不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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事情③

 

 

 

夕空を埋め尽くす黒が、ゆっくりとだが晴れてきている。

 

 

呪力出力が上がっている影響で差程時間は掛からなかった様だ、人里の殆どの家屋を巡って巣を破壊し続けた七海の健闘もあってか、空で戦っている魔理沙の元へ飛来する呪霊の数は相当減少していた。

 

 

 

人里の各地を巡った。どこもかしこも犠牲者ばかり……家屋を、訓練所を、寺子屋を巡った…。

 

 

 

見知った顔が幾人も巣にされていたし、訓練所では福師範代が、寺子屋では避難が完了され切っていなかったのか……。

 

 

 

『子供まで………』

 

 

 

男の子1人が巣にされていた。隣にはバラバラに潰された1級程度の蜂型呪霊と、その呪いを祓ったであろう慧音さんが死にかけていて、恐らくは同種であると判別されて巣にはされなかったのだ。

 

 

巣を破壊し、急ぎ慧音さんを避難場所の博麗神社へと運び……何とか一命を取り留めた後、人里で再び巣の破壊を行う。

 

 

感情を殺し、巣を破壊し続ける七海の健闘もあってミニ八卦炉無しでも呪霊の出現に対して殲滅速度が上回り始めた頃、1級相当の巨大な蜂型呪霊が動き始める。幾ら遠距離で攻撃を仕掛けても一切命中しない事に痺れを切らして、空中に居る魔理沙と自身を取り囲むように小型呪霊が球状に集まり始めた。

 

 

 

「お?タイマンしたいって訳か!」

 

 

 

「ギチチチチッ…」

 

 

 

「いいぜ!かかってこい!!」

 

 

 

球状の檻を作る事で空中機動を奪い、強力な範囲火力も自身が矢面に立つ事で1点に集中させる。檻にした呪霊からも毒玉の支援をさせ、ここで殺し切ろうと画策する。

 

 

自身に命中する事を無視させて毒液を発射させる命令を出すが……この狭い空間の中でも魔理沙には一切命中しない。

 

 

 

「タイマンじゃねぇのかよ!?」

 

 

 

「ギギッ…」

 

 

 

「まっ、こんなのに当たってたらこの世界じゃ生き残れないからな!」

 

 

 

ドームファイトが始まった頃、呪霊の注意が全て魔理沙へと向かっていたその間に、七海は痕跡の主へと辿り着いていた。各地の巣を壊し、最後に辿り着いたのは奇遇にも……。

 

 

 

「ここが最後…!!」

 

 

 

海斗が経営しているパン屋だった、すぐにガラス張りの扉をぶち破ると厨房の奥から羽音と特級の気配を感じとる。

 

 

人里に侵入した呪霊はたった1体だった、しかし…等級は特級。人里を守る退魔師が総出でも傷1つ付けられない相手。

 

 

 

「海斗さ…ーーッ!!!」

 

 

 

厨房へ突撃すれば、既に小柄でお腹が大きい蜂……女王蜂らしき呪霊が、海斗の腕に針を挿入し卵を産み付けていた。

 

 

 

「七゙海……ざ…逃げろッ!」

 

 

 

「ギチチチチッ」

 

 

 

「……ーー申し訳ありません」

 

 

 

狙い澄ますは、海斗の肩。

 

 

腕に植え付けられた卵が孵化し、幼体が脳へと登ろうとしているのが血管の上から見て取れる……それが辿り着く前に…断つ。

 

 

 

「あぐッ!?」

 

 

 

「ギギッ…」

 

 

 

断ち切られてすぐ、呪霊は七海を一瞥した後に部屋を飛び出した。

信じられない程の高機動、特級とは言え現状の七海が部屋から易々と逃してしまう程の速さで逃げ出す。

 

 

 

「逃がすか…!!」

 

 

 

この世界にいる間は普段使い出来るようになった瓦落瓦落、厨房の壁を殴り抜けてその飛沫を呪霊へと直撃させた……が…。

 

 

 

「ギギギギギッッ!!!」

 

 

 

「……!!」

 

 

 

その呪霊の特筆すべき点は…戦闘能力では無く、戦う為の能力の一切を捨て、手にした小型故の隠密性と機動力。そしてその見た目に似合わない程の耐久力だ。

 

 

