不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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次話から本編突入です。




前日譚

「やっ」

 

 

身体に備えられた筋肉が分からないように、フワッとしたセーターを着て……そして、その火傷跡を隠す為にこんな夏の季節の中厚着をしている男が遠くから手を挙げている。

 

 

「よっ、犯罪者じゃん…何か用?《あ〜五条ー?夏油見つけたよ〜》っと」

 

 

「煙草、吸うようになったんだね」

 

 

少し人気の少ない場所へと向かい、設置されてあるベンチにもたれ掛かりながら火を家入へと差し出す。

 

 

「ありがと……うん、アンタのお陰でね《え?場所教えろって?やだよ殺されたくないし》」

 

 

「硝子、教えてもいいよ」

 

 

「マジ?《えっとね…良いってさ、新宿■■市の■■■ね、それじゃ》……んで、一応聞くけど…」

 

 

「なんで?」

 

 

その一言に、彼女の想いがどれだけ込められていたんだろう。

 

 

そんなに煙草を握る手を震わせながら、ここへと来たんだね。

 

 

「自分探しかな、色々と困っちゃって」

 

 

「それで何千人も殺したんじゃ、ただのテロだと思うんだけど……それに、その火傷は?」

 

 

「分かっちゃうか、身体の8割は火傷だよ…私は反転も下手くそで出来ないし……火傷、これはね…妹紅先生からの指導かな、ボコボコにされちゃってね、治すつもりも無い」

 

 

「ひゅーひょい、なのにな〜…ホント、センス無いよね…」

 

 

「ハハ、それで分かったら苦労しないんだけど?」

 

 

間に生まれた談笑、その中で生唾を飲み込みながら…再度、家入が問う。

 

 

「……一応もう1回聞くけどさ、なんで?」

 

 

「変わらないよ、自分探し…漸く私も腰を落ち着けられそうなんだ、目標も決まった、やりたい事も出来た、新しい家族も作った」

 

 

「だからね、術師以外を皆殺しにしようかなって」

 

 

「訳分かんね〜…」

 

 

「大丈夫だよ、骸の上に座ってる自覚はある」

 

 

「…どーせ誰も理解してくれないって腐るのもそれなりに子供だと思うけど?」

 

 

「1人だけいるさ」

 

 

「……」

 

 

その中に、きっと私は居ないんだろうなって自覚もある。

 

 

そんな事言うなよ、巫山戯たこと抜かしてんじゃない、帰ってこい。

 

 

……なんて言葉を、人としての感性が邪魔をして口から出てこない。

 

 

だから、私以外の1人なんだろうさ。

 

 

「硝子」

 

 

「……っ」

 

 

「ごめんね」

 

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

「謝るなよ」

 

 

 

 

 

 

「クズの2人目がそろそろ来るから、私は帰るわ……それじゃ」

 

 

 

「うん…それじゃ、さようなら…硝子」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人混みの中を真反対から掻き分けて進む。

 

 

退け、邪魔だ、間に合わなくなる。遅れてしまう。見逃してしまう。

 

 

 

「傑ッ!」

 

 

「遅かったじゃないか、悟」

 

 

もこせんに付けられたであろう火傷を大切そうに撫でながら、傑がこっちを見ている。

 

 

「…っ……説明しろ、傑」

 

 

「硝子に聞かなかったのかい?漸くやりたい事も見つけたからそこに腰を落ち着けただけさ」

 

 

「…もこせんの教えか?」

 

 

「それもあるね」

 

 

「……ーー〜ッ…!!!だから術師以外殺すってか!?親も!?」

 

 

「親だけ特別というわけにはいかないだろ?それにもう私の家族はあの人達だけじゃない」

 

 

「んなこと聞いてねぇよ、お前の嫌いな意味ない事だろ、それは」

 

 

「意味はある、意義もね…まぁ、大義ですらある」

 

 

「嘘つけよ…!お前が言い聞かせてるだけだろッ!…非術師殺して術師だけの世界を作る!?そんなの無理に決まってんだろ!できもしねぇことをセコセコやんのを『意味ねぇ』っつーんだよ!」

 

 

「思っても無い事を自分に言い聞かせてるのは君もじゃないか」

 

 

息を飲む、『何を』言い聞かせてるのか、自覚しているから。

 

 

 

 

 

 

「君にならできるだろ、悟」

 

 

 

 

 

 

ーー……。

 

 

 

 

 

「自分にできることを私に『できやしない』と言い聞かせるの、似合ってないって…ははは」

 

 

「……君は五条悟だから最強なのか?最強だから五条悟なのか?答えは出てる、君は私の親友…五条悟だ、五条悟だから私の親友なんだよ」

 

 

「だから、私が君になってもこんな事は出来ない……でも『君になら』できる」

 

 

 

ごめんね、悟…君を1人にしてしまう。

 

 

 

君を置いていく、この醜い世界に。君を置き去りにするよ、私の親友。

 

 

 

私は怪物の様な人間。

 

 

君は人間の様な怪物。

 

 

 

だからこそ、君は人間の様に生きていた方が幸せなのかもしれない。

 

 

 

…きっとそんな事なんて無いから、妹紅先生にここまで叱られたんだと思うけどね。

 

 

『置いてくな』……か。

 

 

 

 

「生き方は決めたよ、後は自分にできることを精一杯やるさ」

 

 

