相模に心をヤバくされる話   作:ネットコミュ症

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karte 4 俺らは自覚する。

 

 

体育の授業、それは陰キャには大変厳しい授業の一種である

運動の出来ない者は皆淘汰され、白い目で見られる

陽キャになる為に切符としてまず、『運動が出来る』が最低条件なまである

 

何が言いたいのかだって?
つまるところはだ。

結局体育の授業というのは俺ら陰キャにはやってられない授業だということである。

 

そんな授業でやる競技はバスケットボール

 

男女別でコートを使い試合をする形式だ。

この競技に関しては楽な方だ。

 

基本、陽キャの奴らがずっと試合してるから俺は皆に気付かれないようにステルスヒッキーを発動していれば良い


俺は体育館に向かう中、ふと相模の方へと目をやるとあっちもこっちを見ていたようで目があってしまう。

 

思わず目を逸らしてしまいながらも、もう一度彼女の方へと目を向けると、嬉しそうにこっちを見ながら手を小さく振った後、いつも居るグループと一緒に体育館へと歩いて行った

 


相模が見えなくなると共に戸塚から話しかけられる

 

 


「八幡!今日の授業頑張ろうね!」

 

 


「‥‥‥おう‥‥」

 


「‥?あれ?八幡、顔ちょっとだけ紅くない?大丈夫?」

 


「あぁ、‥‥その、風邪とかじゃないから気にすんな‥‥ちょっとな」

 


「??‥‥そう?無理しないでね?」

 

まあ‥‥‥これもある意味、『病』の一種なのかもしれないな

当分治りそうにない。

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

 

 

相模の謝罪から1週間経ちある程度互いの事について話すことが増えては来たが、やはりと言うべきだろうか


たかだか1週間程度で相手の考えていることなんて分かるもんではない

 


謝罪も済んだのだから、これ以上俺と関わる必要も無いだろうとも思っていたのだが

 

何かしら拒否反応を見せようもんならアイツは涙目になる

だから俺が上手く立ち回るしかなくなってしまう

 

その度に何度もある思考が過る。

 

『俺の事好きなのか?』と

 


そんな邪念が浮かび上がる度に俺はその考えを振りほどく

 

 

 


「‥‥アホらし‥‥‥」

 

 

自意識過剰にも程がある。


いつから俺はこんなくだらないことで悩むような人間になってしまったんだろうか

 

恐らく、その原因となったであろう人間の方へと目を向ける。

 

すると、何故か再び『ソイツ』と目が合ってしまう


試合中にも関わらず、アイツは『俺のことを見つめていたんだ』

 

 

 


「‥‥っ‥‥」

 

 

 


俺は思わず目を逸らした
熱くなってる顔をどうにか冷まそうと葉山たちの試合を見るようにしようと思ったんだが

 

突如として女子側騒がしくなる


騒がしい方へと目をやると、相模が涙目になりながら鼻を抑えているのが分かる

そして、相模の下には紅く滴るものが‥‥

 

 

 

「えっ‥‥‥」

 

 


おい‥‥‥おいおいおい‥‥‥まさか‥‥バスケットボールが顔面に‥‥?

パスかなんかを顔面に受けたっぽいが‥

シャレになってないぞおい‥

バスケットボールって結構硬いし、当たり所が悪けりゃ鼻の骨まで‥‥


最悪な場合を考えれば考えるほど、俺に不安や心配という感情が埋め尽くしていく

 

 


「保健室に行った方がいいな‥‥誰か一緒に行ってくれないか?」


「じゃあ、私が連れていきます。さがみん、行ける?」

 

 

 

先生と由比ヶ浜が相模を支えながら保健室へと向かっていく


俺はその後ろ姿をただただ眺めていた


‥‥‥大丈夫なのか


いや、きっと‥‥大丈夫‥‥‥多分‥‥

 

‥‥‥本当に大丈夫なんだろうな‥‥

 

 

 

 

「ヒキタニ〜?そろそろ交代する?まだ出てないっしょ〜?」

 


戸部がチャラけた感じで俺に尋ねてくる
コイツなりの優しさなのだろう

 

 

 


「‥‥いや、トイレ行ってくるから‥‥まだ大丈夫だ。」


「そう?早く行ってきな〜?」

 

 

 


俺は急いで体育館を出ていった

そして向かう場所はもちろんトイレなんかじゃない


‥‥‥本当に、何をやってるんだよ俺は

 

意味が無い。

 

必要性も無い。

 

普段の俺らしくもない。

 

こんな事をしようとしてる俺は異常だという事は俺自身がよく分かってる。

 

 


‥‥まただ‥


また俺は、俺らしくないことをしようとしてる。

 

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

 

 

「‥大丈夫?さがみん」

 


「大丈夫大丈夫‥‥‥多分‥‥」

 


