不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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テストも終わり、夏休みに入ったんで更新頻度元に戻ります!!

感想も返していくので、よろしくお願いします!


葬送と獄罰

ーー神奈川 真人逃走後。

 

 

 

「っぶね…死ぬかと思ったよ」

 

 

 

真人は夏油が仕込んでくれた最後のアジトへと辿り着く、アジトと言っても最低限のスペースとあちこちに繋がる地下水路へのみ道が繋がった、所謂セーフゾーンだが…今はこれで十分。

 

 

遅れて青髪の仙女が地上への出入り口から降りてきた。

 

 

 

「うふふ、それも目的通りでは無いのですか?」

 

 

 

「目的なんか無いさ…今まではね、はは…ははは!虎杖悠仁…!アイツの全部を奪ってやりたいなぁ…」

 

 

 

「アイツの取り繕ってる殻を全部剥がせば、また何か掴めるような気がする……さっきみたいにね」

 

 

 

捕食者からの殺意、そして絶対的な死の予感…あの瞬間、脳裏に走った濃密な死と輪廻の狭間。

やはり実感は違った、そして1番の収穫は…宿儺の生得領域に踏み込めた事…!

 

 

 

今なら領域展開も出来る、きっとだ…必ず出来る、その自信がある。

 

 

 

「……」

 

 

 

「アンタで試してみてもいいのかな?先生」

 

 

 

「ええ、お好きに」

 

 

 

「ふーん?」

 

 

 

夏油が連れてきたこの女は信用していない、するなとも伝えられた。

 

 

 

『彼女は敵で味方でも無いから、頼るのは技術位にしておくんだよ?真人』

 

 

 

『所謂ビジネスライクって関係さ、彼女は私が作る世界を望み…私も真人の成長材料が欲しい』

 

 

 

『魂、そしてそれに連なる肉体を操る者としては先輩だ…十分学んで、奪って来ることだね』

 

 

 

 

「何でアンタの魂を知覚出来ないのかも今分かった……」

 

 

 

「唯の人形なんだねソレ、ちなみにどういう術式?」

 

 

 

「術式ではありませんよ、些細な…そう、魂を改造できる貴方に比べれば些細な技術です」

 

 

 

「アハハ!そう言う割には死体の扱いが上手いじゃん」

 

 

 

このセーフゾーンに置かれてある数体の死体。それは真人が改造を学ぶ為に置かれてあるものでは無く……『今も動いている』。

 

 

驚くべき事に、肌は土色のままで生きてはいないことが分かるのだが…しっかりと自立して立っていた。

 

 

 

「魂の相互観測…というよりは、アンタが魂の支配権を握った状態での『生きていると誤認させる』事での傀儡なんて、俺も考えた事なかったよ」

 

 

 

「する必要が無いのですから考えなくても良いのですよ?率直に言えば私の術よりも貴方の術式の方が格も精度も高い、私から教えられるのは少しばかりの調節程度で……ーー」

 

 

 

「いいや」

 

 

 

「俺がアンタを先生と呼ぶのはそれが理由じゃない、俺はアンタの…ーーその、悪辣さと用意周到さに興味が沸いただけ」

 

 

 

「悪辣とは中々酷い評価ですね、人の呪いである貴方からそう言われる様な事もしていないと思うのですが…」

 

 

 

「え~?一々説明必要かなぁ~…?」

 

 

 

だってこの女、命に向ける感情が何も無いし…普通、俺だって『何かしらの感情の機微』はあるよ?ほんのささいな悪感情だったりね?

 

 

 

「な〜んにも無いは初めて見たよ~…アンタのモノもいつかは知りたいから、その時は宜しく」

 

 

 

「あらあら、怖いですわねぇ…」

 

 

 

さて…そろそろオモチャを作りに行かないと、この女にも手伝ってもらって、虎杖悠仁の殻を剥ぐ為の準備をする。

 

 

 

『呪術師』ねぇ…。

 

 

 

ひひ、あははは…はははは!!虎杖悠仁は、己の存在がどれだけ他者の命を奪ったら壊れてるくれるかなぁ…!!!!

