌは驚いた表情を浮かべて飛び下がる。
「おっとっと…キヴォトスの銃っておっかないですね」
「ん、ペコリーヌ。無理そうなら下がった方がいい。ヘイローの無い人間に銃は危険」
シロコの言葉にペコリーヌは首を横に振る。
「いいえ、これぐらいの相手ならいつもの事です。ここだってなかなか刺激的な所ですので」
そう言って手近な相手を斬り伏せる。それを見たシロコは感心したように頷いた、彼女は間違いなく強者だと。
「糞ッ、相手もキヴォトスから飛ばされてきたやつだ!!」
「いや、この世界の人間もいる!剣で斬りかかって来る」
「面倒だ、機関砲で片っ端から蹴散らせ!」
トラックの荷台に据えられた機関砲が動く。
「よし、撃ちまくれ!!」
トラックの荷台の機銃手が引き金を引こうとした途端、トラック目掛けて銃弾の雨が降り注ぐ。
「おーっと、やらせませんよ」
ノノミの抱えるガトリング式の機関銃が吠える。一方、目の前でノノミがそんなものをぶっ放す光景を見たキャルは腰を抜かす。
「ちょ…何その物騒なの…」
「キャルの魔法も大概よ、私も前に出るわ」
セリカはキャルの手を引っ張って起こすと、そのまま駆け出した。敵はまだまだいる、怪しい動きを見せる敵を優先的に撃つ。すると、セリカは何かに気が付く。
「え、あれ何…矢?」
大量の矢の雨が敵に向かって降り注ぐ光景を目撃したのだ。そして、もう一両のトラックにその矢が降り注ぎ、乗員達はたちまち無力化される。
一方、その間に一人の人影が戦場に飛び込む。その乱入者に対してヘルメットを被った少女達は反射的に銃弾を浴びせる。だがしかし、突如現れた光の壁に弾丸は全て阻まれる。
「あれはこの世界の人間だろ…どうやって弾を…」
「おい、こっちに来るぞ!」
そうして、彼女達は大剣で次々と薙ぎ払われる。あっという間に窮地に追い込まれ、慌てたヘルメットの一団のリーダーは戦車の主砲を旋回させる。
「一番手近な敵を狙え!!」
「了解」
「射撃用意…はあ!?」
真正面から一人の女性が飛び込んできて、戦車の乗員達は困惑する。彼女の持つ武器はただの剣、そんなもので戦車を傷つける事は不可能だ。無知故の蛮勇か、そう嘲笑う。しかし、青に近い長髪をなびかせて、その女性は一気に飛び跳ねる。
「弟くんの事で忙しい時にこんな大騒ぎを起こすなんて…天が許してもお姉ちゃんが許さない!そんな子には…お姉ちゃんチョップ!!」
そんな意味不明な内容の叫び声と共に戦車の車内を猛烈な衝撃が襲う。すると、装填手が悲鳴を上げる。
「射撃不能!砲身が歪んだ!!」
「な、何!?あのクソ硬い砲身をチョップで壊したって言うのか!?」
「ええい、糞が!」
リーダーは銃を抱えて車外に飛び出す。だが、眼前には大剣を抱えた別の少女の姿。
「一人だけ色が違う…あなたがこの一団のリーダーですね!」
「剣で銃に勝てると思うなよ!!」
「やってみないと…分かりませんよ!」
飛び交う銃弾を掻い潜り、ペコリーヌは敵に向かって肉薄する。弾が外れ、相手は慌てたように後ずさる。そして、ペコリーヌは大剣を振り抜いた。
「プリンセスヴァリアント!!」
ペコリーヌの一撃を浴びた相手は吹っ飛ばされ、そのまま動かなくなった。それを見た戦車の乗員達はハッチを全て閉じるとそのまま逃げだそうとする。
「急げ、逃げろ!」
「な、なんだ…この揺れは」
しかし、突然軽い衝撃とエレベーターに乗った時のような浮遊感に包まれる。すると、運転手が叫ぶ。
「おい、どうなってる。動かないぞ!!」
戦車はピクリとも動かない。エンジンは動いている。しかし、履帯は地面から浮いており、ただむなしく空回りをしている。
