不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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終幕…?

 

 

「……」

 

 

「しまった、名前位聞けば良かったな」

 

 

あの緑髪の…随分と前衛的な格好をした女の子…魂を見るに、現人神の末裔か。魂の輝きが凄まじい、尋常じゃないレベルの神力と呪力を秘めている。

 

 

「……」

 

 

 

「あっちが、家族とやらの神様で…」

 

 

 

「あっちは…魔虚羅か、1回羂索が見せてきたな…」

 

 

その昔、御前試合がどうだとかなんだとか……招待された時に見せてもらった。十種影法術の切り札…伏黒が出しやがったな?

 

 

最初のアレで潰しきれなかったのは不味った…もっと全力で焼けば良かったよ…まぁそんな事したら…。

 

 

「…お前を救いたいって願いもパーになる」

 

 

ドロドロと炎に燻された事で溶けている黒い塊、諏訪大社の主。

 

 

穢れの主、古来の神の生き残り。そしてあの少女の家族。

 

 

私は何も知らないし、何の関わりも無い唯の乱入者。彼女達の人生の欠片も知ったこっちゃないし、見ず知らずの人に縋るほどどうしようも無い状況を迫られていた。

 

 

何も知らなくても、何かしてあげれる存在ではある。

 

 

……だが、そんな存在がこの状況に介入する、というのも納得出来ない者も居るだろう。

 

 

 

「…アンタは私を止めなくていいのか?」

 

 

「……」

 

 

 

特段呪力はそこまで感じとれないが、恐らく神でありこの結界の構築主であろう不思議な格好をしたコイツ。

 

 

コイツが構築しようとしていた結界で大体何をしたいかも分かった、どういう状況なのかも。

 

 

 

「……いい」

 

 

 

「人間、お前が誰かは知らない…が」

 

 

 

「……」

 

 

 

「早苗の望みに、私は耳を傾けてやれなかった」

 

 

 

「あの子にとって、私達がどれだけ大切なのかも…知っていたつもりだったが、家族は…私達はもっと大きなものになっていたんだな……」

 

 

 

「だから、人間…お前の邪魔はしない」

 

 

 

…全く、良い母親で、とんだ親バカだったか。

 

 

 

「はいはい、任せておけよ…神さま」

 

 

 

次は少し疑問の解消だ。

 

 

神代の封印術、その存在を己諸共封印し、そして消滅させる。凄まじい手腕だが信仰不足だな、力が足りていない。

伏黒を攫った理由は、諏訪大社の主を封印できる状態までに消耗させられる摩虎羅を使う為……だが、コイツらはどうやって魔虚羅を知った?

 

 

時期も時期だ、穢れから分かる…暴走寸前だったんだろうあの祟り神が……自制を失いかける丁度の時に、伏黒が任務………として…。

 

 

「……」

 

 

任務……。遠方任務には数週間前に窓から通告が来るんだがな。

 

 

それなのに、ピッタリに…。

 

 

 

「……」

 

 

「いいや、もうめんどくさい事は全部羂索のせいにしとこ」

 

 

「まずは……」

 

 

 

妹紅を無視して殺し合っている2人。

 

 

諏訪子は土、水、植物に岩石、マグマなどを創造操作し、己が生み出せる全ての自然現象を摩虎羅に対して仕向けている。

 

 

宙に浮かぶ諏訪子に対して肉薄しようと、魔虚羅が地面を踏み込もうとすると、その足場である大地が牙を向く。

 

 

踏み出す足場が底なし沼に変化した後に、形状を変え岩石へと。

固定され尚も無理矢理馬力で足を引き抜こうとする魔虚羅の身体に植物が巻き付き、その身体を植物から伸びた鉄の茨が貫く。

 

 

更には大海を彷彿とさせる水量が降り注いで、その水圧と勢い、質量爆弾として摩虚羅を地上へと縫い付け……。

 

 

頭上には諏訪子の手から生み出されたマグマが落下し、魔虚羅の周囲全ての物がその命を刈り取りにきていた。

 

