相模に心をヤバくされる話 作:ネットコミュ症
「今日でちょうど学期末まで残り2週間だ、各自きちんと勉強しておくようにな」
期末試験、学生のほとんどがそのテストに対して憂鬱な気持ちを抱くであろう 学生イベントの一種でもある
帰りのホームルームで平塚先生からそう言われると共に、期末が徐々に近づいて来ているという現実を実感してしまい、気分が落ちてしまう
まあ、勉強はしっかりしているんだが‥ それを活かせるかどうかは話は変わってくる どれだけ頑張っていても、点数を取れない時は必ずある
まあ数学に至ってはほぼ諦めモード 教科書を覗くだけでも蕁麻疹が出てしまいそうだ
そんなことを考えていると、スマホに通知が届く 相手は相模からだった
『今日、部活あるの?』
『いや、今日は無いな。』
『そうなの?じゃあ』
『その』
‥‥‥‥ここで互いに沈黙が続く
‥‥いや、なんとなく分かる
相模がこれから何を言いたいのかは、流石の俺にもわかる
‥‥どうする。
俺から誘うか‥?
まあ、‥‥毎回あっちから言われてるのもな‥‥
俺は文を作り、送信したんだが‥‥
『勉強、しない?一緒に』 『勉強、するか一緒に』
‥‥同時に送ってしまったようだ
互いにしばらく、形容し難い感情に襲われ悶絶していたのは 自分だけだと思ってたそうな。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
放課後となり、俺らは出来るだけ誰かに見られないような場所で合流しファミレスへと向かった
もちろん、向かうファミレスはサイゼである
こういうパターンの時はサイゼに行くって相場が決まっているんだ
「‥‥そういえば‥‥鼻、大丈夫だったのか?」
「うん、ただちょっと痛めちゃっただけっぽい。」
「‥そうか。そりゃ良かった」
「‥‥心配‥‥してくれてたんだ‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥まぁ‥‥‥‥」
「‥‥‥‥ありがと」
相模は頬を紅く染めながら呟く
それを隣で見ていた俺も顔が徐々に熱くなっていくのを感じてしまう
こんなやり取りを繰り返してたら死んじまうよ‥‥‥本当に‥‥‥
なんとかサイゼに辿り着き、互いに同じテーブル席へと座った後 普通に勉強を始めた
俺は苦手な数学を、相模は俺の得意な文系科目中心に勉強していた 分からないことがあったらすぐに教え合うようにする為だ
教科書を見るだけで蕁麻疹が出そうになっていたが、そうも言ってられないしやるしかないと思ってかじり付いてたんだが
相模の分かりやすい説明によって案外スムーズに勉強を進められている
相模の成績は聞いていた限りでは至って平均的
まあつまり頭が特別良い部類‥‥というわけじゃなかったハズだが。
「‥‥お前、教えるの上手いのな。」
「そ、そう?ありがと」
「地頭良いタイプかお前?続ければ上位も狙えるんじゃないか?」
「‥‥‥そ、そう‥‥かな‥‥」
「おう。現代文もかなり要領良く吸収してるしな」
「え、えへへ‥‥‥その、最近モチベーションが凄いあってさ‥‥それでやれてるってのもあるかな‥‥‥」
「ん?そうなのか?あれか、志望校とか決まったとかか?」
「‥‥‥‥‥えっと、そうじゃないんだけど‥‥」
「‥‥‥??」
「‥‥‥‥比企谷に、勉強教えるって‥‥言ったじゃん‥?」
「‥‥‥‥‥まあ‥‥‥言ってたな‥‥‥」
「あの時‥‥その‥‥‥『期待してる』‥‥って言ってくれたから‥‥‥今、頑張れてる。」
「‥‥‥‥‥‥ッッ‥‥‥‥‥‥」
「だからその‥‥‥あ、ありがと‥‥‥」
「‥‥‥‥‥おう。‥‥‥その‥‥‥『これからも期待しとく』‥‥‥‥」
「っ!!!う、うんっ‥‥」
そう、‥‥か。
『こいつ』も、同じだったんだな
まあ俺の場合、モチベーションに繋がってるのはそれだけじゃないんだが
「‥‥‥‥‥えっと‥‥顔に付いてる?」
「別に、‥ただまあ‥‥確認‥?」
「ちゃんと勉強してるから大丈夫だって」
まぁ、絶対に口にはしないがな
