ーーー平安初期。
「端整な顔が台無しだなぁっ!焼き尽くしてやるよ!!」
「貴方の血化粧、似合ってるわよッ!!」
いつも通り行われる殺し合いを眺める。広く大きい敷地に屋敷を移して良かった、こんな戦いを人の都近くで行ったらどれだけの被害が出るかも分かったもんじゃない。
「ァァァ゙ッッ゙!!!゙」
獣の様な雄叫びが空から響いてくる。視界を覆い、空を覆い、月を覆ってあまりある炎の鳥が球になって落下していく、目測でも分かる…アレが地に落ちれば数百年ここら一体は死の大地へと様変わりするだろう。
その威力の分、先程の神速にまで迫っていた火炎による加速力は失われている、避けるのは容易いが…。
「難題 【火鼠の皮衣 焦れぬ心】神宝【サラマンダーシールド】」
「…避ければいいのに、本当…輝夜は…」
空中でそれを全身で受け止める姫。どうせ…別に避ける事で地上が滅びるのは関係無しに、ただ受け止めたいだけなんだろう。
火の玉は空に赤の爆発を発生させるも、そのまま消化される。
「捕ま゙ぇた…!」
「なッ」
「神宝…【ブリリアントドラゴンバレッタ】」
妹紅の背骨を砕きながら、周囲に現れる虹のレーザーを自分諸共貫かせると、体制を崩した妹紅と共に地面へと落下していく輝夜。
2人の上空からは雨よりも激しいレーザーの並が迫る。
「今宵は…」
「私の、勝ちね」
地面へ叩き付けると、能力により一瞬でその場を離れ去った。
妹紅の視界を虹の光が埋め尽くす。
「…クソ」
■
「輝夜」
「な〜に、永琳」
「…随分と機嫌が良さそうね」
「そう?」
私は、あの生物に関する研究を一切辞めにした。無駄だからだ、あの個体をどれだけ研究しても結果は帰ってこない。その代わり姫の事を考える時間が増えた…というよりは、前に戻った。
蓬莱人である2人の決着は一生着かない筈なのに、毎日毎日藤原妹紅は殺意を煮えたぎらせてここへやって来て、それを姫は全て受け止める。
私には分からない、永遠に理解出来ないものだ。理解出来ないものは、理解出来るものを通して分かりあって来たが……ある1つの分野を除いては、もうそれもやり切った後だ。
大人しく……姫が楽しそうに語る言の葉へと耳を傾ける。
「ーーそれでね?妹紅ったら、昨日『一生かけての呪い合いだ!』って言ったのに、それも今日になれば忘れちゃっててさぁ〜…本当、1度自覚させてあげた方がいいと思うのよ」
「…そうかしら」
「そうよ!妹紅ったら幾ら指摘しても『お前との殺し合い以外に考える事は無い』って……あんの無自覚タラシ…!!」
「……」
呪い、ねぇ。
地上に現れる恐怖の化身、妖怪。それらの活動源は人間の感情エネルギーである事は分かっている…そして、それらとは別に発生している『負の感情エネルギーの結晶体』である呪霊。
不可解な事だ、人間の複数の意識が混ざりあった存在が自立して動く……言わばカオス、言わば負荷でしかないモノが自意識を所有するとは…。
「……」
「調べてみなきゃ分からないわね」
藤原妹紅が使用しているエネルギーも呪霊を構築するモノと一致している、もしかしたら唐突に月が来なくなったあの十数年に関わりがあるのかも……ーー。
「…」
辞めた、って言ってるのに…ーーこれも、研究者の性かしら。
「ーー永琳!聞いているの!」
「あぁ、はいはい…ごめんなさい」
「全く…まぁいいわ、それでね…ーー」
■
ーーーそうして、殺し合いは続き…2年後。
結局は呪い……そして『呪術』というものに対しても調べ尽くしてしまった。なんて事は無い人間の機能の1つでしか無かったのは落胆に値するのだけれど……伊邪那岐と伊邪那美の喧嘩が影響してたか。
呪術は人間の変異の1つね。私的には…恐らくこれからを生き残る上では圧倒的に『呪術を扱える者』の方が生存確率は高いから、いつかは進化になると思っているわ。
あの喧嘩で人間がこうなるか〜なんて思いながら、目の前の死体の脳の解剖を進める。
変異して産まれた呪いを扱える様になる脳回路、それさえあれば誰でも呪術を扱えるみたい、それでいて人個人によって回路の形は異なり……その回路を通して呪いをエネルギーに変換して行われる事象もまた異なる。
