不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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誤字報告ありがとうございますッ!!超激感謝ですっ!


それは満月の夜でした

 

「それで、術式持ちが……あぁちょい、動くなバカ」

 

 

「ギャギィッ…!!」

 

 

妹紅の右手が呪霊を貫いて、そのままビルのコンクリート柱に突き刺す事で呪霊を壁へと縫い付けている。

 

呪霊が暴れれば暴れる程傷は開いてしまうが、それでも何とか逃げようとジタバタと頑張っていた。

 

 

「…言って分かるかなぁ、えっと、術式…持ってる?」

 

 

「ギッ……ガギャァァァッッッ!!!!」

 

 

咆哮がビルに響き渡る、だがただの叫び声じゃない。それは確かに破壊力を持ち周囲に襲いかかっていき、ビルの6階部分が爆発したかのように吹き飛んで、破壊を撒き散らす。

 

 

「ギャヒッ…!」

 

 

勿論呪霊を貫いて縫い付けていた妹紅も無事では…ーー

 

 

 

「…呪力だけの仕業じゃないな、術式持ちか…ありがと」

 

 

 

「ギャッ!?」

 

 

そんな期待を打ち壊して、部屋内のホコリと煙が晴れた後、呪霊は全くの無傷であった妹紅を目にしてしまう。

 

 

「『術式持ちが生得領域の主である可能性が高い』…よいしょっ」

 

 

そのまま縦真っ二つに割かれ、何の言葉も吐けずに…祓われていってしまうのであった…。

 

 

「これで終わりかな?…うん、領域も解除されてる……後は帳を壊してっと、チェック入れとくか」

 

 

「妹紅さんっ!」

 

 

「うん?おぉ、アンタか…どうした」

 

 

「はぁっ…ふぅ…ご無事でしたか、良かった…ビルの上部が吹き飛んだ時はどうなるかと…」

 

 

「…ぁ!しまった、建物壊す前に祓っとけば良かったな…すまん、窓の人……これって補修費は必要か?」

 

 

「大丈夫ですよ、元々放棄予定のビルですから…お怪我も無さそうで良かったです」

 

 

窓の人もとても優しい、私に分かりやすく、伝わりやすい任務時の諸注意を説明してくれたし…面倒見が…いい…。

 

 

……ごめん…なんか、面倒見が良い奴贔屓が過ぎるな…(前例3人)

 

 

「これで任務終了ですね!お疲れ様です!」

 

 

「お疲れ様、あぁそれと領域の主は知性ありの術式持ち、それ以外は全員2級未満の呪霊だったよ…報告書はこんな感じか?」

 

 

「確認致しますね…えっと…はい、はい……はい!これで大丈夫です、この後はどうしますか?」

 

 

「あ〜…そうだな、今日はガキ共との体育もあるし高専に帰るよ、お疲れ様〜…」

 

 

「なら、私が運転するので車で帰りましょうか、妹紅さん」

 

 

「あぁ、頼む…」

 

 

ちらりと窓の人の様子を確認してみると、途中低級の呪霊に絡まれたのかほっぺたに擦り傷があった。

 

 

「少しいいか」

 

 

彼女の髪を手で払って、その頬に触れる。

 

 

「え?ひゃっ…ぁ、あの…妹紅さん…?」

 

 

「……」

 

 

「妹紅さ…ーー温かい…?」

 

 

「すまん、見間違えだった、何も無かったよ…帰ろうか」

 

 

「え、ちょ、妹紅さん……妹紅さん?その、何したか教えてくれません!?妹紅さーん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京校はここ最近での出費が爆増している。

 

 

詳細を言うとぶっ倒れそうになる額だ、1ヶ月毎に億超の高級車が三台吹き飛んでいるようなもの。

 

 

それは何故か。

 

 

「ふんッ!!」

 

 

「ゴホッ…!?」

 

 

()()()だ。

 

 

「傑ッ!クソ…『蒼』!!」

 

 

蒼い光がグラウンドの地面と校舎の壁、生えていた草も木もその光の中心へと巻き込んで破壊の限りを尽くしながら妹紅へと迫るが…。

 

 

「それ何度も打つの辞めとけ、夜蛾さんが泣く」

 

 

「…ーーなんで拳で破壊出来んだよ…!」

 

 