「‥‥血は止まったみたいだけど‥‥一応、病院で診てもらった方がいいよ‥‥折れてたりしたら怖いし‥‥」

 


「‥‥‥うん」

 

 

 

俺は足音を極力立てないように保健室の前まで来ると、ドア越しにそんな会話が聞こえてくる。

会話の内容から察するに、保健室の先生はまだ居ないらしい

恐らく職員室に居るのだろう

中に相模と由比ヶ浜しか居ない。

 

 


「(‥‥なんでここまで来たんだ‥‥俺は‥‥)」

 

 


本当に何をやってるんだ‥‥俺がここに来たってなんの意味も無いだろ‥‥‥

 

 

 

「‥‥ねえさがみん、試合中ボーッとしてたけど‥‥‥なんかあったの?」

 

 


「‥‥‥えっと‥‥‥」

 

 

 

「悩みがあるなら聞くよ?最近のさがみん‥‥なんか‥‥ちょっと変だし、心配‥‥というか」

 

 


由比ヶ浜は心配な声色で優しく相模に問う。

‥‥俺は知ってる。相模の悩みを、その原因も

もし、そのせいで怪我をしてしまったのなら‥‥

 

 


俺は‥‥‥‥‥‥‥‥

 

 

 

 


「‥‥‥あのさ、結衣ちゃん」

 


「なに?」

 


「‥‥好きな人、居るよね。」

 

 

 


色んな感情が脳内を駆け回る中、相模は由比ヶ浜に問い掛ける

 

 

 


「‥‥‥‥えっ!?な、なに急に‥‥」

 


「‥‥どんな人か、一応聞いてみてもいい?」

 


「‥‥‥えっと‥‥‥‥その‥‥‥‥‥」

 


「‥‥‥大丈夫だから、‥‥」

 

 

 

 

相模は、そんな声色で由比ヶ浜に言う。

それはまるで聞かなくとも分かってるかのようだった

言わずとも分かる。

けれど、しっかりと彼女の口から確かめておきたい

彼女の言葉はそんな風に感じ取れた

 

 

 

 

「‥‥多分‥‥‥‥私の好きな人はさがみんの嫌いな人だよ。」

 

「‥‥‥そっか」

 

「‥‥‥その‥‥‥もしかして‥‥その事で悩んでた‥‥感じかな‥?
もしそうなら‥その‥‥ごめんっていうか‥‥」

 

 


「違う‥‥‥違うよ、結衣ちゃん。
『そうじゃないんだよ』」

 

 

 

相模は由比ヶ浜の言葉を遮り否定する

相模は一息入れると共に、再び言葉を繋げる

 

 

 

「‥‥むしろ逆‥‥‥みたいな感じかな‥‥‥」

 


「‥‥‥えっ‥‥?」

 


「‥‥私、嫌いじゃなくなったの‥‥その人、今じゃどうしようもないくらい好きになっちゃってるんだ」

 

 

 

予想外過ぎる言葉に、外で密かに聞いていた俺も思わず目を見開いてしまう

 

 


「あっはは‥‥‥正直、今更私がどうこうしたって、結衣ちゃん達の和に入れるかなんて分からない‥‥それに、アイツにとって私は出来るだけ関わりたくない相手なのかもしれない。
私なんかより、結衣ちゃんや雪ノ下さん、1年生の子だったり、川崎さんだったり‥‥
きっと、私が思ってる以上に難しい話だと思う‥‥それでも‥‥」

 

「‥‥‥それでも、『どうせ無理だから』って言ってまた『悲劇のヒロインを演じるのは嫌だ』」

 

 

 

‥‥‥‥‥相模は‥‥‥‥

 

 

 

 

「ごめんね、結衣ちゃん。
こんなこと言われても困るよね‥‥‥
ずっとこの事で悩んでたの、それでボールぶつけちゃったってだけの話。
だから、誰も悪くないよ。」

 

 

 


‥‥‥相模は‥‥‥‥

 

 

 


「‥‥ううん、‥‥そんなことないよ。
そうだったんだ‥‥さがみんも‥‥‥そっか‥‥‥なんかその‥‥‥ごめんね」

 


「‥‥謝らないで大丈夫だよ。私が全部‥‥悪いんだし‥」

 

 

 

 


相模は‥‥‥俺の事が‥‥‥‥

 

 

 

 

 

「さがみん、本当に変わったね。」


「‥‥‥‥まだ、‥‥‥変わってないよ。」

 

 

 

由比ヶ浜と相模は互いにそう言うと、とても仲良さげに笑い合った。


その姿は今までの関係では見られないであろう二人だった

 

体育の授業も片付けをする時間帯となった。

そのタイミングで相模達も戻ってくる

他の女子達も心配そうに声を掛けていた

会話の内容を少しだけ耳にしたが、どうやら放課後、病院に行って診てもらうらしい。

俺は、密かに考えを巡らせながらボールを片付けていた

 