 

 

 

「あぁ、それとね、先生」

 

 

 

「はい、如何致し…ーー」

 

 

 

仙女が振り返る瞬間。

 

 

 

『視界』が『手』に覆われる。

 

 

 

 

「領~域展開~!【自閉円頓裹】!」

 

 

 

ちょっとだけ、試させてよ♥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら悠仁ちゃん、これは……ごめんなさい、一足遅かったみたいね」

 

 

 

下水道を帰る途中、この空間でも虎杖悠仁の鼻腔をくすぐる桜の匂いに誘われて道を歩いていると……おどろおどろしい雰囲気を纏った葬儀屋と対面する事になった。

 

 

余りにも強い殺気に、思わず反射的に拳を伸ばしかけたが…この下水道で桜の匂いを纏えるのは記憶にある限り1人だった為に大事には至らずに済む。

 

 

 

「…葬儀屋もあの呪霊を?」

 

 

 

「そうね、あの子は少しばかり…おいたが過ぎるから」

 

 

 

「ごめん、俺が逃がしたから…もうこの近くには出てこないかもしれねぇ、無駄足取らしちゃったな」

 

 

 

「いいのよ、この件には本来呪術師が当たるものだし…部外者の私がここまで踏み込む方が珍しいから、気にしないでちょうだい」

 

 

 

「うっす」

 

 

 

……今更だけど、葬儀屋の事をもこねぇに聞いておけば良かった。任務に書いていない協力者が存在するってのも変な話だし。

 

ダブルチェックはしとけって言われてんのに、気抜いてた…もこねぇにも聞いておくか、任務管理してるだろうし。

 

 

 

「……」

 

 

 

「そうだ、葬儀屋…アンタの名前が知りたいんだけど、ダメ?」

 

 

 

「あら?ん~……そうねぇ、ダメって訳でも…無いんだけど~……妖夢、私の事は妖夢って呼んでちょうだい?」

 

 

 

妖夢…和名にしても珍しい呼び方だ。聞いたこともない苗字ってわけじゃないが、何処か昔の有名な家系でもおかしくない。

 

 

……というか、何処かで聞いた事のある様な…?

 

 

 

「悠仁ちゃん、伊地知さんから聞いたわ…これから『吉野順平』の所へ向かうって、それに私も同伴することにしてもらったの」

 

 

 

「伊地知さんが?」

 

 

 

「ちゃ〜んと正当な手順で任務の情報を得ているから安心してちょうだい、それこそ藤原妹紅にも聞けば分かると思うし」

 

 

 

「……そっすか」

 

 

 

色々懐疑心が残る中、今は取り敢えず吉野順平を優先すべく出口へと差し掛かっていく2人。

 

 

沈黙が場を満たす中で、悠仁の背を見て…どうしてか、葬儀屋が小さく聞こえないように溜息を漏らした。

 

 

 

「……」

 

 

 

この子が、あの『虎杖悠仁』。

 

 

最初見た時は……人としての善性に振り切れた子だと思った、思わされた。壊された人の尊厳に慈しみと哀れみを抱き、そこに拒絶を表した姿に。

私の経験上、呪術師として生きるものはそれが失われていく。非道になっていくのではなく…欠けていく。

 

 

『人として、欠けていく』

 

 

 

「ねえ、悠二ちゃん…さっきからずっと暗い顔をしてるけど、あの呪霊の事?」

 

 

 

「…まぁ、一応それも」

 

 

 

「気にしていることは、逃がしちゃったこと…ではなさそうね。アレが奪った命の事…それについて…かしら」

 

 

 

「…いや、えっと…なんつうか、まだ今は言語化しづらいかな」

 

 

 

「ふ~ん?行き道も暇だから私に一つ一つ紐解いて話してみない?」

 

 

 

「……」

 

 

 