 

 

ーーそして、その全てに対して適応を進める魔虚羅。

 

 

 

足が引き抜けぬなら、より高い馬力を。身体を貫かれるのなら、より硬い表皮を。大海の中に沈められるのなら、エラやそれに適した対処法を。生命の死滅する温度であるマグマならば、それに耐えうる肉体へと適応していく。

 

 

 

国産みの神の権能と真正面に張り合うその力は、流石と言った所か。

 

 

 

「……」

 

 

 

あの戦いに真正面からは殺され続けるだけだ。無理に突破しても祟り神……あぁいや、諏訪子様だったか、アイツまで諸共焼き殺してしまう。

 

 

特に私の炎だと存在すら残さず魂まで焼き尽くす、そうなればもう救えやしないからな。

 

 

……無限の手数を持つあの諏訪子と永遠に適応を続ける魔虚羅では千日手、相打ちになるというのにも納得出来てしまう。

 

 

傷の付け方も無数に種類を揃えてやがる、それも物理的なものに限らず呪いも穢れも、ありとあらゆる要素を打ち込み続けているせいか、あの魔虚羅の傷の再生が追いついていない。

 

 

「大怪獣バトルだな…さて」

 

 

「少しばかり、頭脳戦といくか」

 

 

魔虚羅に翼とか生える前にさっさとケリをつけとかなきゃな……いやあの見た目に翼はキモイか、普通に空を蹴って飛んでるから要らないだろうし。

 

 

「伏黒ぉー!羽生えた蟆出せるか〜!」

 

 

「あぁ!」

 

 

「何匹ーー!」

 

 

「3匹だ!何処へ出せばいい!!」

 

 

3匹、3匹ねぇ……よし、頑張ろ。

 

 

「まずは…ーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

摩虚羅にはある程度の知能と自我がある。

 

 

それ故に現在の戦況から読み取れる、自身の未来の敗北を悟った。

増え続け、一括での適応をさせない為に行われる多種多様な攻撃の内…退魔の剣を使用しなければ振り払えない穢れを身体へと侵入させてしまった。

 

 

他のリソースを割いて適応を進めてはいるが、祟り神の頂点である存在からの呪いに対する解答は1つ、正の呪力によって穢れを祓い続けるしかない。

 

 

明確で完全な対処法が無い、これでは方陣の適応が完了し切る前に押し切られる。

 

 

 

「繧ゅ縺代r繧医�縲�……」

 

 

対する自我を失った諏訪子も、察するのは未来の自身の敗北。

 

 

残った生存本能から、摩虚羅に対して長期戦をした時点での詰みを悟ったが、未だ殺しきれていない。次第に手札も尽きてくる…詰みが目の前へと迫っていた。

 

 

 

故に……両者狙うは一撃必殺、両者間の把握のすれ違いが引き起こす渾身を振り絞った一瞬での決着。

 

 

 

「「……」」

 

 

 

牽制として摩虚羅が適応の末選んだのは、退魔の剣から伸ばした正の呪力の刃による遠方攻撃。

 

振りかざされた腕と共にその刃が諏訪子ごと大地や背後にあった守谷神社の残骸、大きな池すら一刀に伏させ、両断する。

 

 

同時に摩虚羅の左脇腹から左腕にかけてが黒いオタマジャクシの様なものへと変化し、爆発したのは…諏訪子の祟り神の権能によるものだろう。

 

 

互いが最も隙を晒けだした瞬間……決着を付けようと……ーー

 

 

 

 

「邪魔するよ」

 

 

 

 

最後の衝突は、2人の最大の隙を伺っていた妹紅によって阻害された。

 

 

穢れと化した肉体を持つ諏訪子に背後から抱きつき、摩虚羅ですら侵食し命に指を掛ける特級の穢れへと腕を回し込む。

 

 

すぐさま穢れは妹紅を憑き殺さんとその魂へと魔の手を伸ばすが……。

 

 

 

「ゅ縺…」

 

 

 

