不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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【不死】という呪い

 

真夏の空の元、大勢の人が交差するスクランブル交差点で奇妙にも僧の格好をした人物が、独り言をブツブツと話しながら歩いている。

 

 

そのままファミレス店へと入っていき、数分後にはその店内では絶叫が響き渡った。

 

 

奇妙にして珍妙、人体発火現象によりファミレス内の殆どの人間が焼却されてしまう。その絶叫と慟哭は外にまで響き渡った事で外から見る者も異常事態である事が一瞬で理解出来る……のに、その中へと足を運ぶ少女が居た。

 

 

「なぁ…これは、どういう事だ?」

 

 

「あぁごめん妹紅、漏瑚が興奮し過ぎた、日程を変えよう」

 

 

「…高級店な、美味しいところ」

 

 

「ええ〜?どうせ私の奢りだろう?君の方が金持ちなんだからうどん屋でも…」

 

 

「お仲間祓うぞ」

 

 

「ごめん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数週間後〜

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜…美味しー!」

 

 

「とほほ…」

 

 

スーツ姿の妹紅が、深い森のラウンジで高級牛肉を平らげている。

 

 

片手にビール、片手に焼肉の最強無双セットを整えて…僧の姿をした羂索と談笑を嗜んでいた。

 

 

「ねぇ、私にもお酒分けてくれないかい?」

 

 

「駄目、日程何日ズレてんだ…お前のせいで死ぬほど暇だったんだぞ?待たされた分の罰だ」

 

 

「クゥーン…」

 

 

「その見た目でそれ辞めろ、もうお前に人妻フィルターは無い」

 

 

メソメソと子犬の様になっている羂索をつまみに飲む酒は…死ぬほど不味い、さっさと肉食べよ。

 

 

「食った食ったご馳走様だ…それにしても…お前の別荘も良い所だな、森林の中のコテージだなんて…私も欲しいくらいだな…どっか買収するか」

 

 

「今度BBQでもする?」

 

 

「良いなそれ、もう仕事も退職したからお前が私を養ってくれ……身の回りの世話も頼む……疲れるの嫌だし」

 

 

「仕方ないなぁ……まっ、私の息子と仲良くしてくれたからね、それ位なら面倒見てあげるさ」

 

 

「助かる」

 

 

 

 

実の所、羂索は幼い時から妹紅に一目惚れをしていた。

 

 

何故呪術の可能性を、呪力の最適化を目指そうとしているのか……それは勿論本目的としてその『未来』を見たい、面白い見た事の無いものが見たいというのが根幹にある。

 

 

だが、何故それが根幹にあるのか。

 

 

ーーそれは、『日常の可能性』を藤原妹紅に見せつけられたからだ。

 

 

彼の網膜には未だにあの夜の光景が焼き付いている。

 

 

満天の星空を滑空し、今にも空に触れてしまえそうな距離で、ちっぽけになってしまった平安の世界を見下ろす。

 

妹紅の背に乗り、彼女の炎に心を射止められ、そして恋をした。

 

 

何よりも美しい炎の翼、誰にも傷つけられない至高の美貌、呪術、呪力の核心に最も近づいている『死に生き歩く者』。

 

 

彼の瞳からは、彼女の炎が漏れ出る顔が離れる事は無かった。

 

 

 

 

「よし、それじゃ紹介しておこうか…私の友人の藤原妹紅だ」

 

 

「あ〜ども、呪霊の皆さん…コイツの腐れ縁、兼計画の賛同者、死ぬほど…死んでも暇人の人間、それだけなんで…私は寝るよ」

 

 

「……むぅ…」

 

 

「…はは!」

 

 

「うこもらわじふ……すましいがねおくしろよ…(藤原妹紅…宜しくお願いします)」

 

 

 

「基本私はハンモックでぐーすかしてるから、何か言いたい事があったら起こせ」

 

 

「はいはい、ジュースもいれておくね」

 

 

「お前は女房か……いや元女房だった…随分とイケメンになったな」

 

 

「……ナデナデ」

 

 

「オゲホッッォッ!?!?!? その見た目ぇ…w…で…それ…マジで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

腹を抱えながら部屋に戻っていく妹紅に、漏瑚達が伝え聞いた『伝説』とのかけ離れた姿に少し戸惑いを見せる。

ここに集った者達は、殆どが呪霊。

 

 

 

特級呪霊 人が大地を畏怖する感情から生まれた呪霊 漏瑚

 

