捨て駒としてフレイヤで消滅した影武者がナナリーに転生 作:カミアラエル
私の名前はナナリー・ヴィ・ブリタニア。そう、例のブリタニア帝国の第12皇女だ。元の世界では拾われた孤児だったこの私が、まさかあの超大国の皇女に転生するなんて。運命とはわからないものだ。
覚えている限り、前世の最期はフレイヤ弾頭に巻き込まれて消滅したはずだった。なのにいつの間にか再びこの世界に転生していた。最初はパニックに陥ったが、どうやら私はナナリーのそっくりさんではなく、ナナリー本人に転生したらしい。
私は今、アーレス・ヴィラという邸宅で暮らしている。周りにいるのは側近や使用人ばかり。外の世界との接点は全くない。当然、ルルーシュにも会えない。ただひたすら皇女としての振る舞いを学ぶ日々だ。
でも、これでいいのだろうか。影武者のようにナナリーの代わりを務めるだけでいいのだろうか。私にはナナリーを超える何かができるはずだ。世界を変える何かが。
「ルルーシュ…あなたに会いたい…」
窓の外を見つめながら、ぼんやりとつぶやく。窓の外には色とりどりの花々が咲き誇っている。平和そのものといった光景だ。しかしその美しさも、今の私の心を慰めてはくれない。
運命に逆らい、この世界を生き抜いていく。私はそう心に決めた。ナナリーの代わりではなく、一人の人間として。ブリタニアを、いやこの世界そのものを変える存在として。
影武者だった少女の、新たな戦いの幕が上がる。
そう、全ては兄シュナイゼルの策略だったのだ。前世の私を影武者として利用し、迫る東京決戦ですり替え、さも本物のナナリーであるかのように芝居をさせた。そしてフレイヤ弾頭で消し去る。私はただの捨て駒に過ぎなかった。
「なんてことを…許せない…!」
あの時はシュナイゼルを信じていた。世界平和のためなら、私の命くらい惜しくないと。でも、それは真実ではなかった。私はCの世界で真実を知った。
Cの世界の記憶…
私は目を閉じ、深く息を吸い込んだ。するとゆっくりと、前世の記憶がよみがえってくる。まるで映画を観ているかのように、鮮明なのだ。
(あれは…皇帝陛下がCの世界に落ちた時…!)
ギアスの力に抗いきれず、皇帝陛下とその皇妃の意識はCの世界へと飲み込まれていった。彼らを待っていた運命は、無数のギアス使いたちの末路。彼らは皆、力に溺れ、破滅への道を歩んだ哀れな存在だった。
ルルーシュはギアスの真実を知り、宿命に抗う決意をした。自らもギアス使いでありながら、その力の犠牲になることを拒否したのだ。
彼は集合無意識(私たち)に向けて、こう言い放った。
「歩みを止めないでくれ!」
かつての私は、ルルーシュのその姿に心を奪われた。命懸けで運命に立ち向かう勇気。絶対絶命の状況でも、諦めることを知らない心。その強さに、惹かれずにはいられなかった。
(ルルーシュ…あなたはギアスの力でさえ、自在に操った)
今、全ての真実を知るものは私だけ。この地球上で唯一、集合無意識の全知。シャルル皇帝が目指した世界の力を継承した存在。それはシュナイゼルへの復讐のために、与えられた力なのかもしれない。
かつてルルーシュは世界の運命を変えた。ならば私は、ルルーシュをも超えてみせよう。
シュナイゼルへの復讐。弱者を欺く者への制裁。私は全知の力を使い、為すべきことを為す。たとえ、世界の全てを敵に回すことになっても。
「私はもう、誰にも操られない」
今こそ、運命という名の鎖を解き放つ時。あの日、Cの世界で見た光景が、私を突き動かす。そう、これが私の生まれ変わった目的。
この世界を、より良い世界に塗り替えてみせる。シュナイゼルの偽善的正義も、ルルーシュの偽悪的正義も、私が断罪する。
「さあ、ギアスの力よ…私に答えなさい!」
瞳に紋様が浮かび上がる。世界を欺く者どもへの、鉄槌を下す時が来た。どう足掻こうと、何をしようと、私の覚悟は揺るがない。
全ては…Cの世界で見た、あのルルーシュの姿に始まった。私をここまで引き上げてくれた、運命の導き。だから私は、ルルーシュにすら知られることのない、もう一つの奇跡を起こすのだ。
捨て駒にされ、役目を終えたはずの偽物が、運命のイタズラで生き返った。それなら偽物として、私なりの正義を貫こう。
まずは戦乱の世界に飛び込まなければ。そのためにも、この体を鍛え上げることから始めよう。神は私に、本物のナナリーの身体を与えてくれた。もはや障害など、ない。
「私はもう、人形じゃない…」
かつて人形のように操られた日々。二度と、あんな思いはごめんだ。この手で、運命を切り開いてみせる。
私は車椅子から立ち上がった。足をしっかりと大地に踏み込む。あまりの感覚の鮮明さに、自然と笑みがこぼれた。
「さあ、世界を変えましょう。ナナリー・ヴィ・ブリタニアとして…!」
影武者は人知れず死に、本物のナナリーに生まれ変わった。それはルルーシュの、そしてシュナイゼルの知らない、もう一つの奇跡。舞台は整った。あとは私が、この手で世界のすべてを手に入れるだけ。
偽物だった少女の、新たな人生が幕を開ける。世界を欺いた兄への復讐を胸に、彼女は一歩を踏み出した。まだ誰も知らない、もう一つの反逆のドラマが、今、動き始めたのだった。