不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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さようならは届かない 其ノ壱

 

 

ーー俺の勝利条件はただ一つ。

 

 

 

五条悟へ連絡を繋げること。

 

 

 

そして俺達が用意した兵器は三つある。

 

 

 

河童には契約がなんであるか、履行日に俺がどうなるのかは話していない、アイツはただ単純な好奇心と研究心で俺に付き添ってくれていた。

 

 

一つ目は傀儡操術によるブロック体の傀儡、河童の力を借りて大量生産したコレはシンプルな質量攻撃からホログラムによる偽装、一部は兵器を内蔵し呪力に頼らない攻撃が主体だ。

 

 

対真人の為に、傀儡には幾つかの呪物と河童が分割した魂を互いに観測させ、相互補完させる事で破壊されても元に戻る様にしてある。無理矢理その魂を歪められる事が無いように俺の蓄えた呪力で保護しながらな。

 

 

 

二つ目はこの身体、肉体と連動し俺の蓄えた呪力を使って動く究極特殊装甲武装究極メカ丸。これは河童が持ち込んできたリュックサック……そこに内蔵されていたナノテクと埒外の技術が使われたロボットを纏わせた対夏油傑、真人用のモノ。

 

だが俺が幾ら莫大な呪力を蓄え、究極特殊装甲武装究極メカ丸を動かそうと真人と夏油、二人への勝ち目は無い。この世のどんな術師よりも高い出力でヤツを焼こうが無為転変での肉体再生の呪力効率を俺では上回れないし、殺しきった後も問題だ。

 

蓄えた呪力を使い切る算段では残る夏油に勝てず、節約してはジリ貧、しかし俺には河童が居る、勝てる道筋が空から舞い降りてきた。

 

 

 

三つ目はーー。

 

 

 

 

 

 

チャージ五年ッ!!

 

 

 

「オプティカルカモフラージュ展開!スピン・ザ・アルティメットセファリックプレート充電完了!」

 

 

 

「ーーハハハハッ!!!」

 

 

 

壁から次々と飛んでくるブロックは、鳥になって空を翔る真人をシミに変えんと意志を持っているかのように襲いかかる。

真人の視界がブロックに埋め尽くされている間に、あの巨大なロボットの姿が消えた。

 

魂での位置感知もあちこちまばらにある反応に惑わされ、アテにならないと悟る真人は、囲んできたブロックから現れた現代兵器に呆れ顔を晒す。

 

 

 

「オモチャ…というには手が込み過ぎじゃない?」

 

 

 

ブロックの表面がスライドし、鉄釘が飛び出してくる。周囲全てのブロックから針千本の如く射出される極太の鉄釘は真人をハリネズミ…ではなく、唯の肉片へと変える。

 

相当な速度で射出される鉄釘は、一本掠るだけで身体ごと持ってかれてしまうもの、だが攻撃はそれだけで終わらず……。

 

 

 

「ーー自爆ね!」

 

 

 

射出動作に赤熱し、機能を失ったブロックが爆発する。

 

空中に舞う爆炎の中心で、真人が身体を膨張させた。自爆しようとしていた残りを全て質量で吹き飛ばし、身体に刺さっていた鉄釘諸共周囲へ弾き飛ばす。

 

 

 

(さぁ!何処から来る!!)

 

 

 

先程姿を消したのは目視で確認済み、吹き飛ばしたブロックと鉄釘は全方向に散らばっていった…!なら、何処に隠れようとも位置が特定出来る!

 

 

 

「……」

 

 

 

ーーガギンッ。

 

 

響くのは、虚しく壁にぶつかる鉄釘の音のみ。

 

 

 

「……………」

 

 

 

迷走、フリーズ、混乱、驚愕。

 

 

一秒未満に満たない思考停止は、刃の切っ先が命に指をかけるのに十分。

 

 

空を飛ぶ真人の真下の位置、風景が闇に落ちる。

 

 

 

「ーー真下かッ!?」

 

 

 

「正解だよお兄さん!!」

 

 

 

「一刀両断だ、喰らわせろ!メカ丸ッ!」

 

 

 

加速し、せりあがった勢いのまま下段から上段へと丸鋸が振り上げられる。回転する緑の刃先の一枚だけでも真人の全長を超えるその武器は、その回転速度だけで機構との接続部分が焼け落ちそうになっていた。

 

 

 

(喰らうか?全部の回避は間に合わないな、別に直撃しても痛手じゃ無い……だが最初からコレを携帯はしていなかった…)

 

 

 

(そもそもこの地下空間どこまで広がってんだろ、真下まで潜ってここまで来たのならコレ格納出来るって事、もっと色んなモン隠してんのかな〜)

 

 

 

(……ま、いっか!)

