不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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すぐ傍に居て 遠く離れていた

 

 

「貴方」

 

 

「殺すで」

 

 

昔の俺はよ〜足りんもんが多かった。

 

 

『よく頑張ったな、次のステップ行ってみるか?』

 

 

化け物なんて言葉が負けるほどの女、ずぅっと見下してた女という種別に負けて、舐められて、向こう側(あっち側)から手を振られた。

 

 

『強いよ?私が知ってる術師の中でも割と上位だ、認めてやる』

 

 

初めてアイツに触れられた時にそんなことを言われた、別に嬉しくとも何ともなかったし、逆に切れそうなったわ、舐めてんちゃうぞって。

向こう側に行くには強さも頭も何もかも足りとらん俺に、その言葉は虐められてる気分にもなったけど…。

 

 

『ちゃんと誇った方がいい、私が他の用事よりも優先してんだからな、本当に丁度いい暇つぶしだよ、直哉』

 

 

『本当によく頑張ってる、いつかは壁も乗り越えられるさ、その時まで付き合ってやる…何、私の寿命は長いからな』

 

 

()()()()()

 

 

『私はお前を愛でもしない守りもしない、子ども扱いもな、お前が一生懸命もがいてる間は目を離さずに入れる、何せ直哉の反応は飽きないし面白いから』

 

 

 

『頑張れよ、期待してるぞ』

 

 

…。

 

 

人間かどうか疑問やったけど、会話して分かったわ、そもそも人間やなかったんよ、アイツ。

 

 

化け物でもなかった、まだどっちかでいてくれる方が良かった。弱いことは罪、向こう側にいる奴らからすれば俺らは全員等しく塵かゴミ。

けなしてるわけでも煽ってるわけでもない、それがアッチ側の奴らの視点で、俺ら弱者からすれば等しく理解不能の怪物。

 

でも人間は人間や、俺らからそう見えても根っこは人の感性が残っとる。だから甚爾くんは死んでもうたし、五条は壊れたまんま。

なのにアイツは…向こう側で手を振りながら…。

 

気付けば、俺らの後ろ(こっち側)から背中を押してんねん。愛でもしない守りもしない?アホ言うなよ。

 

 

俺らはな、それを憐れみ(慈愛)って呼んでんねん。

 

 

こっち側まで来んな、弱者の罪まで背負おうとすんな。

 

 

 

(空気の面を、加速した世界の中、呪力で叩く)

 

 

(俺が加速しきった後は亜音速までいける、でもそれじゃ足りん、だから何かが必要やった)

 

 

 

邪魔でしか無かった空気抵抗、大気の流れを足場とし、直哉が線の動きから3次元へと進化する。

 

宿儺程の強者であってもその核心を掴むまでは行えなかった『空を走る』事、その仕組みを太古の戦いによって理解していた妹紅の指導により…。

加速した後にのみ限り、大気の面を叩く事を成し遂げる。

 

直哉の素質もあっただろうが、最も習得に影響したのは投射呪法の仕様によるもの。

投射呪法の加速は音速に迫る、故に常人では理解し難い『大気の流れ』と常に付き合わなければいけないし、己を24分割された空間に自然な動きで形成する以上、彼の身体は無意識的なレベルで大気の流れを突き破る感覚を覚えていた。

 

 

 

「…ーー」

 

 

 

射命丸文の視界の反転、音より早く迫ったソレは、遅れて聞こえてきた煽り言葉と同時に彼女の首を撥ね去った。

刃物を使わずとも、今の彼ならば速度だけで首を落とせるのだ。

 

 

 

「ッと、危ない危ない」

 

 

 

クルクルと宙を舞う頭をガッシリと掴み、一瞬残った射命丸の意識によって睨みつけたまま崩壊していくのを眺める。

 

 

愉悦、弱者を虐げる喜びからは卒業しても…。

 

 

 

「ん〜堪らんなぁ、お前、一瞬なら俺より早いやん?」

 

 

「それやのに隙晒し過ぎて退散とか、ちゃぁんと向こう側の奴らに顔向け出来たらええね?」

 

 

 

勝利の悦楽はよく身体に染み渡った。

 

 

土塊となって崩壊した頭を捨て去って、視線は次の獲物へ。

 

