不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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自分のスキルツリーが伸びると凄く嬉しいよね

 

 

「幽々子様〜…」

 

 

 

己の主人を迎えに、爆発と死体が喝采闊歩する街中を疾走する剣士。

 

 

何処で戦闘が起こったのかは一目瞭然だ、『死体の数が多い場所』へ行けばいい、主人の能力を考慮すれば直ぐに見つけれた。

 

 

 

「ん〜?どうしたの?」

 

 

 

可愛く返事を返す桃髪の麗人。

 

 

ーー足元から目を背ければ、この後にお茶でもと誘いたくなるような可憐さを持っている。

 

 

 

「…ーーやりすぎですってばぁ…」

 

 

 

魂魄妖夢はあの踏み場も無い死体の波を掻き分けながら、ヘロヘロになってたどり着いていた。

 

 

 

「あらあら、やりすぎもなにも…元ある形に戻してあげただけよ」

 

 

 

「…そうですけどぉ」

 

 

 

「虎杖ちゃんには悪いけど、お先に退散するわよ、妖夢ちゃん」

 

 

 

「へ?何でですーー」

 

 

 

ーーチリッ、と肌に痛みが襲う。

 

 

咄嗟に身構え、主を守らんと周囲を見渡すが…誰もいない。

 

 

 

「“彼”が来たわ、事態を終わらせにね」

 

 

 

肌に刺した痛みは悪寒の現れ、防衛本能が働いた故の反射的なもの。

 

 

 

「ーー五条悟」

 

 

 

「あれが呪術界最強の怪物ですか、でも任務には公的に参加してるんですよね?逃げる必要なんてないのでは?」

 

 

 

「でもねぇ〜?多分今の私をあの子が見ちゃったら、問答無用で消されちゃいそうなのよ〜……妖夢ちゃん、彼から私のこと守れる?」

 

 

 

「も、もも勿論です!!幽々子様には傷一つ…!」

 

 

 

「ふふ、ありがと…意地悪しちゃったわね、妖夢ちゃんにはまだ早いからここは妹紅さんがちゃんと私の身の安全を保証してもらって会いましょう」

 

 

 

「は、はい!……あ、そういえば幽々子様の敵だと聞いた…この死体を操っていた者はどうされたので?」

 

 

 

そう聞かれて……。

 

 

思わず、笑いを誘われかけた。

 

 

 

「…幽々子様?」

 

 

 

「んふ、えっとねぇ…あの子にはちゃんとお灸を据えれたから満足よ」

 

 

 

「そうでしたか、加勢に間に合わず申し訳ございません」

 

 

 

「大丈夫大丈夫、きっと今頃…そうねぇ……」

 

 

 

恨み言(遺言)でも吐いてると思うわ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー東京呪術高専

 

 

 

普段から慌ただしい呪術高専だが、今日は特に騒がしい様子で人手が不足している。

 

 

椅子に座り、ふと周囲を見てみれば目の下にくまを作っていないものはいない、酷い者は目が充血し、体からはすえた臭いがしてくる。

 

 

 

「悠仁」

 

 

 

私もそうだ、ここしばらくこの部屋から出ていない、こんなひどい労働環境があっていいものかと嘆きたくなるさ。

 

 

でも、まぁ……。

 

 

 

「ごめん」

 

 

 

「お前が謝ることじゃない、責任は私にある」

 

 

 

「……」

 

 

 

少し、若者をいたわる時間ぐらい作ってやらなきゃいけないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確認された死者、総勢約970人、負傷者374人。

 

 

発見された遺体元い改造人間は損傷が激しく、圧縮された肉塊のようなものもあり、正確な死者数がわかっていない。

政府はこれを工場から出した有毒物質が家庭用水と混合したことによる事件だと発表。

 

 

呪術高専では名称『真人』と呼ばれる呪霊を特級に認定、窓含め全呪術師は発見次第五条悟に通達を送る様に規定。

 

 

任務に当たっていた虎杖悠仁への処罰は検討中、五条悟現着後、鎮圧された改造人間の解剖は家入硝子が担当する。

 

 

 

「……」

 

 

 

