不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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殺して祓う 祓って殺す

 

下水が流れる地下水道で、ネズミが小走りしに走る音がヒタヒタと鳴っている。今日も今日とて何か食べれるものを探しに、迷路の様なこの場所を走り回っていた。

 

 

最近、このネズミは穴場を見つけたという。上質な餌が大量に放置されていて、しかも取っても取っても無くならない素晴らしい穴場。

 

 

すぐ様家族や同族を連れていったし、皆で食べてもまだまだ残っている、救いの餌場を見つけれた事は本当に幸運だと思う。

 

 

奇跡の餌場に辿り着き、そこにある肉を齧る。

 

 

齧って齧って、何度齧っても湧き出てくる餌を、今日も有難く頂き続ける。

 

 

 

「……」

 

 

 

齧って、奪って、喰らって生きる。そうして生きる、それでしか生きられない。私達にはそれしかない。

 

 

 

何かの汁が滴る肉を貪り、肥大している人の形をしたものを齧る。食べる。残骸にしていく。

 

 

 

命あるものを奪う事でしか生きられない、命を失ったものを貪ると、その分罪が増えていくんだろうか。

 

 

 

私達は奪わない、でも世界はいつか何かを奪っていく。

 

 

 

奪われても大丈夫な様に、今日も別の何かから奪い続けるんだ。

 

 

 

「…遅れて、ごめんなさい」

 

 

 

でも…いつしか、こう考える様になった。

 

 

 

私達は、世界から奪われてるんじゃなくて…ーー。

 

 

 

「眠る時間よ」

 

 

 

安寧を世界から、与えられているのではないかと。

 

 

 

誰にでも、平等に与えられる安寧を。奪い合う事を罪とするのなら、命とは余りにも罪深い存在だから。

 

 

奪われてるんじゃない。

 

 

与えられてると思うんだ。

 

 

命を。

 

 

そして平等に安寧()を。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「貴方達は、誰かと何かを奪い合う為に産まれてきた訳じゃない」

 

 

 

「何かを…得る為に、産まれてきたのよ」

 

 

 

「与えられた命に意味を見出す為に、与えられる死を受け入れられる様に、準備をするの」

 

 

 

「皆、炎へと向かう蝶の様に」

 

 

 

喪服を着た女性の手が、ぐじゅぐじゅと液体を撒き散らす死体と、そこに貪りつくネズミ数匹に触れる。

 

今の今まで必死に肉を貪っていたネズミは……静かに横たわり、死んでいく。女性が手を離すと……。

 

 

 

ーーその場には、複数の男女の遺体が現れた。

 

 

 

 

「偽善っぽ〜い、気持ち悪いな〜アンタ」

 

 

 

それを見て、ツギハギを身体に張り付けた男が後ろから声を掛ける。

 

 

 

魂に触れる事が出来る術式を持つ、人間から産まれた悪意の権化。

 

 

 

「遺体を待っているご遺族もいる、悲しい真実よりも、優しい嘘の方がいい時も…偶にはあるのよ?」

 

 

 

「どっちも偽物じゃない?真実も、嘘も、人間は数字の1でしかないんだからさ、どんな過程があってもいつか0になるのに、人間は何故か自分の正しさを見繕う」

 

 

 

「善は偽善で、悪は偽悪、お姉さんは俺がやってる事にイラついてるのかな?0になっただけのモノを見て、お姉さんはその偽善に心を尽くしちゃってる…馬鹿みたいにね」

 

 

 

「……ねぇ、貴方」

 

 

 

「桜の木は、下に死体が埋まっていて…それ故に華々しく咲く、なんて話は知ってる?」

 

 

 

「それが?」

 

 

 

「今、貴方が踏み潰しているのは…」

 

 

 

「その桜の根よ」

 

 

 

紫色の輝かしい蝶が現れ、ツギハギ男へと飛んでいく。

余裕の表情でそれを受けようと両手を広げるも……。

 

 

 

「っ!?やっべ!」

 

 

 

紫の蝶が目の前に来た瞬間、何かを察したのか身体をポップコーンの様に爆散させた。

 

 

そこまで判断が遅れてしまえば被弾は免れない。だがこの紫の蝶に触れる事を全細胞が魂から拒絶している。

 

 

産まれてきて、一切感じて来なかった死の影、それそのものが迫ってくるのをなんとか避けて地下下水道のあらゆる隙間から逃げ出した。

 

 

 

「アンタとは相性悪すぎるなぁ、ばいばーい」

 

 

