不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

19 / 70
東方寄りと呪術寄りのお話は、それぞれバランス良く書いていこうと思います!

呪術の事分からない……って人や、東方の事をあんまり知らない……って人にもある程度楽しんで読んでいただける様、何とか頑張っていきます……!


穢神と戦神 そして1人の少女ー参

 

 

「土着神は……」

 

 

「……」

 

 

「……次は、何処だよ…」

 

 

言葉を言い切る前に、何処か暗い洞窟のような場所へと飛ばされた。

 

同じだ、守矢神社に入り込んだ時の神隠しと同じ手法…カエルの声と、気配すら無い唐突な転移。

 

 

「…だが…考えるに、お前が領域の主ってことでいいんだな…?」

 

 

暗い洞窟の奥深く、大量の札と閂に囲まれ封印されている少女。

 

 

1歩も動く気配は無く、また眠っているかのような姿を見せている。

 

 

「諏訪大社の仮想怨霊…!!」

 

 

「…ーー失礼だね、ご客人…怨霊なんかじゃないさ」

 

 

「私は洩矢諏訪子、祭神の1柱…八百万の神であり、穢神であり、土着神であり、祟り神の頂点…愛称は…そうだな、諏訪子とでも呼んでね」

 

 

「君に、お願いがあって呼んだんだ」

 

 

黒く染まった景色に溶け込んで顔は見えない、声からは朗らかな少女である事が聞いて取れるが、脳に伝わってくる威圧感と恐怖は目の前の存在が只者でないことを告げている。

 

 

「お願いだと…?」

 

 

「そう!どうやら君は中々頭が切れるみたいだから、私がどんな状態になってるか大体察しが付いてると思うけどね、だからこそお願いがある」

 

 

「……」

 

 

土着神、それは呪術界に置いても特筆すべき呪霊。

 

恐怖を糧とする呪霊の中で、信仰をも力とし、伝承…現実でのミーム、その神と紐付られる全ての事象に対する畏敬や恐怖の念を全て力にする性質上、報告よりも強力な呪霊である事が多い。

 

実際七海さんの同級生の死亡記録にも土着神が関わっていた。未発見、未調査で対面する事が殆どの相手なのにも関わらず、その殆どは1級超えの怪物。

 

 

「…おま……えは、呪霊程度で収まる存在じゃない…な…」

 

 

その更にこいつは上を行く化け物だ、特級呪霊なんて言葉は生易しい。

 

 

神…東風谷の話してた通りだな…!

 

 

「恐らく、お前は…自分の力を制御出来てねぇんだろ…?」

 

 

「うん」

 

 

「…っ…そうか……その知能の高さであんな雑な攫い方をするとは思えねぇからな…俺以外の奴は殺したのか……?」

 

 

「…うん、食べちゃった」

 

 

「…なるほど…それでその呪力……穢れ過ぎだ…」

 

 

発生した神隠しや、怪奇現象はコイツが穢れを隠しきれなくなって盛れ出した結果の被害なんだろうな。

 

 

見るだけ、感じ取るだけで身体を蝕んでいく呪い。

 

 

土着神のもう1つの特徴として…呪霊からの恐怖や信仰も力に出来てしまう。

 

でもここまで力を得れるそんな奴は存在しなかった、呪霊の殆どにそこまでの知能は無く、恐怖を抱いても生き残る為に速攻逃げ出すか、逆に殺しにかかってくるかだが…。

 

コイツは、そんな呪霊共から恐怖と信仰を超えて、『畏敬』として崇められてやがる。

 

 

 

「本当は私はね、40年前程には消えかけてたんだ〜…」

 

 

「お…まえ…の様な…奴がか…?」

 

 

「うん、私に対する人からの純粋な信仰が無くなっちゃってたからね、このまま後数十年したら死んじゃうのかな〜って…神奈子っていう私の友達とも話してたの」

 

 

神奈子…もう1柱の神か。

 

 

「こうなったのはね、ちゃんとキッカケがあった」

 

 

「早苗が産まれる数十年前、急激に呪霊の…祟り神達や呪いそのもののレベルが急激に上がっちゃったんだよね〜…何故かは知らないけどね」

 

 

「結果、私を崇めていた祟り神達の信仰が強くなり過ぎた、今の私は殆ど自我を失いかけている祟り神とそう変わりない」

 

 

