不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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楽園の天秤

 

 

 

「報告にあったのは1体のみ、それはその子の筈だった」

 

 

 

「見れば分かる、空の呪骸らしき何かを依代にして現界してるんだろ」

 

 

 

視界に写ってくる異質な魂、私が見ればこの世界に紛れ込んできた向こう側の住人かどうかは一瞬で分かる。人外の特徴を消せても魂は隠し通せないからな。

 

 

だからこそ、お前の魂に目が惹かれた。

 

 

 

「……だが…お前は…」

 

 

 

窓が報告しなかったのも分かるな。

 

 

 

 

「純粋な、人間だな?」

 

 

 

人間だ、普通の人間。

 

 

だけど…別格。

 

 

その暴力的なまでの生命の輝き、運命に愛された魂を感じ取らされた。

 

 

 

 

「定義としてはね」

 

 

 

「私が保証してやるよ」

 

 

 

「あら、タダで保証してくれるなんて景気良いじゃない」

 

 

 

人間として、生身で人を逸脱した力を持っているのが分かる。存在感の薄さとは裏腹に私の魂が最大級の警鐘を鳴らし続けてる、確かに人だ、だが人と実直に言える程人らしくもない。

 

 

 

まだ羂索の方が人間味があるぞ?

 

 

 

「……まっ、その代わり、お前が知ってる事を教えて貰おうか」

 

 

 

ヤバい相手なのは理解してるけど、それでもだ…コイツが月の事を、輝夜の事を知っているというのなら…力づくで交渉(お話)してやるよ。

 

 

 

「…やっぱりタダ程高い物は無いのね……あうん、少し待てる?」

 

 

 

「霊夢さん…お姉さんと喧嘩しちゃうんですか…?」

 

 

 

「大丈夫よ、追い返すだけだから……アンタがその殺意をあうんに向けたら許さないけど」

 

 

 

人の目が私を見つめてきた。

 

 

 

人間がこれ程冷たい瞳を出来るのか。

 

 

 

「はは、そんな事しないさ」

 

 

 

「どうかしら?貴方を想う娘を殺しておいて、よく言える」

 

 

 

「…想う?」

 

 

 

「……ふむ」

 

 

 

 

「……まぁ、いい…」

 

 

 

 

 

ーー温度が上がっていく。石畳が融解し、肌を焼く熱風が翼から放たれていた。

 

 

 

「私が殺すのは、アイツだけだ…それ以外には何も無いさ」

 

 

 

「そうやって命を数にすら換算していない貴方に、今一度…天誅を下してあげる」

 

 

 

熱により妹紅の肉体が燃え炭になっていき、次第に姿を失っていく。だが炎は収まらない、より強く、より熱く、その輝きを増していた。

 

赤色の炎の中心が青く光ると…一瞬で炎に青が行き渡り、その全てが再び塗り替えられ、白光に色を変えていく。

既に周辺の木々の葉は燃え落ち、あうんの命に届こうとしていた熱もあった。あうんの身を守る為に展開された紅い結界が熱を遮断する。

 

 

そうして、結界によって防がれた熱は、弾かれ……花火の様に火花を宙に舞わせると…ーー。

 

 

 

ーーー不死鳥の再誕を彩る花となる。

 

 

 

地を離れ、天に登り、宇宙(ソラ)へと向かっていく。

まだ、熱の加速は止まらない。

 

 

 

 

「結界内に居るのよ、あうん」

 

 

 

「はい!無事に帰ってきて下さーー」

 

 

 

ーーぐぅ〜。

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

「あ、あはは…ぇっと……その…」

 

 

 

間抜けな軽い音が2人の間に響く。

 

 

 

「お腹、空いたわね」

 

 

 

「帰ったらお鍋にしましょう!お酒用意しておきますね!」

 

 

 

「ありがと、それじゃ行ってきます」

 

 

 

ふわりと空へ飛ぶ。

 

 

 

彼方の空に光る死の炎に向かって、飛んで飛んで……。

 

 

 

浮いていく。

 

 

 

「……」

 

 

 

「綺麗ね」

 

 

 

雲の上、太陽よりも輝く火の鳥を目に焼き付け、ぽつりと…その美しさに対して言葉を漏らした。

 

 

 

「そんなにも頑張って燃えてる理由は…誰かさんが、良く見えるようにかしら?」

 

 

 

炎から声は帰って来ないが、返事と言わんばかりに熱が増す。

既にその余波で沖縄の夕焼けを焼き焦がす熱量を発していた。

 

 

上空の熱気は海にも地上にも届き、急速に発達した雨雲がゲリラ豪雨として下に降り注いでいたが、それでも火の鳥の熱を現すには不十分。

 

 

ーー翼の先に、何かが煌めいている。

 

 

宇宙を羽ばたく翼の先から漏れ出すのは…()()()()だった。

 

 

 

それだけでは無い、それまででも無い。何故その現象が発生する程の熱を持っておきながら地上に死の影が振りまかれていないのか。

 

