不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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長らくお待たせしてしまい本当に申し訳ございません、今後は緩やかですが更新再開させていただきます。


如来の掌の上

犠牲。

 

 

犠牲とはなんだろうか、『何か』の代償の為に命を落とした事?災難に見舞われてその命を失う事?

 

どちらも同じ死だ、死と犠牲の違いは『どう死んだか』にある。

 

 

 

「……」

 

 

 

呪術師である以上、一生犠牲者と向き合って生きていく。犠牲を生み出す存在を祓うのが呪術師であるのならば、呪霊によって失われた命の責任は……呪術師にあるのだろうか。

分からない、未熟で愚かな自分には答えが出せない、だから妹紅に頼った事もある。

 

 

返答は、『考えるだけ無駄』。

 

 

呪霊とは悪意である、だからこそ呪いだと言えるものだ、他者を害し呪いを振り撒きそうでなければ生きられない存在。

存在しているものは、存在する理由がある。呪霊にも発生する理由があって、祓われる理由がある。

なら考えるだけ無駄だと、呪霊の存在理由が呪術師の役目を果たさせるのなら……。

 

 

そこでの犠牲に、誰も責任を負う必要は無いのだから。

 

 

 

「……くそッ」

 

 

 

怒りが抑えられない、明確に悪意を持って穢され、殺されていった犠牲者が何人居る?

 

 

これは、()()()()()()()()()なんだ。

 

 

あの呪霊を逃して、そして俺のせいで人が死んでる。俺の足止めをする為にあの呪霊が、あの女が犠牲にした人達は…ーー俺が居なきゃ死ななかったんじゃないか?

 

 

そんな事ばかり脳裏に過ぎって、何度も何度も自分の役目を果たせって怒鳴りつけても聞こえてくるんだ。

 

 

 

『俺のせいで』って。

 

 

 

「…ーー」

 

 

 

「着いた」

 

 

 

「この帳は……破れ…ないか、どうする?」

 

 

 

抑えられない怒りは全て自分へ向けられて、一手先を動けと言われ徹底してきたのにここでも思考が鈍る。

 

割り切れる訳ねぇ、でも…。

 

 

 

「何の縛りだコレ…!普通の帳で作れる強度じゃない」

 

 

 

考えろ、もうここにあの呪霊が居ると思っていい。アイツがやりそうな事はなんだ…?俺がイラつく様に、俺が苦しむ様な設定…。

 

 

…ーーまさか。

 

 

 

「……」

 

 

 

虎杖の視線が泳ぐ、空を飛ぶカラス…それが自由に内外を行き来していた。それは帳が通常の強度すら持たず特定の『何か』を弾いている証拠。

 

これを破るには、同等の結界術が必要で…虎杖悠仁にそれは備わっていない。迷走し、悩み果てる中…背後から鶴の一声が聞こえた。

 

 

 

「貴方が虎杖悠仁さんですか?」

 

 

 

「ーーアンタは?」

 

 

 

振り向けば、珍妙な現代とは思えない服を纏う白髪の少女が刀を構えている。敵かと思い呪力を拳に込めたが…。

 

 

 

「幽々子様の従僕、魂魄妖夢です…あ、え〜っと…西行寺様と言えば分かりますかね?連絡を受けてやって来ましたが、貴方を先に助けて欲しいと」

 

 

 

「…!ありがてぇけど、今あの人やべぇ女に襲われてるから先に…ーー」

 

 

 

「幽々子様は大丈夫ですよ、あの方があの程度の輩に負ける事はありません……と言っても心配は心配、とっとと終わらせます」

 

 

 

帳に近づき腰をタメ、一閃で切り伏せる姿勢を取る。

 

 

だが帳に付与された条件は、敵意に対しての堅牢性を持つもの、破壊すると言う意思そのものに反応して条件が達成されてしまう。

羂索が直々に下ろした帳であり、無理矢理破壊するのは困難を極める筈。

 

 

ーーしかし。

 

 

 

「さあ、剣が全ての呪いに穴を開ける、いざゆかん!」

 

 