身体を動かして、暗闇からその半身を伏黒へと見せつける。

 

そこにあったのは、人としての形を失って…黒い泥と化した姿。

 

 

「…やっぱり……そうだったか…土着神の暴走……今のお前にここまで自制があるとは、思って無かったが……」

 

 

「じゃあさ、私が君をここに呼んだ理由…分かるでしょ?」

 

 

「……」

 

 

 

「あぁ」

 

 

 

「…ふふっ…伏黒くんにはね…」

 

 

 

 

 

「私の事、祓って欲しいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『駄目だッ!!』

 

 

『も〜…そんな事言っても仕方ないじゃん、死なないといけないって言っても後数十年は大丈夫なんだしさ』

 

 

『っ…だからって、このまま見てるだけで居られるかッ!!…そうだ、早苗は!早苗はどうする気だ!?』

 

 

『私はお前を封じ込める為に全ての力を使い切らなきゃならない、つまりは私達2人揃って早苗を置いて行く事になる!』

 

 

『分かってるよ!もう!でもどうしようもないじゃん!!…私達は、早苗に残す物を準備しなきゃなんない時なの!!』

 

 

沢山喧嘩したっけ……。

 

 

色々問題はあったけど、私の祟り神化に関してはもうどうしようもなかった。信仰が原因なら…と私を崇めている神達との『結び』を切ってしまえば、日ノ本は全て穢れに堕ちる。

 

 

そうなれば早苗も命を落とすし、生き延びても日本は壊滅。

強力になり過ぎた祟り神を一手に引き受けての自殺が最も効率的で被害も少ない。私が死んで自意識が無くなった後の『私』は神奈子が封印してくれる。

 

 

忘却の結界、守矢神社の存在を現世から隠し、全てのもの達から忘れ去られることで、守矢神社と共に消える手法……これが最適解だったんだ。

 

 

『…最適解…?最適解だと!?早苗に私達を忘れさせて!悲しませて別れる事の何処が…!!』

 

 

『それじゃ、神奈子は早苗に死んで欲しいの?』

 

 

『っ………そんな…事は…言ってない…』

 

 

『同じだよ、結論は変わらない……まぁでも、まだ問題はあるけどね』

 

 

『……』

 

 

『お前を殺せる誰か……か』

 

 

 

封印といっても、今の神奈子じゃ全盛期の私に近い『私』をそのまま封印する事は出来ない。

最低限、穢れの泥になる位までは殺しきらないと。

 

 

 

 

『私が何とかしてあげるよ』

 

 

 

 

頭を悩ませ、解決策も無い……そんな時だった。

 

 

 

『ふーん?面白い人間さんだね〜…』

 

 

 

『貴方に日本を終わらせてしまわれるのは困るからね、貴方を殺し切る手段は私が用意しよう』

 

 

 

額に縫い目をつけた、女……中身は別だったけどね、そいつがひょこっと早苗が居ない時に私の所へと来たんだ。

 

 

 

『神に対して良い威勢を張るね〜!人間如きが…それで?望みは?』

 

 

 

『穢れに染まりつつある貴方に対しての望みは3つ』

 

 

 

『1つ、この契約を私達以外に漏らさない事』

 

 

 

『2つ、東風谷早苗の身元の安全とそれからの生活を担保するよ、これはオマケね』

 

 

『3つ、これが本当の望みかな……代価として貴方の穢れの1部を…そうだな、時が来たら回収させて貰う』

 

 

 

『良いだろう、人間』

 

 

 

『八百万の神であり山の神であり、洩矢の王国の王としてお前と契約を結ぶ』

 

 

 

『偽る事勿れ』

 

 

 

早苗を保護してくれる、なんて好条件だったから思わず手を掴んじゃった。

 

 

胡散臭さが服着て歩いてるみたいな奴だったけど、縛りはちゃんと結んでくれたから…約束の2つ目、早苗の条件を満たすには私の殺害が必要不可欠。

 

 

神奈子より、早苗よりアイツを信頼した訳じゃない。むしろ2人の優しさと…きっと、最後まで解決策を探し続けちゃうだろうなって…目に浮かんじゃってね。

 

 

 

 

 

 

「……俺にお前を祓う実力は無いぞ」

 

 

 

「あはは、嘘ついちゃだめー…伏黒くんは持ってるでしょ?大切に隠して、絶対的な切り札として温存しているものが」

 