 

 

 

喰らってみよう、それが単純な好奇心からもたらされた結論。

 

 

そしてその結論は既に、二人の技術者が導き出した後だ。

 

 

 

「「勝った」」

 

 

 

「ーーァあ゛ッ…!?」

 

 

 

刃が身体に滑り込む感覚。

 

 

ーー同時に、魂が削り殺されていく。

 

 

真人は算段を誤った、己の術式への過信、絶対不可侵の能力を有する術式は虎杖(天敵)以外、常人、人間である以上は誰にも破られないと高を括って……ーー努力すれば避けられたはずの攻撃を受ける。

 

 

だがしかし、与幸吉は既に真人の対策を済ませている、河童の存在そのもの、義体に乗り移った魂だけの存在(研究資料)がそこには居た。

 

 

 

(慢心と油断、人間の呪霊であるお前は『成長』を得た代わりに、その驕りで死ぬ)

 

 

(一発だ、最初から一発だけしか狙ってなかった)

 

 

 

全て、見てきた。

 

 

だからこの一発は当たる、当てられる、当たってくれるとな。

 

 

狙いは最初から……。

 

 

 

『『一撃必殺』』

 

 

『メカとか、デッカイロボット作る時には……やっぱり必殺技だよな、盟友!』

 

 

 

 

「お前相手に全力は出さない、但し本気でやらせてもらう」

 

 

 

「さっきの兄ちゃん(ラスボス)の前座お疲れ様ってな!!」

 

 

 

「お゛前…らッ…!」

 

 

 

「狩りだなんてほざいてたな、ハナからこっちは勝つつもりだったぞ、真人」

 

 

 

「ク゛ソが…離脱…ーー」

 

 

 

藁にも縋る思いで身体の分離を謀る真人に訪れる高音の起動音。青い極光が武器を振り上げるロボから聞こえる。

 

必死にもがくも、刃を押し付けられる馬力に勝てず壁へと打ち付けられ……。

 

 

 

「両手が塞がってるからって別の攻撃が来ないとでも?」

 

 

 

「ーーッ!!!」

 

 

 

「河童、次が本番だ…その前に、一発ぶちかますぞ」

 

 

 

「勿論だよ!盟友!!」

 

 

 

「「チャージ二年!!!」」

 

 

 

「撃て!」

 

 

 

「「究極(アルティメット)バブル・ドラゴンキャノンッ!!」」

 

 

 

周囲が焼き焦げ、空気が白熱する高温が放たれる。

 

 

プラズマによるビーム砲では無く、破壊を目的としない押し留める事を主題とした質量を有する兵器の直撃。

 

 

真人の瞼が落ちる瞬間に映ったのは、一面の青。

 

 

稼働限界を迎えた丸鋸と共に……再び爆発が地下を彩った。

 

 

 

ーードカァァァァァアアアンッ!!!!

 

 

 

 

「……」

 

 

「盟友」

 

 

 

「あぁ」

 

 

 

「「……」」

 

 

 

ロボの頭部、二人が座する空間には無言の静寂と…。

 

 

パァンッ!

 

 

という、ハイタッチの音が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下から聞こえる爆発音と、呪力の弾ける感覚。

 

 

上に居た二人は感じ取っていた、与幸吉の苦心の策を。

 

 

 

「中々やるね、特級レベルの出力だ」

 

 

 

「おいおい、万が一があるぞこりゃ」

 

 

 

「なに、その時はその時さ…心配しなくてもいいよ、妹紅」

 

 

 

鳴り響く轟音は次第に地上へ近づいてきている、自然溢れる周囲の風景は無骨な無地のコンクリートへと姿を変え、二人の足場も地上へと押し上げられる。

 

加速は止まらない、ダムの地下から地上へと、大量の水を暗闇へと葬り去りながら世界が開けていく錯覚すらある規模で空が拓ける。

 

 

 