 

 

火の鳥中心に、目を向ける。

 

 

 

抑え、抑え……抑え切ったその中心。

 

 

 

炎の中心に、赤黒い光と赤白い光が渦巻いていた。

 

 

 

「地球が焦土になる前に…」

 

 

 

「決着をつけましょう」

 

 

 

「ーー■■■■」

 

 

 

 

 

何かを唱えた博麗霊夢の身体には、何の変化も無い。

 

 

ーー何の変化も、無い。

 

 

熱風によって服が、肌が、肉体が焼け落ちる事も。

 

 

汗の1つすらかいてはいない。

 

 

 

 

「来なさい」

 

 

 

 

火の鳥が直進する。なんの工夫も無い、唯の突進だ。それで全てを消滅させられる最強の突進。

 

熱とは、生きる万物が畏怖し…恐怖するもの。熱こそが物体を劣化させ、死へと向かわせていく『命』の正体。

 

その狂熱を前にして少女は…ーー。

 

 

 

 

「夢想…」

 

 

 

 

逆に、その炎へと身を投じた。

 

 

 

 

「封印」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

「…」

 

 

 

「……ーーなるほどな」

 

 

 

地を這うのは何時ぶりだろうか、自分以外の存在に殺されるのは。

 

 

 

「因みに、勝っても負けても私は知らないとしか言えなかったわよ」

 

 

 

「…すまんな、少し熱くなり過ぎた」

 

 

 

赤熱し、融解した神社の石畳に仰向けに倒れて考える。

ぶつかり合うあの瞬間、コイツの存在を感知出来なくなった……恐らく、最初現れた時と同じ力だろうが…。

 

私が感知できない、魂を捉えられないその意味を考えると敵対する事自体が間違ってるな、これ。

 

 

 

「そもそも今日は観光に来たのよ、それを台無しにして…」

 

 

 

「本当にすまん……あぁ…それでも」

 

 

 

「私は月に翔ぶ、必ず」

 

 

 

「あっそ、好きになさい…あうん、無事?」

 

 

 

「はい…!お帰りなさいです、霊夢さん」

 

 

 

…コイツが月の敵対者の仲間だとするのなら、現世側は詰みに等しい。何故羂索と手を組み続けている?必要無いだろそんなこと…マジで…今の力が条件付きだと良いんだがな。

 

未だに羂索が輝夜をどうやって私と会わせるのかは分からない。でも月の敵対者の方は分かってきている。今回の騒動は…浄界を探りに来たな?皇居を中心とした浄界、薨星宮の浄界、京都山国御陵浄界……飛騨霊山浄界は、羂索が使う。

 

その他6つを羂索が交渉に出した……のかな、多分。日本は呪術の中心だ、その分基礎も天元によって補強されてるから世界同士を繋げるには余りにも強度が強いからなぁ、やっぱり一波乱あるかこりゃ。

 

 

 

「……」

 

 

 

「聞きたい事がある」

 

 

 

「何よ」

 

 

 

「今な、私の頭の中は色々考え事がぐるぐるしてるんだが……全部、お前が居たら『そんな事しなくてもいい』にしか辿り着けない、なんかヒントくれ」

 

 

 

「…あぁね、そういう事…あのねぇ、私はこの件に関わる気は無いのよ」

 

 

 

「なんで」

 

 

 

「これは真っ当な生存競争だから、どちらが敵で、どちらが悪でもない、でも必ず片方が淘汰される純粋な競争…それに私が関与する意義は無いわ」

 

 

 

「ならどうして私の道の邪魔を…ーーとは、言えないか」

 

 

 

「分かってるじゃないの、全てを灰にしかねない奴の面倒を任されて…も〜本当に面倒くさい」

 

 

 

……帰ろ、帰ってから羂索を問い詰める。私の願いとこいつの仕事が衝突事故起こしてんじゃねぇか……はぁ……。

 

 

 

「帰る」

 

 

 

「勝手になさい、行くわよあうん」

 

 

 

「…も、妹紅お姉さん…お菓子ありがとうございました、さようなら!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー各地の戦闘が始まるより前…東京のド田舎にて、妹紅を逃がす為に立ち塞がっていた甚爾と、懐かしい気配に煽られて戦闘を始めようとしていた伊吹の2人。

 

 

 

その現在はというと、夕方、ラーメン屋の跡地で…。

 

 

 

「飲め飲めー!!んな!?私の酒が飲めんというか!!!このチャイナ!!」

 

 

 

「も、もうのめまれん……わらひが、わらひがわふふぁっふぁ…」

 

 

 

「うるさい!お前が!お前が勇儀を連れてきてたんだ!!あんな勇儀を見せておいて!!飲めんと申すか!?」

 

 

 

「……はぁ…」

 

 

 

大号泣する伊吹が、瓢箪の中の酒を襲撃者出会ったはずの女の口に注ぎ込んでいた。

 

 

 

