不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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楽しもう 1度きりを

 

 

「本当にご苦労さま、君にまで迷惑をかけるつもりは無かったんだけどね」

 

 

 

「伏黒の為に…おぇぇぇ…偶然来ただけだから気にするな、それよりほれ、解説しろ」

 

 

 

「もー…はいはい……えっとねぇ言っちゃえば唯の二次被害でしかないんだよ」

 

 

「軽く縛りも結ぼう…これからの説明には真実しか語らない、という縛りをね」

 

 

 

到着してそうそう薄ら笑いを浮かべながら語る夏油…の見た目をした羂索。やはり身体を手に入れていたかと前々から考察していた為、妹紅は特段驚く様子も無くその言葉の意味を模索する。

 

 

焼け野原になった守谷神社を囲み、4人の対談が始まった。

 

 

 

「まぁたお前がなんかしたんじゃ……おrr…これどうにかしてくんない?」

 

 

 

「あぁそれ、回収しとこうか……契約の事もあるし」

 

 

 

「…契約…お前さぁ…」

 

 

 

「違う違う、だから本当に二次被害だってば、私のせいじゃないもーん」

 

 

 

「…ゲコゲコ」

 

 

 

「貴様」

 

 

 

神奈子と諏訪子の2人が殺気立つ、二次被害?ならば諏訪子の暴走の原因を知ってて放置し、あの契約を結んだというのか?

ならばとんだペテン師だ、全てを解決してくれる『デウス・エクス・マキナ』を差し出したかと思えば、それはコイツが用意した舞台の上でのもの。

 

 

 

「嵌められたって認識でいいか、人間」

 

 

 

「勘弁して欲しいな、神さまの脳みそまで空っぽにしたつもりは無いんだけどー?それとも戦闘で鼓膜でも破れた?本当に二次被害さ」

 

 

 

「羂索、煽るな」

 

 

 

「ごめんごめん、縛りのせいで本心を話さないとダメだからね」

 

 

 

二次被害二次被害と、先程から詭弁を仕立てる羂索に対しイラつきを隠せない2人。一体何の二次被害で、何が要因であるのかを早く言え、と目線を送る。

 

それは妹紅も知りたい事で、態度で催促を行った。

 

 

 

「仕方ないね、妹紅の為にも少し話そう」

 

 

 

「洩矢諏訪子…古代の土着神の頂点、君の配下に何が起きたのか」

 

 

 

まず1つ、祟り神の力が強くなり過ぎた要因。

 

それは呪いのレベルの段階が上がった瞬間が2()()ある事が原因。

 

 

 

「呪いが廻ってるっていうのは……理解してるかい?妹紅」

 

 

 

「伊吹がよく言ってる奴だな、地球の自然のように循環を繰り返しているから…輪廻の様な仕組みとして呪いもある…合ってる?」

 

 

 

「大体ね、それでさ…八坂の神、戦の神である君も理解してただろうけど……」

 

 

 

()1()()()2()()()()()()によって、1度呪いの循環は破壊された」

 

 

 

それは至極当然の事だった。世界大戦、それは人類にとっての悪夢。

 

人と人が地獄を超えた世界を手を取り合って(殺し合って)作り上げる、病死、戦死、飢餓……自然の大量破壊、公害。

 

心臓を巡る血液が、心臓を介さずに血管で行き詰まる様なもの。そんな不具合は次第に全身へと影響し、循環を破壊する。

 

 

 

「人と人、血管である彼らが互いに負の感情を押し付け合う新たな循環の発生」

 

 

 

「…崩壊するだろ、それ」

 

 

 

「あぁ、だから高々人の負の感情が他人を殺し得る様になった…平安の呪霊と現代の呪霊はそもそもの枠組みすら違うんだよ」

 

 

 

古来、呪術全盛の平安で発生した呪霊は今の様な人の恐れから作られたものではあるがその純度が違う。

 

現代の呪霊は『人の負の感情』……蒙昧であり、人が人を呪い、そこから漏れだした事で形成されるもの。

 

平安の呪霊は畏敬、信仰、未知や神に対する純粋な…『存在を信じる』事で発生する恐怖そのものだ。

 