呪霊と関わりを持っているかと推察され、失踪した民間人吉野純平の件については現状の詳細は不明、一応は死亡したとされ捜査は打ち止めになっている。

前代未聞の大被害、しかし、これには幻想郷勢力の加担もあると見られた為、虎杖悠仁の責任者である藤原妹紅に処罰と幻想郷勢力の殲滅を厳命。

 

 

呪術高専で捕縛中の火焔猫燐、射命丸文にも共に幻想郷勢力の殲滅命令を下し、縛りとしてこれを課す。

 

 

以上の総括をもって、任務を終了する。

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

『しっかり休め、責任は私がとるから』

 

 

 

「…はぁ」

 

 

 

嫌気、吐き気、殺意。そういった負の感情が腹の中でぐるぐるぐるぐる廻っている。

 

特訓のおかげか、特訓のせいか、表に吐き出さずとも次第に落ち着けていけるだろう、そもそも俺に激昂する資格は無い。

 

 

 

「…ーー悠仁〜元気ないねぇ」

 

 

 

蛇口から水滴が落ちる瞬間を永遠に眺めていたら、恩師の1人の声が耳に伝わってくる。

 

 

 

「んぁ、五条先生…」

 

 

 

「任務の件、殆ど片付いたからね!ちょっと寄りに来た」

 

 

 

「…ありがとうございます」

 

 

 

(うーん、相当落ち込んでるなぁ…まぁそりゃそうか、でもどーしよ、この後の恵達との再会がこのテンションだと嫌だろうし……)

 

 

 

「……」

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

気まづい時間が流れる中、必死に思考を巡らせて…1つ、思い付いた事がある、この場に五条と虎杖以外の人間が居れば速攻ツッコまれて終わりそうな発想。

 

 

軽く、遊びのような声で五条は告げる。

 

 

ーーそうだ。

 

 

 

「悠仁、ちょっと手合わせしようか」

 

 

 

「ーーへ?」

 

 

 

 

 

唐突、なんて言葉が置き去りにされるその宣告は…虎杖の感情すらも置いてかれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー真人が引き起こした事件の後始末は全て五条悟の手によって終結している。

 

 

街中に存在した数千体を超える人造死体と改造人間を術式により1分で殲滅、現場から身体をボロボロに崩しながら撤退しようとしていた謎の青髪の女も消し飛ばされた。……証拠も残らず、といった事もしてしまっているが。

 

 

しかし、それでもその殲滅速度を考えれば犠牲は少数で終わっていた事だろう。

 

 

 

「僕はほんの少しの呪力強化だけね、術式も使わない」

 

 

 

「…急に何で?」

 

 

 

「ほら、運動すれば色々考えてる事もスッキリするかなって!」

 

 

 

「…ありがと、五条先生」

 

 

 

「いいんだよ、まだ悠仁は若いんだから…ほらほら、準備して」

 

 

 

虎杖の中で渦巻いた感情、そこでの感情の結論、行き場は彼自身決着をつけている。

 

 

『自分のせいだ』と、それは自虐でも何でもなくただひたすらな実力不足故の結論だった。自爆する死体を無視して進めたら、出会い頭に真人を取り逃さなかったら……。

 

 

色々な『もしも』の後に続くのは、己の弱さだ。

 

 

 

「行きます」

 

 

 

「全力でいいよ」

 

 

 

「分かりました」

 

 

 

道場の畳を素足で踏み込むと、一瞬の陥没の後五条の目前にまで拳が迫った、拳を突き出す体勢は整っていて、凄まじい速度でありながらその速度をモノにしている証拠。

 

 

五条の脳裏に一瞬例の男(伏黒甚爾)を想起させる程の速さだ。

 

 

 

「でもまぁ…」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

ーー三回転、虎杖の視界が回った。

 

 

アイツよりは呪力があるだけマシだ、なんて誰にも伝わらない独白を吐き出して虎杖を畳に叩き付ける。

 

 

 

「なんっ…?」

 

 

 

「立てる?気張り過ぎて軌道がみえみえ、運動なんだからもっと気楽にね?」

 

 

 

「…はい!」

 

 

 

五条に先生らしい事は出来ない……が、参考があるのなら、それをなぞれる事位は出来る、自分が妹紅にやって貰ったように。

 

 

最も、今この時間が取れているのは妹紅に全ての仕事を押し付けて来たからなのではあるが……代わりに悠仁を休ませてくれと言われたのなら仕方なし。

 