 

 

「…虎杖悠仁」

 

 

「妹紅の義理の子ね、はいはい」

 

 

「……」

 

 

「…………はいはい、義理ね」

 

 

「……ーー」

 

 

「…(イライライライラ)」

 

 

「…かるぅく締めに行ったるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待つんだマイシスター!!何故逃げる!?」

 

 

「うぎゃぁぁああーー!!?神奈子様!諏訪子様!!助けて下さいぃっ!!変態が追ってきますぅぅ!!」

 

 

「変態!?待て、シスター!俺がお前に集るハエを叩き潰してやる!誰だその変態とやらは!!」

 

 

「貴方ですよ貴方!せめてその『シスター』って呼び方辞めません!?」

 

 

「うぅむ、だが俺らは幼い頃からの仲、姉御の様に慕っていた今までを無しにするのは難しい」

 

 

「何なんですその記憶!?私小さな頃に貴方みたいな人と会ったことありませんけど!」

 

 

「ふふ、照れるなよマイシスター」

 

 

「…………(あ、もうダメだこの人、気絶させなきゃ終わらない)」

 

 

 

呪力を形成、形を練り両腕に纏わせパワードスーツの様に動きと連動させる。お得意の神力と巫女の力、呪力のハイブリッドで作られる仮想の腕は細身からは想像出来ない程の斥力を発揮する。

 

東堂の目から見ても乙骨憂太に迫る呪力量、いや…それよりも凄まじい『出力』に目が奪われた、以前の交流会では乙骨の莫大な呪力が細い蛇口から漏れ出す様子しか見れず、祈本里香に蹂躙されてしまっている。

 

 

 

「素晴らしい、流石は姉御、流石はマイシスターだ!だが…」

 

 

「それじゃぁ駄目だ」

 

 

「ほへ?」

 

 

 

踵を返して殴りかかってきた早苗、己の強さには自信がある、妹紅にすら怪物地味ていると評価されているその出力は振るえば打ち勝てる者はいない…筈。

 

 

 

「ぬぅッ!!」

 

 

「オワーーァッ!?」

 

 

「発想が硬いぞマイシスター!術式と聞いていたが、それは呪力特性だな?せっかくの長所が丸つぶれだ!」

 

 

「っ」

 

 

 

拳を腹で受け、腕を掴み取り後方の木へと投げつける。早苗の火力に耐えた事も驚きだが、全身を強化している早苗を投げ飛ばす筋力も驚きだ。

 

東堂本人にはそれほどの呪力量も出力も無いのだが……。

 

 

 

「マイシスター、ひとつ聞こう」

 

 

「…なんですか?」

 

 

「何故、()()()()?」

 

 

「え?そりゃ…かっこいいからですよ!パワードスーツは浪漫の塊です」

 

 

「流石マイシスター、浪漫をよく分かっているが……それはそれ、このままでは俺はお前を姉御と慕えなくなる、そして俺にも勝てんぞ」

 

 

 

気持ち悪い発言はさておき、早苗に勝てないと申し付ける東堂の表情に嘘は無い、絶対的なフィジカル差があって、術式を縛って尚勝てると断言していた。

 

 

苦い顔を返すが、いつまでたっても修行で妹紅に攻撃を当てられない事、そして受け止められてしまうことを思い出して真剣な表情を返す。

 

 

「……」

 

 

「納得出来ないだろう、分かる…が!シスターには超えてもらうべき壁がある!」

 

 

「例えばその身に纏い大きく形成された呪力の塊、術式でないのなら余りにもロスが多い、動きと連動してるとはいえそれで殴るだけで如何様にも受け止め切れる」

 

 

「拳本体が届く事が無いからだ、呪力で強化された肉体での肉弾戦をするならばその膂力も活かさなければならない」

 

 

「…そうなんですか?」

 

 

「ああ、目に見えてしまっていることも減点だな、呪力は使うものである認識なのはいい、だがそれを己の身体から切り離して考えてしまうと動作にラグが生まれてしまう…!!」

 

 

「虎杖悠仁を見たか?あの状態、身体の端々、先から先まで『身体を巡らせた』呪力操作による身体強化は、マイシスターの身体能力に引けを取らない」

 

 

 

敵であってもマイシスターはマイシスター、呪力をただ使っている状態ではこれから先煮詰まってしまう事だろう。

 

それより前に、俺がマイシスターを迷える道筋から救い出さなければならん!!