 

 

「……!」

 

 

 

「あれか、伊吹とかマミゾウ、お前ら2人が消えかかってる理由か」

 

 

 

「そう、今って盛れ出してる呪いですら不純すぎるんだよねぇ…それが1つ目の原因、要因になった事ね」

 

 

 

「……ふむ」

 

 

 

後もう1つは…五条悟の誕生だ。

 

 

 

「全てが起爆したのは五条悟の誕生、あぁ君たちは知らないかもだけど、ちょっとした化け物がこの世界に産まれたんだ…それで呪術全てのレベルが底上げされた」

 

 

「まぁ君ら神や妹紅にとっては預かり知らぬ話だよね、だって呪霊が強くなった所でその差が分からないだろ?」

 

 

象が踏み潰すアリの大きさが、それぞれ違っていたり、去年より一回り大きくなっていたりしても象は気付かない。

呪霊と3人の間にはそれ程の差がある、五条悟も呪霊が強くなった所で何も気にはしないだろう。

 

 

「それまで練り上げられていた下地が、彼の誕生によって発動したってだけ、呪いは澱み、祟り神に穢れとして力を与え続け…洩矢諏訪子の身体を蝕んだ、不幸な事故としか言いようがない」

 

 

 

「どうやってそれに気付いた」

 

 

 

「ケロ、ケロ…」

 

 

 

「私は研究者でもあるからさ?そこら辺の違和感に気付きやすいの…だから君達の事態にも気付いて、色々やってあげただけだよ?」

 

 

 

「…胡散臭いなぁ、本当お前夏油になっても………いや、元々胡散臭いが服着て歩いてる塩顔イケメン生臭坊主か」

 

 

 

「失礼だな…純情だよ」

 

 

 

「ならば此方は不義……って巫山戯てる場合じゃ無かったな、それなら羂索と結んだ契約ってなんだ?神奈子、諏訪子」

 

 

 

「……それは…」

 

 

 

「ゲコ、ゲコゲコ…ケロロ…」

 

 

 

羂索と結んだ契約について説明する2人。案の定、殺し切る為に伏黒の任務が羂索の手で操作された事が分かる。

 

そして穢れの回収、早苗の身元の担保と…聞くだけなら好条件に思えた。

 

 

 

「なるほど、それじゃこの人形要るか?」

 

 

「要る〜…というか、よくポコポコ吐きながら喋れるね」

 

 

「慣れた」

 

 

 

手渡された黒い蛇の人形を丸め、そのまま飲み込む羂索。

 

少女の吐いたものを愛おしそうに撫でて、そして成人男性が飲み込むというヤバすぎる絵面が完成しているがツッコミ役が不在の為にスルーされる。

 

ただ…これだけなら2人が憂う表情を崩さない理由にならない。

大切なのは……。

 

 

「早苗の身元の担保、ねぇ…」

 

 

「それも必要そうだしね、お2人の状態を見る限り」

 

 

「「……」」

 

 

聞く限り、聞く限りなら本当に合理的で裏が無い様に思える羂索の話。

乱入したのは妹紅であり、こんな状況になった要因に羂索は関わっていない。

 

神奈子と諏訪子は消耗が酷く、神域結界の維持すら行えない状況で、守谷神社という家まで失ってしまった。

 

結局は早苗のこれからは羂索にどうにかしてもらわないと今すぐの手段は無いし、迂闊にも『縛り』によって早苗の身元の安全を…肉体では無く『羂索』が担保する事になっている。

 

 

元より2人とも生き残る等とは思っていなかった故に、仕方ないのだが…この『縛り』。これでは早苗が2人から引き離されようと抵抗出来ないのだ。

 

 

 

「何なら2人の家も用意してあげようかい?花のお店とかさ、東風谷早苗を連れて経営でもどうかな?」

 

 

「…ケロ」

 

 

「なんでお前の親切心ってここまで信頼出来ないんだろうな」

 

 

「酷くない??」

 

 

 

『選択肢』が無い状況である事がどうにも引っかかってしまう2人。

提案を受け入れるしかない、こうするしかない状況で巧みに自己利益を追求するのは人間の技だ、それを散々見てきた。

 

