不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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すみません…前回『旅行4日目』と記載していましたが、『二日目』の間違いでしたので修正しています…。


玉折ー壱

旅行に行く前の話だ。

 

 

誘拐場所、その近場のラーメン屋、五条達が空港でチケットを買うらしく、私は私の飛行機で行く為一旦別れて……そしてここへ飛んできて…『見つけた』。

 

 

魂の強度、存在の強度が段違いの怪物、宝石の様に輝いている魂。

 

 

口元に大きな傷を付けて、明らかに一般人では無い筋肉を誤魔化す為にダボっとした服を着ているが…それでも体躯がデカい。

 

 

「お前だな?黒井を誘拐して天内を殺そうとしてる術師殺し」

 

 

「お前……」

 

 

呆れた様な顔をして、妹紅を見つめていた視線を気だるげに外して…ーー

 

 

 

「早死したいやつか」

 

 

 

ソイツは人を殺し慣れていた、いつ人間が力を緩ませ、意識を逸らし、弱点と隙をさらけだすのかをよく理解している。

 

 

近場にあった箸と爪楊枝だけでも、コイツは人を殺せる怪物だ。爪楊枝は喉元の気管へ、尖らせて折った割り箸の狙いは瞳。

 

 

 

「ああ、早死したい奴だ」

 

 

「…ーーマジかよ」

 

 

「そしてめちゃくちゃ金持ってるカモでもある」

 

 

それら全てが到達するより前に燃え尽きる、『何か』に阻まれているのか割り箸を持っていた手も弾かれ、軽く火傷を負った。

 

 

「…ラーメンぐらいでしか火傷しねぇと思ってたんだがな」

 

 

「ここで暴れるとお店の人に迷惑だ、ついてこい…美味い飯、奢るぞ?ついでにお前用に競馬のvipルームを取ってる」

 

 

「…ーーははっ、分かってんじゃねぇか」

 

 

伏黒甚爾の五感が伝えてくるのは、目の前の存在の強大さと、一切の敵意を持っていない事。

 

千円札を机に叩きつけて、ラーメン屋を出たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「万馬券を軽々しく買うなよ、ドキドキ感が無くなる」

 

 

「人の金でやるギャンブルなんて万馬券買ってなんぼだろ、分かってねぇな」

 

 

「やっぱりさっきの発言取り消す、お前に一括払いしたら1週間か1ヶ月そこらで無くなりそうだからな」

 

 

「なら依頼は受けねぇ、それだけだ」

 

 

「この糞ガキ…」

 

 

「お前の方がガキだろ、身長俺よりちっせぇんだからよ」

 

 

 

この透明野郎……廻る呪いの循環から抜け出した化け物がどんな奴かと思えば、守銭奴のギャンブル狂いだとは…。

 

 

思っていたより人間味があって、無い奴だな。

 

 

「…10億、ねぇ…お前、あのガキになんの思い入れがあるんだよ」

 

 

「無い」

 

 

「はぁ?」

 

 

こいつを雇うにあたっての金額は10億、因果の超越者が値段を付けて雇えるなら安いものだ。

 

それで盤星教から私へと依頼主を変わってもらった、既にコイツは私の手足になってくれている。

 

 

「新しい雇い主からの命令だ、透明……鞍替えしろ、盤星教には悟られずにな」

 

 

「…依頼内容は」

 

 

「殆ど変わらない、お前はあの子の命を狙い続けてたらいい」

 

 

「変わった人間…いや、化け物か、随分と様子のおかしい化け物だな」

 

 

vipルームで自由に飲めるワインとツマミをバクバクゴクゴクと吸引する様に平らげながら、妹紅に空いたグラスを入れる様指で促す。

 

 

「だが、途中で命令を変える場合がある事も覚えとけ、その時は私の言うとうりに行動しろ…どうだ?10億じゃ安いか?」

 

 

「高ぇよ、バカ富豪が」

 

 

「そうか、なら40億にしておく」

 

 

「…話聞いてたか?」

 

 

「10億を高いと思うってなら、もっと高ければお前の心を縛れるからな」

 

 

「……本当、嫌な依頼主だよ…お前」

 

 

なみなみと注がれたワインを一気飲みする。普通の人間であれば昏睡ものだが、顔色1つ変わらない。

 

対する妹紅も、ワインボトルそのものを持ち上げて一気飲みした後に…焦げ臭い匂いを頭から湧き立たせながら酔いを飛ばす。

 

 

全く似ていないのに、何処か同じだと感じ得る2人。

 

 

 

共通点は1つ。

 

 

 

 

「…お前、随分と疲れた目をしているな」

 

 

 

