「ところで綾小路は何かの部活に入るのか?」
2日目の授業が終了し、僕と綾小路は部活動説明会に行く準備をしていた。
「いや、特に決めてないな。というか入るかすら未定だからな。」
「‥‥?入るか決めてないのに説明会に行くのか?」
「ダメだったか?」
「いや、ダメではないと思うけど‥‥」
「あら一緒に行く人が出来たみたいでよかったわね。」
「ん、堀北さんか。」
隣を見ると分厚いハードカバーの本を読んでいる堀北さんが僕たちの話を聞いていた。
「ふーんロシア文学か、えらい難しいやつを読んでるんだね。」
「・・・・・。」
堀北さんは僕の言葉にじっと黙ったままだ。なんだろう、もしかして地雷でも踏んじゃったか?堀北さんって基本的にいつも真顔だから何を考えているのか分からなくてちょっと怖いんだよな。
「あれ違った?ドフトエフスキーってロシアの人だよね。名前的にさ。」
「‥‥えぇ、詳しいのね。」
「そうかな?かなりメジャーだと思うけど。中学の時一回だけ挑戦しようとしたんだけど、難しいから結局やめちゃったんだよね。」
「堂前は本はよく読むのか?」
すると、綾小路から質問が飛んできた。
「たしなむ程度だよ。日本人作家のミステリとかサスペンスとかをね。最近はライトノベルなんかもいいね、読みやすいし。」
「なぁ、時間が合えばでいいから今度一緒に本屋にでも行かないか。そこで堂前のオススメの本とか教えて欲しい。」
「いいよー。あぁ、でも行くならブッ○オフみたいな古本屋でもいい?そっちの方が安いし。」
「‥‥10万ポイントもあるのにもう節約しているの?」
堀北さん急に話しかけないでよ。よくわかんないけど、おなかがヒュッとしてビックリするんだよ。
「‥‥ポイントはたくさん残しておくに越したことはないでしょ?無駄遣いしてたら金銭感覚がおかしくなるよ。」
「それもそうね。」
「じゃっそろそろ時間だから行こうよ。」
「おう、そうだな。」
そう言って僕と綾小路が教室を出ようとしたら
「ねぇ、やっぱり私も行ってもかしら。」
‥‥え゛
「‥‥‥い、いいけど。」
「今の間は何?」
「なぁ堂前、お前ひょっとして堀北の事が怖ムグ」
「よぉし!じゃあ行こっか!いいよね?堀北さん。」
「え、ええ‥‥」
全くお昼の時といい、なんで綾小路はこういう時に限って鋭いんだ。
僕にとって不名誉な事を言おうとした綾小路の口を物理的に塞いで僕たちは体育館へと向かうのだった。
◯◯◯◯
「(やっぱ人多いよな)」
体育館に着いたがくっそ人が多い。100人くらいか?
それだけみんな部活動に意欲的ということか。
別に沢山の人たちから見られているわけではないものの、少々気分はよろしくない。
「で?綾小路はどんなのに興味あんのさ?スポーツ系?それとも文化系?」
「うーんそうだな、特にこれといってないからな。何がいいんだろうな?」
そっからかい
「いやいや、なんかあるだろ?王貞治に憧れて野球部に入るとかクイーンズが好きだから音楽系の部活に入るとかさぁ。」
「さっきから挙げる例が古くないかしら?クイーンズって世代的には堂前くんの親か祖父母辺りじゃないの?」
ええい悪いか。
好きなんだよ特に『Bohemian Rhapsody』とか。
今でも某音楽アプリで聴くくらいにはお気に入りだよ。
ちなみに日本人アーティストだと宇多田ヒカルとかKalafina辺りが好きだよ。
「そ、そうかな‥‥なぁ綾小路最近の流行りってなんだ?やっぱり韓流アイドルか?」
「いやオレに振られてもわからないぞ。親が厳しかったからそういうのには疎いんだ。」
おいおい情報社会最盛期の現代を生きる高校生が何言ってるんだ。新聞とかニュースくらい見るだろう。
「なぁ綾小路って実は公家出身だったらするのか?そんな格式高そうな苗字だしさぁ。高円寺みたいに実家がお金持ちだったり?」
確かコ◯ンくんに綾小路警部って名前の公家出身のキャラクターがいたな。シマリスが友達の。
「……昨日言ったと思うが違うぞ。オレは至って普通の家庭の生まれだ。」
「ねぇ堂前くん想像するのはあなたの勝手だけれど、人の名前で弄ろうとするのは良くないと思うわよ。」
あれ、僕が責められてる?