術式による配下の産卵と時間を掛けて産んだ指揮権を持つ1〜準2級の操作、人体を餌として無限に増殖し続ける巣の制作。

ここで逃がせば、明日にでも今の数百倍の呪霊を従えて人里を襲いに来るであろう。

 

 

 

「海斗さん、止血を」

 

 

 

「大丈夫゙っず……止血なら、出来る…ななみ、さんは…今の奴を追って!!」

 

 

 

「…分かりました」

 

 

 

腕から流れる血を抑え、七海にそう言い放つと安心させるかのように近場にあったエプロンの紐で血管を抑え、傷口にナプキンを片手で抑え込む。その光景を見た七海もすぐに店を飛び出して、逃げ出した特級を目視しようとした。

 

 

既に壊れた店の扉を通り、残穢から逃げた方角……夕焼けの太陽が落ちてきている方向へと目を向けると……ーー。

 

 

 

(全個体の操作も出来るのか…!)

 

 

 

夕焼けを埋め潰す程の大量の呪霊が、逃げる女王を守る為に展開していた。それを隠し蓑に逃亡を続ける女王蜂、痕跡を追えなくなってしまった七海の額に苛立ちの青筋が浮かぶ。

 

あの群れを突破して特級だけを祓うのは不可能、だがあの速度だ、逃げ切られるまで秒読み。その後の惨状はゆうに思い浮かぶ、だが撃ち落とす手段が無い。

 

 

 

「…………」

 

 

 

『お前は頭がかっっったいからな、術式をどう上手く使いこなすかって点だと一生上達しないくらい頭が固い』

 

 

 

『私は術式の扱いにとやかく言える立場じゃないけどな、自分の能力不足で術式もこんなもんなんだ〜なんて、弱気になるな』

 

 

 

『生得術式は、個人が持っている世界……お前の世界は、そんなに脆弱じゃないだろう?』

 

 

 

(……やってみるしか、ないか)

 

 

 

「ここからは、時間外労働です」

 

 

 

妹紅の教えを頭に思い浮かべ、絶対に出来やしない子供の空想事の様な……自分の術式の解釈を、広げる。

 

 

 

「おーーーい!!ゴリラのオッサン!!」

 

 

 

瞑想をしていると先程の少女の声が背後から届いた。

 

 

 

「危ないから頭下げてろよーーー!!!」

 

 

 

振り返った少女の手には、八角形の機械に仰々しい光が集まり、七海の肌をピリピリと刺激するほどの力が集まっている。

 

呪霊に落とされた八卦炉は、呪霊が魔理沙をターゲットから外したおかげで回収できていた。

 

 

 

「急に呪霊共がそっちに行ってくれたからな!!お預けされた分ぶち込んでやるぜ!!!」

 

 

 

「魔砲!【ファイナルマスタースパーク】!」

 

 

 

山を消し飛ばす極太の光線、魔法というには余りにも大雑把過ぎる破壊の光が空の黒を消し飛ばす。

 

夕焼けが七海の目を刺し、人里の空が開けた。

 

 

 

「やっぱり弾幕はパワーだな…親玉はやったか?」

 

 

 

「……いえ、まだ生き残っています」

 

 

 

「げげっ…ミニ八卦炉はオーバーヒートしちまってるし…」

 

 

 

夕日を背に、羽を焼かれた女王蜂がフラフラと飛行している。持ち前の機動力であの大きさのレーザーから逃れきったのか身体に欠損は見られない。

 

羽を焼いた……が、呪霊の肉体は再生が容易い。そうこうしてる間にも体勢を整えようとしていた。

 

 

 

「……ふぅ…すみません、貴方の名前を聞いても?」

 

 

 

「んお?急にどうした?……いやまぁ、私は霧雨魔理沙、魔法使いだぜ」

 

 

 

「では霧雨さん、今から私の話を聞いていて下さい」

 

 

 

術式の開示は、相手が知り得ない情報を自ら暴露する事による…縛りでの自己強化だ。

 

 

 

「私には術式と呼ばれる、個人個人に備わった特別な力があります、そして私の術式は対象を線分した時7:3の比率の点を強制的に弱点とするもの、生物無生物問わずにその点へ攻撃を当てればクリティカルヒットになります」

 

 

 

「お、おぉう…?そ、うなのか?」

 

 

 

「そして、比率を規定しているのは私の『視界』です」

 

 

 

「当てる箇所は考慮すべき人体の重心や長さを含め比率が7 : 3であればいい、細かな人体の箇所にも適用できる」

 

 

 

