不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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月まで届け不死の煙

 

 

 

ーーーー平安の世ーーーー

 

 

 

呪術全盛の魔境。

 

 

そんな時代に、ある一つの戦いが歴史に刻まれた。

その命燃え盛る不死鳥と、邪知暴虐の顕現である存在との衝突。

 

 

それは正に神話の戦い、だが記録として残ったのはその被害を伝えた巻物と…

 

 

 

神々しく輝く、一枚の赤い鳥の絵だけだ。

 

 

 

 

「藤原」

 

 

「藤原、妹紅」

 

 

 

 

山が消し飛び、大地は滅却され、草の根一つない死の大地に人影が二つ。

 

 

片や無傷ではあるが服装がボロボロの白髪の少女、片や火傷跡は少々残るがすでに治りつつある四本腕の怪人。

 

 

壮絶な戦いの跡が見ては取れるが…両者にその面影はない。

 

 

 

「ケヒッ…覚えておくぞ、貴様の名前」

 

 

「いや、普通に忘れといてくれ、お前と戦うのは二度とごめんだ」

 

 

「だが必ず、会う時が来るぞ?」

 

 

「…はぁ、それじゃ次は逃げるから、それじゃ…まぁ、次はきっと…」

 

 

 

 

「何千年先かの未来で」

 

 

 

 

そうして白髪の少女は去っていく、もう二度とごめんだといわんばかりのウンザリした表情で。

 

 

 

怪人も法悦と愉悦が混ざったかのような顔をして、それを見送り…。

 

 

 

それ以降、片方が呪物となるまで会う事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は現代。

 

 

 

スーツ姿に身を包み、会社のオフィスで爆睡している白髪の少女はその会社にいる人間なら見慣れたもので、誰も気にすることなく朝の業務を続けている。

この会社には暗黙のルールがあるのだ、それは……。

 

 

 

その白髪の少女の、面倒を見る係を毎月決めることだ。

 

 

「起きてください、業務時間ですよ~?藤原さん?妹紅せんぱーい?」

 

 

「んっ……あう」

 

 

「またお風呂さぼりましたね?髪の毛ぼっさぼさですよ…」

 

 

 

「ふぁ~ぁ…眠い…日曜明けの月曜ってなんでこんなに嫌ったらしいんだ?」

 

 

 

デスクに顔を突っ伏して寝ていたせいで体がすごく痛い。

 

 

風呂入ってない、朝飯食ってない、昨日の夜ご飯食べるの忘れた。

 

 

 

「妹紅先輩……またオフィスで寝てたんですか?日曜日にまで会社に来て??」

 

 

「毎日退屈なんだ、もう会社ぐらいしか暇つぶしが無い」

 

 

「…本当に仕事が趣味な人って居たんですね、そんな生き方じゃ人生の時間を浪費し続けるだけですよ!もうっ、ほらシャワー室行きましょう!」

 

 

「う~…ありがとな…連れてってくれ……」

 

 

藤原妹紅がこの会社でこんな存在になったのはいつからだろうか?

 

 

だが、これを許されているのにも理由がある。この会社に最も貢献しているのが彼女だからだ、狂ったように仕事をし続け、様々な権限を持ち、一般社員の数十倍…いや、役回りを柔軟に変更して業務を行うために数百倍の仕事量をこなしている。

 

 

その代わりに、女子力は死んでしまった。

 

 

「……(見た目に比べて中身が残念過ぎる…!!)」

 

 

「…………なんか、しせんがいたい…」

 

 

ちなみにこの会社に就職した理由の10割としては、この会社にはなんとシャワールームがあるのだ。しかもめちゃくちゃ設備が整っているジム式のやつ。

 

 

私にとって、食事は二の次、最重要なのは衛生面だ。

 

 

それが人間社会に生きる場合での最重要事項。

 

 

「あー~…気持ちいいな」

 

 

水のシャワーで気分さっぱり。

 

 

この会社を作らせて30年、ほんとに良い暇つぶしになったな。

 

 

 

「おっと」

 

 

 

視線の先に、暗く蠢く存在が居る。

 

 

それは常人が目にすることは叶わないのに、『そちら側』から害を与える存在だ。

 

 

そこで思い出したんだが……しまったしまった、昨日祓い忘れてたな…と。こういった水場には、本当にすぐ…ーー

 

 

 

()()が寄り付いてくる。

 

 

 

「■■■■…」

 

 

「すまんな、お前らの言語は何百年たっても理解できない、学ぼうとはしてるんだが…」

 