 

彼女の刀には、あらゆる呪術的要素が含まれない。呪いと生命の境界を断つ刀、西行寺家の従者が主の為に鍛えあげる『白楼剣』。

帳を粉砕し周囲に及んでいた呪い全てを払いきる。

 

指を指し校舎に背を向けた、走り出した妖夢を見送り虎杖は校舎へと。

 

 

 

「頑張って下さい、死後を穢す呪霊が威張り散らかしているのは私とて腹が立ちますので」

 

 

 

「ああ!分かった!!」

 

 

 

「……」

 

 

 

言伝通りに虎杖悠仁を送り届け、一息。

 

 

 

「……うむ、いい子でしたね、幽々子様」

 

 

 

お眼鏡に叶いそうな方で良かった。

 

 

実力も少し不足はあるけれど伸び代はまだまだある。

 

 

 

「決戦に、間に合うといいんですが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー体育館

 

 

 

 

ノロマに動き、身体の動きを何とか制御しようとしている真人。

触れる手は届かず、霧雨魔理沙、吉野順平…そしてその母にも近づけないことに苛立ちを覚えてくる。

 

 

更に腹立たしいのは、吉野順平の瞳に希望が見え始めた事だ。

 

 

 

「ダメだよ順平〜…まだゲームは終わってないんだからさ、そこのクソガキも……そんな事するなら、どっちも殺しちゃうね?」

 

 

 

「やってみろクソ野郎」

 

 

 

「はッ!天邪鬼…お前の能力は事前に聞いてるんだよ」

 

 

 

ぬるりと真人の身体が動き始め、天邪鬼の表情が驚愕に揺れた。

天邪鬼の能力はそう易々と突破されるものでは無い、反転している行動は全て本人の『意識』を参照しているのだ。

 

 

()()()が目的の後退はただ後ろへ歩くだけになる。()()に向かう全てを反転させる埒外にして反逆の鐘。

 

 

 

ーーそれを無理矢理己の脳を改造する事で解決、即時に変形し天邪鬼の首を刎ねにかかった。

 

 

 

「術式は世界、少し頭が足りてないんじゃない?」

 

 

 

「お前とは話す気になんねぇよ、汚物」

 

 

 

一重でかわすも、飛んでひいた少女の鼻筋に赤い筋がひとつ。小さな血の玉が吉野順平の顔に付着する。

 

 

「ひっどいなぁ〜っと、おー?()()()()()()()…そういや物理にも反映できるんだったね、すぐガス欠になるって聞いているけど」

 

 

 

「……けっ」

 

 

 

「あと、多数にも弱いってね」

 

 

 

体育館の隅からわらわらと湧いて出てくる死者たち、醜悪な見た目では無く綺麗な人間そのままの見た目をしていた。

改造人間と違い、仙女が作るキョンシーは死体であるが為に…思考が存在しない。

 

 

圧倒的な物理、物量を売りとする死者の群れが全員を押しつぶさんと迫る。

 

 

 

「……術式は世界、か」

 

 

 

「ならこういうのも想定しとけ…!!」

 

 

 

「……?」

 

 

 

()()()

 

 

真人の身体だけでなく周囲のキョンシー全てが『上』へと落ちた。

 

 

 

「うわすっげ、重力まで逆さに出来んのね」

 

 

 

「落ちとけ…話の邪魔すんな」

 

 

 

天井に貼り付けられる形になり、身動きを取れなくなってしまう真人。

 

 

 

(……おっかしいなぁ…夏油の話だとここまで出来るはずが無いんだけど、アイツ何のバックアップを受けてんだろ)

 

 

 

 

「さて」

 

 

 

「返答はまだか?」

 

 

 

手で彼の頬を掴み、血が出る程掴む。

 

 

 

「…ーーぅ」

 

 

 

「……もう、続ける理由は、無い」

 

 

 

薄れて掠れて、今にも掻き消えそうな声。

 

 

 

「貴方が誰かは、分からないけど…助けるなら母さんと、魔理沙さんを…ーー」

 

 

 

