てっきりWiFiが壊れたかと思ってルーターの電源引っこ抜いて再起動しまくっちゃいました…データも消えたかと思って絶望してましたし…。
皆様…誤字脱字報告感謝です…。感想もありがとう!!作品、執筆のモチベとアイデアになっていて、助かっています!
真夜中のトンネルに、ただ遊びに行っただけだった。
夜中は交通量も少なく、どれだけのスピードをだしてもこの時間帯に警察は殆ど居ない。
それに、見つかったとしても全速力でバイクを走らせれば逃げ切れる。
仲間と遊びに行って、トンネルを出た後にガードレールへもたれかかってタバコ休憩を挟んでいた時。
ヒタヒタ…と、聞こえてくる足音。
姿は見えない、足音が響いている。
音はもう1つ、水滴音、何かが滴る音、鉄の匂い…。
トンネルの暗闇から覗くその目。
俺の目とその目が合った。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいッ…」
息を潜めて…トンネルの中の薄暗い蛍光灯が光っていた作業員用の横道に身を隠す。
扉は開かなかった。ここ以上に逃げれる場所も無い。
「なんッなんだよ!アレ!?」
仲間が全員やられた!ボロ布みてぇな服着てる浮浪者だって……笑ってたら、アイツが…襲いかかってきて…!!
て、手で首はねやがった、人間じゃねぇ!化け物んだった!!
そのまま、バイク捨てて逃げてきちまったけどよぉ……。
「死にたくねぇ…嫌だ…」
「なんでッ、なんでこんな目に遭わなくちゃいけねぇんだよっ…!!」
ビシャッ。
バチャバチャバチャッッ!!!
「っー〜!」
男の耳に飛び込んでくるのは、水が滴り落ちる音…等では無い。
水らしきものが、ビシャビシャと跳ねる音。
「フーーッ……ぅぅぅ……!!」
ビシャッ。
ビシャッ、ビシャッ……。
「ぅぅぅぅぅ゛ぅ……!!」
怖ぇぇ…!怖え!!死にたくねぇよ!!!
ぜ、全部アイツらの血なんだろうな…!俺は、アイツらから逃げて……生き残ったから…分かっちゃうのが!嫌だよ…!!
ピチョンッ。
ーー。
「……」
「……」
「…………居なく……なったか…?」
「……」
「……ぁ」
滴る音が無くなった。
それは、地面に血が落ちなくなったからで…。
俺の頭に、血が垂らされてるからだ。
「アナた いはん 」
「うわア゙ア゙ア゙アアア゛!!???」
バンッ!!!
「ぁあ……ぁああ……?」
天井から降ってきた化け物が吹き飛んで、壁に打ち付けられた。
「大丈夫ですか!!」
「ぁ…!」
硝煙の香りが漂って、そして声がする方へと涙でぐしゃぐしゃな顔を向けると、絶対会いたくなかった……警察が手を振ってこちらへ来ていた。
「け、警察…?あぁ…!ぅぅ…助かった……」
あれだけ会いたくは無かったのに……今では心の中でありがとうと叫び続けている。
拳銃を仕舞って、息を切らしてこちらへ向かってきてくれた。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、あぁ…!!アンタのおかげで」
「だいじ ょ う ぶですか?」
「ーーぁえ」
警察の身体が泥を捏ねたように変形し、先程の化け物と同じ見た目になる。
大きく口を開けて嘲笑いながら、その口を男の頭へと。
今1度、新鮮な恐怖と共に咀嚼を……ーー。
「オッサン」
「大丈夫か」
一刀両断。
目の前の化け物が縦に裂けて、今度こそ本当に助けの声が聞こえた。
断ち切られた化け物の間から見えるのは、何やら出刃包丁の様な大きな刃物を持っている少年。
最大限の警戒は向けているけれど、それ以前に既に心がボロボロで……その安堵を受け入れてしまう。
「……」
「お、お前は……本当に、人間……か?」
「おう!ちゃんと人間だよ、アンタ以外は誰か居るか?」
「みんな……み、皆んな死んだ…首……飛んでったんだ…」
「……」
「俺だけ助かっちまって……どうして、こんな事に…」
「どうして…」
