不老不死の呪いは巡る   作:カピバラバラ

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今回、五条、夏油視点スタートです。


懐玉ー壱

 

 

『今日からアンタら…じゃなくて、お前らの教師として活動させて貰う、藤原妹紅だ、名前の藤原は血筋って訳じゃ無い、宜しく』

 

 

「……」

 

 

『何級かって?あ〜…ちょっとまって…《妹紅は…1級…》私は1級術師で、術式は持っていない、まぁ気楽にやろう』

 

 

変な奴が来たもんだと、最初はバカにしていた。

 

妙な本と、妙な呪力、おかしな所は多々あったが俺らにとっちゃただの格下、雑魚だと。

 

 

「なぁ、傑」

 

 

「なんだい?悟」

 

 

「もこせんって、ナニだと思う?」

 

 

「……怪物の様な、人間だとしか思えないね」

 

 

人間、そう、もこせんは人間だ。

 

 

「…じゃあさ、なんで飛行機も一緒に乗ってねぇのに先に居るわけ?」

 

 

「……君に分からないことは僕にも分からないさ」

 

 

俺が見ていた世界は、本当に何だったのかと思う程に…もこせんは強かった。術式も無い、呪力も良く見えねぇが化け物みたいな量がある訳でも無い、呪力の効率も、特別な縛りも見ては取れなかった。

 

 

『無い』のか『視えないのか』は分からない。

 

 

だが、そもそも俺らとの模擬戦だと最低限の呪力強化すら……ーー流石にそこまでは行かないが、へんちくりんな結界術だけでボコられたしな。

俺の無下限を拳で破壊するわ、傑の呪霊の2級以下は触れる前に消し飛ぶわ、本当に訳の分からない教師だった。

 

 

「危なかった、飛行機のチケットなんて買った事無かったからな…」

 

 

「…もこせん、飛行機乗ったの?」

 

 

「いや?普通に無理だった、自分以外の手を頼りに空を飛ぶのは何時になっても慣れないし」

 

 

「……」

 

 

飛べる事を自白してる様なもんじゃねぇか…!

 

 

「黒井さんとリコちゃんも無事に着けたか、良かった良かった……一瞬で居場所を特定出来て秒でカタがついたが、それでも攫われた事には違いなかったからな……気分はもう大丈夫か?」

 

 

「はい、ご丁寧にありがとうございます、妹紅様」

 

 

「妹紅でいい、妹紅呼びを遠慮したいなら最低さんで頼む」

 

 

「分かりました、妹紅さん」

 

 

「もこ〜!会いたかったぞー!!」

 

 

「リコちゃんも元気そうだな……っと、急に飛びつくと怪我するぞ、気を付けろ」

 

 

「お主どうやってここまで来た!?沖縄行きの便なんて私達以外の奴は2、3時間もズレてるのに…!お主も2人みたいに術式とやらを持っておるのか…?」

 

 

「あいや、そうしようかと思ったんだがな……そういえば冥ちゃんから貰ったものがあったんだ」

 

 

妹紅の指先でくるくると回されている車のキーのような物。

 

それで空を飛んでくるなんて普通に考えれば訳が分からないが…。

 

 

「…貰ったもの?」

 

 

「うん、プライベートジェット機」

 

 

「自分の手ってそういう事かよッ!!!」

 

 

「お、ナイス突っ込みだ、五条」

 

 

「…ねぇ悟〜…1度私達が妹紅先生に基礎教育をしておいた方が良いんじゃないの…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「めんそーー〜れっ!」」」

 

 

青い空!白い雲!透き通った海!

 

 

…といった絶景と最高のリゾート地を堪能する五条、天内、妹紅。

 

 

「理子様ー!お怪我なさらない様にー!」

 

 

「キモー!キモなのじゃー!!」

 

 

「アッハハハハ!!ナマコ〜!」

 

 

「ヒトデだ!ヒトデって実在したのか!?食べれるのかな…?」

 

 

一通り浅瀬で遊んだ後は、海の奥側へと進んでいき、泳ぎ始めている。

 

 

妹紅が一旦海から上がったかと思えば、妹紅がどこからチャーターして取り寄せたのかも分からないモーターボートを乗り回して波を2人へとかけて遊んでいる。

 

 

 

そんな3人を砂浜で見ながら、飲み物を飲んでいる2人。

 

 

「妹紅先生…はしゃぎすぎですよ……理子ちゃんを怪我させてしまいそうで見ててヒヤヒヤしますね…」

 

 

「夏油さん、その…理子様がお怪我なさらぬよう…」

 

 

「大丈夫ですよ、黒井さん、妹紅先生は器用な方ですからね、万が一にも有り得ないと思います」

 

 

 

遂には3人でモーターボートレースを始めたのを見て、ふと思考にふける。

 

 

 

 

 

妹紅先生は…おかしな方だ。

 

 

 

 

おかしな人なんだ…。

 

 

 

『五条との差だろ、お前が気にしてる事』

 

 

赴任して1ヶ月程度だったか、訓練と座学を重ねた上で個別に話しかけてきてくれた。

 

 

『差、ですか?』

 

 

『すまん、言葉足らずだった…正確には、いつか置いてかれるんじゃないか、っていう恐怖という名前の病気だな』

 

 

『…そ……れは…』

 

 

『何故分かったのか、みたいな顔をしてるな?…安心しろ、年季と経験談だ、五条や夜蛾さん、家入や七海が言った訳じゃない』

 

 