 

 

 

資料(ダーテン)は確認してある、巫女としてシスターは活動してきた……だからこそ、『力』は『借りて使うもの』というのが染み付いているんだろう」

 

 

「しかし呪力は違う、呪力はこの世界の全てを廻り、巡っているんだ」

 

 

「1つ聞くが、その形成した呪力をマイシスターは身体に回せるか?呪力の塊を自身の身体に循環させ、パワードスーツを纏った状態になれるか?」

 

 

「ーー確かに…!私、周囲にコレ作れても、素の身体を強くする奴出来てないんですよね」

 

 

「ふむ、やはりな…基礎の基礎、そのまた基礎が欠けていたか、見た所勝手に循環させている呪力と…『何か』だけで凄まじい身体能力を発揮していたせいで、Mrs妹紅も勘違いしていた様子」

 

 

 

巫女としての神力、呪術師としての呪力が身体を巡る早苗にとって、呪力操作の練度は高く保たれているし、身体能力は常強化出来る状態にある。

 

しかし、それは無意識的に行なっていること、本来は褒められるべき素晴らしい事なのだが、逆に早苗本人が自覚して行う事が出来ていない。

巫女として人生の大半を捧げた早苗にとって、己の力量を超える力を行使する=神の力を借りている認識であるからこその欠点。

 

 

 

「巫女として産まれ、力に使われる人生、か…マイシスター、早苗よ…今俺がその楔を解いてやる…!!」

 

 

「縛られてませんし!貴方に頼んでませんけどね!?!?」

 

 

「遠慮するな!さぁ行くぞ早苗!!」

 

 

「あー!もー!やったろうじゃないですか!」

 

 

 

練った呪力を沈め、ファイティングポーズを構える早苗。日々の組手の成果を活かし、上裸の変態に向け拳を繰り出して、同時に足蹴りを食らわせようとする。

 

 

 

(凄まじい膂力!だがこれでは無い!)

 

 

「ふッ!!」

 

 

「受け止めーーぐッ…」

 

 

「俺からの愛のムチだ、受け取ってくれ」

 

 

 

足払い、からの平手打ち。すっ転んだ姿勢のまま早苗が地面を転げ回る。

 

 

 

「イテテ…うーん、中々難しいですね」

 

 

「ならコレを忘れないでくれマイシスター、先程も言ったが呪力はあらゆるものを巡っている、生命無機物問わず、自然法則として全てに流れ、廻るもの」

 

 

「その大きな循環の中に俺達も居る、呪力は『命』を『行う』事の一部にすぎん」

 

 

「早苗、お前は息をするのを誰かに『される』事で行っているのか?心臓を動かして、生きる事を誰かに『してもらって』生きているのか?」

 

 

「産声を上げるため、生きる為に深く息を吸う時は、誰かの手によるものでは無い、己が生きる為のもの」

 

 

「俺達は、全身全霊でこの世界に存在している」

 

 

「…ーー」

 

 

 

頭の中を通り過ぎる涼やかな快感、目の前に落ちる葉がやけにゆっくりに見える。

心の中にあった隙間に、ピッタリはまり込む様な言葉が心から脳まで駆け巡っていく。

 

『早苗は、早苗自身の為に生きてね』

 

ずっと身近な人に言われ続けていた気がしてならない、大切な人に言われ続けてきた気がして…。

 

 

 

「…神奈子様、諏訪子様…」

 

 

「……」

 

 

「どうだ、やれるか?」

 

 

「ええ、少し昔を思い出しました、ずっとずっとすぐ側にあった結論です……ふふ、そして認めてあげますよ、東堂さん…いえ、マイブラザー!!」

 

 

「…!!!」

 

 

「姉御として、マイブラザーには負けてられません!」

 

 

「早苗ェッ!それでこそマイシスターだ!!こぉぉいッッ!!!」

 

 

 

ーーこの場に2人以外の人間が居れば、絶望のため息が吐かれたであろう、そしてこう呟くのだ。

 

 

 

変態(イカレ)が増えた、と。

 

 

 

 

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