 

 

「仕方ない、それじゃ更にもう1つ縛りを設けよう」

 

 

 

「『藤原妹紅を主とする契約に変える、変更には契約者同士の同意と藤原妹紅の同意が必要』その代わり私は契約に対する執行権を失う、普通の契約更新といこう」

 

 

 

「東風谷早苗の事、妹紅が管理してね」

 

 

 

「……それなら、いい」

 

 

 

「…ケロ」

 

 

 

この男に任せる位なら、とその縛りに対する同意を見せる2人。早苗はその存在故に呪霊や悪なる者を強く惹き付ける。

今までの通学と買い物程度の外出なら神域結界の残穢によって被害は無かったが、もうそういう訳にもいかない。

 

 

それが頭を悩ませる原因の一つでもあり、今すぐにでも早苗を安全な場所に寄越す必要がある事情だ。

 

 

それ故、呪術師の彼女に任せれるという提案なら、2人のギリギリ許可出来るラインだった。

 

 

ーーだが、妹紅は唖然とした表情を見せるしかない。

 

 

 

「…………」

 

 

「……まて???私が??」

 

 

「うん」

 

 

「……お前本当クソ嫌い馬鹿アホ」

 

 

「先生やってるんだから大丈夫大丈夫」

 

 

「頼む妹紅、コイツよりはお前が主である方がいい、早苗の事を頼みたいんだ…!力を失った私達が復活するまででいい!頼む…!!」

 

 

「ゲコゲコ」

 

 

死ぬほど信頼出来ない存在と、その友達ではあるが助けてくれた者なら選ばれるのは後者。

 

 

でも隠居すると言って虎杖から離れたばかりの妹紅の心情は…結構否定へと寄っていた。

 

 

「……」

 

 

 

「うぐぐ……」

 

 

 

「早苗を、守ってはくれないか…?」

 

 

 

「ぐっ…」

 

 

 

「…」

 

 

 

「分かっ…………た…」

 

 

 

「命位までなら……はぁ…なんとかな、守ってやるよ…全く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ住宅の手配はこの後に、帰ろうか妹紅」

 

 

守谷神社のボロボロの結界を手直ししながら、隠匿だけは済ませて2人に背を向けて帰ろうとする。そして伏黒を背負う妹紅に話しかける羂索、彼女の表情は大層憂鬱そうに見える。

 

 

背後からも2柱の神の視線がチクチクと刺さってくるし、ヤレヤレとため息をつくが……それはこっちも同じだとため息を被せてくる妹紅。

 

 

「はぁ…」

 

 

「そう面倒くさがらないでよ、自分で頭を突っ込んだ案件でしょ?」

 

 

「いや、あのさ…別にいいんだよ、引き取るのは」

 

 

「じゃあ何さ」

 

 

「お前だよ!!満場一致でお前のせいだけどな!!?」

 

 

()()()()()()()()()()()()から嫌なんだ、分かってるだろ」

 

 

「ははっ、分からないな〜」

 

 

「クソっ!…輝夜殺す輝夜殺す輝夜殺す……よし…落ち着いた」

 

 

「何その落ち着き方……」

 

 

確かに、確かに嘘はついてなかっただろうけどな……話した事が全てじゃないって事も分かるんだよ…。

 

 

「…今からお前が私にやって欲しい事、当ててやろうか?」

 

 

「言ってみなよ」

 

 

「……」

 

 

 

「東風谷早苗を呪術高専に入学させろ、だろ?」

 

 

 

「大正解」

 

 

 

……ほらな…はぁ…。

 

 

 

「世界大戦がどうのこうのって言ってたが、あれは現代の呪いの流れになった事象を説明しただけだ……羂索、お前何をした?」

 

 

 

「どうやって、祟り神が活性化する程の恐れを産んだんだ」

 

 

 

呪術のレベルが上がった2回のタイミング、その1回目は確かに世界大戦が要因かもしれない。

 

でもそれだけじゃないだろ?

