不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

40 / 70
展開遅くて申し訳ねぇ…顔合わせだけでだいぶ話数使っちまった…。





灰の夢

 

 

ーー北海道

 

 

 

 

五条悟の領域内。

 

 

 

 

 

 

「……っぶね」

 

 

 

「…存外、早く理解したわね」

 

 

 

風見幽香の貫手が、空中で止まっている。

 

無下限の壁、今まで通用していなかった筈の術式が一体何故…。

 

 

 

「領域の必中効果が発揮されてない時点で凡そ何をしてるのかは分かったさ」

 

 

 

「.そう……なら、もうお終いかしら」

 

 

 

終わり、そう思い動けないでいる風見幽香の心臓へ最後の一撃を放とうと、掌印を組み、呪詞を語る。

 

 

領域内の必中を、意識して対象を取るように集中させれば、その分風見幽香の表情は硬くなっていく。

 

 

ーー赫い光が、輝き始めた。

 

 

 

「【位相 波羅蜜 光の柱】」

 

 

 

「術式反転…ーー」

 

 

 

領域を破壊せずに、コイツを殺し切れるギリギリの出力。半身を消し飛ばしても生き残る生命力を考えれば、跡形もなく殺した方がいい。

 

 

これで、終わりだ。

 

 

 

「【赫】」

 

 

 

 

赫色の光が、この花畑に咲く大輪の花を…ーー

 

 

 

 

 

 

「ーーそこまで」

 

 

 

 

 

枯らす事は無かった。

 

 

 

領域が崩壊する、領域展開はその内部の堅牢性とは裏腹に外部からの攻撃に脆い。

 

 

 

朱槍が2人の間に突き刺さる。

 

 

 

 

「降参よ、全員で白旗をあげさせてもらうわ」

 

 

 

「それが通用すると思ってんの?」

 

 

 

「ええ、そういう運命よ、決まっているの」

 

 

 

「はは…運命ねぇ、驚いたなぁ…」

 

 

 

「自分が運命の流れの中の小さな1人である事に?」

 

 

 

「違ぇよ」

 

 

 

「ここまでして、逃げれると思ってるお前の脳ミソに驚いたっつってんだよ」

 

 

 

領域展開後、術式の使用は不可能になる。術式の拡張の行く果てである領域展開は術式回路そのものに負荷が掛かりすぎる為だ。

 

 

それ故に領域展開を修めた存在であっても、発動後は消極的な行動を強いられる事になる。

 

 

 

本来は、だが。

 

 

 

 

「…!」

 

 

 

運命の流れを観測できる少女。それは擬似的な未来予知にも近しい、最善の運命を選ぶ為にここへ訪れたのだが…未来を読める訳では無い。

 

 

この男が、そこまでやれるとは思っていなかった。

 

 

 

 

「領域展開」

 

 

 

 

「やはり、この身体で相手するには…ーー」

 

 

 

「【無量空処】」

 

 

 

「貴方にとって、役不足だったわね」

 

 

 

禁断の、領域展開の2度打ち。

焼き切れた術式回路、脳の術式を司る箇所の破壊と再生。それは一度死の際を通過する狂気の産物。

反転の師である藤原妹紅から、『考え方』は既に教え込まれていた。

 

 

『生命体である事を辞める』

 

 

反転を完全に使いこなす存在は、生命である事を辞め始める。それは数千年前の宿儺との戦いで妹紅が理解した事。

己というサンプルを除けば、反転を『戦闘に組み込む』というものは苦難する。本質は物質生成の為、消費が激しく有効的な再生を判断し行わなければならない。その点で、妹紅は五条に……一年以上、人体の構造と機能を教え込んでいる。

 

 

脳も心臓も、臓器も手足も髪の毛1本まで、『機能』として、機械のメンテナンスの様にパーツを交換するまでに至った。

 

 

 

「さっきと同じ様にいくと思うなよ」

 

 

 

今度は必中効果をマニュアルでコイツらに適用させる。

先程、何故無下限の壁が風見幽香の拳を遮ったのか……それは単純明快、五条悟は無下限をフルオートでの展開に設定してあったからだ。

 

学生の時、無下限を殆どマスターしてからは、毒物や気体、六眼による原子レベルの術式使用によってオートで危険物を弾く様にしておいた。その設定の範疇に目の前の存在達が含まれていなかっただけ。それを自己判断に置き換えた。……そして、散々観察して漸く分かった事がある。