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
今、凄く勉強が楽しく感じる。
それは何故かと考えればとても単純な理由
比企谷と一緒に勉強出来ているからだ
それもただただ互いにやることをやるだけでなく
教え合うことで互いに学んでいる
今までのモチベーションは、比企谷が私に言ってくれた言葉
『期待してる』
これだけで頑張れていた
正直、今でもこれだけで充分なくらいに頑張れるとは思う
なのに、比企谷は私を褒めてた。
それだけじゃない、
『これから期待しとく』
と不器用ながらも応援してくれてる
本当に、嬉しかった。
これ以上無いくらいに
もうしばらく‥このままで‥‥‥
私はこの幸せな空間が出来るだけ長く続くように願っていたんだけど‥‥‥
「えっ!?比企谷じゃーん!!しかも女の子と居るなんてウケる!!」
そう長くは続いてくれないみたいだった。
「‥‥‥げ‥‥折本‥‥‥」
「‥‥えっと‥‥‥知り合い?」
「あ〜‥‥‥えっと‥‥‥海浜高校の奴で‥‥」
「そー!同じ中学だったんだー!! 比企谷はこんな所でなにしてんの〜?」
「‥‥見りゃわかんだろ‥‥‥勉強だよ勉強‥‥‥‥コイツに教えてもらってんだよ。数学を」
「あ〜、比企谷って中学の時から数学の点数馬鹿みたいに低かったからね〜。 国語とかは成績良いのにさ?マジウケる!」
「いやウケねえよ‥」
「えっと‥‥‥‥」
私は目の前の状況に若干置いてけぼりになっていると、女性の人がそれを察したのは私の方へ身体を向ける
「ども!はじめまして〜!ウチ、比企谷と同じ中学だった折本かおり!よろしくね〜」
「えっと‥‥‥‥どうも‥‥相模南です‥‥」
比企谷って‥女性の知り合い多いんだな‥
いや‥‥まあ、なんとなくわかってはいたけど‥
雪ノ下さん、結衣ちゃん、川崎さんに一年の生徒会長‥‥それに加えて他校の人達‥‥‥
多いなぁ‥‥‥
‥‥‥その中で‥‥私が選ばれるなんて‥‥‥
いや、駄目駄目‥‥そんなこと考えちゃ‥
「相模ちゃん、結構可愛いね?結構モテる方でしょ!」
「‥‥えっ?‥‥い、いえ‥‥そんなことは‥‥」
「総武って可愛い子いっぱい居てびっくりだわ〜‥‥レベルたっかいね〜。 この前合同イベントの時に居た〜‥‥えーっと、名前なんだっけ?雪‥‥‥雪?」
「雪ノ下な」
「そー!その人、その人もめちゃくちゃ綺麗な人だったよね?それに加えて今度は相模ちゃんか〜‥‥‥比企谷の女友達レベル高くない?めちゃくちゃウケるんだけど!」
「いやウケねえから‥‥‥」
「あっはは‥‥確かに比企谷の知り合いの子達みんな可愛いよね‥‥」
なんだろう‥‥この疎外感‥‥
折本さんと話す比企谷は、私の知ってる姿とはまた違ったものに映ってる。
それが、とても嫌に感じてしまった
そして、その嫌な感情の原因となってるであろうこの折本さんにどこかしら嫌悪感を感じてる
‥‥‥‥‥あーもう‥‥まただ‥‥
そうやって自分に無い物を持ってる人に対して、何かしら理由を付けて『悪』とする事で
自分の今持ってる感情をどうにか正当化しようとしてる
『それが嫌い』なんでしょうが‥‥
誰かがどうなんかじゃない‥‥‥
『自分が劣ってるんだ』
「ってかさてかさ!ウチの友達が今度比企谷と遊びたいって言ってるんだよ!ちょっと合コン的なのやろうよ?」
「嘘吐くの下手すぎだろお前、どうせ数の埋め合わせ的なのだろ。 本命は葉山を入れさせての合コンをご所望なんだろ?前にも言った気がするが、俺は葉山とは友人とかでもなんでもないから無理だぞ」
「んも〜、なんでそんな捻くれてるかなあ。そっちも女性陣連れてきてもいいからさ〜?」
「なんだそりゃ、暗に雪ノ下をつれて来いって言われてるようなもんだろそれ」
「相模ちゃんでもいいよ?」
「えっ‥わ、私!?」
「そ!比企谷連れてこれそうならぶっちゃけ誰でもいいからさ!」
ひ、比企谷を本気で来させようとしてる‥‥‥ってことは‥‥他校の人でも比企谷に興味を抱いてる人が居る‥‥‥ってことだよね
そしたら他校の可愛い子から熱烈なアプローチされる‥‥‥‥そ、それだけは避けさせないと‥!!!