下水道の出入り口に立ち、丁度夕日が二人の顔を照らし出す。喪服に顔を隠す見た目をしている葬儀屋、その夕日に照らされる悠仁の顔と向き合ったまま布一枚の隔てりを経て笑顔を浮かべた。

 

 

 

「呪術師の命は通常の職業を選ぶ人間よりも圧倒的に短く儚い、胸に抱えた感情、思考、己のアイデンティティを吐露する時間もなくその呪いを現世に残すばかり」

 

 

 

「私は…もっともっと、呪術師にも時間が必要だと思っているの、悠仁ちゃんみたいな若い子がそんなこともできない環境にいるのは本当にダメダメな事なのよ?それが自分の選んだ道だとしてもね」

 

 

 

「職業柄よく人の死に寄り添う私は、遺族の方を見て何度も思うのよ……『もっと時間があれば』って」

 

 

 

「だから、関係性も無くて付き合いも一日だけ…そんな私に、話してみない?」

 

 

 

悠仁の頬に、人差し指を当てて茶目っ気を出して頭を撫でる。

その手を拒むことなく受け入れるが…ばつの悪そうな顔を浮かべ、その手をたしなめた。

 

 

 

「…………」

 

 

 

「……呪霊っつう存在に対して、ちょっと悩んでる自分がいる」

 

 

 

「俺はあんだけ知性がある呪霊に初めて出会って、それで純粋に、殺意を抱いた」

 

 

 

「きっとそれは自己中心的なものなんだろうなって、俺が求めてる正しい死を否定されたからあの呪霊を拒絶したんだ」

 

 

 

「……」

 

 

 

「でも」

 

 

 

「『生命は常に道半ば』で『終わりを迎えても価値は失われず等しく尊い』」

 

 

 

それは、小さかった俺にとっては何の意味も見いだせなかった言葉。

 

 

 

「俺の姉ちゃんが言うには、生あるものは全て『大きな何か』の一部だって言ってた」

 

 

 

それは時間だったり、記憶だったりする。生きて、終わって、『終わりじゃない』俺たちはその大きな何か、価値ある何かを構成し続けてる。

 

 

もこねぇは、それを人間が持っている『失われず欠けない価値』だと教えてくれた、それが一個の言葉に過ぎなくても…。

 

 

呪術師の俺にとって、十分な指標になった。

 

 

 

「妖夢、呪霊は…その『何か』を見ていない、でもそれが見てすらいないのか見えていないのか、それとも…」

 

 

 

「全部分かったうえで人間から生まれた自分達も含めて、『何かである必要はない』って思ってんのかな」

 

 

 

「…それは……」

 

 

 

「分かんねぇまま、アイツを祓っても何も変わらないし別に大丈夫なんだろうけどさ、もし呪霊にもそういう価値っていうのが存在するのなら…」

 

 

 

「……」

 

 

 

「俺は、呪術師としてアイツを受け入れてから殺したい、産まれてからの役割がそれしかないのなら、俺は呪術師(役割)として殺す、何度でも、何度呪いが巡っても」

 

 

 

 

ーー悪鬼羅刹に憐みを与えるか。

 

 

悠仁ちゃん、それはその年齢、そして人の身で辿り着いていいものではないわ、人間の枠組みを超えたものにまで慈悲は分け与えるものではないのよ。

 

 

けれどこれは藤原妹紅の影響ね…。

 

 

 

 

「悪人、善人しかなかった世界に呪霊って存在が出てきて…ちょっと迷っただけ、長々とすんませんでした」

 

 

 

「…ううん、いいのよ、聞けて良かった…この貴方との時間は、とても価値あるものだったわ…悠仁ちゃんの言葉は『覚えておく』」

 

 

 

「……もうそろそろ吉野順平の家だから伊地知さんの車があったら教えてくれ、呪霊もらってくる」

 

 

 

「分かったわ、…あ!それと今晩お茶しない?悠仁ちゃんのお話聞きながら晩酌したいのだけれど~」

 

 

 

「遠慮しときます」

 

 

 

「むー…」

 

 

 

 

 

 

 

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