「えっと…今、地面がいきなりせり上がったような…」
「うん、確かに見た。魔法?」
ホシノとシロコは唖然とした様子で戦車を指差す。その戦車は戦車の底の部分が地面から持ち上げられた状態となっている。その為、動く事が出来ないのだ。
「あー…こういう事が出来る人は…」
ペコリーヌが頬を掻きながらそう言うと、赤い髪の女性が突如ふらりと現れた。
「あちゃー、まさかこんなのが現れるなんて」
すると、コッコロが驚いた表情を浮かべた。
「ラビリスタさま!」
「やあ、皆さんお揃いで。いや、お客さんも一緒か」
ラビリスタと呼ばれた女性の側に小柄な少女と長身の女性がやって来る。
「マスター、それで…これって何?そして何よりも弟くんは!?」
「そうですよ、あの変な仮面被った連中も何者なんですか」
「シズルちゃん、リノちゃん…うーん、なんて言えばいいか。まあ、厄介事なのは間違いないかな。そして、少年達の手掛かりでもある」
一方、突如現れた三人にホシノは警戒した様子を見せる。赤い髪の女性がどうしても胡散臭く見えたからである。
「大丈夫です、あの人達は味方ですから」
ペコリーヌがそう言うと、ホシノは銃を下ろす。そうして、ペコリーヌはラビリスタに話しかけた。
「えっと、何が起こっているのでしょうか?」
「まあ、一言で言うと…かなり厄介な事態かな」
「やっぱり」
「で…おそらく、そこのお客さん達の世界にあの少年とトゥインクルウィッシュの三人が迷い込んだらしい」
「え!?」
ラビリスタのその発言に美食殿の三人は仰天したように叫んだ。自分達の仲間がこの騒動に巻き込まれた事を知ったからである。そして一方、ラビリスタはアビドスの面々に話しかけた。
「しっかし、銃とか車はともかく…その頭の上の輪っかは何?」
「えっと、これはヘイローってもので…」
「とりあえず、詳しく話を聞こうか。クレープでも食べながらさ」
「紅茶の味はどうでしょう?」
「ええと、その…美味しいです」
ギルド、トゥインクルウィッシュのメンバーであるユイはまるで宮殿のような建物のテラスで、緊張して縮こまった様子で紅茶を飲んでいた。眼前には背中に羽の生えた少女がほほ笑んだ表情で椅子に座っている。
「先程見せてもらった魔法で、あなたが別の世界から来た人間であるという事は理解しました」
「はい…ありがとうございます」
「あなたが空から落ちてきた時には驚きましたよ。でも、運が良かった。ここキヴォトスは危険な地域も数多くありますから」
「それで…ナギサさん。さっき話した私の仲間の行方については…」
ナギサと呼ばれた少女…桐藤ナギサは首を横に振る。
「いえ、まだ…このトリニティ総合学園に落ちていればいいのですが」
すると、テラスの扉が開く。
「ナギちゃーん!」
「ミカさん、今取り込み中ですので…」
「今、空から人が降ってきてね」
「…今なんと?」
ミカという名の少女…聖園ミカの言葉にナギサは咄嗟に振り返る。
「だから、人が降ってきたんだって。ヘイローの無い子達。で、その内の一人の声がナギちゃんにすっごく似てて」
「…声はともかく、その方々はどこに?」
頭上の輪…ヘイローの無い人間、キヴォトスの外の人間である事に間違いない。
「えっと、今呼ぶね」
ミカが手招きすると、扉から二人の少女が顔を出した。途端にユイが叫ぶ。
「レイちゃん!ヒヨリちゃん!」
そこにいたのは探していた仲間であるレイとヒヨリだったからである。
「ユイ!」
「ユイちゃん!」
三人は嬉しそうな表情を浮かべて駆け寄った。一方、その光景を見ていたミカがポツリと一言。
「えっと、どういう状況?」