 

 

「あったんねぇ!!」

 

 

 

「六眼で呪力の流れを見てるから、大体予測できちゃうんだよ」

 

 

 

ブンブンと振り回される拳は五条に掠りもしない。

 

 

 

「はぁ!?ずるいってば!」

 

 

 

「産まれもったものだから狡くありませ〜ん」

 

 

 

「ムググググッ……」

 

 

 

避けては投げられ、避けてははたかれ、避けては煽られる。イライラとしながらも、別にそのイライラは腹に溜まる事は無く綺麗に身体から通り過ぎていくものだ。

 

 

次第に先程までの暗い感情も抜けていき、身体には集中力だけが残る。

 

 

 

「ーーふッ!」

 

 

 

「うわ、妹紅そっくり」

 

 

 

繰り出される死角からのノーモーションヤクザキックは………はは、何度も臓物をぶち抜かれた記憶があるせいで、やけに心がドキドキしちゃうんだよな。

 

 

 

「これ…ならッ!!」

 

 

 

ーー畳返し。五条が床の畳の端を踏み込んだ瞬間、こちら側の端を蹴り潰す。

 

 

 

「壊すねぇ〜…それと機転が良いね、恵にはこっち系のは躊躇する癖がある」

 

 

 

が、その足場に付き合う必要は無く、宙返りで避けられた。

 

 

 

「ハァッ、ふぅ…恵ともやってんの?」

 

 

 

「うん、悠仁が怪しげな特訓してる間にも何度も何度も押しかけられたよ、『強くなりたい』って単純にね」

 

 

 

「…そっか」

 

 

 

「悠仁にも恵にも期待してる、今回の任務は色々あって、そこで出た犠牲にも気を揉んでるのも分かってるけど……解決できる気持ちじゃないなら、次の犠牲を無くせばいい、次、次、その次で犠牲を減らす、その為にも強くならなきゃね?」

 

 

 

「悠仁は、まだ若いんだからさ」

 

 

 

ーー俺なんていうオジサン、置き去りにしてさ!期待してるんだよ…本当にね。

 

 

 

「…俺が大人になったら、先生に勝てるかな」

 

 

 

「そりゃ分かんないさ、でも?まあ?僕最強だから?」

 

 

 

「……腹立つ〜」

 

 

 

「はは!けど僕に勝つ、なんて事を目標にしないでもっと有意義な事に若い間の時間を使いなよ?」

 

 

 

「へいへいっと!」

 

 

 

あの時のヘドロの様な気持ちは何処へ行ったのか、いや…何処かへ行って良かったあの暗い気持ちを忘れ、気持ち良い汗を流す。

 

 

生涯覚えている記憶というものは数少ない、完全にとなれば0だろう、でも虎杖にとってこの瞬間は…妹紅との記憶に近しいものを感じ、これから先も薄れることはあっても忘れる事は無い。

 

 

 

「よし、ここら辺で終わりにしとこっか」

 

 

 

「ぁ〜…はぁ……一発も当たらんかったぁ…」

 

 

 

「いや、ここ見てここ、掠ってはいるから…てかなんで掠るだけで服破けるの??」

 

 

 

「修行の成果!」

 

 

 

(……妹紅から何したか聞き出しとくか)

 

 

 

「よし、それじゃこの後恵達との再会だけど…準備はいい?」

 

 

 

「汗……とりまシャワーだけ浴びてきます」

 

 

 

「オッケー、それじゃ僕は戻って準備終わらせてくるから」

 

 

 

熱気が籠った道場、五条の去り際に…ふと思い付いた事を虎杖が口に出す。

 

 

 

「そういえば五条先生ってもこねぇの生徒なんだよね?」

 

 

 

「ん?そうだけど…」

 

 

 

「それならーー」

 

 

 

さり気ない、本当にさり気ない一言。

 

 

 

「もこねぇに、勝てる?」

 

 

 

「……ーー」

 

 

 

彼にとって身近な存在である妹紅。

 

彼女が五条の先生だと知った時は驚いたけれど……なら、昔は妹紅の方が強かったのか?今は?