「あ〜‥‥‥その‥‥‥申し訳無いんだけど、そういうの無理っていうか‥‥‥間に合ってるというか‥‥」
「あ〜‥‥そっか、そりゃ居るか彼氏くらい」
「‥‥はい?」
「ごめんごめん、気使えなかったね。いけないいけない‥」
も、もしかしてこの人‥‥‥
「彼氏居たら合コン的なの出来ないもんね〜‥‥相模ちゃんみたいな可愛い子そら相手がいない訳ないか」
「い、いや‥‥‥彼氏が居るとかじゃ‥‥‥」
「いや大丈夫大丈夫!そんな変に気使って参加しようとしなくてm」
「ちょ、ち、違うっ!!本当にっ!本当に彼氏!居ないの!!」
思わずテーブルから席を立ち、めちゃくちゃ大声でそう言い放ってしまった
もちろん他の客から注目をこれでもかと晒されてしまうが、今の私はそんな冷静ではない
比企谷に誤解されていると思っているからだ
「い、居ないからね!??」
比企谷から目線を食らっていることに気が付き、咄嗟にそう弁明してしまう
「は、‥‥はあ‥‥‥ふーん‥‥‥そう、ですか‥‥?」
「へ、‥‥え?‥‥‥‥‥は、‥‥‥あ、‥‥‥‥マッ!?」
折本さんは私と比企谷を双方ブンッブンッと顔を見比べた後、謎の叫び声を上げる
えっと‥‥‥マって‥‥マジって意味だったよね‥‥‥って‥‥‥あれ?
「ぁ‥」
折本さんが気が付いたであろう内容を察した私は、ギギギッと言わんばかりに顔をゆっくりと折本さんの方へと向ける
そこにはやはり全てを察したであろう折本かおりさんのお顔があった。
「えー‥‥‥‥えーっと‥‥‥‥あ!と、友達からLINE来てる〜!!えーっと?あ!ここのサイゼじゃなくて別の場所に変更なんだー!なるほどー! そ、それじゃ比企谷と相模さん!私もう行くわー!!」
「あ、ちょ、ま、待って!!?折本さん!!?折本さあぁん!!??」
折本さんは逃げるようにその場から走り去ってしまった。
‥‥‥バレたかな‥
バレたよね‥‥
いや絶対バレたわ‥‥‥
察してるからこそあーやってにげてってたんやろがい‥‥‥‥
あーもう‥‥‥
あぁもうだめだ‥‥凄く家に帰りたい‥‥‥
部屋に篭って枕に顔を埋めて叫びたい‥‥‥‥‥
「‥‥‥えっと‥‥‥とりあえず、座ったら?」
「‥‥‥‥はぃ‥‥‥」
私は比企谷からの言葉を、ただただ受け入れるしかなかった
なんとなくだけど、その時の比企谷はどこか優しい声色だった気がする
というか優しかったです
それも相まって顔の染まった紅色は、しばらく薄まることは出来なかったみたいです。
少なくとも、勉強が終わりサイゼを出ていくまでは紅かったそうな‥‥‥‥