男は蹲って涙を流し、死の恐怖に包まれていた影響か、そのまま横たわってしまった。
屠坐魔を持ち、その男の肩に手を添える。
「オッサン」
「立てるか」
「……ぅぅ……ぁ、ああ…立てる…」
「……」
「目を、覚ませれるか?」
「……?」
屠坐魔を床に置いて、拳を握りこんだまま…『呪力』をイメージする。
恐怖心、激情、自分自身が自覚できる『命』の流れ。
呪力を拳へと迸らせて、握りこんだ。
「……ぁぁ…」
男は自分の首へと手を置き、そして触って感触を確かめる。
そこには、あるべきものは無かった。
「……」
「そっか」
「俺も、死んでたのか」
ーー変形。
1度祓った筈の大きな体躯を持った浮浪者の呪霊へと姿を変えて、肩を掴む手を切り落とさんと長い爪を振り回す。
だが…。
「祓うぞ」
腕の薄皮を切るだけに留まり、そんな事を予想だにしていなかった呪霊の動きがフリーズした瞬間、虎杖悠仁の拳が叩き込まれた。
「グビ みん な しんで…」
顔面を陥没させ、フラフラと虎杖の目の前へと倒れ込み…。
「……」
握りこまれた拳をその頭へと振り落とし、完全に祓いきった。
■■県■市のトンネル、そこに取り憑いた特殊型呪霊はハッキリとした形を持たない。『その場所で死んだ』全ての怨念が塊集まって発生した群体でありながら一個体の呪霊である。
今尚それを自覚しない呪霊同士の殺し合い、このままではこの場所に呪力が澱み過ぎるとして依頼された、虎杖悠仁初の単独任務。
4級呪霊の群れ、57体。
「ふぅ……」
完全祓除、完了。
「お疲れ様、悠仁」
「お!もこね…もこう先生もお疲れサマンサ!」
「はは、それ五条のか…お疲れサマンサ〜」
現代日本では年間約1万人の行方不明、怪死者が発生している。
その殆どは人間の負の感情から発生した呪霊によるもの。
そして、その呪霊を祓うのが……呪術師だ。
「呪力操作、問題なさそうだったな…1日で良くやった、悠仁」
「うん、何となく分かったし、大分上手く使えてる」
「早苗と神2人も特に問題無し…大丈夫って言ってたし、これからは屠坐魔も要らないかもしれんなぁ…」
「え〜?漸く加減が分かったってのに……あ、そういえば今から高専戻んの?」
「そうだな、伏黒と釘崎呼んで鍋パでもするか」
「鍋パ!?よっしゃー!!五条先生も呼んでもいい?」
「好きにしていい、ほら…帰るぞ、悠仁」
そして、その呪術師を育成する機関も存在する。
ーー呪術高専。
その死亡率が故に四年制は廃止されており、先生である役職の人間もどんどんと亡くなっていく為……現在東京高で講師を務めている人数は4名。
生徒は全員で7名。学校というには余りにも不出来な数だ。
だがそんな学校にも、つい最近…新しく2名程、人数が増えたらしい。
1人は講師である藤原妹紅。もう1人は……。
■
「奇跡の高校生!!圧倒的女子パワーを備えて入学してきました!」
「風祝の東風谷早苗です!よろしくお願い致します!」
「「「……」」」
((( なんでセーラー服…? )))
虎杖悠仁入学から数日目で、新しく入学してきた少女が身に纏うのは、改造制服というには余りにも原型を失った服装だった。
「昨日振りですね!虎杖さん!お久しぶりです、伏黒さん!」
「お、おう……」
「ねぇ!虎杖…!あの子って…その、『何』なの!?」
「分かんねぇよ!妹紅先生の友達って位!」
ヒソヒソ声で話す2人を差し置いて、伏黒がズバリ。
「…東風谷……お前…その服、何なんだ?」
(( 直に聞いたーー!?!? ))
「あ、これですか?今流行りのセーラー服って奴です、あの機関銃ぶっぱなす…」
「古臭すぎだろ、今の流行りですらねぇよ……」
「え!?でも女子高生は普通セーラー服じゃありません?」
「お前の普通は何処で教育されて…!」
「ーーはい、そこまで」
教卓に手をついて、名簿で軽く早苗の頭をポンと叩き場を落ち着かせる妹紅。