 

口だけの肉塊がそう告げた後、姿を消す。

 

 

 

「……」

 

 

 

「やっぱり、あの様な子達と手を組むのは許せないわ」

 

 

 

「久しぶりに…血が騒いできちゃった、この世界の子達の為にも…」

 

 

 

「少し、乱暴しなきゃね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後。

 

 

 

下水道をぺたぺたと裸足で歩く。しかも裸で。

 

 

めんどくさそうに、ダルそうにため息をついて歩く男。

 

 

そこら辺に放置しておいた死体に手を触れて、変化させ……服の見た目にして着込む。

 

 

 

 

「いや〜…まだまだ学習不足だなぁ〜」

 

 

 

逃げ出した呪霊は、出来る限り己の天敵だと感じた女から離れようと、バラバラにした肉体を回収しながらなんとか人間大にまで復帰を果たしていた。

 

 

 

「アイツ絶対殺そー」

 

 

 

何だったんだアイツ、人間がここに入ってくるなんて珍しいから、また実験体にでもしようと近付いたのが間違いだった。

確実に人間じゃない何かの魂……それに、魂に干渉するであろう術式。

 

 

 

「夏油に聞いてみないと…」

 

 

 

アジトを見つけられたらヤバいな、まぁでも夏油が来てる内は撃退出来ると思うけど、あーゆータイプは初めてだからなぁ〜…ちゃんと殺せる様に実験を…ーー。

 

 

 

 

 

「お前か」

 

 

 

 

……。

 

 

 

は〜ぁ…次は何だよ……。

 

 

 

 

「…何また人間?」

 

 

 

アジトへ戻ると、茶髪の餓鬼がソファーに座っていた。

服装を見れば、何処か記憶にある見た目で……確か、夏油に見せて貰った……。

 

 

 

「…あ!あれか、宿儺か!虎杖悠仁ね、ハイハイ、何か用?」

 

 

 

「お前だな?」

 

 

 

「…今日は会話が出来ない奴とよく出会うよ、ホント」

 

 

 

「祓うぞ」

 

 

 

「……」

 

 

 

糞ガキが、甘いんだよ…何も知らずに戦いを挑むそのリスクを理解してねぇ。本当は夏油からちょっかいかけるなって言われてるけど……。

 

 

 

「お前から来たんだから…別にいっか!」

 

 

 

「ここに来る途中、形を変えられた死体が大量にあった」

 

 

 

「お前が術式の実験に使ったのか?」

 

 

 

「そうだけど?なに、またお説教?」

 

 

 

「どうして命を弄ぶ」

 

 

 

「自分が弄んでねぇ前提の立場でモノ語ってんじゃねぇよ、どうしてお前らは自分達の身になると唐突に尊厳やら何やら求めんの?」

 

 

 

「……」

 

 

 

「バカみたいだよね〜…お前さ、人間がどんだけ命を弄び続けてると思ってる?人間ってホント、訳わかんないと思わない?ねぇ?」

 

 

 

ニタニタと笑い、嘲笑し、煽りを混ぜて挑発する。

 

 

人間って、本当にバカばっかりだからさ?義憤やら尊厳やら、人として〜だとかさ?自分じゃない上っ面の皮を被ってる何かに心を費やすんだよ。

 

 

それで、死ぬ。

 

 

 

「はははっ…!なぁ!宿儺の器!」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

「正論だよ」

 

 

 

「あ?」

 

 

 

「お前の言う通りだ」

 

 

 

予測しておいた返答と違う言葉が返ってくる。見立てが正しければキレて突っかかってくると思ったが……。

 

 

 

「でも、お前がもしこの理由で、誰も彼もが同じで…人間も、動物も、全員がそうだって言うのなら…」

 

 

 

 

「お前が祓われても(殺されても)、同じだって事だよな?」

 

 

 

 

「……ーー」

 

 

 

 

先鋭な殺意。呪霊であるからこそ直に感じる混じり気の無い純粋な殺意を感じ取る。

 

 

 

「はは!!それも!そうだね!!!」

 

 

 

口に手を当て、吐き出した小さな塊。それは検証の末に最も人間を持ち運ぶのに便利だと感じた形である。

手の中の人間を縮小化したものをこねくり回して槍へ変化させ、心臓目掛けて投げ放つ。

 

共に腕を刃へと変化させて、刃の先と肩までを帯のようなヒラヒラした状態へと変えてから鎖鎌の形式で振り回した、そして腕を肥大化させての投擲は、確かな破壊力を持って虎杖へと向かっていっていた。