結局は、その部位の上部に当てても下部に当てても7 : 3であれば術式は発動する。その過程には『観測』という私の視点が挟まれる。

 

 

ならばこの視界を、私が見ているこの風景を……分割すればいい。

 

 

 

『教えてくれないのかって?そりゃ教えられないからな』

 

 

 

『生得術式だぞ?変えられるのはお前だけ…まぁ、似たような事する奴は連れて来たから、考え方はそいつから学べ、おーーい!直哉〜!』

 

 

 

術式対象を空間へと固定する。こんな事出来るはずが無い、なんて妄想だ、失敗すれば相手を取り逃すんだ。

 

 

 

「……」

 

 

 

「それが私の術式、十劃呪法です」

 

 

 

「そ、そうか…」

 

 

 

開示が終わり、鉈を空へと掲げる。

 

 

 

視界に射止めるは夕焼けの向こう側へと逃げようとする呪霊へと。

 

 

 

脳裏には、今まで犠牲になった人達と…死にかけていた慧音が。

 

 

 

「十劃呪法…!!」

 

 

 

鉈を何も無い空へ振り下ろす。

 

 

 

(面を砕く様に…!)

 

 

 

七海建人の今までが込められた一撃が、振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

「ギチッ…ーー」

 

 

 

 

 

呪霊が最後に捉えた光景は、目の前に浮かぶ夕日が…。

 

 

 

ーー真っ二つに別れ落ちる光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ〜!オッサン、外来人なのか!」

 

 

 

「…(オッサン…)ええ、まぁ…後、私の名前は七海建人と申します、以後宜しくお願いします」

 

 

 

「おう!七海のオッサン、宜しくな!」

 

 

 

「……」

 

 

 

人里の呪霊騒動が一段落して、亡くなった方の総数を纏め終わった頃、未だ身体に残る呪いを祓え切れていない慧音が博麗神社で横に鳴りっぱなしな事もあって、空き家と化していた寺子屋に魔理沙と七海はお邪魔していた。

 

 

 

「貴方は…呪霊を祓うのは初めてでは無いんですね」

 

 

 

「あぁ、地上は霊夢…私の親友が一掃してたんだが、冥界と地獄が大変な事になってるって聞いてな、対処に向かった時にいっぱいボコしたぜ」

 

 

 

「……『旧地獄と冥界の崩壊』…幻想郷に一体何が起きたんです?」

 

 

 

「そっか、アンタは知らないよな…それじゃこの魔理沙様が丁寧に解説してやろう!」

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

ーー呪霊。

 

 

呪霊という負の感情、エネルギー、思念体の集まりが、呪術師や呪いの力によって祓われた時。

 

 

『祓われた』呪霊はどうなるか?

 

 

簡単な話だ、自然の循環の様にただ消滅し……消滅した後は、再び負の感情が『呪霊』の形を取る。数千の呪霊が祓われようが、100年後には再び数千の呪霊が現れる。

 

 

ただそれは、人と人、人と自然の呪いの循環の中で、人間により発生した負の『膿』の様にはみ出てくるもの。夏油傑が全非術師の殺害によって術師の救済を目論んだ様に、呪力を垂れ流す人間が居なくなれば呪霊は居なくなる。

 

 

そして幻想郷において呪霊は発生しない、その世界に外からやってきた呪霊が入り込んだ結果……。

 

 

 

「幻想郷にはちゃんと輪廻転生があるって知ってるか?」

 

 

 

「ええ、阿求さんの事情を教えてもらった時は驚きました」

 

 

 

「んじゃ地獄とか冥界の事も知ってるか、お偉いさん方が地脈を弄る前……弄った後もそうなんだが、呪霊によく似た奴が地獄と冥界に居るせいで、ずっと湧いて出てくんだよ」

 

 

 

基本、呪霊の負のエネルギーは一般的な妖怪にとっては猛毒だが、亡霊や鬼、一部の神や悪魔…所謂、不純なエネルギーでも吸収できる種族には一切の問題が無い。

 

 

それなのに、旧地獄と冥界が崩壊した理由は……。

 

 

ーーパンクだ。

 

 

 

 

「亡者に地霊に怨霊に、自我が無い幽霊すら呪霊になっちまう……ーー七海、アンタみたいに『祓う』事が私達には出来ないんだ」

 

 

 

「鬼がキレて全部潰しても、私にゃ分からんが……紫が言うには地獄と冥界で循環が作られたとかなんとかでな」

 