 

それだけが原因だとも言ってない、パパっと進めたから全然気付かんかったけど、ハッキリ言ってもらわなきゃな。

 

 

 

「ま〜そうだね、私だって1人で全部企んでる訳じゃないさ、とある協力者がしてくれたってだけだ」

 

 

「時に妹紅、呪いとは一体何だと思う?」

 

 

「……難しいな、まぁ私にとっては人間、ひいては全ての未来の可動領域としか考えていない、代表として『呪術』を『使う』呪術師である人間とかな」

 

 

「…全く、相変わらず君には頭が上がらないよ…私も大体そうだと考えてるけどさ……なら彼女達は?」

 

 

「彼女達?」

 

 

「伊吹萃香、東風谷早苗、あ〜なんだっけか…二ッ岩マミゾウか…後神であるあの2人」

 

 

「そして、君もそうだ」

 

 

呪力の最適化を行って、全人類を術師にしたとしよう…でも君達の様にはなれない、呪術を、呪力を扱える様になるだけじゃダメなんだよ、結局は『そこ止まり』で終わってしまう。

 

 

呪術は人間の未来の雛形であると同時に、終着点まで辿り着けばそれ以上を望めない運命の袋小路なんだ。

 

 

「呪力を元としていても術式という必須の回路を使わない、呪力の核心に最も近い者たちは揃いも揃って呪術を使わず否定している」

 

 

「私が歩みを進めれば進めるほど、結論は遠のいていった」

 

 

「なら、呪いとは、呪力とは、呪術とは?私は何を呪術として定義すれば良かったのか?」

 

 

 

香織の身体の時とは違い、研究者、愉悦者として呪術に対する見解を述べる羂索の表情は、妹紅が見た事が無いほどに真剣味を帯びていた。

 

 

妹紅は彼の信念を知っている、その生き方を理解している、だからこそ…この明けない疑問にどれだけ苦悩しているかも分かってしまう。

こんな質問を聞くのもなんだとは思いながら、口を開いた。

 

 

「……答えは出たのか?」

 

 

探求者に対するその問いは……。

 

 

 

「いや、まださ…」

 

 

 

「そしてこれから暴く事でもある」

 

 

 

「……」

 

 

 

その内に秘めた狂気を露見させるのだ。

 

 

 

「妹紅」

 

 

「だからこそ君には退屈させないと言った筈だよ、1人にはさせないと」

 

 

「人間はもっと色々出来るって信じてるからさ!もっっとこれから楽しくなるよ…妹紅」

 

 

「……」

 

 

「…ふふっ…まぁ、そうだな」

 

 

普段は仏頂面の妹紅の顔に自然な笑顔を浮かばせられるのは、……もしかしたら、羂索の『楽しい』を求める表情に絆されてしまったのかもしれない。

 

 

 

「そうだ、1つだけネタばらしをしておこうか…何をしたか、だったね」

 

 

 

「うーん、まぁ本当に私がやった訳じゃなくて、協力者がやった事なんだけど…」

 

 

 

「お、お前に…私以外の協力者…ねぇ…w」

 

 

 

「本当に最近酷くないかい??」

 

 

 

「…あー…目標の事を話したら気に入られてね……随分と月嫌いだったんだよ」

 

 

 

「聞いてるかな?『月の敵対者』」

 

 

 

虚空に向かって話しかける羂索。その方向へと妹紅も視線を向けると…。

 

 

 

ーー空間が裂けた。

 

 

 

「……誰あれ」

 

 

 

その空間からは、白い長手袋をした手が伸びヒラヒラと手を振っている。

 

 

 

「協力者」

 

 

「……」

 

 

「胡散臭いでしょ」

 

 

「胡散臭いな」

 

 

「「……」」

 

 

 

その言葉を聞いたのか、手が空間の切れ目へと戻っていき……再びそこから何かが覗く事は無かった。

 

 

 

「……それじゃ、帰ったら妹紅も引退だとか隠居だとか辞めておくんだね」

 

 

 

「なんでさ」

 

 

 

「面白くない」

 

 

 

「……」

 

 

 

「舞台に上がって、暇つぶしじゃなくて…」

 

 

 

「楽しんで、踊ろうよ」

 

 

 

「どうせ…ーー」

 

 

 

「人生は1度きりなんだからさ、妹紅」

 

 

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