僕が悪いのかこれ……いや冷静に考えると堀北さんの言い分も一理あるな。
「‥‥ごめん、無遠慮だった。」
「別にいいぞ、気にしてないし。」
「っていうか、堀北さんこそ説明会に来たって事は何かの部活動に入るの?やっぱスポーツ系?」
ホントは怖いから堀北さんにはあんまり近づきたくないし、会話もしたくないのだが、すぐ隣にいるのに何も話さないというのも気まずいから意を決して話しかけてみた。
「‥‥なぜ、私がスポーツ系の部活に入ると思ったのかしら。憶測で話すのは場合によっては相手に失礼よ。」
うーん、やっぱこええなこの人。なんでそんなにトゲトゲしいのさ。
「なぜってまぁ、なんとなくだけどさ。堀北さんって、中学の時に何かスポーツやってたんじゃないかなって思って。」
「‥‥分かるの?」
「うんまぁ、体つきを見ればなんとなくは」
「あら、セクハラかしら?良い度胸ね。」
「ごめんて、もってるポイント全部差し出すからどうか裁判にはしないで社会的に死んじゃうから。」
「誰もそこまで言ってないでしょう‥‥」
「ほら、今の時代訴えられたらほぼ負け確だからさ。知ってる?日本の裁判における有罪になる確率はほぼ9割9分なんだよ?」
「それは、実際に検察によって受理された場合であって‥‥もういいわよあなたが悪いとおもっているのは伝わったから。ちなみに、わたしがここに来たのは堂前くんのとなりの綾小路がボッチから脱却できるのか観察させてもらうためよ。」
マジかよこの人。流石の僕でもドン引きだぞ。
「オイ待て堀北。オレには既に堂前という友達がいるのであってもうボッチではない。」
「あらそうかしら?平田くんや軽井沢さん達とある程度親しいはずの堂前くんがわざわざあなたみたいなボッチに好き好んで一緒に昼食をとるなんておかしいと思わないの?あれはボッチの綾小路くんを見かねた彼からのお情けなんじゃないの?」
「えっ‥‥そうなのか堂前?」
「オイコラさらっと騙されるんじゃあない綾小路。それと堀北さんも不当に僕の評価を下げるような言い方をしないでよ。」
「あら言葉の綾よ?」
そうかな?多少の悪意はあったろ。
しばらくして、生徒会書記の橘茜先輩の挨拶から部活動の紹介が始まった。
先輩達による説明を事前に配られたパンフレットを読みながら聞き入る。
「へぇ、流石は国立の学校だ。設備は整っているみたいだし、先輩達も大会でそれなりの成績を残してるみたいだな。」
「‥‥みたいだな。でもどの部活もレベルが高そうで却ってスポーツ未経験者には入りがたい雰囲気だよな。仮に入ったとしても、万年補欠かもな。」
「おいおい、入る前からビビってんのか?そうナイーブになるなよ綾小路きっとどの部も未経験者だろうが新入部員にはやさしいって。」
「堂前くんの言うとおりよ。部活の先輩達は新入生からの部費が欲しいはずだから、最初は新入生に優しくするんじゃないかしら。」
追い討ちをかけるんじゃあないよ。
益々入りにくくなるだろ綾小路が。
「まぁそんな事を言ってやらないでよ、ひょっとしたら未経験者の綾小路でもたくさん練習したらエースになれるかもしれないよ?」
「否定はしないわ、1年2年と鍛錬を重ねれば誰にでもチャンスはあるもの。」
「有名ボクシング漫画でも言ってたね、『成功した者は皆すべからく努力しておる!!』って、いい言葉だ。」
「気の遠くなるような話だな‥‥」
「事なかれ主義の綾小路くんに、鍛錬は無縁の存在だったかしら。」
事なかれ主義?
「なにそれ?」
「あら知らないの?無駄な労働をさけ、無事に人過ごす人の事をそう言うのよ。」
「それってつまり、めんどくさがり屋ってことじゃないか・・」
「端的に言えばそうね。」
「とすると、綾小路にスポーツ系の部活は向いてないと。」
「堂前まで決めつけないでくれ‥‥」
先輩達の部活動に関する紹介がしばらく続いたところで変な事が起きた。
急に堀北さんがビクっと動いたと思うと、顔を青くして舞台の方に見入っている。
「あ?」
どうしたんだ?壇の上に知り合いでもいるのか?