「うわっとと、流石に気合い入ってんな」

 

 

 

「彼らが勝てるとするならここだけだ、水を操る河童がダムに居る」

 

 

 

「鬼に金棒だな、メカ丸も河童も技術者だし……どっか相性が良くて惹かれあったって訳か」

 

 

 

吹き荒れる水飛沫、真下からは水が何か赤熱したものに触れて蒸発する音と……。

 

 

与幸吉の声が、聞こえてくる。

 

 

 

《無駄話は終わったか、夏油》

 

 

 

「まぁね、そっちはまだ生きて帰るつもりなのかい?」

 

 

 

《勿論》

 

 

 

ーー地上に出る。

 

 

ダムの水が蠢き、現れたメカ丸へと次第に纏わりついていく。

 

 

人工的な赤い眼光、今この場を生きて帰る強い意志が、命を宿さない機械越しに伝わってきた。

 

 

 

「でもね、少し気が早いと思うよ」

 

 

 

《…何?》

 

 

 

「君たちの相手をするのは私でも妹紅でも無い、真人だからね」

 

 

 

ーーバチュッ。

 

 

……そんな破裂音が聞こえたのは、夏油のセリフが終わってからだった。

 

 

頭部に座する己の傍、外部からではなく内部。

 

 

近く、すぐ近くから聞こえた生々しい破裂音は誰から聞こえたものか、すぐ分かった。

 

 

己の顔に、冷たく、熱い、胸を貫いた時にも感じた命の熱が降りかかるのを感じて……ーー。

 

 

 

 

「……ーー河童ッ!!!」

 

 

 

 

少女の右目が崩れていく。

 

 

 

絶望は、まだ始まったばかり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふがっ」

 

 

 

「……あれ」

 

 

 

寝てた?いつの間に…?あれれ、確か虎杖さんを仕留める為に加茂さんと一緒に動いてて……それで…。

 

 

あれ?刀が…無い?

 

 

 

「うーーーんと……えーと」

 

 

 

『眠れ』

 

 

 

「……」

 

 

 

「…あーー!!!わ、わた、あぁぁぁ!!」

 

 

 

やらかしたー!!!??ヤバい!加茂さんが今頃二人がかりでボコボコにされてるんじゃ…ーー。

 

 

 

「ラック!ラックッ!!ハンガーラックの素材ぃぃぃ!!!!」

 

 

 

「…ひぃやぁぁぁ!?!?!?ちょ、ちか、誰!?嫌ァァァ!?約立たず三輪でごめんなさいぃ!!!」

 

 

 

「ラックゥ!ラックゥ!!!」

 

 

 

「ミッ゚」

 

 

 

あぁさよなら家族の皆んな……これから仕送り出来なくなっちゃった……変な人に素質があると言われてひょいひょい着いていってごめんなさい、約立たず三輪でごめんなさい……。

 

 

あ、でも死ぬ前に保証金とか貯金は全部あげるように言ってるので暫くは美味しいステーキでも食べに行って……。

 

 

 

「加茂〜!三輪がまた寝たわ〜」

 

 

 

「……はぁ…もう、放っておけ……東風谷早苗!」

 

 

 

「はいはーい!そこの貴方!『喋らず動かないで』!」

 

 

 

「ラッ……ーー」

 

 

 

「ふぅ、これで……って、加茂さん?おーい?加茂さーん?」

 

 

 

「ーー(おい!我々まで掛かっているではないか!!)」

 

 

 

「(流石はマイシスター、凄まじい能力の規模だ)」

 

 

 

「あれぇ!?」

 

 

 

あたふたと慌てる言葉の無い加茂憲紀を見ていると、嫌でも何を言ってるのか伝わってくる。

現在、試合会場全域に居た人間に限り早苗の周囲を惑星の周期運動の様に漂っていた、死ぬほど不機嫌な直哉や虎杖、呪詛師から歌姫等の教師まで吸い寄せられている。

 

 

 

「……(なんでこんなことになってんだ…)」

 

 

 

最後尾で呪霊狩りを行っていた伏黒も巻き込まれており、早苗の呪言の効力も最後に受け、何も分からないまま上空へと引き寄せられた。

 

 

 

『うぉぉぉぁああ!!???早苗ー!!早苗ッ!!防御!防御しなきゃ死ぬぞぉーー!!??』

 