「嫌味は受け付けてねぇぞ…鏡みてから言え」

 

 

 

「お互い様に、だな…私達は同じく」

 

 

 

「人の見た目をしているだけだ…」

 

 

 

 

 

 

人の様な化け物であるかどうかだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懸賞金解除まで

 

 

後1分。

 

 

 

「薨星宮に天内を連れていけば、俺たちの任務はそこで終わる」

 

 

「そこからは、私達に任せて欲しい」

 

 

既に天内の生きたいという告白を受けて、2人は任務の遂行後に謀反を行う。

 

 

東京校の結界内、後はどれだけ迅速に薨星宮から抜け出し、高専から逃げ出せるかだ。

 

 

「わ、分かった…私は捕まえられた〜って事にするんだよね…」

 

 

「黒井さんも同じくね、私達は2人の誘拐犯になる」

 

 

「…ごめんね、夏油」

 

 

「ありがとう、と言って貰えた方が嬉しいかな、理子ちゃん」

 

 

懸賞金解除まで後20秒、解除後に薨星宮へ行く。

 

 

「ここまでお疲れさん、五条…無下限は結局張ってただろ?海以外の時は」

 

 

「…あぁ」

 

 

「解除しとけ、ここはもう高専の結界内だ」

 

 

解除まで10秒。

 

 

 

「私はこれから夜蛾さんと話してくる」

 

 

「……」

 

 

「別にお前らの事を話すわけじゃない、ただいまって言ってくるだけだ」

 

 

 

ーー全ての準備は整った。

 

 

妹紅が手を振って、高専の校舎へと姿を消す。

 

 

 

「悟、懸賞金」

 

 

「…ふぅ〜…OK、傑…ーー」

 

 

 

熱。

 

 

 

胸に広がる痛みと熱が、言葉を遮って湧いて出てきた。

 

 

 

「ッ……?」

 

 

「…ーー悟ッ!!!」

 

 

ここは高専の結界内の筈…!

 

 

自分の胸から生えてきた短刀、背後に呪術師の気配は無い…目視の確認を…。

 

 

「アンタ……どっかで会ったか?」

 

 

 

「気にすんな 俺も苦手だ」

 

 

 

「男の名前覚えんのは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手持ちの呪霊、2級を突撃させて悟から襲撃者を引き剥がす。

 

 

「悟!!」

 

 

「問題ない」

 

 

「術式は間に合わなかったけど内臓は避けたしその後呪力で強化して刃をどこにも引かせなかった、ニットのセーターに安全ピン通したみたいなもんだから、マジで問題ない」

 

 

心臓付近を刺されたが、立って話す悟を見て

 

 

「天内優先ッ!護衛が終わるより前にアイツは潰しとく、傑達は先に天元様の所へ行ってくれ……傑、全部任せるぞ」

 

 

「…!あぁ、悟も油断するなよ」

 

 

「バーカ、誰に言ってんだよ」

 

 

夏油達が退いていく間に、襲撃者を飲み込んだ呪霊が爆散する。

 

 

呪霊の中から現れた襲撃者は装いを変えていた。

 

 

「星漿体がいねぇな」

 

 

さっき俺を刺した刀とは違う…!体に巻いてる呪霊もどっから湧いたんだ?得体の知れねぇ奴だなクソっ!

 

もこせんに連絡は無理、同じくコイツをくぐり抜けて高専からの援助も不可、ここでやりきるしかねぇ。

 

 

「できればオマエはさっきので仕留めたかったんだが…ナマったかな」

 

 

「天内の懸賞金はもう取り下げられたぞマヌケ」

 

 

「俺が取り下げたんだよ、ヤセ我慢」

 

 

「周りの術師が一人も死ななかったのはクソだったが懸賞金の時間制限がなければオマエは最後まで術式解かなかったと思うぜ」

 

 

「あっそ」

 

 

順転 『蒼』を放つ、空間にマイナス1が生まれ、襲撃者を彼方へと引きずり込んだ。

 

 

 

「………ふぅ…っ」

 

 

 

これで突き放した。傷が痛む、1度呼吸を整え…ーー

 

 

 

「ッッ!!」

 

 

 

「おっと」

 

 

 

一瞬瞼を閉じ、気を抜いたともいえぬ呼吸の隙間。その瞬間に目の前に迫っていた。

 

 

だが、日々の訓練の賜物か…瞬間的に反応出来た。追い払うだけでも今は命繋ぎだ。

 

 

「アイツ…」

 

 

もこせん以上に速い…!!蒼で離されてから瞬間で追いついてきた、しかもそれだけじゃない、コイツ何かおかしいと思ったら呪力が全くない…?っ、天与呪縛のフィジカルギフテッド!動きがまるで読めねぇ…が…。

 

 

『六眼の読みだけに頼るな』

 

 

近付いてこい、お前よりやべぇ教師にしごかれてんだよコッチは…!!