安倍家の子は……その違いを術式、そして扱える存在を呪術師と言っていた。
「ま、答えは見つからないか…観点は魂であってそうだけど」
フラスコベイビーでもやって、人工的な呪術師でも作ろうか悩んだが…そこまで手間暇かける事でも無い。ただ藤原妹紅が呪術師である事だけが分かったからそれで十分。領域とやらもただの発展形で、そもそも不定形エネルギーを研究し続けてきたから仕組みにも疑問は無かった。
脳の解剖もこれ以降はお終い、研究も暫くは辞めようかしら…。
「……今宵も月が綺麗ね」
研究所の窓から月光が差す。
1ヶ月に1回の満月も、私達の感覚からすれば毎日来ている様なもの、落ち降る様な星空も見飽きれる程の夜を過ごしてきた。
「……」
…1度、姫に聞いてみた事がある、その日もこんな満月だった。
『どうして妹紅と殺し合ってあげてるの?』
『意味なんて、無いでしょうに』
意味なんて無い、そう…蓬莱人たる私達には、あの戯れに意味は見いだせないはず。
『ある、と信じているからよ』
『…?』
『そもそも殺し合いなんてものに高尚な意味があると思ってるの?永琳らしくもない』
『……』
『私とあの子の戯れに意味があっても無くても、信じているのよ』
『誰にも分からないものを信じるしかない』
『それがどの様な真実を内包していようと』
『私達が求めている答えが、そこにあるって』
「……」
「『そう信じて、前を向いている限り私はあの子に答え続ける』」
「…やはり、分からない」
だから私は、識る事を選んだというのに。
知り得たい事は、未だに何一つ…ーー。
「……」
「……ん?」
ーー『それ』は、迷走する思考を置き去りにして…。
唐突に始まった。
「計器が…」
最初に始まったソレは、太古に掛けた地球と月の航路を捻じ曲げる術が維持出来ているか観測する為の計器のオーバーフロー。
「……プランク時間が…!?!?」
思考は即座に術の制御へと切り替えられた、地球と月を繋ぐ航路…それをプランク時間へ擬似コンバートした上で、出発と到着の運命の岐路を数多に分岐させて別次元の月へと送り飛ばし、収束。
永遠の同一存在である月の都はその分岐に対して全同一である事を利用して対消滅を免れている。
その術を、現在進行形で誰かに踏み荒らされていた。
「有り得ない、多次元解釈に干渉出来るのは蓬莱人と月人と……ーー」
「……」
「
計器が知らせるのは……。
ーー月の都の、崩壊。
「……」
後から理解した事だった、この時は…初めて、頭が真っ白になる経験をした。アレは不老ではあるが不死では無い月人にとって、劇物過ぎたのだ。
強さ弱さは関係ない、アレが月の都に住まう存在に勝てるとは到底思わない……だが、相性というものがある。
私が、輝夜が蓬莱人であったから気付かなかっただけ……アレのおぞましさを理解する事を…放棄していたから……。
「な、何故……何が…!?」
「輝夜…輝夜…!!!」
大慌てで寝室へと向かって……襖を吹き飛ばし、輝夜に会いに行って…。
「い…ない…どこに、何処に行ったの…」
私が勘づけ無かった事から、須臾の能力を使ったのだろうけれど……慌て過ぎていた私は頭が回らずに……。
ーーその後の現象を、ただ受け入れるだけしか出来なかった。
「……」
「…炎?」
■
燃えていく、全てが燃え去っていく。
地球が、月が……都が、町が、人が。
目の前の全てが。
フェムトファイバーが焼け落ちる等、起きてはいけない事象だ…月の都が滅んだ?有り得ない、何が起きた。
「輝夜……」
全てが、灰になっていく。
「輝夜…輝夜…!!」
地平線の彼方まで、白く、灰色へと。
「輝夜ッ!!!」
「何処に居るの…!」
唐突過ぎる、こんな、こんな事が何故…急に、一体何があって…。
「……」
「……!!」
灰色の海を踏みしめ、前へ進み…。
漸く、彼女の姿を視界に捉えた。
「かぐっ…」
そして、白と黒の髪が織り織り交じった
「ーー貴方を抱けるのは私だけよ」
「永遠に消えない愛を、貴方にあげるわ」
「永遠に……?」
「……」
「私に下さい、永遠の愛を」
なんっ…藤原…妹紅…?アレが…?