 

蒼を喰らい、赫を弾き、茈を破壊する。その所業が行えた理由は…。

 

 

 

ーー呪力が吸収されていたのだ。

 

 

 

術式を稼働させる呪力そのものを喰らわれていた、だから術式が解れる。領域内でも同じだ…常に領域展延を行っている様なもの。しかもリソース回復を備えた完全な領域メタ。

 

 

必中も対象外となるし、領域の構築の基礎…その呪力すら喰らわれる相手に対して、領域展開は無駄……では無い。

 

 

五条悟だからこそ行える結界の詳細な設定、努力と研鑽、命すら摩耗するような修行を積み重ねた現代最強は建物判定である2人を範囲内に再設定してある。

 

 

 

(領域の分解、吸収に手間取れ、その間に殺す)

 

 

 

「【位相 黄昏 智慧の瞳】」

 

 

 

「【位相 波羅蜜 光の柱】」

 

 

 

直感だった。何となくだった。でも、まだぶつけても良いんだろ?

 

 

 

 

「【九綱 偏光 烏と声明 表裏の間】」

 

 

 

 

膝を着く風見幽香の視界に、紫電が映り込む。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

「ふ」

 

 

 

「うふふ…あはははは!」

 

 

 

「レミリア、退きなさい」

 

 

 

「はぁ!?え、それじゃこの後の観光どうするのよ!紅茶巡りするんじゃないの!?」

 

 

 

「観光ならもう済んだわ、とっても綺麗で大きな花を見つけたの」

 

 

 

「花は我儘なのよ、気温、湿度、土壌に水分……『求める何かが満たされなければ枯れてしまう』」

 

 

 

「私は花が大好きな妖怪よ?目の前にある枯れかけた花でも愛でるのが役目なの」

 

 

 

「…ー〜っも〜…パチェー!私とアリスの転移お願い!場所は目を付けておいた喫茶店!」

 

 

 

朱槍を持った少女の足元と、遠く離れて花を愛でていた人形の様な少女の足元に魔法陣が展開され、札幌の僻地から姿を消す。

 

 

 

「さて」

 

 

 

立ち直って、目の前の五条へと視線を戻し…。

 

 

 

凶悪な笑顔を顔に浮かべた。

 

 

 

「虚式」

 

 

 

最強の所以を、風見幽香へと刻む為。

 

 

美しく花を咲かせる、その存在へ向けて…指を、弾く。

 

 

 

「茈」

 

 

 

放たれる150%の茈。

 

 

 

必中必殺、そうでなくても相手は避けず、退かず。

 

 

 

飛来する死に、自らを差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

領域が崩壊した。

 

 

それは、時間によるものではなく……。

 

 

 

「言ったでしょう?気が済むまで相手をしてあげると」

 

 

 

風見幽香が放った、渾身の一振り。ピンクの日傘を突き刺し、茈を破壊して…そのまま領域を割った事によるものだ。

 

 

だが、その肉体はひび割れ、崩壊を始めていた。

 

 

 

「…やっぱ本体じゃなかったか」

 

 

 

「あぁ、見えるのよね…別に気にしなくていいわ」

 

 

 

「お前らの目的は何だ?何処から来た」

 

 

 

「それも気にしなくていい、強いて言うなら観光だし、貴方はいつも通り咲き誇っているだけで良いのよ、来る時、訪れる戦いを心の底から楽しみなさい」

 

 

 

「……」

 

 

 

「また会いましょう、五条悟」

 

 

 

「次会う時は…ーーちゃんと、全てを見せてあげる」

 

 

 

風見幽香の肉体が土塊へと変わり、崩壊。ただ、最後の最後に……足元の花畑を美しく彩って、消えていった。

 

 

その場へ足を運び、何の異常も無い事を確認する。

 

 

 

「……」

 

 

 

「…帰るか…って、しまった」

 

 

 

「あの2人に、逃げられたな」

 

 

 

「………」

 

 

 

「まぁいっか!」

 

 

 

 

何となく、何とも言えない何かを胸に抱え…。

 

 

そういえば赤福のあんこ原産地って北海道だよなと思いつつ、帰り道に雑貨店に寄っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

灰の世界を夢に見た。

 

 

 

全て燃えた、灰色の世界に足を踏み入れて。

 

 

 