「ぐぅ゛ぅ…さ……すがに…キツイなッ!引け!伏黒ォ!!」

 

 

 

「はいっ!!」

 

 

 

相手は魂の不死者、燃え上がる炎は抑えられるが、幾ら命の炎を取り込み穢そうとも火種無く燃え上がる永遠の業火。

 

その魂に触れてしまった事で、逆に形を持たない筈の諏訪子の身体が妹紅の認識に引き摺られて『掴める様に』なってしまう。

 

しかし炎を奪われた事により、飛ぶ事の出来なくなった妹紅は空中で掴まるだけの宙ぶらりん。

 

 

 

「少し…大人しくしとけ…!」

 

 

 

合図と共に妹紅の足に絡み付いていた蟆の舌が引き戻され、その勢いのまま守矢神社の森の方角へと投げ出された。

 

 

その隙を逃す摩虚羅では無いが、同時に背後からの攻撃を察知し、背中に直撃した衝撃によって真正面の2人から視線を逸らしてしまう。

 

 

それは知能あるが故に引き起こされた、摩虚羅唯一のミス。

 

 

 

「……!」

 

 

 

振り向きながら繰り出された音速の裏拳が空ぶった…空ぶった?

 

 

ならば、この背中に当たった攻撃の感触は?

 

 

 

「ゲコ」

 

 

 

それも、蟆の舌。

 

 

本来の摩虚羅であれば億が一にも命中しない、取るに足らない雑兵の攻撃。だが身を犯す穢れがその感知範囲と反応を遅らせ、狭め、破壊していたのだ。

 

 

だがそれだけでは何の意味も無い行為。森で起きた爆発へと足をすすめようとする。

 

 

 

「リザレクションッッ!!!」

 

 

 

『それだけ』では無かった。

 

 

蟆の舌、その先に巻き付けられていたままぶつかった『何か』は…。

 

 

 

「加減して悪かった、今度は何一つ残さず…」

 

 

 

「燃やし尽くしてやる」

 

 

 

 

妹紅の、腕だ。

 

 

 

 

「『フェニックス再誕』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆風と高熱が結界越しに身体に襲いかかってくるのを、3匹目の蟆を諏訪子の傍に飛ばしながら伏黒は呪力で防いでいた。

 

 

 

「無茶苦茶しやがる…!!!おい東風谷!大丈夫か!?」

 

 

 

「わ、私は大丈夫です!それよりも神奈子様が…!」

 

 

 

核爆発にも等しい熱量と衝撃を妹紅は1点に集中させてはいたが、それでも漏れ出す微かな火力だけでも周囲を焼くには十分だが…。

 

2人が消し炭になっていないのは、ひとえに神域を管理する神奈子の手腕。

 

 

 

「………」

 

 

 

目を瞑り、無表情のまま鼻血を垂れ流し続ける顔は早苗に見せてはいない。

 

 

 

「……っ…妹紅!」

 

 

 

「あぁ、仕上げだ」

 

 

 

いつの間にか背後に居た妹紅が伏黒の肩に手を置いて、その身を炭へと変える。

 

 

仕組みは単純、ちぎった妹紅の身体の1部を鵺と蟆の合成獣へ携帯させ、自爆後…リザレクションによってその場所へと転移するというもの。

 

魂が本体である彼女にとって、肉体は唯の形でしかないが……しかして肉体は魂が宿る器でもあるからだ。

 

 

 

「リザレクション」

 

 

再誕した先に映るのは、摩虚羅からのダメージが響きその形状を崩している諏訪子。

 

 

「よいしょ……ありがとな、ゲコゲコ達…」

 

 

 

「繧医�繧縺代…!!!」

 

 

 

「落ち着けよ、帰りを待ってる家族が居る……っと」

 

 

 

優しく、その黒い泥の中に沈んでいたカエル帽子へと手を触れた。

 

 

 

 

 

 

「娘が、泣いてるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー諏訪子様」

 

 

 

「ん……」

 

 

 

「…諏訪子様……起きて下さい」

 

 

 