それに従って3人とも席に座り、早苗も教卓の横で気をつけをし直した。
「これから早苗には呪術高専で楽しいスクールライフを送りながら呪術の勉強をしてもらう事になる、基本は3人と一緒だが…任務には着いていかない」
その発言に対し釘崎から一瞬抗議の声が出てくるが、それも落ち着かせて説明を始めた妹紅。
早苗を入学させるにあたって、上層部はある条件を付けた。
それは……。
「「特殊2級術師!?」」
「東風谷…お前最初っから2級かよ…!?」
その存在の希少性を加味して、藤原妹紅同任の時のみ1級術師としての立場を与えるという判断になった。
2柱の神の事は伝わっていないが、東風谷早苗が最後の現人神であり特別な風祝、そして伝承に纏わる絶えたと思われた東風谷の家系だという事を把握した上層部は当初、禪院家を絡めた推薦2級術師……。
端的に言えば、その『血筋』を絶やさすものかと禪院家の人間に娶らせようと試行錯誤していたが、禪院直毘人からの提言、藤原妹紅に赤ん坊の頃から面倒を見られてきたメンバーの数人、そして加茂家からの否決。
加えて五条悟の圧力や冥冥による干渉も相まって最終的には御破算となり、この結果へと落ち着いたのであった。
「それに、早苗はちょっと…色々問題がある」
「お前らの任務に着いて行ったら、本当に酷いことになるだろうから任務には基本同行できないと考えてくれ」
「酷いことって何よ…いや、既に酷いことになりそうな雰囲気ではあるけど…!」
「……バーサーカーになって呪霊全員ぶち殺してお前らの任務奪った挙句に帳も張らずに暴れ散らかすって言ったら?」
「……」
そんな訳で、3つしか無かった椅子と机が4つに増え、少しだけ教室の空きが埋まった所で……。
高専での授業が始まった。
■
「まぁ一応初日だからな、軽くやろう」
私が教鞭を取る際に、行われるのは8対2の割合で体育と座学だ。
朝の1時間で予習を済ませた後にそれを実技を通して理解する、これを五条と夏油にもやってたな。
家入は…実技苦手だったから割合は9対1で、実技も反転関連。
別に座学が出来ないわけじゃない、これでも資格取りを趣味にしてるから家入の先輩医師なんだぞ?
「軽く……って…いい、ました…よね…!!」
「きッッッつ…!!!」
「動けねぇーー!!」
朝の詳しい呪術の話はなんだったのかという程に、ひたすら物理でボコボコにされた3人。
グラウンドに横たわって土埃塗れになって、息を切らしていた。
「うーん、まぁ、軽くだな」
結局呪術なんてな、物理で殴るのがいっちばん手っ取り早い。術式とかの考察や理解度を高めるなんてのは肉体の基礎値を高めてからだ。
そのせいで五条には一生しょうもないだとか華がないだとか、ゴリ押し腹パンゴリラだったりとか……こっちはちゃんと結界術で術式中和しながら殴ってるっていうのになぁ…。
「大変ですね…皆さん」
「なんで早苗はヤラれてないのよ!?差別!不平等!不公平ー!」
「可愛い女子高生が人を殴れる訳無いじゃないですか、ね?妹紅さん」
「……???…ま、まぁそうかも」
「納得すんなよもこせん!なら紅一点の私にも手加減しろっての!」
そんな…いやでもグラウンド10周してタイヤ引きしてから、呪力を乱さず私と組手……五条と夏油はやれてたから、出来ちゃうものかと思ってたけど、少しキツいか。
「安心しろ、疲れも怪我も治せるから永遠に鍛えられるぞ」
「その教育法ぜってー間違えてるから!もこねぇ時々おかしくなるのなんでなんだよ!!」
「む……まぁ精神の疲弊は治せんからな…」
「そういう問題でも……無いと…思いますけど…!!」
「取り敢えず治しておいてやる、次はさっきの動きの反省点の座学を10分で振り返って1時間実践だからな」
死んだような目で治され、立ち上がる3人。だがこの教育法……元い過酷な訓練があってこそ、今の呪術界での殉職率は6、7割減したとも言える。
それ故の英雄、それ故の今の立ち位置がある。