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

 

 

 

 

放課後となり、皆は一斉に部活へ行ったりや帰宅を行う。

私も不本意ながらも放課後に用が出来てしまった為、すぐに帰るハメになってしまった

私は一応、一言伝えておきたいなと思い、例の彼を目で探したけど‥

 

 

 

「あれ‥‥‥居ない。」

 

 

 

‥‥教室に居ない。

いつものは結衣ちゃんに誘われて奉仕部の方へと向かうんだけど、気が付けば席から姿を消していた

 

結衣ちゃんも若干不思議がってる様子だった

‥‥なにも言わずに帰るのもな‥‥と思った

 

最悪、結衣ちゃんを通して連絡を取れば良いかな、なんて思考を巡らせたがすぐに振り払おうと

 

そんなことをしてしまえば修羅場どころの話ではない‥‥‥

 


‥‥‥いやでも、結衣ちゃんならバレても良いのかもしれない‥‥

 

きっと空気を読んでそれとなく伝えてくれるはずだ

 

今メッセージを送るのも変だし、あとでお願いのLINEを送っておこう

 

私はさっさと病院へと向かう方針へとシフトチェンジした

 

 

 

 

「‥‥‥‥え?」

 

 

 


下駄箱まで着いた私は思わず腑抜けた声をだしてしまう

なぜなら、目の前に『比企谷』が誰かを待つように立っていたからだ。

私が来ると私の方へと向き直る。

 


「え、えっと‥‥‥比企谷‥‥部活は?」

 

 

情報量が多すぎてヒートしそうになりつつ、私は言葉を絞り出した

そんなことを言うと、比企谷は質問には答えずただ静かに『携帯を取り出した』

 

 

 

「‥‥‥え?」

 


「‥‥‥‥LINE、聞いてもいいか?」

 

 

 

その言葉を聞いた私は、目を大きく見開いてしまう。

 

 

 

「えっ‥‥!?‥‥‥えっと‥‥‥い、良いけど‥‥‥‥その‥‥‥いいの?」

 

 

 

「‥‥‥‥今日みたいにトラブルとかあったら一緒に帰れなくなる、なんてことあるかもしんないだろ?

だからまあ、その‥‥‥アレだよ‥‥‥」

 

 

「そ、そっ‥‥‥か‥‥うん‥‥わ、分かった‥‥‥」

 

 


顔を真っ赤にしながら私は携帯でLINEのQRコードを出したんだけど

それを見た比企谷は不思議そうにこう尋ねてくる

 

 


「‥‥どうやるんだこれ?」

 

 


「‥‥え、流石に嘘でしょ?わからないの?」

 

 


「知らんわ、由比ヶ浜とやった時は携帯振ったらなんか追加出来たし、それやんのかと思ったんだが‥‥‥えーっと‥?」

 

 


「‥‥‥ぷっ‥‥‥‥い、今時LINEの追加の仕方も分かんないなんて‥‥‥流石に変だよ比企谷」

 

 


「変で何が悪い。
特別な存在ということだぞ?英語にしたらspecialとも言える。
そう考えればかっこいいもんだろ」

 

 


「その弁明はめちゃくちゃダサいけどね。
そういう屁理屈だけはいっちょ前なんだから‥ほら貸して?私がやったげる」

 

 


「あぁ‥‥‥じゃあ頼むわ」

 

 

 

そう言って比企谷の携帯を受け取り、友達追加をしてみせた

私の携帯から新しい友達として『比企谷八幡』とフルネームで書かれたLINEの名前が表示される

 

 


「‥‥‥ふふ、比企谷らしいや‥」

 

 


「‥‥?なにがだ?」

 

 


「べ、別に‥‥じゃあ私病院行かなきゃだから」

 

 


「‥‥‥おう。」

 

 


「‥‥それじゃ!!」

 

 

 

私は急いで靴を履き、そのまま外へ出ようとする。

 

 


「相模!!」

 

 


「!‥な、何!?」

 

 

 


比企谷から突然呼び止められたものだから、身体をビクつかせて反応してしまった

 

 


「あぁ〜‥‥‥その‥‥‥‥」

 


「‥‥‥‥?」

 


「‥‥‥また、明日な。」

 

 

 

比企谷から出た言葉はある意味予想外な言葉だった

私はその言葉を聞いた途端何故か、顔が火照っていくのを感じた。

 

 

 

「‥ぅ‥‥‥‥うん‥‥‥また‥‥‥明日‥‥‥」

 

 


私は、情けない声で返事をして急いで学校から逃げていった

‥‥‥うん、‥‥‥やっぱり私‥‥‥


比企谷の事、好きだな‥‥


改めて私は自覚した


私はもう二度と悲劇のヒロインを演じないと決めた。

だからこそ、向き合うんだ

私の今抱いてる『恋心』と。

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