妹紅先生が言うには、私は病にかかっているらしい。

 

 

『要は、心の底から五条と世界を楽しみたいのに、思ったよりも弊害が多いって顔をしてた』

 

 

『……』

 

 

『お前は五条でも無いし、五条にはなれない、アイツみたいに生きるには余りにも真面目過ぎだ、非術師の為のなんたらは捨てとけ』

 

 

『意義と意味を求めすぎだ、訓練なんて所詮訓練でしかないし、日々の仕事や業務は、どこまで行っても変わる事の無い日常、まだ16のガキの癖にこの世の全てを見てきたみたいな面しても無駄だぞ?』

 

 

『お前の思ってるより日常は残酷だし、お前が考えているより現実は非情だ、だけどそれを変えれる力に手が伸びてるからズレてるだけでな、まぁつまり、なんだ……先生らしいことは本当に苦手なんだけどな…』

 

 

『肩の力抜け、抜けるまで私がお前の事ボコボコにしてやる』

 

 

『理不尽と非現実を見せてやるよ、退屈にすら飽きた先輩からの手解きだ』

 

 

 

それからは、苦しみながら悩み続ける前に妹紅先生に実習訓練を付けてもらっている。

その過程で悟も知らない妹紅先生の技量を見てきた。

 

 

【生得領域を体外に結界として展開している】

 

 

はっきりとは教えて貰えなかったし、その技法も初めて見た……だから、悟を頼ったんだ。

 

 

『本家の書物ぅ〜?』

 

 

『あぁ、頼むよ悟』

 

 

そして手に入れた力。

 

 

【領域展延】

 

 

「……」

 

 

悟とは違って、術式の主体も呪霊格納という外部との接続が基本だったからか、死ぬような努力はしたが約2ヶ月で習得できてしまったんだ。

 

妹紅先生に結界術を教えて貰った事も幸いし、領域展開の習得前に展延を行う『異例』を手にした時…ーー

 

 

胸の中の何かが、すとんと落ちてしまっていた。

 

 

強度は素人の簡易領域未満、術式の中和効果も殆ど無い、身体強化も基本の呪力での強化と何一つ変わらないのに、満足が満ち足りていた。

 

 

「夏油、黒井さん、アンタらは海に入らなくていいのか?」

 

 

「ええ、私は楽しそうにしている理子様を見ているだけで」

 

 

「夏油は?」

 

 

「…私も、今は大丈夫です」

 

 

1ミリも色気の無い、ダイバーの様な水着を着た妹紅がココナッツジュース片手にサングラスを掛けてやって来た。

 

 

「勿体ない、せっかくの旅行なのに…」

 

 

「護衛任務ですよ、妹紅先生」

 

 

「……ぁ、そうだったな…」

 

 

「……妹紅先生…」

 

 

「すまんすまん、海なんて久しぶりだから…なッ!!」

 

 

ココナッツジュースを夏油の傍に置いた後、スタスタと波打ち際までよって、海水を軽く掬ってから夏油へと投げつける。

 

勿論急すぎる攻撃だったので避けれるはずも無く…。

 

 

バシャッ!

 

 

「……」

 

 

「お気に入りの前髪が台無しだな」

 

 

「せ・ん・せ・い…???」

 

 

ぺしょっ……と、夏油の特徴的な前髪が顔に張り付いた。

 

 

そのまま逃げる様に、誘う様に夏油を海へと引きずり込む。

 

 

「まだ子供なんだから楽しんどけ、そういうのは大人の役回りだ、…そうだ、五条ー!!無下限解いとけ!私が見とくからお前も遊んどいていいぞーー!!!」

 

 

「なんてーー言ったーーー!!?」

 

 

「むーーかーーげーーんーー!解いとけーー!!!」

 

 

「…………ーーはは、おっけーー!!!」

 

 

 

遠く、2人でモーターボートを使い遊んでいた五条と天内。妹紅の言葉が届くとサングラス越しに呆けているのがあからさまに見える。

 

それから…サングラスを外して、何かが抜け落ちた雰囲気を醸し出してから全力ではしゃぎ始めた。

 

 

 

「夏油」

 

 

「…なんですか、妹紅先生」

 

 

「思ったより、世界は残酷だっただろ?」

 

 

「………」

 

 

「そうですね」

 

 

「そうかもしれません」

 

 

 

 

私が命題として、ずっとずっと悩んできた事、苦しんできた事は…。

 

 

思ったより、価値が無かった。

 

 

なんて残酷で、無情な結論だろう。

 

 

 

「……」

 

 

人間なら大好きな、『特別』や『能力』。

 

 

それを得た時のワクワク感で、一瞬忘却してしまう程に…。

 

 

呪術師として生きる命題は、日常の風景(クソの塊)と変わらないものだったんだ。

 

 

 

「旅行、楽しめそうか?」

 

 

「…妹紅先生」

 

 

「任務、ですよ」

 

 

「……そうだったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉわぁぁぁぁーー!?!?!?」

 

 

「もこぉーー!!??飛ばし過ぎじゃーー!!!」

 

 

「妹紅さんんんんーー!?!?」

 

 

「おい!!もこせんッ!カヌーってこういう事じゃねぇだろっ!?」

 

 

「本来景色を楽しむものなんだけれどね…それはそれとして、悟、私達に敗北の二文字は無いよ、私達は最強なんだから」

 

 

「なんで傑は張り合ってんだよ…!真顔でオールぶん回してんじゃ……お前上手すぎるだろッ!?」

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