「……早苗?…どうして…」

 

 

 

目が覚める、って事は有り得ないと思ってた。けど…何故か、目の前に泣いてる私の娘が居る。

 

膝枕されてるのね…。神奈子は?……あぁ、なんだ…手を握っててくれたのか…。

 

 

 

「……何が…どうやって……」

 

 

周りを見渡して、焼け野原になった守谷神社と…それを行ったであろう主犯を目にし、大体を察した。

 

 

「……ぁぁ…蓬莱人か…なるほどね…」

 

 

彼女の肌の下の血管、そこには自分の穢れであろう呪いが蝕んでいるのか、黒色の蚯蚓脹れの様に身体中を黒い血管が覆っている。

 

 

「そういう事だ、一旦引き取った…後数十分は保てる」

 

 

「辛いでしょ」

 

 

「大丈夫さ、死人だからな」

 

 

「…何のために?」

 

 

「任務、それ以外の何でもない、お前ら家族にとっては人生の重大な1幕かも知れないが、私と伏黒にとっちゃ事情も知らないし無関係の他人だからな」

 

 

「まぁ、呪術師の日常だな……私達が関わる事、立ち会う場面は大抵他人の『()()()()()』だ、伏黒も昨日(虎杖)今日(早苗)もこんな感じの事やっちゃったばかりだし」

 

 

「毎日毎日こんなことばかり起きる、その人にとって大切な事を事情も何も知らずにズカズカと解決して、帰るんだ…まっ特別でも無い日常だから気にするな」

 

 

「………お人好しだね…」

 

 

「それなら伏黒に言え……ほら、後は自分の娘と話せ」

 

 

ずっと涙を流して私を見つめていた早苗、私の早苗。

 

 

「早苗……私達の娘、私達の早苗…」

 

 

「……」

 

 

涙が落ちて、私の顔を濡らす。

 

 

「ごめんね、黙ってやっちゃって」

 

 

「…」

 

 

「…ごめんね、ごめん早苗……でも、まだ早苗には…神奈子がいる、だから…」

 

 

「無理です」

 

 

キッパリ、その一言は予測してたけど…。

 

 

「…うーん」

 

 

「嫌です!私は2人と一緒じゃないと生きていけません!!」

 

 

「私もな」

 

 

「神奈子まで…ダメだよも〜…」

 

 

振り払える力も残っちゃいないから、なんとか説き伏せなきゃな〜…。

 

 

「忘れちゃいましたか…?」

 

 

 

「私は…私は…!」

 

 

 

『特別な子、神の子、望み続けた風祝』

 

 

 

「私は……諏訪子様と神奈子様()家族ですから」

 

 

 

あの人に、1度でも良いから言って欲しかった言葉。でもそれを求める事は呪いだった。

 

 

それも、あの時からとっくに解けた呪いなんです。

 

 

 

『これからは〜!』

 

 

『早苗は〜!』

 

 

『『私達の家族でーす!』』

 

 

『宜しくね、早苗』

 

 

『宜しくな、早苗』

 

 

 

守谷神社、私の家。神奈子様と諏訪子様、私の2人のお母さん。

 

 

 

 

「でももうダメなんだ…無理だよ…そこの人間さんのおかげで…ほんの少しだけ時間が出来ただけなんだ……」

 

 

 

「別れは辛い、でも……避けられない…奇跡が起きてもね…」

 

 

 

「いいえ、諏訪子様」

 

 

 

「奇跡に出来ないことはありません!奇跡は、奇跡が起きても出来ない事を叶えるから『奇跡』なんです!」

 

 

 

「諦めな、諏訪子…早苗が意地張って、私達が勝てた時あったかい?」

 

 

 

「………」

 

 

 

「それも…そうね…」

 

 

 

涙を拭って神奈子に諏訪子を任せ立ち上がる。奇跡を起こす事は神の力を借りる事。

 

 

こんな顔で、泣きじゃくった顔で神様には顔向けできないから…!