「馬鹿、気づけ」

 

 

 

グイッと首が取れそうな勢いで壇上の2人へと視線を向けさせると…。

 

 

 

「アイツらはもう死んでる」

 

 

 

そう言い放った。

 

 

 

「……ーー」

 

 

 

悪趣味な話だ、生きていると見紛う姿、言葉を話し、息を立て…返事を返していた母は…ーーひっそりと瞳を閉じて物言わぬ死体へと変わっている。

 

 

殺されたのでは無い、元々死んでいた。

 

 

手を伸ばせば変わる、声を出せば変わる、変われる瞬間は何度もあってチャンスは平等に与えられていた少年の健気な選択は、何の意味も無かったという話。

 

 

霧雨魔理沙も同様に、その生命活動は終了している。

 

 

嘘だ、嘘だ嘘だ、信じたくない、信じれ無い。

 

 

「……」

 

 

 

そんな叫びすら、吐き出す余力も……。

 

 

 

「誰かが悪かった、なんて答えは無いぞ」

 

 

 

「…!」

 

 

 

「呪いが人から産まれるものだとしても、お前がその呪いの手を取ったとしても、全ては時の運さ」

 

 

 

「ただ…ーー足りなかっただけだ、運命様ってのに唾を吐く強さが無かった」

 

 

 

『犠牲』

 

 

母も己も、世界が歩む時の流れに攫われただけなのか。こんなくだらない世界の犠牲の一部に……。

 

 

 

「勝とうぜ」

 

 

 

「…勝つ……?」

 

 

 

「ああ、その為に私はここに来た」

 

 

 

「勝つんだ、次こそは天敵(運命)にな、次こそは必ず」

 

 

 

「生粋の天邪鬼として、決まった道なんて歩いてやるものか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼人正邪。

 

 

それは弱き者、妖怪としては小さな力しか持たず古来呪霊と妖怪の区別が無い澄み切った呪力が満たされていた世の中でも矮小な力しか持てずに居た天邪鬼。

時代が移り変わるにつれ呪力が変質し、弱小の妖怪では生きていく事すら困難になった頃の事、あらゆる妖怪達は纏めて幻想郷へと移住する事になる。

 

 

天邪鬼はそも元来神や人に反抗し、人の心中を探り、その姿や口真似をしたりする意地悪い存在で、最後には滅ぼされるという悪者の金型だ。

他者を愛す事はなく、他者に愛されることは無い。

 

平安の魔境と比べれば余りにも平和ボケした幻想郷での生活は、天邪鬼としての生き方を持つ彼女にとっては苦痛と退屈に塗れていた事だろう。

 

 

 

『下克上だ』

 

 

 

その為に策を練った、とある小人に擦り寄った、秘宝を手にし、全てをひっくり返す為の準備を進めて……ーー。

 

 

 

それは結果、唐突に現れた呪霊の手により瓦解する事になる。

 

 

 

仮初の主であった小人は死に、秘宝は穢れた呪力により破壊され、計略は泡沫の泡へと変わり……強者はいつだって弱者に目を向けることは無い、弱者が望む下克上、その視線は常に下から見上げている彼らの強さに惹かれてのもの。

 

 

けれど同じ弱者、同じ視点を持つもの達は…ーー。

 

 

同じ視線が1つでも減ればいいと、願っているものであったのを失念していたのだ、現代の呪霊は同じ弱者を呪う人の呪い。

 

幻想郷の呪霊発生時、幻想郷を管理する賢者達は弱小の妖怪達を見捨て、今の呪霊が‎どのような悪影響を身体に及ぼすかを実験を行い…その犠牲の一部に彼女は含まれていた。

 

その時に触れた感情のその全ては…弱者の嘆きに過ぎなかった事を覚えているのだろう。

 

 

 

「……」

 

 

 

吉野順平が拘束された手の代わりに視線を伸ばす、目の前に差し出された手を取ろうとする。

それは救いを求めて縋る姿では無く…。

 

 

 

「我々は皆弄ばれる弱者のまま、強者が世界を生きる為の犠牲のまま終わる」

 