 

 

『防御!?防御って言ったってどうすればいいんですかーー!!?』

 

 

 

『え、えっと、……止まれって叫べ!全員磔にしてもいいから最優先に自分の命だ!!早苗が死ねば全員ここから落ちる!!』

 

 

 

『っ…!分かりました!』

 

 

 

懸命な判断の結果、一度全員が早苗の周囲で固まる事になる。狗巻の呪言の効力を上塗りする形で発動した早苗の呪言は、寝入っていた者も全員叩き起し、そして花御の領域内に居た二人すら、領域を崩壊させて連れ去った。

 

身動きが出来ないのも不満が出たので周期運動させたはいいものの、今の早苗には範囲を絞れる技術は無い、呪詛師だけ、とはいかず全員に効力を発揮してしまう。

 

 

 

「『喋って』はぁ、大変ですねぇ、コレの維持」

 

 

 

「ちょいちょい、東風谷…そこの呪詛師共だけでもどうにかなんないの?」

 

 

 

「むぐぐ、やれるならやりたい所なんですけど」

 

 

 

「金槌もピコハンも釘も全部落としちゃったし、てかコレどうなってるワケ?なんでウチら襲撃受けてんのよ、ここ高専のど真ん中なんだけど……そこの気持ち悪い奴はラックとか意味わかんないことしか話さないし」

 

 

 

「アンタは何か知ってんの?女みてぇな髪してるそこのお前」

 

 

 

「僕?僕のこと〜?さぁ〜ねー何も知らなーい」

 

 

 

「…ーー顔だけじゃなくて声も腹立つな……」

 

 

 

「え〜?ひっどぉーい」

 

 

 

「それが腹立つっつってんのよ!」

 

 

 

呪詛師とやぁやぁ口喧嘩するのを他所に、伏黒が暗い表情をする虎杖へと声をかけようとするも……粘度の高い水の様に、声が喉に詰まる。

 

 

原因があった、それは吸い寄せられる直前の事。

 

 

黒猫……いつの間にか逃げ出していた火焔猫燐との会遇。

 

 

 

『お前……誰だ?』

 

 

 

『伏黒恵さん』

 

 

 

『貴方のことは見てきました、あれ程のペットを……いえ、式神を操る優秀な術式を持ち、判断力に優れる貴方に一つ忠告を』

 

 

 

『虎杖悠仁を信用しないで下さい、そして藤原妹紅に属する全ても』

 

 

 

「……」

 

 

 

『何も根拠が無い』状態であの言葉を鵜呑みにする阿呆でも無い、それに虎杖は俺が自己満足で助けた男だ、そして信用、信頼に値する瞬間をずっと共にしてきた。

 

なら、虎杖は幻想郷から狙われていると考えたほうがいい、虎杖が持っている要素の何かしらが向こう側の琴線に触れているんだ。

 

だからこそ声を掛けたい所……なんだが……。

 

 

 

「…………」

 

 

 

(……本当に何があった?)

 

 

 

「…直哉さん」

 

 

 

「煩い黙れカス」

 

 

 

「はぁ、…ーー直哉さん!」

 

 

 

「…機嫌悪いっつーとるやろ、直接聞けや」

 

 

 

虎杖と直哉は領域から引きずり出される形で早苗の元へと吹っ飛んで行った、刺される直前の直哉は致命傷を負うこと無く、そして虎杖は妹紅の話を花御から何一つ聞き出せずに。

 

 

無言で佇む虎杖には、普段の様子からは想像も出来ない圧が発せられている。

 

 

 

「……ーー虎杖、気張り過ぎだ」

 

 

 

「…ごめん、伏黒」

 

 

 

「何があったか話せるか」

 

 

 

「……………特級呪霊から妹紅の話があって、そこでちょっと気になる事があってさ」

 

 

 

「詳しくは聞かないでおく、対抗戦が終わったら話し合おう」

 

 

 

「…分かった」

 

 

 

 

 

晴れきらない暗い影を表情に残す虎杖、何はともあれ講師陣の到着を待とうとしていると…。

 

 

 

 

ーー伏黒の視界に、長髪金髪の呪詛師の背中から、手が取り付けられた刀が飛び出てくるのが見える。

 

 

 

 

 

 

そしてその手の刀には、黒猫が捕まっていた。

 

 

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