「ここだから、入って。」
軽井沢に促されて堂前はカラオケボックスの部屋に入る。
中を見回すとどうやら自分が一番乗りらしく中には誰もいない。
「あれ、まだ誰も来てないの?」
「みたいだね。ねぇ、ちょっと早いかもだけど何か歌わない?せっかく来たんだからさ。」
「えっ? う、うん。」
軽井沢からの思いがけない提案に戸惑いながらも、堂前は室内に設置されている端末を手に取って検索モードを開き、さて何を歌ったものかと考えていた。
少し離れて座っている軽井沢の探るような視線に気付かないまま
Side:軽井沢
きっかけは授業が始まってから、2日か3日くらい経った頃の事だった。
朝のホームルームか始まる前、私はお手洗いに行こうと廊下を歩いていたら、ある男子生徒が誰かと話しているのを偶然見かけた。
堂前郁人くん
入学の時の茶柱先生の説明中に突然大きな声を出したり、かと思えば先生に対してやたらと大袈裟にへりくだって話したりする色々と変わった所があるクラスメイトだ。
最近はあんまり話してないからわかんないけど、どうやら平田くんと仲が良いみたいで朝や放課後によく話しているらしい、と前園さんがなぜか得意げに話していた。
正直言って、堂前くんのことはよくわかんないけど、悪い人ではないと思った。
ちょっと真面目っぽいところが鼻につくけど、コンビニの前でヤンキーっぽいクラスメイト(名前は忘れた)と先輩らしい人達との仲裁をしていたのを見る限り、良い人なんじゃないかと信頼しても大丈夫な人だと思った。
だから、この時は彼にお礼じゃないけど軽く挨拶でもしようかと思った。
彼の様子がおかしくなければの話だけど
「これはこれは櫛田さんじゃあないですか、今日は早いんですね。僕で良ければ教室までお荷物運びましょうか?」
「ええっ?あ、あはは大丈夫だよ。堂前くんってば大袈裟なんだから。」
「おやそうですか?この僕で出来ることがあればなんでも手伝いますよ?」
その日、私が見たのは櫛田さんに必要以上に礼儀正しく接しようとする堂前くんの姿だった。
‥‥いやいや何あれ。
まるで櫛田さんの召使いか何かみたいじゃん。
櫛田さんのご機嫌を取ろうって魂胆が丸見え。
いくらなんでも流石にナイと思う。
っていうか、櫛田さんの前だとあんな感じに振る舞っているの?
笑顔で取り繕っているとはいえ、若干櫛田さんがヒいているのが遠くからでも分かる。
櫛田さんのことを影からヤらしい目で見ている一部の男子達と比べたら多少はマシかもしれないけど。
幸いまだ人が少ないとはいえ、誰かに見られたらクラスの男子達で揉めるかもしれないのに、堂前くんは変なところで行動力があるみたいだ。
「で‥でも、堂前くんって陸上部なんでしょ?朝練とか大丈夫なの?」
「おおっとそうでした。僕としたことがウッカリ忘れていました。そういうわけなので、誠に心苦しいのですが僕はこれにて失礼します。それではまたっ!!」
そう言うと、ばさっと音がしそうな動きで堂前くんはどこかに向かっていった。
正直言ってちょっとがっかりした。
紳士的とまでは言わなくても、入学の日に少し話した堂前くんの素直そうな態度には多少の好感を持っていただけにアレはなかった。
すこし、距離を置こうかと思ったくらいだ。
そのつもりだったんだけど‥‥
私はその日の放課後に再び堂前くんを見かけてから、考えを少し改めることになった。
「おーい綾小路っ!今日ひまー? ケヤキモールの近くに
櫛田さんの時とは違い、やたらハイテンションな堂前くんは綾小路と呼んだ男子生徒の肩に抱きついた。
「どうどう落ち着け堂前、喫茶店か、コーヒーでも飲むのか?」
「ああそうさ。確かタ◯ーズだったかス◯ーバックスだったか名前は忘れたけどそんな感じの名前の店があるらしいぜ。なんなら、この前買った本の感想会でもやろうぜ!」
「うーんでもなぁ、実はさっき池たちにケヤキモールの地下にあるらしいなんたらビデオショップに行かないかってさそわれてるんだよなぁ。」
すると、その言葉を聞いた途端ついさっきまで上機嫌だった堂前君は人が変わったように一気に不機嫌になった。
「はぁ?おいおい綾小路それマジで言ってんの? 池って確か、あぁあのバ‥‥調子のいいヤツだよな!いっつも元気な。」」
「‥‥おい、それフォローになってないばかりか、軽く罵倒してるだろ。」
いつもは平田くんのような紳士的な振る舞いをしている堂前くんとは思えないような発言だったが、綾小路くんになだめられても調子を戻さず話し続けた。
「まあまあ綾小路よ、まずは僕の話を聞け。」