 

 

俺の術式を知っててコソコソしてたんだろ?そんな奴が無策で近づいてくるとは思えねぇ、特に今出したあの呪具はヤバい。

 

 

恐らく無下限を突破する手段がある……だけどな、天与呪縛。

 

 

それ、初めての経験でもなんでもねぇよ。

 

 

「気配は無い、あの巻き付けてた呪霊の反応は…」

 

 

「………速すぎだろ、化け物か?」

 

 

反応の動き的に物と物の間で飛び跳ねてやがる。

 

 

「……」

 

 

「仕方ねぇな」

 

 

この身体だと安定しないから発動はしたく無かったが…。

 

 

「…【術式順転 出力最大】」

 

 

 

空間が歪み、青い光に全てが引きずり込まれていく。

 

 

 

「『蒼』ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平らになった高専の敷地、出力を上げた『蒼』の暴力によって地面は抉れ、建物はズタズタとなる。

 

 

周囲の物は殆ど押しつぶされたことで、開けた視界を手に入れた五条は、襲いかかる刃に対応出来ていた。

 

 

「思っていたより強いな、誰に習ったんだ?」

 

 

「お前より化け物みたいな奴にだよッ!」

 

 

その身体でよく動く、近接戦闘も仕上がってるな。

 

 

一度目以降は懐に入れねぇし、入っても徒手空拳と術式の絡め合いで引き剥がされる。

 

 

3回目だが、動きも鈍らねぇ。

 

 

「……」

 

 

「出てこいよ、天与呪縛」

 

 

「………」

 

 

…仕方ねぇ、サッサとケリつけるか。

 

 

《おいガキ》

 

 

五条から1度距離をとって身を潜め、遠方から蠅頭を放出し格納呪霊の気配を紛らわせる、そして通信機を手に取った甚爾。

 

 

《隙作れ》

 

 

通信機を切り、握り込むは特級呪具【天逆鉾】

 

 

効果は術式の強制解除だ。

 

 

 

「……」

 

 

 

ーーそしてその時までを待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「考えろ…」

 

 

大量の呪霊のせいで巻き付けていた呪霊の気配を消された。どうやってこれだけの呪霊を…。

 

 

いや、そうじゃない、どれだけ雑魚を差し向けられてもいい。気配を紛らわせられても巻き付けてる奴の高速で動く反応を……ダメだ、外して来るのなら察知は出来ない。

 

 

「……」

 

 

……?

 

 

遠方のあの呪霊の反応が……消えた…。

 

 

…狙いは天内?

 

 

……。

 

 

()()()()()()()()

 

 

傑が居る。

 

 

 

警戒は解かず、構え続ける五条。

 

 

呪霊に囲まれながら動かず、じっとしたままの五条、その視線の先に……。

 

 

 

「………!もこせん!!」

 

 

「五条!!何があった!!!」

 

 

「襲撃者!それも天与呪縛!もこせんも気をつけろ、アイツ…は…ーー」

 

 

 

その視線の先に、高専の校舎からやってくる妹紅の姿を目に映し…。

 

 

 

 

 

 

そしてその()()()()()()()光景を見てしまった。

 

 

 

 

 

「もこせ…っ」

 

 

 

 

「意識を逸らしたな?」

 

 

 

 

天逆鉾が無限の壁を突き破り、五条の喉へと突き刺さる。

 

 

 

「……ーー」

 

 

 

最後の抵抗か、突き刺さった刃を握り込んで離さずに…ーー。

 

 

 

「ふん」

 

 

 

抵抗虚しく喉から胸元へと切り開かれる。

 

 

 

短刀を取り出し、脚に三発。刃を握った拳で殴り抜け、足を払い…。

 

 

 

そして、脳天へと。

 

 

 

 

ズチュッ!!

 

 

 

 

「ふぅーー〜………」

 

 

 

「少し、勘が戻ったかな」

 

 

 

「……」

 

 

 

天逆鉾と短刀を回収し、格納呪霊を巻き付け星漿体の元へと移動する。

 

 

その前に、もう1つの物言わぬ死体に一言。

 

 

 

「お前、そんな事出来たんだな」

 

 

 

死体から返事は帰っては来ないが…。

 

 

 

「アイツの師匠、お前だったんだな、中々面倒臭かったぞ」

 

 

 

甚爾は何処と無く、早く行けという雰囲気を感じ取って、足を進めるのであった。

 

 

 

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