 

 

「あの閻魔様も裁く魂が軒並み居なくなって、呪霊を裁く訳にもいかねぇし…外の世界から流れてくる魂や幻想郷での魂もその循環って奴に巻き込まれて呪霊の発生源になってんだよ」

 

 

 

『これで幻想郷の英雄になれたね〜』

 

 

 

…なるほど、ルーミアの言葉は本当に私だけが呪霊を正しく消滅させられるからだったか。

 

 

 

「…私が無縁塚で見たあの光景は、地上に限ったものだったんですね」

 

 

 

「地上はそりゃ最優先するさ、人間が死ぬと妖怪も共倒れだしな」

 

 

 

無制限、無限に発生する呪霊によって居場所を離れる事を余儀なくされた者は大勢居る。

 

 

 

「これだけで済んでるってのが奇跡的だっつって、過度に干渉するなって紫がうるせぇんだよなぁ……」

 

 

 

「紫…さん、というお方は、相当呪霊関連で尽力なさってる人で…相当気を配ってる風に見受けられますが…」

 

 

 

「まぁな!アイツは死ぬほど胡散臭い奴だが、幻想郷の事になると毎回ちゃんと働くから……前に月が隠された異変の時なんか、いっっつも引き篭ってるアイツがわざわざ私と霊夢の所を尋ねてきたからな!」

 

 

 

「……月が?」

 

 

 

……幻想郷は本当に常識外な事が起きる…。

 

 

 

「ここじゃ常識外が当たり前だ、…よし、色々話し終えたし私も行く所がある、そろそろお暇させて貰うぜ」

 

 

 

「霧雨さんはこれから何方へ?」

 

 

 

「紫の元だ…アイツ、何か隠してやがる…今回の人里での呪霊発生は今まで絶対に無かった事だ、しかもアンタらの所で言う…『特級』?だっけ、あんなに強い奴が紛れ込んできた事も無い、それが丁度アイツの『やる事』が終わった瞬間始まりやがった」

 

 

 

「……」

 

 

 

……やはり、現地の方だとしてもこれは特異な事だったか…何か原因があるのか?『戻らない選択肢を取る』…この襲撃をルーミアは予測していた様に思える。

 

 

何故?呪霊の発生は完全にランダムの筈、それを予測出来るはずは無い。

 

 

 

「タイミングがな、ちときな臭い」

 

 

 

「ふむ…」

 

 

 

タイミング、か。

 

 

 

外からの呪霊の侵入、そのタイミングを知れるのは外と幻想郷を繋ぐ『何か』の把握が必須。

 

 

そしてその『何か』は虎杖君だ。

 

 

 

「…霧雨さん、幻想郷でも最近で何か大きな動きはありましたか?」

 

 

 

「七海のオッサンは勘がするどいな、丁度……ーーあ〜…………その、なんだ……今私が紫の元に向かおうとしてる理由でもあるんだが、口止めされててな…アンタに話していいのかどうか…」

 

 

 

「ーー口止め」

 

 

 

出た。必ずと言っていい程に出てくるその単語……幻想郷の方々は会話に悪意を混ぜない、口止めされてる事を話してしまう程に素直な方達だが…ーー。

 

 

 

「……」

 

 

 

『幻想郷の有権者、大妖怪が賛成した』

 

 

 

「霧雨さん、貴方が今知る限りで…ーー大妖怪と呼ばれる方は、今幻想郷の何処に居るか話せたりしますか?」

 

 

 

「……ーー」

 

 

 

「…霧雨さん?」

 

 

 

「うっ……うぎぎ、その……し、知らんのだぜ〜?」

 

 

 

「……」

 

 

 

「………」

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

『現世へ侵攻する理由は、とっくにある』

 

 

 

「例えば、賢者や大妖怪と言った方々は皆……今の幻想郷には居ないのでは?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「そう、だぜ」

 

 

 

「やはりそうでしたか、しかも直近の事ですよね?」

 

 

 

「何で分かるんだよ!?」

 

 

 

奴は虎杖君を接続端子だと言った、そして手遅れとも。ならば今回の事件その『侵攻』の影響だ。虎杖君を媒介に向こう側へ渡った時にその分の悪影響が人里に降り注いだんだ。

 

もしその事を理解して紫という方が理解して行っているのなら、心底反吐を吐ける外道ですらある。『やる事』はきっと現世へ虎杖君を使った幻想郷住民の転送だ、それにより人里が崩壊する事を分かっておきながら阿求さんのみに秘密裏で伝え、口止めを言い渡した。