 

 

「藁にもすがる思いで、強者のお零れを啜って生きてんだ」

 

 

 

船が大破し大海、大海原に浮かぶ藁を握り締めた者が居た。握り締めても浮かび上がるはずの無い数束の藁でも、生を求めて足掻く。

 

波にさらわれ風に吹かれ、もう握る程も無くなった藁に縋った。

 

 

 

「足掻け、目指せ」

 

 

 

それでもその者は…ーー運命に抗う為に藁を掴む。

 

死ね、と言われた運命に。終わりだ、とされた人生に。

 

 

 

「運命に復讐しろ、その力で掴み取れ」

 

 

 

()()()()()の呪力適合者、鬼人正邪はこう叫ぶ。

 

 

 

『「下克上だッ!!」』

 

 

 

と。

 

 

 

ーー()が触れた、その瞬間。

 

 

 

ゆらりと背後に浮かび上がるは…。

 

 

 

吉野順平の式神『澱月』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー同刻、鬼神が迫る。

 

 

 

「…ッ」

 

 

 

帳内に侵入した虎杖は道中の死体と改造人間を破壊し尽くしていた。

 

 

 

「ふーッ…ふーッ……」

 

 

 

ーー総勢347体を5分で殲滅。

 

 

呪力の消耗も程々に、身体に傷1つ無く血濡れで佇んでいた虎杖。

息を整え…その先、痕跡がわざとらしく残された体育館に向かうとその扉を蹴り飛ばした。

 

ムワッ、と噎せ返るような血の風が鼻腔を刺激して瞬間的に身構え……真っ暗闇の中、足を踏み入れ血で奏でる水音を立てながら歩を進める。

 

 

 

ーー声。

 

 

 

「遅かったじゃん、虎杖悠仁」

 

 

 

軽率で、愉快げで、腹立たしい…ーー。

 

 

 

「遅すぎて大体死んじゃったよ?…あっちには逃げられたけど」

 

 

 

「……」

 

 

 

「殺す」

 

 

 

「祓う、だろ?呪術師」

 

 

 

己の怨敵がそこに居た。

 

 

策は無い、『無くていい』。

 

 

 

「うーん……幻想郷側の力量も大体分かってきたし、目的は果たしたし…もうお前に関わる理由は無いんだけど…お前は俺を祓いたくて堪らなそうだし、付き合ってあげるよ」

 

 

 

「逃げ切れると思ってんのか?」

 

 

 

「まぁね」

 

 

 

「………」

 

 

 

歩く速さが上がる、走り、駆ける、までスピードが上がっていく。

前傾姿勢は敵意の現れ、それと共に最大限風の抵抗を受けずにいれる姿勢だ。

 

 

暗闇を火花が照らした。

 

 

踏み込みが体育館の床を貫通すると、落ちるより先にトップスピードへ、狙いは一点。

 

 

 

「ーー少し、俺も成長したかな?」

 

 

 

「クソっ」

 

 

 

真人の両腕が変形、即座に大盾の様に固く分厚く広がると端々から肉の触手が体育館の鉄骨に突き刺さり固定される。固定された分、虎杖は体育館の重量そのものを殴り付けるしかない。

 

 

今の虎杖ならばこの場を更地にするのにも数分とかからないが一撃とはいかないのだ、無論甘い痺れが腕を貫く。

 

 

同時に隆起する肉の山が虎杖の足元を奪った。

 

 

 

「材料ならいっぱいあったからさ!味わっとけよ…『多重魂』」

 

 

 

「……!」

 

 

 

凄まじい力で地面へと引きづり込まれ、死と隣り合わせを実感させられる真っ暗闇……土中へと埋め込まれた。

 

 

(アイツだけの力じゃねぇ…ーー何人分の塊だ…?)