 

軽く触れるより前に、シャワー室に居た呪霊は妹紅の身体から常にあふれ出る『正の呪力』によって消し飛ばされてしまう。

 

 

何をするでもなく、ただ近づいただけで祓われていった。

 

 

「今日は晩御飯食べなきゃな…」

 

 

「はぁ…」

 

 

「……」

 

 

「次は、何をしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今日は流石に家に帰って下さい!!残りの業務くらいなら私達でもやり切れるので!!!』

 

 

 

 

「……暇だ」

 

 

 

現代社会が発足して数年目、暇つぶしの一つとして『貯金額を増やす』という遊びを思いついた。

それ以来仕事に打ち込み、死ぬほど、死んでも仕事をして今や銀行がパンパンになるくらいには資産がある。まぁやってたのは仕事だけじゃないしな、いろいろ勉強して投資家系統の資格とかもチャレンジしてみたし。

 

 

「……帰って、部屋の片づけでもするか…」

 

 

 

そう思って、帰路へ踏み出した瞬間。

 

 

 

懐かしい声が、聞こえてきた。

 

 

 

「やぁ、妹紅」

 

 

「久しぶりだね」

 

 

厳密にいえば声は違う、でも声に乗って伝わってくる感情や『久しぶり』という言葉を私に使える時点で、誰なのかという答えは一つ。

 

 

「羂索か」

 

 

「よく分かったね」

 

 

「当たり前だろ、お前以外に誰が『久しぶり』なんて言えるかよ…それで、何が目的だ?」

 

 

「まぁまぁ、そう殺気立たないで?今の身体は戦闘能力はないし…それに君相手に勝てるわけないだろう?丁度君の『貯金ゲーム』が飽きてきたころじゃないかと思ってね」

 

 

「獄門彊は?」

 

 

「別の事に使う予定」

 

 

「良かった、またあんなもんに閉じ込められたら脱出するのもめんどくさいからな」

 

 

羂索の目の前の存在から呪力が立ち昇る。

 

 

空間に迸る莫大な呪力は呪力を認識できぬもの達にも察知できるほどであり、それら全てが正の呪力である為、今の一瞬でこの町の呪霊の半数が消し飛んでしまった。

湧き上がる呪力に裏付けされたその存在感は、金剛力士像…神を彷彿とさせる清らかさを有している。

 

 

そしてその呪力には燃え盛る炎が付随され、神々しく美しい豪炎が身にまといつき、敵対するものごと自分自身の全てを燃やし尽くさんとする勢いで輝いていた。

 

 

「…相変わらず…美しいね」

 

 

 

「じゃあ本当に何の用だ?お前と会うのは私を殺そうとする時位しか思いつかなかったんだが…」

 

 

 

「そうだねぇ…強いて言うなら……君がもう忘れてしまってそうな約束を果たしにきたかな」

 

 

 

 

「新しい暇つぶし、欲しくはないかい?」

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

「期間はざっと二千年の暇つぶしだけど」

 

 

 

「……分かった、乗ってやる、お前の責任の取り方がそれならな」

 

 

炎は収束し、再び儚い少女の身体へとおさまっていった。

 

 

 

「…ふふ、良かった」

 

 

 

羂索は一人、心の中で幸せを享受する。

 

 

彼女との会話、そして『約束の成就』。

 

 

それは、自分の希望であり、未来であり、青春であった呪術全盛の時代の復興そして藤原妹紅という少女との悲願の成就を意味する狼煙であったからだ。

 

 

 

 

「二千年後の荒野で、君はもう一人じゃない」

 

 

 

「藤原妹紅」

 

 

 

「私が、君を一人にはさせないよ」

 

 

 

「…何気持ち悪いこと言ってんだ」

 

 

 

羂索の顔を振り返って見ようとする、どんなにやけ面をしているものかとーー。

 

 

 

「ブォッフォウっ!?」

 

 

「え?何々、何か顔にでもついてた?」

 

 

「おま…な、なんで妊婦なんだよ……!?わ、笑かさないでくれ…マジで今…ツボに…」

 

 

「ん~…」

 

 

羂索がお腹をさする。

 

 

「ゲホッゲホッ!?!?!マジで!!やめて!!!」

 

 

「あ、この後私の家寄ってかない?それでさ運命の相手に会ってくれないかい?たぶん腰抜かすと思うから」

 

 

「う、運命の…w…羂索の…運命の…ゲホッゲホッ!!!!!」

 

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