「……」
「愛は、永琳さんにも分けてあげられますか」
「ふふっ…駄目よ、永遠も愛も…貴方以外にはあげれないの」
ーー違う。
あれは…
「約束は覚えている?」
「…」
「私は」
「輝ける夜を照らす、光」
今は無き月の夜空を眺める。
輝夜の目の前に膝立ちをすると、髪色は白一色になっていった。
「そして、お前を永遠の炎で焼く女だ」
灼熱の炎がその息吹を吐いた。
何も知れず、何も分からず、何も出来ず。
「ーー待って」
「輝夜…」
■
『輝夜!!』
『輝夜』
『輝夜ッ!!!』
『…ーー輝夜』『輝夜』『輝夜』『輝夜』『輝夜』『輝夜』
『輝夜』『輝夜』『輝夜』ーーーーーーーー……。
「……ーーう…ぉ゙ぇぇ゙ッ……」
胃の中の全てをひっくり返すような衝撃に襲われて、内容物を全て吐き出しながら……あの縁側へと七海は戻ってきた。
優しく背中をさすられ…薬を飲まされて安静を取り戻すも、あの光景が脳裏に焼き付いて離れない、人が1人1人焼け落ちて、溶けてはくっついて…その臨界点を超え、灰になっていく姿が。
そして、脳内を埋め尽くす無数の灰の世界を迎えた記憶を。
「…あの後を、語りましょうか」
「地平線までが灰に染まったあの日、平安中期辺りだったかしら……あの日、地球上の全ての生命は1度死滅し、灰に変わった…他世界に存在する者は除いてだけれど」
そして始まった、
「全てを忘却……いえ、焼却され、世界は輝夜とルナが出会う以前へと戻ってしまった」
恐らく、術式による力だろうが…検証できない以上、何も分からない。世界の複製?巻き戻し……?予測できるのは、『再生産』だが…。
「その後は全て同じ流れ、同じ選択、同じ結末へと至る事になる……恐らくは因果律の固定が発生したのでしょう」
仮定が肉付けされれば、恐ろしい事になる。
「世界は、何百回と灰に変わり…私は、その分の絶望を味わい続けた」
その分死者は無限に増え続け、魂の管理所…地獄はパンクしてしまう程でしたでしょうね、あの地獄の女神が干渉してこなかった謎もあるけれど、そもそも彼女が手を下した所で藤原妹紅は殺しきれない。
そして…言わば、今この世界に生きている全ての生物は死人なのだ。予測だとしても、循環によって時は巻き戻す事等出来ない…私も、記憶を消されただけだろう、根本的に蓬莱人は殺せない。……けれど、記憶も何もかも1度リセットされた存在が同一とは言いづらいだろう。
「……」
「一時的に彼女は己の術式を拡張して…ーー世界全てを同一に複製する事で『あの時間』を繰り返し続けたのよ、あらゆる魂までも全て複製する事でね」
循環の本質は発生と収束、それによる帰結だ、戯言だと聞き流すことは簡単、誰もそれを証明出来ないのだから。
ーーだが、複製されていないという証明をするのも出来ない。あの瞬間から世界に『未来』は失われた、絶対的に閉塞された世界の因果は決して破られることは無く、永劫にそのループを繰り返し続ける。
「この世界にはズレがある、1000年から2000年程度のね…認知出来ているのは私と輝夜、藤原妹紅その人のみでしょうけれど」
「…ぅ……で、すが…」
「その…複製が何故、止まったのですか…?」
…それは……。
「それは」
今でも夢に見る、月に、夜に…私の脳に、張り付いている。あの子が全ての代償を支払って取り戻した『未来』、そして私の今までの記憶。
「…それは……輝夜が…」