「問題が一つ解決した、という事です」
すると、今度はナギサが一言。
「声の話ならあの獣人の方もミカさんの声にそっくりじゃないですか」
「…え?」
そんな話をしていると、トゥインクルウィッシュの三人がナギサとミカに駆け寄ってきた。三人とも心配そうな表情を浮かべている。そして、ユイが問う。
「あの、あと一人…ユウキという名前の男の子は見かけていませんか?」
問題が解決していない…ナギサとミカの二人は互いに顔を見合わせた。二人が所属するのはトリニティ総合学園の生徒会であるティーパーティー、積み重ねた経験からこの事態がもっと大事になりそうだという嫌な予感を本能的に感じ取ったのであった。
「で、騎士さん。あなたは何者なんです?」
早瀬ユウカの目の前には騎士のような恰好をした一人の少年がいた。諸々の陳情をする為に母校であるミレニアムサイエンススクールから連邦生徒会に向かう途中、空から降って来たこの少年を保護したのである。
「困りましたね…学園外ですので保護しても対応できませんし」
同様の事情でトリニティ総合学園からここまでやって来た羽川ハスミも困った様子で首を傾げる。ユウカは母校では生徒会…セミナーの会計であり、ハスミもトリニティの治安維持組織…正義実現委員会でかなり上の方の立場だ。しかし、ここは自分の学校の外、学校での権限は通用しない。だからこそ、二人はこの迷子の騎士の対応に困っていたのだ。
「あの…何かあったのでしょうか?」
「あなた、ゲヘナの…」
「ええ、風紀委員会の火宮チナツです」
事態を見てやって来たゲヘナ学園の火宮チナツにユウカが状況を説明する。
「えっと、つまり…空からヘイローの無い男の人が降って来た…と」
「ええ、その通り。話を聞いてもここがどこだか分かっていないみたいで…」
「それは困りましたね。それにこの格好…まるでファンタジー作品の騎士みたい。コスプレ…いや、でもこんな所で?」
チナツはハッとしたように手を叩く。
「もしや、この方が噂の先生なのでは…?」
噂ではかなりの権限を持つ事になるとされる役職、外から来た人間ならその可能性は高い。しかし、騎士の少年は首を傾げる。
「先生…?僕はルーセント学院の生徒だよ」
その少年の言葉にその場の一同はがっくりと肩を落とす。これでこの少年がただの迷子である事が確定したのだ。更に聞こえてきたのは聞いた事も無い学校名、手掛かり無し。
「皆さんも目的地は連邦生徒会ですよね?そこで保護してもらうとか…」
「それが手っ取り早いか…」
皆が溜息をつくと、突如爆発音が鳴り響く。
「痛い目見たくなけりゃ、ここに有り金全て置いていけ!」
「ああ、もう。この忙しい時に!」
銃を乱射する不良の群れを見て、ユウカ達は一斉に銃を抜く。すると、そこに白髪の少女が駆けこんできた。
「加勢します」
「あなたは?」
「トリニティ総合学園の自警団、守月スズミです」
「援軍なら大歓迎よ」
ユウカとスズミがそんなやり取りをしていると、騎士の少年が叫ぶ。
「僕も手伝う!」
そして、彼は迷いなく剣を抜いた。
「いや、剣で銃と戦うなんて…えっ!?」
「何で光って…?」
突如、剣を抜いた騎士の少年が光り輝いたのだ。しかし、それだけではない。ユウカ達の身にもある異変が起こった。
「何これ…」
「力が溢れてくる…」
「これは…一体何が?」
皆が未知の現象に困惑する中、ユウカが騎士の少年に問う。
「騎士さん、あなたは一体…?」
すると、少年が答える。
「僕の名前は…ユウキ!」
便利屋68がトワイライトキャラバンにほかk…保護されるネタも浮かんだけど
あまりにも可哀そうだったからやめた