「堀北。どうしたんだ?」
綾小路が呼びかけるが全く反応しない。
すると、登壇にメガネをかけた男子生徒が見えた。
勉強もスポーツも得意そうなすごいイケメンだ。でもすごいおっかなそうだ。堀北さんみたいだ。
その人物は登壇に出てきた後、なぜか黙っている。
「がんばってくださ〜い」
「カンペ持ってないんですか〜?」
「あはははは!」
一年達からヤジが飛ぶが壇上に立つ人物は気にせず立ったままだ。
そして、場を静寂が支配した途端に話し出した。
「私は、生徒会長を務めている、堀北学と申します。」
へえ、あの人も堀北さんなんだ。意外と世間って狭いんだな。
堀北生徒会長は生徒会に入りたい生徒達に向けた説明を続けた。
「生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、1年生の立候補者を募っています。特別立候補に資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えているのなら部活動への所属は避けていただくようにお願いします。生徒会と部活の掛け持ちは、原則受け付けていません」
それから生徒会に関する話は続いた。
「それから───私たち生徒会は甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選はおろか、学校に汚点を残すことになるだろう。我が校の生徒会は学校の規律を変えるだけの権利と使命が期待されている。その事を理解できる者のみ歓迎しよう」
へぇマジか、あの先輩凄いな。
「なぁなぁ綾小路これってアレじゃないか?」
「アレ?」
「アドルフ・ヒ◯ラーの演説のマネだよ。みんなが静かになるのを待っから演説を始めるやつ。あの人すげーな。普通知っててもやろうとは思わないぜ。」
「あぁ‥‥チャップリンの『独裁者』で有名な人物か。」
「お前やっぱり名家の生まれ「違うぞ」・・そっか。」
そして、生徒会長による説明は終わり部活の申し込みが始まった。
四月いっぱいまで受け付けているらしい。僕も後でやっとこ。
それにしてもビビったなぁ。
さっきから背中を流れる汗が全く止まらない。
この学校に入ってからみんな普通の人そうだったから油断してた。
あの生徒会長、堀北学さんからは僕が中学で出会ったリーダーのあの人のようなカリスマ性、多くの人間を率いるような力を感じた。
シンプルに恐怖を感じた。
何かの間違いであの人を敵に回してしまったらそれはこの学園の大半の生徒を敵に回すに等しいだろう、僕の学園生活はおじゃんになってしまうだろうな。
ああいう人には是非とも仲良くしておきたいところだが、僕程度が近づいたところで興味を引くことは出来ないだろうな。別に生徒会に入る気はないし。
[要注意人物]「生徒会長」堀北学
と心のノートに記録しておく。この学校に来て初めて警戒した方が良い人物だ。こっちから近づかない分には特に問題ないけど。
「堀北さん?もう終わったよ?」
どうしたんだろう、ずっと立ったままだ。
「ようお前も来てたんだな綾小路。」
「ん?」
ふと隣を見ると、僕と綾小路に須藤が話しかけた。彼の隣には昨日自己紹介してたクラスの男子、池と山内がいる。
「やぁ須藤じゃないか。」
「おぅ、堂前おまえたちも部活に入るのか?」
「いや、オレはただの見学だ。『も』ってことは須藤は部活するのか?」
「ああ。俺は小学生の時からバスケ一筋だからな。ここでもバスケだ」
「へぇそうなんだ。」
「そういう堂前はどうなんだ?」
「まだ、考え中かな。スポーツ系のどれかに入るよ。」
「で?君らもなんか入るの?」
須藤の隣にいる山内と池に話しかけてみる。
「俺たちは楽しそうだから来たってのもあるけど、一番の目的は運命的な出会いを求めてだな。あー彼女ほしい~!」
僕の質問に真っ先に答えたのは池だ。
「運命的な出会い?部活内恋愛とか?」
「それもいいけど、やっぱ同じクラスの櫛田ちゃんがいいかな!めっちゃ可愛いし!」
どうやら入学2日目にして、既に櫛田さんはクラスのアイドル的存在になってるらしい。マジかよ。おそろしや
「あぁ櫛田さんか、確かにきれいだよね。」
「だろ?堂前も分かってるじゃんか!」
その分狙ってる男子も多そうだけどね。
あえて言わないが。
「俺はなんか部活動入ろっかなと思ってたけどやっぱいいや。高校では遊んでたいし」
コイツは山内。中学では野球をやっていたが、インターハイでケガしたとかいう訳のわからない事を自己紹介で言ってた。あとから調べてみたが、そもそもインターハイは高校生の大会だからそもそも前提が破綻してることが分かった。
「あ、そうそう。昨日男子用のグループチャット作ったんだよ。お前らもやらない?」
「え、オレもいいのか?」
綾小路すげー喜んでるな。
僕も一応入るけど。
「ねぇ池くん、男女どっちも入ってるチャットグループってないのか?」
既に、昨日の内に平田と女子の約半分が入っているチャットグループにいるが念のため確認しておく。
「いやぁそれがまだなんだよ。櫛田ちゃん辺りに頼めば出来るかな?」
「僕から平田くんに頼んでおこうか?こう見えて平田くんとは昨日の内に仲良くなってるんだ。」
「えっ‥いや平田はなぁ。」
ふぅん
やっぱり平田みたいなイケメンが嫌いみたいだな
クラスカーストトップで女子から大人気の平田くん
一部女子をまとめている軽井沢さん
クラスのアイドル的人気の櫛田さん
誰に付くのか最適解かな?
「あれ。」
ふと周りを見ると、いつのまにか堀北さんがいなくなっていた。
もう寮に戻ってしまったのだろうか。
その後僕は陸上部に入部届を出した。
ちなみに黒瀬さんもいた。
これから楽しみだな。
改めて小説一巻を読んだのですが、初期の池くんの顔ってこんなだったんだ。
瞳孔開いてない?
吉野裕行さんが声を務めてそうな顔してたんだな。
池くんはノンデリ発言はともかく普通に話す分には楽しいやつだと思ってます。
山内?悪いやつではないんですがね。
ノーコメントで
オリ主と関わって欲しい生徒は?(他クラスバージョン)
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