 

 

 

「妹紅さん!伏黒さん!!」

 

 

 

「奇跡!見たいですかー!!」

 

 

 

「「……」」

 

 

 

「ふふっ…あぁ、見てみたいな」

 

 

 

「奇跡って術式なのか…?まぁ、見てはみたいが…」

 

 

 

「声が足りませーーんっ!!奇跡!見てみたいですかーー!!!」

 

 

 

胸を張って叫ぶ姿を見て、ついつい2人の声にも力が入る。

 

 

 

「「見たい」」

 

 

 

声に応じ、幣を握り締め、舞を踊り始める。声を大きく張り上げて、泣き出しそうな顔を堪えて笑顔へと。

 

 

それは呪術の舞や呪詞によく似て、でも別物で…。

 

 

全ては神に、感謝を告げる祝福なのだ。

 

 

 

「では!!現人神の力を見せましょう!奇跡を起こす神の力を!!」

 

 

 

「常識に囚われる事無かれ!私は東風谷早苗!最後の風祝にして、一族が追い求め続けた現人神の末裔!!」

 

 

 

「現人神であり!風祝であり!そして2人の娘の東風谷早苗が引き起こすは奇想天外の奇跡そのもの!」

 

 

 

「音にも聞け!刮目せよ!アルティメットモリヤパワーー!!」

 

 

 

(( 決めゼリフダサ…!? ))

 

 

 

早苗の身体から放たれた翡翠の極光が場を包む。

 

 

奇跡の力、単語を聞いただけでは全く理解出来ない力だが…それを1番最初に味わったのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…??」

 

 

「ん!???」

 

 

妹紅だ。

 

 

「おぇぇぇぇ!?!?!?」

 

 

「うわっ、ちょ…何やってんですか妹紅さん……何吐いてるんですか!?!?」

 

 

 

横を見てみれば、妹紅が口から大量の……黒い…蛇?の様なものを吐き出している。

 

 

だが、その吐き出したものは……どう見ても……。

 

 

「これは…人形か…?」

 

 

フェルト生地のもふもふとした可愛い黒い蛇の人形。

 

それが次々と動き出し、自立行動を始めていた。

 

 

「おろろろろ……」

 

 

 

「あぁもうほら!全部吐いて下さい!」

 

 

 

「おぼぼぼ……あり…おぇぇぇぇ…がと…」

 

 

 

身体の体積を無視したぬいぐるみが延々と口から出てくる、そしてぬいぐるみが動き出して集まる先には……。

 

 

 

「諏訪子様ぁぁぁ!??!」

 

 

 

 

「諏訪子ぉぉぉ!?」

 

 

 

「ケロ」

 

 

 

どこぞの可愛らしいマスコットキャラクターのようになってしまった諏訪子が、大量の黒い蛇のぬいぐるみに囲まれて…その頂点に座す。

 

 

 

「す、すわ…諏訪子様がお人形になっちゃいましたーー!?!?」

 

 

 

「何でお前が状況を把握してねぇんだよ!自分の術式の効果位把握しとけ!!」

 

 

 

「術式ってなんですか術式って!!そんなカッコイイ奴、私にはありませんよ!!!諏訪子様ー〜!返事して下さいーー!!!」

 

 

 

「ゲコゲコ」

 

 

 

「お人形さんに゛な゛っぢゃっだぁぁぁ!!!」

 

 

 

「…!なるほど…早苗が返事をしろと言ったからしたんだな?自意識はあるか?諏訪子」

 

 

 

「ケロ」

 

 

 

「……良かった…これは…削れきった魂に見合った身体になっているのか、こっちの黒い蛇は…分離した穢れか?」

 

 

 

「ケロケロ」

 

 

 

「…ふむ……祟り神からの信仰?」

 

 

 

「ケロ」

 

 

 

「なるほど、祟り神から神格が落ちてより純粋な畜生類としての信奉が集まり始めてる……」

 

 

 

「…通訳出来るんですか?神奈子様」

 

 

 

「いや、雰囲気」

 

 

 

「おろろろろろおぇぇぇぇ…」

 