胸ぐら掴んでいた夏油を投げ捨てて蒼い光へと突撃し、そのまま拳が巻き上げられた瓦礫事ぶち抜いていった。

 

 

「私の貯金も無限じゃないんだからな?将来払いしてもらうぞ?」

 

 

「ほぼ無限にあるみたいなもんだろ!もこせん!」

 

 

振りかぶった右ストレートは、妹紅の右半身に当たってから芯をずらされ、そのまま滑るように妹紅が拳を握り締めると狙いは頭へ。

 

 

「はいゲンコツ」

 

 

拳が五条の術式の壁を突破し、その頭から重低音が鳴り響く。

 

 

「ごぁッ…」

 

 

「よいしょっと」

 

 

更にもう一発、拳突破される間に術式と領域の削り合いの際に発生する異音も、妹紅の振り抜いた拳の速度にはついていけず…

 

 

パァンッ!

 

 

といった破裂音と共に無下限の壁は崩壊し、完全に呪力強化する間も無かったのか校舎の窓を突き破って突き刺さった。

 

 

「ぐぅおぉぉぉ……痛すぎるだろぉ…」

 

 

「家入〜打撲患者2名〜!」

 

 

「うわw 最強2人(笑)ボコボコじゃん…w」

 

 

蒼で巻き上げられた土で汚れながら、ベンチに2人共並べられ、家入の他者への反転の練習台となる。

 

実の所、妹紅は他者への反転も施せるが…羂索に口止めをされていて、生徒の皆へは見せていないがそのコツだけでも家入に教えていた。

 

 

「「……」」

 

 

「煽るな煽るな、年季の違いだよ…そう悲観することでも無いさ」

 

 

「年季って…妹紅先生って今お幾つなんですか…」

 

 

「んーーー……んーと…まぁ58ぐらいだな」

 

 

「「「58!?」」」

 

 

(…術式じゃねぇよな……?)

 

 

「5、58でその見た目ですか…?」

 

 

「あぁ、色々あってな…おい五条、お前六眼に戦闘を頼りっきりだったろ、近接戦の詰めが甘い、私の呪力の起こりも流れも見えてないと思うんだけど…」

 

 

「…うん、なんか六眼でもこせんの事…『視えない』んだよね」

 

 

「その『色々』が原因だ、今度からは普通に六眼の機能性だけで戦え、呪力の起こりと流れを先読みできる点で有利を取ってきたお前の課題その1として今回の体育は終了する」

 

 

「…妹紅先生、私は何か変えた方が良いって所、あります?」

 

 

「んー…お前に関しては基礎は出来てる、そうだな……切り捨てる所は切り捨てろ、必要な選択だけ取れって感じ」

 

 

「……?」

 

 

「五条のサポートに行くのか、自分主体の近接戦にするのか、ちゃんと選んでから戦えばもう少しマシになるぞ、3人全員に言っとくがな、縛りも術式も、呪力の使い方も戦闘の仕方も『何を捨てて何を選ぶか』だ」

 

 

「も、もこせんがマトモな事言ってる…!?誰の受け売りだよそれ…」

 

 

「ゲンコツは確定として、まぁ…知人(宿儺)にな、やり方が上手い奴がいたから…それを見て語ってるだけさ、つまり年季、冥冥にも詳しく聞いとけ」

 

 

「年季かぁ……」

 

 

「それじゃ、私はもう帰るから…後は家入にちゃんと治してもらって夜蛾さんに頭下げておけよ〜…お疲れ様でした…」

 

 

あ〜疲れた疲れた……この後に会社行かないといけないのか…。

 

 

…こんなに忙しいのはいつぶりだろうか、退屈で仕事しか趣味が無いだなんて口が裂けても今は…ーーいやこれ高専も全部仕事だったわ……。

 

 

【趣味: 仕事 年齢(一応)58 未婚 】

 

 

「………考えるのやめとこ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の光が部屋に差し込んでいた。

 

 

 

私は今、羂索の家で悠仁の面倒を見ている。

 

 

 

 

 

『妹紅、今日ウチで悠仁預かっててくれない?』

 

 

 

 

お酒飲み放題の条件で承諾したんだが、アンタら夫婦私の事信頼し過ぎだろ……まぁ結婚記念日に出かけられないのもなんだが…。

 

 