「こ、このおひゃけ……ほひゅうは、わらひがゆうぎさんをつれてきたわけじゃ…」

 

 

 

「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!゛!゛勇儀が…あんなに…うぇぇぇぇん…」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

後ろ頭をガリガリと掻いて、なんでこんな結末に至ったかを想起し直す甚爾。

 

 

 

 

 

 

『うっひゃぁ!?今のを避けれるんですか!?』

 

 

 

頭の上スレスレを蹴りが通過する。避けの姿勢をとって反る形で避けたからだ。避けられたのを見てすぐ様くるりと足の向きを変え、心臓を潰す様に半月の軌道でかかと落としが迫る。

 

 

本来加速の乗っていない蹴り技等、伏黒甚爾の脅威にはなり得ないが…。

 

 

 

ーー空を切る音が、尋常では無い。

 

 

 

(掌底、足技、組手…太極拳っぽいが、我流も混じってるな)

 

 

 

それを易々と食らう男でも無いのだが。

 

 

 

游雲の片側を地面に突き立て、それを支点に回転。

地面へ突き刺さる事になった足に游雲を絡め、引き寄せる。

 

 

游雲を起点に、互いが引き合う膂力の競り合いは…甚爾に軍配が上がった。

 

 

 

『っ!見事!』

 

 

 

格納呪霊と違い、格納呪具は呑み込めないし破損の危険性もある。游雲を取り出した時点でマミゾウに預けてしまっていた為、刃物を持っていなかった。それ故に拳を叩き込もうとするも…。

 

 

 

『…大道芸でもやってんのか?』

 

 

 

相手は褒めの言葉を言い放つも、一瞬でその拘束から靴を犠牲に抜け出す。しかも拳は全て横腹を叩かれていなされた。

 

 

 

『カンフーに紐抜けは必須技能ですよ、かの有名なカンフーマスターもやってましたし』

 

 

 

『……』

 

 

 

明らかに間違えているカンフーの知識だが、相手もおちゃらけている様子なので特に突っ込む事も無い。

現状、内心甚爾にとってはボロい商売だと思っていた、こっちからの攻撃は有効打にならないが、このままのらりくらりやってるだけで報酬が手に入ると。

 

 

 

『現世での初の手合わせ相手が、これ程の好敵手だと気分が上がりますね…!!遅れましたが名を名乗らせて頂きましょう、紅 美鈴と申します!』

 

 

 

『お手合わせ、宜しくお願いいたしますね?』

 

 

 

『俺じゃなくて他所で盛り上がってくれよ、めんどくせぇ』

 

 

 

『貴方が足止めを担ったからですよ、まぁ私は特に追いかける気もありませんが』

 

 

 

ジリジリと互いが互いの間合いを測り、緊迫した時間が流れる中で……。

 

 

 

ーー唐突に、大きな声が挟み込まれた。

 

 

 

 

『何故…変わった…』

 

 

 

『それは、私の役目だ…!』

 

 

 

『頭を下げるな!誇りを捨てるな!!鬼としての生き様を忘れたか!?』

 

 

 

『伊吹』

 

 

 

『…アンタが、私達の為に山を下りて…どうして私達が我が物顔で居れると思う?』

 

 

 

『もう暫く…頭を、下げさせてくれ』

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

「あんな、あんな……私は、そんな為に…」

 

 

 

ひとしきり話し合った後に、酔っ払い始めた伊吹を預けられ、勝負は中断。大柄な鬼は必ずまた会いに来ると。

 

 

チャイナ女……元い、美鈴にも特段殺意や害意も無く、かなりのお人好しなのか介抱を任された挙句、酒の席に付き合わされていた。

 

 

甚爾がこの場を離れていないのは、游雲を伊吹につかまれてしまい、引き剥がすにも苦労するし、失くされても困る為、寝るのを待っている所。

 

 

 

「……むにゃ…zz…」

 

 

 

そうして寝入る頃には夕方になっていた訳だった。

伊吹を蹴り転ばして、游雲を取り戻す。

 

 

 

「…結局お前らは何が目的だ?」

 

 

 

「ん…わは……おじょう……に…」

 

 

 

「……ここで殺しておいた方がいいか」

 

 

 

 

游雲を本気で握り、頭へ向かって振り下ろす…ーー前に、後ろから声がした。

 

 

強い強い、血の匂い。感じた事も無い冷たさが、背筋を伝う。

 

 

 

 

「少し、待ってくれるかしら?」

 

 

 

「…」

 

 

 

「その子、ウチの門番なの」

 

 

 

「なら門から離すなよ」

 

 

 

「あら、痛い所を突くじゃない…貴方、持って帰っても良いかしら?」

 

 

 

「…はぁ……依頼外だ」

 

 

 

伏黒甚爾の姿が掻き消える。

 

 

 

「……こっちの酔っ払いはどうしたものかしらねぇ…」

 

 

 

「……」

 

 

 

「放っておきましょうか」

 

 

 

 




次回: 最強の決着やいかに。
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