 

 

 

「……」

 

 

 

(…防御すらしないか)

 

 

 

ガギャッ!!と虎杖の胸板に槍は阻まれひしゃげ壊れる。

 

 

相当自身の硬さに自負があるのか、周囲を舞う刃に目もくれず、ゆっくりと呪霊の元へも足を運ぶ虎杖。

 

 

刃の嵐も完全に無視して、ただ突き進んでくる。

 

 

 

「硬いね、お前」

 

 

 

「………」

 

 

 

「……は〜つまんね〜」

 

 

 

全然反応が無い、つまらない。

 

さっさと終わらせるか〜…。

 

 

 

「……ここら辺、かな?」

 

 

 

振り下ろされる刃、それに対しての警戒を解いてるだろ?効かないんだからな、完全に意識から外す。

 

なら……もう、終わりだ。

 

術式の発動条件は、手の平で触れる事…!それは、変化させた後の肉体でも同じ。

 

 

 

「【無為転変】」

 

 

 

刃が虎杖の頭上に振り下ろされる直前、刃が手へと変化する。

 

 

警戒を疎かにして、硬さを売りにしてる能無しバカにはこれが良く刺さーー。

 

 

 

 

「…なぁっ…ーー?」

 

 

 

呪霊が瞬きの暗闇、その暗転から目を覚ますと……。

 

 

 

「はぁ〜……」

 

 

 

血みどろの世界に放り込まれる、頭蓋が並び、死骸が山のように積まれた邪悪の顕現。

 

 

 

「今俺は機嫌が悪い、1度を見逃す気分でも無いが…」

 

 

 

「…………はぁ」

 

 

 

屍の頂点に坐す宿儺が、目線をぐぐぐっと下に落として退屈そうに何度もため息をつく。とてつもなく機嫌が悪いのが見て取れる。

 

 

 

「本当にお前はつまらんな、小僧」

 

 

 

「……!?」

 

 

 

目線を送る先、呪霊の背後……そこに、虎杖悠仁が居た。

 

 

 

(何故!?どうやって!!自身の魂を観測して守れる存在なんて…!!!)

 

 

 

「ぐぅ゛っ…」

 

 

 

呪霊の首が締め上げられる、片手で浮かせられて…恐ろしく冷たい視線が虎杖悠仁から送られていた。

 

 

 

(そうか…!こいつ!1つの身体に2つの魂を同居させているから…!!)

 

 

 

「クソっ…ーーあ?誰だ、もうひ……」

 

 

 

再び訪れる暗転に目を覚ますと、刃の嵐を通り抜けて、虎杖悠仁が呪霊の首を持ち上げている、首を絞める手に力が込められ、地面に叩きつけられた。

 

 

呪霊の余裕はまだ崩れていない。顔面に飛んでくる拳を受けた上で、肉体変化によりこの拘束状態から抜け出せる、一度距離を取り逃げ出そうと考えていた……予想外の事が、身体に起こっていたからだ。

 

 

 

(ダメージがある!!)

 

 

 

(まさかまさかだ…!虎杖悠仁、お前は俺にこの世界で唯一魂を観測しながら殴れる、ただ1人の天敵!)

 

 

 

「ふんッッ!!」

 

 

 

「ぎっッ…」

 

 

 

身体を水の様に液状に変化させて、出来るだけ受ける威力を分散させ、尚且つ抜け出そうとするも……虎杖悠仁の拳の火力を見誤ったか、その状態でさえ深刻なダメージを受ける。

 

 

それでもこいつに拘束され続けるよりはずっと良い。

 

 

 

(予想外の強さっ…!だが、宿儺との謁見は済んだ、間違いない…呪いの王と言われる理由も体感した!ここは一旦離脱して…!)

 

 

 

ーー呪霊の腹に叩き込まれる、凄まじい衝撃。

 

 

 

「ガヒュッ…!?」

 

 

 

逃げ出そうとした呪霊の肉体が、再び地面へと叩きつけられる。

 

 

 

(何だ!?時間差で…2度目の衝撃…ーー)

 

 

 

『逕庭拳』

 

 

 

虎杖悠仁は既に、己の悪癖であったその技を、意図して起こせるにまで至っている。

 

 

 

『それ、無意識でやってるだろ』

 

 

 

『安心しろ、解決の目処は付いてる……呪力の変質、可変については宿儺以上のプロフェッショナルが付いてるからな』

 

 

 

『妹紅さーーん!修行付けてくれるって本当ですかー!!』

 

 

 

『あぁ、ちゃんと2人も連れてきたか?』

 

 

 

『勿論です!今日は宜しくお願いします!』

 

 

 

とある訓練の日、やって来たのは早苗と……。

 

 

 

『ケロ』

 

 

『久しぶりだな、人間』

 

 

 

呪力とも呼べる穢れの力を、あらゆる物体に変化させられる土着神の頂点であった。(それと翻訳係)

 

 

 

 

「ぐぅ゛ぁ゛ッ!」

 

 

 

(3()()()!!反撃のタイミングを作れない!)