 

 

カエルのような縦の瞳孔が伏黒の顔を覗いている。

 

 

 

「…ちッ…何で分かった?」

 

 

 

「ん〜…まぁ天津神と国津神って言ったら分かるかな?」

 

 

 

「っ!?…お前…!本当に神って事かよ…!!」

 

 

 

その単語で、伏黒の頭に浮かんでいた予想が全て紐付られ、そして洩矢諏訪子の正体の核心に近い所まで勘づいた。

 

 

 

「あの宝剣と私は相性最悪、幾ら全盛期の私に近くても相打ち程度になると思うから君の命の心配はしなくていい」

 

 

 

「さぁ、お祭りだね伏黒くん」

 

 

 

「……」

 

 

 

「お祭りは別名はね、神遊びと言って神様が人間と遊ぶ事なの…そう、つまり君がこれから味わう事はただの神遊び、つまりお祭りさ!」

 

 

 

「今日はね、そんな最後の…私のお祭りの番」

 

 

 

あの子(早苗)の為にも、遊んでくれる?伏黒くん」

 

 

 

「…………」

 

 

 

色々言いたいことはある、ただの調査がなんでここまでハチャメチャな事になってんだよ…とか。

 

 

…だけど、どうしても重なってしまう。うさぎを撫でてたアイツ(早苗)の笑顔…。

 

 

津美紀と…似てたからかな。不平等に人を助ける、か。

 

 

 

「……」

 

 

 

少しでも多くの善人に平等を享受する、その為に不平等に人を助ける。

 

 

 

「布留部」

 

 

 

「…!!」

 

 

 

周囲の穢れが、その相対する者への殺意で震えている。

 

 

絶対的な対立者、古来の縁が彼らを心の底からの戦いに投じさせるのだ。

 

 

 

「由良由良…」

 

 

 

「…ごめ蜈クね、早苗」

 

 

懐かしい気配を感じ、荒ぶる御霊を抑えきれず半身に及んでいた穢れが全身を覆い尽くす。

 

 

「八握剣」

 

 

 

「噪縺ェ…」

 

 

そして…巻き込んじゃったけど…ありがと、伏黒くん。

 

 

「異戒神将……!」

 

 

伏黒の背後に現れる拘束された化身。

 

 

その出現を祈り、祝福するかのように現れる影法師達。

 

 

『ソレ』はその名を告げると共に君臨する、祓魔の化身、影法師などでは無い真の召喚である。

 

 

 

「魔虚羅!!!」

 

 

 

出現と共にソレは、懐かしき気配を感じる目の前の穢れへと標的を定め…。

 

 

衝突を、開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諏訪子様ぁ…」

 

 

 

洞窟の天井を突き破る事で、その上の守矢神社も一緒に破壊される。

 

 

摩虎羅の突き出した剣が、触れるだけであらゆる生命を穢し殺す純度100%の穢れを消滅させていき、実体を失った諏訪子に対しても確かなダメージがある様に見えた。

 

 

諏訪子の変化を捉えた神奈子は、素早く早苗と打ち上がった伏黒を結界の操作で回収し守矢神社の境内の外へと弾き出す。

 

 

「うぉっ…!?」

 

 

「ぅぁ…まって、待って下さい神奈子様!!」

 

 

「……」

 

 

 

返事は返さない、顔も見ない、それが今出来る最大限の謝罪。

 

 

 

「頼むぞ…」

 

 

冷や汗をかいて目の前の戦いへと集中しなければ、今すぐにでも余波で消し飛ばされてしまうだろうな。

 

 

結界を操作、維持し続け、諏訪子と摩虎羅が相打ちになった瞬間に封印を施さなければ諏訪子は再び復活してしまう。

 

 

それが最悪、全てが崩壊する最悪の結末。

 

 

「ここまで力を取り戻していたとは思っていなかったが…ーーっ!?」

 

 

だがその思考も別の事象によってフリーズしてしまった。

 

 

「熱っ…クソっ!こんな大変な時に『何が』入り込んできた!?」

 

 

尋常でない速度で侵食されていく守矢神社の神域結界、想定外の中でも最も横入りされたくない場面と『結界』という要素に対するダブルパンチに思わず舌打ちを挟んだ。

 

 

 

「私1人じゃ対処出来ん…!静葉ッ!穣子ッ!!」

 

 

 