 

 

呪力の配分は8割…いや、全力を出して…ーー。

 

 

 

「がぼッ…」

 

 

 

「絞りカスも役に立つね」

 

 

 

全身に叩きつけられる衝撃は感覚から水…いや、血の滝だと分かる。上から大量の血が流し落とされ、その重さに揺さぶられた。尚も自身を引きづり込んで止まらない肉の山。

 

全力をだそうと力んだ身体はいとも簡単に流されてしまった、節々に力を込め身体を広げ……これ以上地中へ連れ込まれるのを阻止し、血の滝は呪力強化で受ける。

 

 

 

「それじゃぁ〜ね〜虎杖悠仁ー!ありがとうとも言っておくよ、この前殺されかけなきゃここまでやれなかった!」

 

 

 

「待て゛ッ…」

 

 

 

「ガボガボ言ってちゃ聞こえないよ、バイバーい」

 

 

 

「うぅ゛ァァァ゛ッ゛!!」

 

 

 

「ーーマジ?」

 

 

 

突き抜ける憤激そのままに、暴虐を振りまきながら穴をかけ登る。流石に予想していたよりも化け物地味ていたのか真人の反応が遅れた。

 

 

顔面を鷲掴みにし…怒りのまま叩きつけ顔面をミンチよりも醜い状態にまでグチャグチャに叩き潰して、気付く。

 

 

 

(手応えがーー)

 

 

 

「少しは頭冷やせよ、さっきのじゃ足りなかったか?」

 

 

 

分裂…!しかも本物そっくりの精度を保って…!!

 

 

 

「本当にお前には用が無いの、そう怒んないでよ……はぁ、■■ー!お迎えまだ〜?」

 

 

 

誰かの名を呼んだ…筈だが、それは耳障りな雑音になって掻き消えてしまう。だが呼び方的にはアイツの味方だ、迎えとくればそれを阻止する他は無い。

 

 

しかし、身体に変調が起こる。

 

 

 

「ーーーあ?」

 

 

 

世界が逆さまになった。

 

 

 

「っ、違う、錯覚か」

 

 

 

すんでのところで拳を地面に叩きつけ宙返り、曲芸を見せ付けながら着地を行う。

 

 

 

「土鯰を初見で…か、やるねぇ」

 

 

 

「遅いよ■■〜危うく殴られるとこだったじゃん」

 

 

 

「遊びすぎは厳禁って言った筈でしょ?そこまで責任は取れないよ……アレにちゃんと仕込めたかい?」

 

 

 

「勿論、夏油の言う通りにしておいたよ」

 

 

 

「それは上々、あの天邪鬼は単独でこっちに来た身だ……唯一の適合者でも何の縛りもなく居続けられはしない、読み通りって所かな」

 

 

 

(……姿が見えねぇ、声も…なんだ…?)

 

 

 

虎杖から声の主は認識出来ず、同時に声もボイスチェンジャーの様な雑音にしか聞こえてこない。何かしらの術式の効力だろうか。

 

それでも歩を緩める理由にはならない、足のバネを最大限縮めて…ーー。

 

 

 

「■■■■■■ー〜」

 

 

 

ふと、この場に似つかわしく無い音が聞こえる。

 

 

 

「……念仏?」

 

 

 

「『黒玉坊主』さて、遊びはお終い…帰るよ真人、霧雨魔理沙の()()も済んだ」

 

 

 

「はーい」

 

 

 

「…身体が……聞き続けたら不味いやつかコレ…!!」

 

 

 

「正解、十秒以上は聞かないようにーーって聞こえてないか」

 

 

 

念仏は耳を塞いでも聞こえてくる、1秒経つ事に心臓が締め付けられ、死に近づいていく感覚に襲われる。

 

今跳べば届く距離だ、次の手札に何があるかは分からないが死ぬ気で駆け出せばアイツを、真人と呼ばれた呪霊を祓えるが……。

 

 

 

「良いね、実力差も弁えてる……教え方が上手くなったものだ」

 

 

 

ーー別格だ、あの正体不明の存在を乗り越えて真人を祓える気がしない、その淡々とした事実が虎杖に二の足を踏ませてしまう。

 

 

 

「また会おう、我ながら君には愛着があるものでね」

 

 

 

そんな気味の悪い言葉だけが、その場に残っていくのであった。

 

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