 

 

 

殴りつける際、意識して呪力強化を行ってしまう未熟者が、拳を放つ速度に対して呪力が行き渡らずに殴った後に遅れてきてしまう現象、逕庭拳。

 

 

虎杖悠仁は、繊細な呪力操作によりそのレベルから脱してはいる。が、あえてその流れを留め『呪力のダマ』とも言える塊を全身に作ってある。

 

 

殴るという動作はただ腕だけで行われるものでは無い、四肢を、全身を使って行われるもの。呪力のダマは四肢に作られている、それが殴る度に…ーー。

 

 

 

「よん…はつ……ッ…!!」

 

 

 

4度の衝撃になって、敵へ襲いかかる。

 

 

 

その衝撃に苦しんでいる間にも、虎杖悠仁はその拳を止めない。ひたすらに目の前の呪霊を祓うためだけに拳を振るっている。

 

 

 

(たった一人で、抜け出せない連携を…!)

 

 

 

「い゛い゛加減゛に…!!゛」

 

 

 

「しろ゛ッ!」

 

 

 

身体を球体状に変化させ、棘を射出し逃げる隙を作る、そうでなければ祓われかねない状況だ。

 

一度体勢を立て直して……!

 

 

 

「逃がすかよ」

 

 

 

服を掴み、手繰り寄せる。しかし服だと思われていたものはすぐ様肉塊へと変化し、大人の姿を取った。

 

 

 

「虎杖悠仁を殺せ!ぅ…おえぇぇ…」

 

 

 

更に複数の小さな人の塊を吐き出して、8体程度が放出された。

 

 

遠距離、又は足掛かりに出来るような攻撃は駄目だ。近距離戦は基本不利、こちら側からの術式使用は意味が無いし最悪殺される。

 

 

 

「ふふっ、あははは…!死ぬかと思ったよ!!」

 

 

 

既に体力は5割を切った!だが…改造人間のストックがある内は幾らでもやりようがある…!!

 

 

 

「勘違いしてたよ!お前は俺だ!」

 

 

 

「あぁ゛…?」

 

 

 

「そう思ってんだろ!お前も!!」

 

 

 

「………」

 

 

 

改造人間がそれぞれ、虎杖悠仁を殺そうと飛びかかっていく。

 

 

 

「…ごめんな」

 

 

 

それを、一人一人…優しく、丁寧に殺害する。

 

 

 

 

「へぇ…知りたいなぁ…!お前がそんな風になった理由!」

 

 

 

予想通り、改造人間を殺せるか!

 

 

ふ、ふふ…はは!!いきなりこんな事になるなんて!人生って本当面白い!夏油の言う通りだ!

 

 

 

(……このまま戦うには手札が足りない、勿体ないけど…やっぱり撤退が無難か……)

 

 

 

「まっ、ここは捨てるよ」

 

 

 

「逃がすと思ってんのか?」

 

 

 

「逃げれるさ、お前が弔いだかなんだかでソイツらを殺す事に執着してる間はな」

 

 

 

改造人間を相手にして出来た隙、腕を肥大化させ、硬質化させた後…地下水路の壁を破壊する。

 

 

 

「お前…」

 

 

 

「じゃあな!虎杖悠仁〜!お互い、生きてたらまた会おう!」

 

 

 

「……」

 

 

 

流れ崩れる瓦礫の隙間、視線が交差する中で、手足を改造人間に纏わりつかれ自爆されようとしていた虎杖悠仁は……。

 

 

自身に与えられ、そして鍛え上げた、呪力操作。自身が持ちいる呪力の全てを足へと集中させた。

 

 

無意識的に張り巡らせていた全身への呪力強化を全て捨てる事は戦場において死に等しく、戦車同士の戦いに生身で挑む様なもの。そしてその状態では強化した箇所と他の部分の齟齬が大き過ぎて身体が自壊しかねない。

 

 

 

「なんッ!?」

 