「さっきから聞いてるだろ。」
「僕の記憶が確かなら、池くん達が行こうとしているのは正確にはケヤキモールの地下じゃなくて路地裏にある成人御用達のDVD販売店だろ?」
「なんであいつらよりも詳しいんだ。」
「なんでって‥‥そりゃあ、僕がここら一対を現地調査したからに決まってるだろ?池くんが持ってる情報は若干僕が持っているのより正確性に欠けるようだけど一体どこで入手したんだ?」
「さぁ?としか言えないが。」
「ふぅん、まあいいや。それに、あそこで買い物をするには作るのに身分証が必須の会員カードがなきゃいけないし、なにより未成年の僕らじゃ行っても何も出来ないんだぜ。それに場合によってはお店の人に入り口で呼び止められて最悪学校に連絡が行く事になる‥‥
「なんで最後英語にした?」
「なんかかっこいくない?」
「はぁ、とりあえず池たちには未成年じゃ入れないぞって伝えとく。」
「そもそも未成年お断りのハズだから、場合によっては建造物侵入罪でお巡りさんの厄介になる可能性もあるって伝えといた方がいいかもね。これはマンガで囓った知識だけど」
「そうだな追加で伝えておこう。」
綾小路くんはおそらく、池たち宛てのメールを打っているのか端末を操作している。
「あと、そこよりもこの前行った古本屋の成人コーナーをオススメし‥‥いややっぱやめとこう。確証はないけど悪い予感がする。彼らにはケータイとネットで我慢してもらおう。‥なぁ綾小路よ僕が言うのもなんだけどさぁ付き合う人は選んだ方がいいと思うぜ?例えばここにいる僕とかさ。」
自信ありげに自分を指さして言った。
「そういうキザっぽいセリフは女の子相手に言ったらどうだ?」
「あははやめてよ。そんな事したら恥ずかしさの余りどうにかなっちゃうよ。こういうのは少しずつ段階を踏まなきゃね?」
「‥‥堂前も池たちみたいに櫛田を狙っているのか?」
「‥‥‥。」
しかし、その質問を聞いた途端堂前くんはまるで石みたいに固まってしまった。
「ん?どうしたんだ?」
「
「ん?」
「
「そうなのか?変わってるな。池によると櫛田は女子生徒ランキングでぶっちぎりでの位らしいぞ。」
「え?ちょっと待てよ、なにそのランキング、すごい気になるんですけど。」
「じゃあそのことについて、その喫茶店とやらで話すか。」
「いいね!綾小路の分のコーヒーは僕が払おうか?」
そう言うと、二人は歩いて行って学校を出て行った。
この時から、私は堂前郁人という人の事が分からなくなった。
そしてこの頃から、堂前君のほうから私に接触してくる事が増えるようになった。
朝の授業が始まる前とか、お昼ご飯のタイミングを狙って、「僕も入れてよ!」とでも言いたげな様子でこっちに話しかけたり、輪に入ろうとしてきた。
私のグループに男子が入ろうとしたのは、彼が初めてだ。平田君はいつも自分から入ろうとせず、私たちから誘うから、自分の意志で近づいたのは堂前君が始めてだった。
最初は彼も一緒にご飯を食べたり、遊びに行きたいのかとおもったけど、全然そうじゃなかった。
堂前君が私たちに話すのは、この学校の色んな仕組みについてだった。
例えば、「病気みたいなやむを得ない事情で授業に出ることが出来ない時は、学校側にちゃんと連絡を取れば成績には響かないけど、どうしても心配なら1000ポイントを払えば1コマの授業を出席扱いに出来るよ!」とか
「先生や先輩達に毎月のポイントについて聞くとなぜかきちんと教えて貰えないこれはきっとなんらかのウラがあるに違いない!」とか
「これは僕の推理だけど毎回のテストの点や授業態度の高い生徒ほど高いポイントを貰うことが出来るんじゃないかって思うんだ!だって、先生は僕らが授業中に話していても何も言わないだろう?この推理は結構いい線いってると思うんだ!」
とかだ。
これらは私が入学してから一週間のうちに起った出来事だ。
最初は「へぇよくそんなことわざわざ調べたんだね」と軽い返していたが。これが連続するとなると、ちょっと話が違ってくるのは私でも分かった。
最初は堂前君のやってることは、子どもの探偵ごっこも延長戦みたいなものだと、おもってたんだけど彼は何人かの先生や先輩にしっかり確認をとった上でやっている。
堂前君の話を聞いていると、この学校が普通の学校じゃないって事に気付くのにそんなに時間は掛からなかった。
近くで聞いていた、佐藤さんや前園さんは頭に?を浮かべていたけど、ひょっとしてこれはまずいんじゃないだろうか。
それに一番気にするべきなのは、堂前君がこの事をクラスのみんなに知らせるわけでもなく、かといって平田くんに話すのでもなくわざわざ私に直接話してるということだ。