我が家への帰路途中にそうして声をかけられて、今羂索の家のソファーで寛いでいるのだ。

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

「ぅみゅ…」

 

 

 

「……悠仁」

 

 

 

「ぁう…?」

 

 

 

「……」

 

 

 

本当に、お前は可愛くて温かいな。

 

 

 

「そろそろ離乳食か……時間が経つのは本当に早い…」

 

 

「……」

 

 

「…はぁ……飲みすぎた……」

 

 

疲れ+酒のチャンポン、羂索の所は美味い酒が多いから不味った。

 

 

「……」

 

 

悠仁が産まれてからというもの、リザレクション(自殺)は辞めてる。

この子に、小さい時に妙なものを感じ取られたら嫌だからな、幼い子は時々超人的な察知能力を持ってる。

自殺して帰ってこようものなら、きっと泣いてしまうだろう。

 

 

「『幼い頃の記憶は、よく残ってる』か……仁さんの言う通りだな」

 

 

「……」

 

 

悠仁も眠そうに私の両腕の中で、ふわふわとした表情で寝かけている。

 

 

部屋の電気を消して、私の炎だけ首筋から漏らし照らす。

 

 

 

「…少し、寝るか」

 

 

 

「……」

 

 

 

「この子がいつか…宿儺の器か……安心しろ、悠仁…」

 

 

目を瞑り、ゆっくりと瞑想していく。

 

 

 

「…もし……羂索がお前に酷いことを計画しても……」

 

 

 

「お前に降り掛かる『酷い事』の責任は……」

 

 

 

「わた……しが……」

 

 

 

「……とる」

 

 

 

「……大丈夫…だよ」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を瞑った筈なのに、随分と月明かりが眩しい。

 

 

 

 

 

 

 

『妹紅』

 

 

 

「…」

 

 

 

満月が、私達を見ている。

 

 

 

『月は、好き?』

 

 

 

「嫌い」

 

 

 

『どうして?』

 

 

 

「…寒いからだ、満月の日は野宿すると冷える」

 

 

 

『アッハハハ!妹紅らし〜!』

 

 

 

「……」

 

 

 

あぁ、でも、本当は違うんだ。

 

 

 

本当は…。

 

 

 

『ねぇ、妹紅』

 

 

 

「なんだ」

 

 

 

『私はね、月が好き』

 

 

 

「どうして」

 

 

 

『……それはね』

 

 

 

『待ってるから』

 

 

 

月が大きくなる。満月の夜、だからでは無い。空一面が月に覆われようとしている。

 

 

 

「……っ!」

 

 

 

『ごめん』

 

 

 

「待てッ!待ってッ!!!」

 

 

「置いていくな!!私を置いていかないでくれッ!!!」

 

 

 

本当は……ーー

 

 

お前が悲しそうな顔をするからなんだ。満月は嫌いじゃない。

 

 

 

『ごめん、妹紅』

 

 

 

「輝夜ァァァッ!!」

 

 

 

殺したいお前の顔が、悲しげに映るのが嫌だからなんだ。

 

 

 

「置いて……いかないで……!」

 

 

「置いてくな…」

 

 

 

満月はもう、私を見てくれていない。

 

 

 

「私を……1人にしないで…」

 

 

 

きっとそれは……

 

 

 

「1人なんかに…なりたく……ないんだ…!!」

 

 

 

身勝手な呪いを、お前に掛けたからだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……かぐや…」

 

 

目を覚ますと、顔が濡れていて…。

 

 

「…悠仁」

 

 

そんな私の顔を、じっと見ていた悠仁が…私の頬に、触れてくれた。

 

 

「……」

 

 

「ごめんな」

 

 

「先にちょっと寝ちゃってたよ…起こしちゃったかな……」

 

 

「……」

 

 

【蓬莱山輝夜をこの世界に引きずり下ろす】

 

 

「…ごめん、ごめんな…ごめん悠仁……」

 

 

私の呪いが、私が私に、アイツに掛けた呪いが廻っている。

 

 

「ごめんっ…」

 

 

 

 

 

 

 

「ーーただいまー!!もこー!起きてる〜!?仁さんベロベロだから寝床開けてーー!!!」

 

 

「本当に最悪のタイミングだよお前ェッ!!!顔見せんなァァァ!!」

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