 

 

普通の人間であれば、だが。

 

 

 

「嘘だろ…ーー」

 

 

 

呪霊が知り得ていない情報が1つある。

 

 

それは、羂索が隠していた事。虎杖悠仁の『素の肉体』の強度は常軌を逸している。加速に耐えうる肉体であったのだ。

 

 

それでも落下する瓦礫に掠れでもすれば絶命は免れない、そのリスクを、肉体に掛ける負荷も全て無視して虎杖悠仁は進む。

 

 

自分しかこの呪霊を祓えないのなら、彼の歩みを止めるものは存在しない。

 

 

 

(改造人間…間に合わない!最適な肉体の変化は…クソクソクソッ!考えろ!迎撃?受け切れるか?)

 

 

 

改造人間を振り切り、瓦礫を足場にして飛び跳ね、頭上に拳を構える虎杖を視界に捉える。

 

 

 

(無理だ!アレは受け切れない!!)

 

 

 

「俺はお前じゃない」

 

 

 

「弔いに意味が無くても、お前が祓われる事も俺が死ぬ事にも意味が無くても……」

 

 

 

「祓い続ける、お前には理解出来ないだろうな」

 

 

 

拳が、目の前まで迫った。

 

 

 

(あ、これ死ーーー)

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し、待ってくださいな」

 

 

 

両者の間に……強い、腐敗臭が挟み込まれる。

 

 

 

「!?」

 

 

 

「おせーよバカ!!」

 

 

 

「あら、これでも急いで来た方なのですよ?」

 

 

 

拳が阻まれたのは、死体…?虎杖悠仁が声がする空を仰ぎ見れば、青髪の女性が空を飛んでいた。

 

 

こちらを見て、蔑む様な視線を送ってくる。

 

 

 

「分裂体は?」

 

 

 

「持ってきています、中々ずる賢いものですね、あなたも」

 

 

 

「褒めてる?まぁ、取り敢えず後は頼むね〜」

 

 

 

「逃がすか…!!」

 

 

 

「ーー待ってください、と申したはずですよ」

 

 

 

拳が目の前の死体に吸い付いて離れない。その間にも呪霊は走り去っていき、瓦礫が身体を押し潰そうと迫っている。

 

死体からは煙の様なものがブシッ、と放出されて顔面に吹きかけられた。

 

 

 

「………」

 

 

 

「おっと、確か毒は効かないんでしたね……失敗失敗」

 

 

 

「お前もアイツの味方か」

 

 

 

「いえ?あの方の教師役ではありますが……味方という訳ではありません」

 

 

 

「…必ずアイツは祓う」

 

 

 

「どうぞお好きに」

 

 

 

今度こそ、虎杖悠仁の身体が瓦礫に押しつぶされていく。

 

 

 

空を飛ぶ遊女はそれを見届けて、颯爽と姿を消した。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

瓦礫から腕が突き出された。

 

 

額を軽く切り、血を流す虎杖悠仁の背中には……先程振り切った改造人間の死体を背負っている。

 

 

 

「……葬儀屋に連絡しないとな」

 

 

 

「……はぁ…」

 

 

 

「もしもし……《伊地知さん、ごめん、取り逃した》」

 

 

 

「《うん、怪我は殆ど無いよ……そう、そのまま行ってくる》」

 

 

 

「《あ、えっと…吉野順平って、今は下校中?》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー商店街

 

 

 

 

黒髪の女性が、買い物袋片手に鼻歌を歌っている。

 

 

片腕には何処か外国から来た様に思える金髪の少女を添えていた。

 

 

 

「ふんふふんふふーん……今日は晩御飯何にしよっか」

 

 

 

「カレー…は前に作ったし、白ワインが残ってるから…ローストビーフでも買って帰ろっかな〜?」

 

 

 

「……それと、キノコばっかりじゃなくて、順平も食べれるもの選んでね」

 

 

 

「ギクッ…ーーも、勿論!」

 

 

 

「いや〜アンタが家の窓をぶち破ってきた時は何事かと思ったけど…こんな可愛いお手伝いさんになってくれるとは思って無かったわ〜」

 

 

 

「あの時に即警察に通報しないアンタも、相当な変人だと思うぞ…?」

 

 

 

「アンタの話は信じてないけどさ、まぁ…そんな現実が、私の人生に1回位訪れても良いかなーってね」

 

 

 

「滞在期間は2週間位だっけ?それまでゆっくりしていって」

 

 

 

「霧雨ちゃん」

 

 

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