これは絶対なんらかの意図がある。
というか、なかったら怖いくらいだ。
だから、私はいい加減彼の意図を探らなきゃ行けない。
もう、ワケのわからない行動をされるのはうんざりだった。
そして今、彼は私と二人っきりになっている。
いい加減彼がどんな人なのかわからないと安心して学校生活を送る事が出来ないと私は思ったからだ。
それに二人きりといったがあと10分ほど経てば、松下さんたちが来るうえに、実は部屋の扉を少しだけ開けておいた。
だから、不慮の事態になってもなにも問題はない。
でも堂前くん本人は
「想い出はモノクローム 色を
と、どこかで聞いたことのある歌を思い切り熱唱していた。
「いやぁ、こんなに歌ったのは久々だね。やはり、大滝詠一は素晴らしい。しかし、鈴木雅之もまた良い!め組のひとは名曲だよ!」
「へ、へぇそんなんだね。(全っ然わかんないよ!世代違くない?お父さんの世代の曲だよねコレ!)」
「中学で先輩たちがよく歌ってたんだ!いやぁ懐かしいなぁ。」
「そ、そうなんだね。(その先輩たち何者なんだろう)」
「でも僕は先輩達と違って心は1980年代に囚われてないよ。マイベストは『暁の車』かな!FictionJunctionの!なかなかの名曲だよ、良かったら聴く?」
どっちにしたって知らないよ!
〜〜一方その頃〜〜
「同志の気配っ!?」
「どうしたんだよハカセ、またスマホゲーのガチャで爆死したのか?」
「違うでござる池殿!いずこに拙者と心を同じくする同志の気配を感じとったで候!」
誰が呼んだか、Dクラスの三馬鹿もとい五馬鹿とも影で馬鹿にされている彼らは今日も仲良く騒いでいた。
「おい綾小路、お前今日こそ一緒に来るんだろうな?最近カンジ悪いんじゃないか?」
「そんなことはない。部屋の模様替えとか整理整頓に手間取っているだけだ。」
「おいおい、まだ入学して1週間くらいだろ?そんなに部屋に物が増えるかよ、アヤシイぞ綾小路ィ?」
「よっし決めた!おい山内!今日は綾小路の部屋に直行だ!健とハカセも行くだろ?」
「わりーな、俺はパスだ。部活があんだよ。」
「拙者は行くでござる。」
「オレに拒否権はないのか‥」
(誰か助けてくれ例えば堂前とか)
綾小路心の叫びは誰の耳に届くことなく儚く消えていったのだった
~~~~~
「ん?」
「どうしたの堂前君?」
「(気のせいかな?)いや、軽井沢さんは何歌うのかなって?」
「えっと、どうしよっかなあ?(松下さんまだかな?話が合いそうにないよ!)
続きます(多分
オリ主と関わって欲しい生徒は?(他クラスバージョン)
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葛城
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坂柳
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神室
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橋本
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一之瀬
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神崎
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白石
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龍園翔
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椎名
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山田アルベルト
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石崎
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伊吹
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金田
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時任