 

特級呪霊 人が人を恐れ憎む負の感情の集合 真人

 

 

特級呪霊 人が森を畏怖する感情から生まれた精霊である花御

 

 

特級呪霊 だが未だ幼体 人が海を畏怖する感情から生まれた呪霊 陀艮

 

 

どれもこれも未登録の、知能を持った特級呪霊だ。真人に至ってはその憎悪と悪意が見るだけで分かるほどドス黒い感情を持っている。

 

 

「ねぇねぇ漏瑚、アイツの事?」

 

 

「…あぁ、夏油から伝え聞いた話だとな」

 

 

真人の軽快な声に対して怪訝な声を返すしかない、あの者には覇気も異質な何かも無い、ただの人間にしか見えないのだ。

 

 

現在、皆で別荘の温泉に浸かっている。と言っても裸で温泉に入って漂っているのは真人だけで、他2人は足湯、陀艮に関しては水場で遊んでいた。

 

 

「(あの方が…神話を生き抜いたとされる【幻想の不死鳥】ですか)」

 

 

「ぶぅ…ぶぅ!」

 

 

「う〜ん…宿儺がどんなもんか、身をもって味わったんだけどさ?アイツが宿儺と戦って、殺されず、ここまで生きてる様には見えないんだけど…?」

 

 

「…分からぬ、ワシも夏油に聞くまでは名も知らぬ存在だった……余りにもその存在が語られていないのだ、載っていたのはほんの一つの絵巻物…」

 

 

嗄れ、叫びを上げる木のパイプタバコを吹かせながら、懐から小さな絵巻物を取り出す。

 

 

「これだ」

 

 

「……ふーん」

 

 

大きく赤い羽根を広げた鳳凰の絵。それが神々しい光輪を背中に全ての邪なるものを焼き払っている場面の絵巻物。

 

 

「炎、ねぇ…」

 

 

「真人、お前が見ても分からんか」

 

 

「……少しだけ、見えたよ…でも、あれは…凄まじい呪いだった」

 

 

「…呪い?」

 

 

「アイツの魂には、呪いなんて呼ぶのにも足りない位…おぞましい『何か』が燃えてた、見ただけで焼き殺されそうになる何かがね」

 

 

「夏油の嘘かと思ってたし、さっきこの目で見ても信じられない位に平凡な奴だけど……俺がおぞましい、なんて言ってる意味、分かる?」

 

 

「……それほどの存在か、藤原妹紅」

 

 

真人と漏瑚は既に、宿儺と五条悟との会遇を済ませていた。

 

 

そしてその2人よりも更に両者への理解が深い夏油の語る言葉は…。

 

 

『これから来る協力者は、君達にも、私にも協力はしない』

 

 

『傍観するだけだ、勿論降りかかる火の粉は払い除けるだろうけれどね』

 

 

『…そして、もし君達が如何なる状況、敵と遭遇し……敗北して、それでも助かりたいと思うのなら』

 

 

『彼女の名を呼べ、誰が相手でも命だけは助けてくれるよ、きっとね』

 

 

 

 

「……その言の葉を告げれるか、夏油」

 

 

 

 

「あ、お前ら…風呂加減どうだ?もうちょい熱くしてくか?」

 

 

「ん?」

 

 

「えーっと、覚えてる覚えてる…火山頭は、じょうご…?だったか」

 

 

「ーー…」

 

 

「…おーい?大丈夫か?のぼせたのか?あ、えと…そっちがはなみ、そこの可愛い奴がだごんか、よろしくな」

 

 

「(先程振りですね、藤原妹紅)」

 

 

「さっきは丁寧に挨拶どうも、不思議な感じに話す奴なんだな」

 

 

「(ええ、少し聞こえにくいかもしれませんが…)」

 

 

「大丈夫だ、殆どの呪霊よりはアンタらの方が数兆倍マシだよ…あぁそれと、私からはアンタらの弱点である正の呪力が垂れ流されてるからあんまり近寄るなよ?消えても責任取れないし」

 

 

「(それこそ大丈夫ですよ、貴方の呪力は温かく、優しい…決して私達に害を成すものでも無いと理解出来ますし、その温かさはきっと私達を傷つけずに居てくれるでしょう)」

 

 

「……そんなもんなのか、アンタ呪霊というよりは妖精に近いか?随分と澱みが少ない、そこの泳いでる奴と比べてな」

 

 