『大空の月の中より君来しやひるも光りぬ…夜も光りぬ大空の月だに宿るわが宿に待つ宵過ぎて見えぬ君かな』
『あの子が待ってるみたいだから、ね』
『行ってくる、永琳』
『後は頼んだわ』
本当は、今までの全てが触れられたくない、私だけの記憶。
彼女が最後に残した笑顔と、そして言葉は…私だけのもの。
「…」
あの日、最後の満月の夜。
彼女は……ーー。
その身を、藤原妹紅へと取り込ませた。
「蓬莱山輝夜が、全てに決着を付けたからよ」
「…何をしたのですか?」
「教えてあげられないわね、この秘密は未来永劫封じ込めなきゃいけないから……というか、今紫が殺そうとしてくれてる相手にも関係あるし」
縁側から立ち上がり、話は終わったと屋敷の奥へと戻ろうとする永琳を……扇子を突き出して紫が止める。
「永琳、貴方が大切にしている記憶は見せなくてもいいの、だから教えてあげられないかしら?私には何をしたかだけは教えてくれたでしょう?」
「む…」
「………」
「必要な事?」
「ええ」
「……本当に、仕方ないわねぇ」
ーー輝夜は、特別な蓬莱の玉の枝になった。
つまり『死んではいない』結論的には封印と言ってもいいだろう。ループの原因になっていた『何か』をそれによって封印し、遂に歴史が動き始めることになる。だが…藤原妹紅の存在が抹消されない限り、輝夜が元に戻ることは無い詰まるところ…不可能だという事実。
最後のリセット、最後の複製…ソレを機に、藤原妹紅は以前の様な苛烈さを失って呪術と結界術に没頭するようになった。原因は私、姫が藤原妹紅にその身を投じた後に私は姫の残し書き通りに藤原妹紅を1度殺害したのだ。
そして記憶を消去、改変した。私はこの手で脳内にカバーストーリーを埋め込むことで『何か』の封印が解かれるのを防ぐ役割を持たされ…竹取物語の様に、蓬莱山輝夜は私と月の民の手によって拉致されてしまったとして彼女に処置を施した。
「あの化け物が今も平穏で居るのは、輝夜がまだ月に居ると思っているからよ」
「……」
思い悩む間を取って、それが現状に何の関係があるのかどうかを聞く前に……少しの不満点を漏らしていく。
「……まず、1つ」
「貴方の記憶の大半が、『何がどうしてこうなった』の『こうなった』部分しか説明してくれないのが非常に不満ではあります、特に後半は顕著だ、全てが唐突過ぎる」
全てを通して、この人の記憶には人間との関わり合いの記憶が薄すぎる…興味が無かったと言われれば納得出来る存在ではあるが、これでは妹紅先生の過去に何があったのかを知る事が出来ない。
最後に見たあの灰の世界も……その始まりを見る事は叶わなかった、何があって、ああなったのか全てが分からないというのは…。
「仕方ない事よ、私視点ではアレが全てなんだから…全てを知るには藤原妹紅を探るしかないけれど、過去を探れば再び焼却が行われる可能性もある、私としては無干渉を貫くしか無かった」
「…2つ、蓬莱人を作った責任者であるのなら、それを殺し得る何かしらも作れた筈では?」
「それらの研究をするには最低限月の技術が必要だったの、船に備え付けておいた物品では到底足りないから、あの期間で作成するのは事実として不可能」
「なるほど、では最後に…その繰り返しを行った理由は分かっていますか?」
「……」
「『答えを返す』とだけ、私に言い残した、それ以外は何も」
結局は何も分からず仕舞いか…だが、これが幻想郷…ひいてはこの現状に関わりがあるとは一体…。