 

 

 

「…霧雨さん、私も紫さんの元へ御一緒しても宜しいですか?」

 

 

 

「ええ!?う〜……」

 

 

 

「今回の騒動では多くの方が亡くなられました、子供まで犠牲になっています……その要因に心当たりがある人物ならば、私もその方へ言いたいことがある」

 

 

 

多くの人が亡くなった事実、そしてその言葉を受けて魔理沙は教室のイスに座り、背もたれへ体重をかけて前へ後ろへギシギシと揺らしながら考える。

 

 

 

「…それもそうだな」

 

 

 

思い浮かぶのは、人里の皆の遺体。

 

 

 

「七海のオッサンもアイツからちゃんと話を聞かないと駄目だ、よし!なら早速マヨヒガに…ーー」

 

 

 

ーーイスから立ち上がる瞬間の事だった。

 

 

 

「なっ」

 

 

 

「おわッ!!?」

 

 

 

霧雨魔理沙が、そのままの姿勢で…『真下に落ちる』。有り得ない現象だ、一瞬で姿が見えなくなり、先程まで彼女が居た場所には何も無くなっている。

 

 

 

「今の切れ目は…!?」

 

 

 

落下する瞬間、彼女の真下に広がった謎の『切れ目』。

 

 

 

(…焦るなこれが恐らく『口止め』…ーー)

 

 

 

 

 

 

「初めまして、七海建人さん」

 

 

 

 

 

 

 

悪寒。

 

 

 

あの時と、アレ(ルーミア)とは比べ物にならない程の悪寒。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

「うふふ、そう怖がらなくても大丈夫ですよ?」

 

 

 

振り向けない、振り向いた瞬間に己の命に死神の鎌が掛けられる予感がする。

 

 

 

「…貴方が……いや、貴方は、人里に出る、被害を分かって…」

 

 

 

「ええ、概ね貴方の想像通りです」

 

 

 

「……」

 

 

 

「でも、勘違いなさらないで下さい…私はその様な心を持たぬ事はしません、これも必要な事の1つ」

 

 

 

「必要……?必要、ですか」

 

 

 

「そう、必要な事」

 

 

 

「ーー貴方が幻想郷の守り人である為の、ですが」

 

 

 

「っ…貴方は…!!」

 

 

 

「呪術師というものは、世のため人のため呪霊を祓い続けるものだと聞きました……あぁ、ならば七海建人さん」

 

 

 

 

 

 

「…ーー貴方は、これから『不幸』に見舞われる無垢の民を、見捨てる様な真似は致しませんよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おわぁぁぁぁ!!!??落ちるぅぅーー!?!?」

 

 

 

ーー埼玉の空を落下する魔理沙。

 

 

 

「飛べ…ーーない!?嘘だろ!?」

 

 

 

「あ゙ーーー!!!?私のミニ八卦炉ォォーー!!」

 

 

 

「クソッ!!紫の仕業だな!やっぱアイツ何か隠してたんじゃねぇか!!」

 

 

 

苛立ちながらも現状をどうにかせねば、と解決策を模索する。このままだと地面のシミになって終わりだ。

 

 

 

「ッ!そうだ!!昨日採っておいたキノコ!どこだどこだ!!?」

 

 

 

ポケットをガサゴソと大急ぎで漁り、空中に多くのガラクタをぶちまけながら1つのキノコを取り出した。

 

 

見た目は非常に悪く、紫とピンクが降り混じった何処からどう見ても毒を持っているキノコだ。

 

 

 

「頂きますっ!!ってしまっ…ーー」

 

 

 

丸ごと1つキノコを齧り飲み込もうとするが、風圧に負けて傘部分しか食べれなかった。

 

 

 

ーーすると飲み込んで数秒後、魔理沙の身体が…キノコへと変化する。

 

 

 

中々の速度を持って落下していた魔理沙の身体は、ヒラヒラとした薄く大きな傘を持ったキノコへと変貌することで、その落下速度を急激に落とした。

 

 

数分空をヒラヒラと舞って…地上が近くなり始めた時。

 

 

 

ぼふんっ。

 

 

 

 

「クソぉ!変身時間がーーー!!」

 

 

 

人の姿へ戻った魔理沙は、とある家屋へと落下して行ったのだった。

 

 

 

 

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