片手で結界の維持、片手で招来の印を組む神奈子。

 

 

 

「わー!?っとと…なんですかー…お引っ越しの準備してた所なのに…って!ひょわー!?!?」

 

 

 

「なに〜もーさっさと荷造りを……何事ッ!?」

 

 

 

「手が足りない!緩んだ結界から侵入した奴が居る!!頼んだ!」

 

 

 

「「は、はい!」」

 

 

 

 

2人揃って空を飛んで、確かに感じる強い気配の元へと向かうが…。

 

 

 

ーー空に劫火が迸る。

 

 

 

「「」」

 

 

 

ぷすぷすと黒焦げになって、アフロヘアーになった2人が空から落下して早苗と伏黒の傍に突き刺さり……。

 

 

 

「……」

 

 

「静葉さん!?穣子さんんんん!!??」

 

 

「時間稼ぎにもならんかったか…」

 

 

 

…伏黒は今の空に走った炎の事を一切知らないが、それでもその呪力の気配によって『誰が』来たのかを察した。

 

 

それは自分が事前に仕掛けておいた、胃の中に入れてある蟲の通信が途絶えた瞬間に通達される救助要請によるもの。

 

 

そして、待ち望んだ希望の到来でもある…!

 

 

 

 

「本当に……」

 

 

 

「アンタは、頼りになる先生ですよ…」

 

 

 

 

 

殺し合いを続ける諏訪子と魔虚羅。

 

 

 

その両者の間に業火の柱が突き刺さった。

 

 

 

 

 

「生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く」

 

 

 

「故に照らし、導く者」

 

 

 

神奈子が侵入者を排除する為に領域内から締め出そうと結界を閉じるが、その結界同士の繋ぎ目すら燃やされていく。

 

 

 

「死に死に死んで死の終に冥し」

 

 

 

「だが死せず、闇に堕ちぬ者あれば」

 

 

 

手の打ちようが無いのを悟り、炎の中にいる存在に対して目を向けた。

 

 

 

「今1度ッ!永劫が如く輝く者在りと知れッ!!」

 

 

 

炎は争いを続ける両者を巻き込んで、火山の噴火の様に吹き出す炎が勢いを増し続け…そして、遂に…ーー。

 

 

 

「凱風快晴ッ!」

 

 

 

 

臨界点を迎える。

 

 

 

 

「フジヤマヴォルケイノッ!!」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

炎に巻き込まれた両者は、その身体の殆どを炭にしながらも復活を遂げようとしていた。

 

 

それを見て、一旦振り返り伏黒と視線を合わす。

 

 

 

「……ふぅ」

 

 

 

「無事か?伏黒」

 

 

 

「あぁ…!アンタのお陰でな!」

 

 

 

「…どういう状況かって聞くのは後にした方が良さそうだな……伏黒、『どうすればいい?』」

 

 

 

「どうすれば………っ…」

 

 

 

ーー迷い。

 

 

 

『どうするか』それは……隣で泣いている少女の未来を決定する宣告だから。

 

 

 

迷う伏黒が、出した結論は…。

 

 

「……」

 

 

 

「……東風谷!!」

 

 

 

「な゛、な゛んですか……?」

 

 

 

「『どうする?』」

 

 

 

「…ぁ……ぇ?」

 

 

 

「どうしたいかって聞いてんだ…!家族を助けるか!祓うのか!!」

 

 

 

選んだ選択は、『選択の放棄』。

 

 

 

結末は早苗自身に委ねられる。

 

 

 

「お゛……お願い!しますっ!!」

 

 

 

「私の家族を…!!」

 

 

 

「助けて下さい゛ッ!!!」

 

 

 

「ーー分かった」

 

 

 

「愛しい生徒の望み、それを託されたお前の願い」

 

 

 

「私が何とかしてやる」

 

 

 

「……ーー命位は、なんとかな」








・秋静葉と秋穣子

紅葉の神と豊穣の神、2人揃って秋の神様。

信仰が無くなっちゃってからは守矢神社の森に居候していたお2人、守矢神社から引っ越す事をお願いされた時は青天の霹靂ビックリ仰天すってんころりん七転八倒。

これからどうしようかな〜……街に行ってお花屋さんでも開いてなんとか信仰を軽くでもいいから集めて……生きていかなきゃ…って2人して荷造りしてたら呼び出された。


戦闘能力は低い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。