「…歴史の勉強でしたか、これを経なければ知れない事だと?」
「ええ、そもそもこれが『前提』よ…全てが1度死滅し、あらゆる生命は複製後の存在である事を知ってもらわなくちゃいけなかった……永遠を謳う幻想郷が、何故こんな事をしなくてはならなくなったのか」
「七海建人、呪術師の貴方に聞くけれど…呪霊の発生の仕方は、ちゃんと理解している?」
「勿論です」
「なら分かるはずよ、幾百回繰り返された奈良と平安の時間の中で……唯一、藤原妹紅の手による死滅を免れる、別の循環として『巡るもの」が何か」
「……!」
「人間の負の感情…ーーしかも、死によって発せられる呪力エネルギー…!!」
「正解」
指を鳴らして、紫に合図を出すと…沢山の瞳が見つめる謎の空間が空中に裂け目を作る。
開かれた空間からは、話題の中心人物である妹紅が…『窓』の人間をその腕で胸を刺し殺している光景が現れている。
それから続々と空間のスキマが開かれて映し出されるのは……。
ーー呪術高専の、青い夏。
護衛任務の全てを裏で手を引いていた彼女の姿だ。
唖然とするしかない、今まで見てきた藤原妹紅という人物像が全て崩れ去る音を奏で、脳が揺さぶられる。
「彼女の魂には既に兆を超える人間達の死が折り重なっている、呪力総量は世界全てを繰り返した回数分、底無しに増えていき…今では観測すら行えない」
「そして、その内包している術式故か今でも年々彼女の呪いは大きくなり続けているのよ」
「そんな存在が野放しである事が、どれだけ危険なものか……」
「幻想郷の呪霊異変なんてものは前触れでしかない、現在進行形で呪いに押し潰され消滅しようとしている」
「他ならぬ
裂け目が閉じられ、八雲紫が七海建人の目の前へと立ち…そして、青ざめた顔をし続けている七海へと手を伸ばした。
「さて…これで私の言葉を信じる確かな証拠は提示できたかと思います、これすら嘘だと思うのなら…更なる証拠を提示しても構いません」
「……い…え、もう、大丈夫です」
「宜しい、では七海建人さん…」
扇子をパチン、と勢い良く閉じ、声を高らかに宣言を始める紫。
「私達が目指すは人妖共同戦線!」
「互いの世界を…住まう民を守る為にも…」
「七海建人、貴方には2つの世界を繋ぐ掛橋になってもらいたいの」
「まずは…そうね」
「幻想郷を、貴方に救ってもらいましょうか」
■
ーーー都内、ファミレス周辺にて。
燃え盛る店内から袈裟を着た男が現れる。
「なぁ…これは、どういう事だ?」
「あぁごめん妹紅、漏瑚が興奮し過ぎた、日程を変えよう」
「…高級店な、美味しいところ」
「ええ〜?どうせ私の奢りだろう?君の方が金持ちなんだからうどん屋でも…」
「お仲間祓うぞ」
「ごめん」
未だその底を見せぬ策略家は、彼女を見つめ…いつもと同じ様に、微笑みを返すばかりだ。
八雲紫は七海建人へ全てを話してはいない、幻想郷から現世へと侵入した渡来者
1つは浄界と博麗大結界の縁引き。
もう1つは……ーー。
「あ〜、じゃあ…今度皆で山奥にBBQするからさ、それじゃ駄目かな?」
「…呪霊がBBQ…??」
「温泉付き、ちょっと今出張ってる子が帰ってくるまで待つ為にね」
「ん〜…仕方ない、高い肉を買っとけよ」
「はいはい」
呪術史最悪最低の呪詛師、夏油傑の肉体を乗っ取り、加茂憲紀の名で悪行たるを尽くし、今も尚最悪を更新し続ける存在。
羂索の抹殺を、命じられている。