呪力強化を使って、身体能力を上げて果敢に攻め込む3人。それを見ていた早苗も、先程は『可愛い女子高生が〜』と言っていたものの、今目の前で繰り広げられる非現実にワクワクを隠せないようだ。
「妹紅先生!私は?私はどんな事をするんですか!」
「…現金なヤツだなぁ、安心しろ、ちゃんと早苗の事も考えてある」
再び3人を地面へ這いつくばらせて、早苗が座るベンチに腰かけようとする妹紅。
その背後に迫った拳も、簡単に避けられて地面へと投げ捨てられた。
「隙あり!っうぉわぁ!!?」
「隙なしだ、えっとだなぁ…早苗は…うーん、早苗って本気出したことあるか?本気で拳を握ったり、全力で…風祝としての仕事以外で、物理的に気張った事って」
「あ〜…全然無いですね、お仕事もしがない花屋ですし、呪霊はコチヤパンチの守矢パワーでぶっ飛ばしてますし」
「それな、結構危ないんだよ……普通に戦う上でもそうだが、命が掛かった場面で全力の出し方を学んでおかないと、致命傷になりかねない」
「だからな、早苗」
「本気のパンチ、打ってみるか?」
■
「離れておいてくださいねー!」
グラウンドの中心に早苗と妹紅が立ち、その他3人は離れた場所でその人を見守っている。
休憩を取った後、本気の組み手を2人ですることになり、組み手といっても、早苗が攻撃するだけだが……危険だからと言って離れさせられた。
「……認定1級の実力、どんなもんなのか見せてもらうぞ」
「伏黒は早苗の強さ見た事あんの?」
「強さ…ーーというよりは、術式の方がヤバい奴だった、術式と言っていいか分からねぇがな」
「どんなもん?」
「五条先生レベルだ」
「…ーーマジで?」
だが見たのは、あいつの術式だけ。妹紅先生と組み手を取れるはずの実力はねぇはずだが…。
「行きますよー!妹紅先生!」
「あぁ、こい…何も考えず、全力でな」
「ハッハッハ!元々何も考えてないですからね!よし…必殺!!」
東風谷早苗は現人神である。
それは、2柱の神の信仰を高める為に行っていた慈善活動や教信によって、早苗自体に信仰……人の信じる心、真摯な善意と信仰を向けられるようになったからだ。
本来神の力を風祝として借りていた筈が、いつしか2柱の神の権能と溶け合い、生きながらにして神となったが故である。
そして、人の負の感情が呪霊化するのと同じように、人の正なる感情の集合が彼女に力を与え、その出力を底上げする。
大気を震え上がらせて尚も膨れ上がる呪力、東風谷早苗には更にもうひとつ、特性があった。
それは『自己肯定』。彼女が己を信じ、肯定すればする程……。
「商売繁盛パンチッ!!!」
呪力量と出力は、際限なく上がっていく。
笑顔のまま、不格好に振り抜かれた右ストレート、その拳の先には…乙骨憂太の手法と同じ、呪力が形を成して威力を発揮する、単純な呪力の放出が……空間を歪ませていく。
「ほぉ」
「ッ!!ヤバいっ、妹紅先生!!」
伏黒が手を伸ばしたのもつかの間。
マッハに迫る速度で振りかざされた拳を止める術は無い。せめて悲惨な光景から目を背けようと一瞬目を細める。
「よし、ちゃんと頑張ったな、早苗」
「おぉ…?おぉおぉ!!」
ーー早苗の腕が、妹紅の手に掴まれていた。
しかし掴まっていたのは妹紅の手では無く…炎の、まるで鷹の様な形を象った炎の爪だ。
「めっっちゃくちゃかっこいいですね!?うぉー……すっっごく私の厨二心をくすぐる見た目をしてます!」
「はは、かっこいいだろ?褒められ慣れてる位には評判良いからな」
「なんですかそれ?妹紅先生の……えっと、術式?ですか?」
「あ〜…まぁ、気にするな」
「気になりますって〜!私もそれやりたいです!四肢全部変化させて、究極非想天則守矢パワードスーツやってみたいなぁ…」
今の凄まじい光景を見て、3人がそれぞれ思う事は1つ。2人は隣の伏黒を見て、伏黒は己自身の能力を鑑みて。
あれが…。
「「「2級な訳…無いだろ…」」」