人の命だったものを、踏みしめた気がする。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

『何処から迷い込んできたんですか!?お帰り道はあちらですッ!!』

 

 

 

額をさする、デコピンされた気がするけれど、起きた時には感覚は無かった。

 

 

 

…何だったんだ、あれ。

 

 

 

「もこねぇまだかな…」

 

 

 

夜蛾さんの人形を持たされて、映画を見とけと放置され現在時刻夜の9時。

 

 

殴られまくったけど、今はもう普通に映画を見れている。途中で晩御飯も用意しておいたし、やる事もやって今はサメ映画を流し見していた。

 

 

 

「「ただいま〜」」

 

 

 

コーラを喉に流し込んだ頃、寮のドアが開かれる。

 

 

 

「お帰り…って、五条先生も来たんだ」

 

 

 

「うん、帰り道にやけに楽しそうで嬉しそうなコイツと出会ってな…五条も仕事終わりだったみたいだし、晩御飯連れ添わせに来た」

 

 

 

「お疲れサマンサ〜…いや〜本当に疲れたよ、後処理の書類も山のように来たしね〜……てか、そんなに僕、楽しそうだった?」

 

 

 

「あれで自覚無し??」

 

 

 

荷物をバサッと机の上に広げて、ソファーに3人で一息つき始める。今日は少し、疲れる事が多すぎた。

 

 

身体の芯から疲れると、心まで疲弊してしまう。互いに肉体は常に万全をキープ出来ても精神的な疲労には勝てない。

 

 

 

「2人ともお腹減ってる?こっちにソーメン置いてあったから炊き始めとくね」

 

 

 

「あ、そうだ悠仁……映画ちゃんと見れるようになってるじゃん、やるね…妹紅にやらせて貰ったの?」

 

 

 

「うん、しっかり見れてるよ、あれだっけ…呪力を安定して出力させるやり方なんだよね?」

 

 

 

「そっ、今でも結構安定してるし…正直パパっと実戦つんでも良いかなとは思ってる」

 

 

 

姉妹校交流戦で、虎杖には皆んなと再び顔合わせして貰う事。これからの事も大まかに話して、出来上がったソーメンをザルに移してツユで頂く。

 

 

猛暑日での遠征任務は本当に不評な声が出やすい、呪霊が多く沸く季節でもあるし、体調も崩しやすい。

 

 

 

「ソーメン美味し」

 

 

「ね」

 

 

 

ちゅるちゅる麺を吸い込む音が、3人分響く。丁度映画も終盤の佳境に至った。

 

 

 

「……」

 

 

 

(今頃釘崎と伏黒、早苗は何してんのかな…)

 

 

 

「……あ、そうだ、結局任務は無事に終わった?誰かを怒らせたって言ってたし…もこねぇ関連の相手でしょ?」

 

 

 

「ん?あ〜…まぁ殆ど無事に終わったな、京都に発生した奴は日下部が捕縛、管理して…埼玉の奴は早苗が主従関係を結んだし、それ以外の奴らも特段何か被害を出した訳じゃ無かった」

 

 

 

「こっちは2人取り逃したけどねピースピース」

 

 

 

「シバくぞ」

 

 

 

「ゴメンっ!」

 

 

 

まぁ五条が取り逃したって時点で、どんな奴が相手だったのかは凡そ予想がつくが……。

 

何せ、帰り道にあんな嬉しそうな顔をしながら、久しぶりに手合わせをしようなんて言ってくる位だからな。相当な刺激を受けたんだろ。

 

 

 

 

「悠仁」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「これからは、単独任務にも色々出てもらう…私達は各々任務も仕事もあるから、付きっきりにはなれないけど…取り敢えず、何かあったら伊地知さんを頼れ」

 

 

 

「分かった」

 

 

 

「夏は呪霊の活性化時期だ、私としてもジャンジャン修行付けていくつもりだから………悠仁が泣き声言っても、手加減しないからな?」

 

 

 

「ーー…上等!!」

 

 

 

拳をコツンとぶつけ合い、そこに込められた意思を受け取った。

 

 

その後は伊地知も呼び出して、酒を引っ張り出しワイワイと騒ぎ出す2人を他所に…少し、あの時見た夢を想起する。

 

 

 

「……」

 

 

 

灰の世界、焼け落ちたものしか無い世界。誰一人居ない世界で…。

 

 

 

何故か、妹紅だけが灰の上に立っていた、あの夢を。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。