 

 

「……」

 

 

 

いつも通り、ツッコミ役が伏黒1人になってしまい、2日連続…またこんな状況の〆を任されている伏黒も、流石に目尻に指を置くことしか出来なかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぇ……これ……いつまで吐かなきゃ…ダメなんだ…」

 

 

「ケロ」

 

 

「数百年蓄積していた穢れ分だとさ」

 

 

「さいあ…ーーオロロロ…」

 

 

あの後は、伏黒が取り敢えず皆を落ち着かせて、守谷神社の焼け跡に全員で円になって座っている。

 

 

諏訪子の状態を一言で言い表せば、『何とかなった』だ。

 

 

殆ど失われていた神霊としての魂は元に戻っていないが、それを収めるための身体としてマスコット化したらしく、妹紅が引き受けていた祟り神と穢れの集合も共鳴する様に全てマスコットキャラクター化したようで…。

 

 

信仰、崇拝、畏敬によって、今までは穢れの力として取り込んでいたものが、格が落ち過ぎたせいで野生動物、ひいては人から崇められるのと同じ様な形になったという。

 

 

 

「…術式の発動を挟まずに…奇跡として発動している…?…何なんだこれ」

 

 

「なんてったって現人神ですから!」

 

 

 

伏黒も伏黒で、先程起きた不思議な現象……早苗の術式かとも思っていた『奇跡』の力について、早苗の呪力の通り道を調べながら調査を進めていた。

 

軽い奇跡をポコじゃか起こして、その反応を調べていると…。

 

 

 

「……あれ…なんか、眠たく…」

 

 

「東風谷…?おわっ……」

 

 

「……」

 

 

唐突に伏黒の肩へと寄り添って眠りに落ちてしまう。

 

 

「おい、東風谷?…急に寝たなコイツ……」

 

 

「恐らく力の使いすぎだろう、休眠の様なものだ、そっとしておいてくれ」

 

 

「…あぁ、分かった」

 

 

脱兎を使い、即席のベットを作りそこへ早苗を寝かせた。

 

 

伏黒の頭の中は…もういいからさっさと帰って任務を終えたいの一言。

 

 

「……はぁ…疲れた…妹紅先生、後は窓の人に任せて帰りましょう…これ以上関わる必要は無いはずです」

 

 

「それもおrrrrrr……そうだな…でも……吐き終わるまで待って…」

 

 

「…分かりましたよ、全く」

 

 

昨日に引き続き、また長い1日の節目が終わる、と腰を落ち着かせて…自分も脱兎を撫でようと手元に増やし……。

 

 

 

「おぇっ……よっと」

 

 

 

意識を失ったのは同時だった。

 

 

 

「……!」

 

 

「はぁ……吐く時間長すぎだろ……乙女のゲロ吐きに需要無いって…」

 

 

「…お前……」

 

 

「ん?あぁすまん、大丈夫だ……さっき携帯に連絡が入ってな、私の友人もここに来るらしいから、見られちゃいけないんだ」

 

 

一瞬の出来事だったが、急激な仲間に対する攻撃に警戒を露わにする諏訪子と神奈子。

 

 

……また、諏訪子はその友人が誰なのかを勘づいてしまった。確かに気絶させる必要のある存在だとは分かる。

 

 

遠くを見つめ、鳴き声1つ。

 

 

 

「……ケロ」

 

 

 

「来た?誰がだ?」

 

 

 

「ゲコ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、妹紅」

 

 

 

 

「お疲れ様」

 

 

 






・東風谷早苗

風祝、という風を鎮めるために、風の神を祭る行事をつかさどる神職さん、風の祝子とも言われる。つまりは殆ど巫女さん。

特別な血筋…というよりは、諏訪子の末裔、先祖返りの様なもの。半神である為、神としての力は微弱で信仰も得ていないせいか神気は全然無い。

本来であれば、諏訪子をあの状態にする事は出来なかった……が…出来てしまった。それは何故か?


きっと、それは奇跡という他無い。

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