 

そんな疑問から出た言葉だった。

 

 

 

「………」

 

 

 

『なぁ妹紅、これから高専の事裏切る予定って…ある?』

 

 

『ある』

 

 

 

「勝つさ」

 

 

 

「だって僕、最強だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー数日前。

 

 

 

「しーごとしごと、お仕事お仕事、別荘に来ても仕事仕事仕事〜」

 

 

 

ファミレスでの羂索との待ち合わせがおじゃんになって数日、こっちの別荘に来ても永遠に仕事をしてまーす…。

 

 

 

「が、終わった!!!!」

 

 

 

「てな訳で、暇だ、真人虐めていいか?」

 

 

 

私の、私の仕事がここまで増えた原因は…お前にあるからなぁッ!暇な時の仕事は最高だがな?忙しい時の仕事程めんどくさいものは無いんだよッ!!!

 

 

 

「やり過ぎちゃだめだよ…??」

 

 

 

「ーーだ……からっ…て…!こんな…ーークソっ!!」

 

 

 

はい、どうも。私だ。

 

 

あの事件の後…… 3級である悠仁に対して特別処罰が下ることは無く、その責任を背負いまして…ーーほぼほぼ上層部の傀儡扱いになっている私だ。

 

 

もうそりゃ酷い目に合わされたよ、仕事は10倍、任務も100倍…比喩だけど。

 

 

 

「ほらほら、もっと私の事見ろ、痛いだろ?太陽直視してるみたいなもんだし」

 

 

 

「イタ!イタタタタ…オェェェ…」

 

 

 

初対面でゲロ吐かれてからこれは有効だって分かってんだからな、もっと苦しんどけ。

悠仁は任務の件で激凹みするし、五条に恩を売る事になったし、事前に聞いてない…あの……なんだっけか、青嫦娥?

 

 

死体を操る仙女、幻想郷でもとびっきりの悪者…ーーっていうのをさっき教えて貰った。

 

 

 

「お前もお前だ、何か目的があるんだとしても計画の妨げになりそうな秘密はやめとけ」

 

 

 

「ナイナイ、カクシテルコトナンテナイサ」

 

 

 

「……」

 

 

 

「ホントダヨ」

 

 

 

「…………」

 

 

 

…止めても無駄だよなぁ、仕方ない、

 

 

ともかくだ、この事件を機に漸く私も動き出せる。私がやる事はどう足掻いても呪術高専側とは相容れないから…上層部の奴らに従ってる形でやりたかったんだよな。

 

 

 

「博麗霊夢は?」

 

 

 

「まだ沖縄を拠点にしてる、妖怪達と違って義体じゃないから活動限界も無いみたいだね」

 

 

 

「なるほど…与幸吉との連絡は打ち切ってるんだよな?」

 

 

 

「必要無くなったからね、数日後かな、高専で開催される対抗戦に乗じて指と与幸吉の命は奪いに行く、縛りが面倒臭いし」

 

 

 

「そうか…始末は私がか」

 

 

 

「そうだよ、宜しくねぇ〜」

 

 

 

現在の目の上のたんこぶ、博麗霊夢は私が計画に加担する事を許さない、そして私も羂索もアイツには勝てない。

 

 

色々考えたけどアレに正攻法で勝つのは無理だ、絶対にな。

 

 

ーーならばどうするか。

 

 

 

「真人、お前も聞いてるだろ?え〜…っと、霧雨魔理沙だったか、アイツを襲う前に教えられてるって」

 

 

 

「ゲホッ、ゲホッ…ぁあ、あれね」

 

 

 

 

 

「『呪霊操術は妖怪にも適用される』」

 

 

 

 

 

ーー誰も彼も、唯一知り得ない情報。

 

 

文献は無く、御三家にすら記録の少ない呪霊操術。思い付くと言えば思い付くし、理屈的には呪霊と妖怪は遠からずのもの、考えれば分かるものなのだが……。

 

 

 

「無意識的に分けてんだよな、皆んな」

 

 

 

「そもそも妖怪と呪霊の違いなんて呪力性質でしかない……ってのも外界から幻想郷をすぐに切り離して引きこもった奴にも、陰険引きこもりも知らない事だろうね〜」

 

 

 

「ってことは、あれか?」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「最終目標は幻想郷賢者の支配、現実も、幻想郷も地獄に変えよう」

 

 

 

 

夏油傑が仕立て上げ、洗礼された術式回路。

 

 

 

今、再び新しい牙を得る。

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