何も言い返せない、アイツを、夏油を殺す準備しかできない。

 

 

何も言えない、言いたい事も言い聞かせたい事も何も。

 

 

なぁ傑、俺はいつから置いてかれたんだ?なんで相談してくれなかったんだ?もうあの時には全員殺してたって事だよな、なんで一緒に俺と笑ってくれてたんだ?それからもずっと逃げて隠れて、もこせんだけと戦って逃げて、俺ともやれよ、教えてくれよお前が何処まで辿り着いたのか。

 

 

なんで、なんでなんでなんで、なんで置いてくんだよ。

 

 

1人にするな 『犯罪者』 1人にしないでくれ 『処刑対象』 置いていかないでくれよ 『大量殺戮犯』

 

 

うるさい、邪魔だ、アイツに言わなくちゃいけない。帰ってこい、全部なんとかするから、俺がなんとかして、お前が嫌なもの全部殺してやる。

 

 

『君にならできるだろ』

 

 

出来るさ!!俺なら出来る!!!だから、だから……!!!

 

 

 

 

「置いて……いくな」

 

 

 

「……ふふ、ごめんね…悟」

 

 

 

「置いていくよ」

 

 

 

「殺すなら殺せ、君にとっては意味も何もありはしないが…」

 

 

 

「君の居る世界だと、意味はある」

 

 

 

火傷に優しく触れながら、背を向け…去っていく。

 

 

震える手をもう片方の手で抑えて、術式を発動し、指を弾けば殺せれる。

 

 

『五条悟』には出来る、でも『俺』には出来ないよ。

 

 

分かってて…置いていくんだろ、傑。

 

 

 

「……ぅ……っ…」

 

 

 

結局、その姿が消えるまで……終にその指は動くことが無かった。

 

 

 

 

 

 

そしてその日から五条悟は『五条悟』になり…ーー

 

 

 

 

 

 

今でも彼の『青』は澄んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結末は変わらなかった。

 

 

 

「来たる12月24日、我々は百鬼夜行を行う!!」

 

 

 

精々、犠牲者が増えたかどうかの話だろう。

 

 

 

「益々欲しいね…!」

 

 

 

結局…『あの時』の縛りの影響か、それとも妹紅に付けられた火傷の影響か……夏油傑が、手を抜いたかは分からない。

 

 

「失礼だな、純愛だよ」

 

 

「ならばこちらは大義だッ!」

 

 

この戦いで、夏油もあの襲撃者と同じ気分になっただろう……『思っていたより強い』『どうせ妹紅の仕業』だと。

 

領域対策、それは結界術による術式の中和か、簡易領域による必中適用から逃れる事。

 

過去の縛りにより、神業領域は行えなくなっていた夏油だが、それでも領域展開は行えた。

 

 

行った上で、破壊されてしまった。

 

 

『それは……妹紅先生のッ…!!』

 

 

【最強 五条悟】 現時点、その数倍の呪力を持つ乙骨憂太と祈本里香。

 

 

その力は、変幻自在の呪力の塊。呪いの女王を名乗る事が許される現代最高の呪力量。

 

 

そしてそれは、あらゆるものの原理をそのままに、模倣する。

 

 

天元、羂索を超える結界術の使い手、神業領域の解体を行える神話の存在、藤原妹紅の努力の結晶が……再び、夏油傑に襲いかかった。

 

 

 

「……次こそは……なんて、そんな夢物語は無いか……先生の炎…綺麗だったな…」

 

 

「…また見れるとは、思ってもなかったよ…乙骨君」

 

 

「傑」

 

 

「やぁ…随分と遅かったね、悟」

 

 

「おかえり」

 

 

「……はは!ただいま、悟」

 

 

 

 

運命の帰結を迎える。

 

 

 

 

「これ、乙骨君に返しておいてくれないかい?」

 

 

「分かった」

 

 

「……」

 

 

「何か、言い残す事はあるか」

 

 

「いやいい、君にとって呪いになるからね、私からは呪いしか残せないよ?それでもいいなら、思いっきり言ってあげるけど」

 

 

「変わらないな、傑は」

 

 

「そういう君は、随分と変わったね…悟」

 

 

「…………」

 

 

 

「傑」

 

 

 

「■■■、■■■■…■■■■■■■」

 

 

 

「ーー…」

 

 

 

「はっ」

 

 

 

「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」

 

 

 

満足そうに、笑顔でそう言い放って。

 

 

 

その生涯を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい」

 

 

「おい、起きろ」

 

 

「伏黒の高専入学の授業、間に合わなくなるぞ!起きろっての」

 

 

「…………」

 

 

「妹紅」

 

 

「なんだ?」

 

 

「……なんでもない」

 

 

長い夢を見ていた気がする。

 

 

毎日見ている、長い夢。

 

 

任務の疲れが祟ったか、昼寝してしまった。

 

 

「んー〜…っと、恵の授業ね〜…妹紅が行ってよ」

 

 

「お前が保護者だろうが、入学式位付き合ってやれ、初任務初呪術だぞ?」

 

 

「はいはい…っと…」

 

 

 

『悟』

 

 

 

「……!」

 

 

 

振り返る。

 

 

 

でも、誰も居ない。

 

 

 

「……」

 

 

「……行ってくるよ」

 

 

 

夏の青は…

 

 

 

まだ、終わっていないから。

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