「は、なになに〜?もしかして俺の事言ってる?」

 

 

「そうだよまっくろくろすけ、澱み過ぎてなんも見えん、声から青年だってのは分かるが……まぁ、置いといてだ、湯加減を確かめに来た」

 

 

そう言うと、いつの間に着替えたのであろうか、赤と白のリボンを長い髪に付けて、紅白のもんぺ服らしきオーバーオールの装いを軽くはだけさせた後足湯に浸かり始めた。

 

 

「…丁度いいな……はぁ゛ぁぁ……最高の休日だよ…ずっと暇な時間は仕事に……ぁぁ゛……費やしてきたから、それの反動で…暇な時間が楽しくなるってのは…新しい発見だったな…」

 

 

「き…」

 

 

「ん?どうした火山、顔真っ赤にして」

 

 

「貴様ァァァーー!!?のんびりし過ぎにも大概にしろッ!!ワシが真剣に考えていた事が全てアホらしくなるでは無いか!!」

 

 

「ええぇ…どう考えても私のせいじゃ無いだろ…てか温泉熱くなるから抑えて抑えて…」

 

 

「ぐッ…!!このぉ!貴様の中で温泉の方が優先度が高いのか!?!?」

 

 

「当たり前だ、私が最優先するのは性欲、食欲、生存と睡眠欲よりも衛生と風呂なんだから」

 

 

「グギギギガガガッ……」

 

 

「じょうご〜…そんなカッカしないでー?ほら、妹紅も呆れてるよ?」

 

 

「真人ォォ!!お前の方がなんなら警戒してだろうが!?」

 

 

「ん〜…だってほら、お姉さんはどっち寄りでも無いからさ」

 

 

真人の視線が漏瑚に伝えてくる、藤原妹紅、その精神の本質は呪霊も人間も逸脱した超越者であると。

 

真人がふよふよと背泳ぎをしながら漂っていき、妹紅の足にコツンと頭が当たる。

 

それから手を伸ばし妹紅に自分の手を握る様に催促した。

 

それをジロジロと見ているのは漏瑚だけでなく、木陰からこっそり現れていた夏油(羂索)も足湯をしながらそれを見ていたのだけれど…。

 

 

「握ればいいのか?」

 

 

「うん、俺の術式…夏油から聞いてる?」

 

 

「あ〜…魂か…なるほど…アンタ、『視えて』んのか」

 

 

「なら忠告しておく、好奇心は猫をも殺すぞ」

 

 

「あっ…そッ!!」

 

 

 

 

呪力が起る。

 

 

 

無為転変、人の呪霊である真人が手に入れたこの世界の裏側に触れる事が出来る術式。

 

 

モヤがかかった様に見えなかった妹紅の魂を、直に触れようと…ーー。

 

 

 

「…ーーオェぇええええッッ!!!?!!?」

 

 

「うわ、きちゃない……温泉汚すなよも〜…夏油〜!」

 

 

「はいはい、全く君の小間使いじゃないんだけど…」

 

 

稚魚の様な呪霊が、真人の吐瀉物を綺麗さっぱり温泉から消していく。

 

 

「ぉえ……ぁ…ぁう…ぉ゛ぁ…」

 

 

暴れ回る事無く、赤子のように体勢を丸めて指を硬直させ、震える事しか出来ていない真人を急いで漏瑚が温泉からすくい上げた。

 

 

「き…っ…貴様ァッ……!」

 

 

「なんで私に怒ってんだ……見たのはソイツだって」

 

 

「真人、真人ッ!!起きろ!何を見た!」

 

 

「ぁが……ぐっ…」

 

 

「暫く横にしかなれないと思うぞ、直視したからな……安静に温泉の中に突っ込んどけ、全く…だから言ったのに…」

 

 

「……」

 

 

(とんでもない事態である事は理解できる。ワシには魂を理解は出来ぬが、呪いである真人が……『呪い』に怯えているという事が、伝わってくる)

 

 

(呪いが怯え、ここまで憔悴する『呪いらしき何か』……藤原妹紅、貴様は本当に一体何を宿しているのだ…!!)

 

 

 

「あ、先に伝えとくと一応呪術高専の教師やってるから、作戦の間に私を見かけたら見て見ぬふりをしておいてくれ」

 

 

 

 

「……は??」

 

 

 

 

ポロッと零された衝撃の言葉に漏瑚は…

 

 

もうパイプを手から零すしか無くなってしまった……。

 

 

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