星見の旅路の、幕は下りて   作:しゃっく ,

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第三話

各々自己紹介などをしつつ、『シャーレ』の部室があるというキヴォトスの郊外に立香達は降り立ったのだが、そこは既に硝煙漂う戦場と化していた。

 

「なんで私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!!」

 

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから………。」

 

 

「それは聞いたけど……! 私これでも、セミナーの所属なのよ!よりにもよってなんで私が…!」

 

憤慨するユウカとそれを宥めるチナツ。一方で所属する学園を同じくするハスミとスズミは早くも周辺の暴徒たちの鎮圧に取り掛かっていた。

 

ドンッ「うぎゃ!」バタン

 

 

「流石ですねハスミさん。」

 

 

「これでも正義実現委員会の副委員長ですから。この位は当然です。」

 

「それと先生」

 

不良をスナイパーライフルの一撃で沈めたハスミは、立香へと声をかける。

 

「なにかな?ハスミ。」

 

 

「先生はキヴォトスの外からいらっしゃった方です。故に銃弾一発が致命傷になってしまう。」

 

「ですから私たちの後ろにお隠れください。正義実現委員会の名にかけて、私が貴方をお守りしますから。」

 

──キヴォトスで暮らす少女達はその頭上に浮かぶ光輪─ヘイローの力によってキヴォトスの外の人間とは一線を画す耐久力を誇る。その為ハスミの提案は至極合理的かつ常識的な提案であった。

 

しかしそれはあくまで常識の話。彼は英雄であり、そして何より今は「先生」であった。故に「生徒」を弾除けとしてただ守られているだけなどという訳にはいかない。

 

「その提案はありがたいよ。ただ先生が戦場で生徒の後ろで震えているだけというのも少々格好が悪いからね」

 

「戦術指揮くらいはさせてくれないかな?」

 

 

「戦術指揮、ですか……分かりました。ではこれより先生の指揮に従います。」

 

 

「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします。」

 

 

「そうですね。私も貴方の元で戦います。ご指示を、先生。」

 

 

「え、ええっ?戦術指揮をされるんですか?まあ…先生ですし……。」

 

ハスミが頷きチナツ、スズミも同調する。ユウカもまた、不安げながらもそれに続く。

 

「それじゃあ戦闘開始だ。頑張ろう皆!」

 

 

「「「「はいっ!」」」」

 

そうして、藤丸立香のキヴォトスにおける初陣が幕を開けた。

 

「ユウカはシールドを展開して突貫、敵兵の注目を集めるんだ!」

 

 

「わかりました!」

 

 

「ハスミは敵の狙撃兵から撃ち抜いて!君なら遅れをとることは無いからね!」

 

 

「お任せ下さい」

 

 

「スズミは遊撃に回って!ユウカの補助をしつつ討ち漏らしを仕留めてくれ!」

 

 

「承知しました」

 

 

「チナツは全員のサポートを!体力の回復は君に任せるよ!」

 

 

「はい!」

 

全員に指示を出しながら、畳み掛けるように彼は英霊としての力を振るう。

 

──『星の碑文』起動。

 

『星の碑文』

それは人理に刻まれた遍く全ての英霊達の力を振るうことを可能とする、英霊藤丸立香が誇る大権能。英霊としての彼を世界終焉に対する最大のカウンターたらしめる一因でもある。

 

「『英雄作せっ─ッ」バツン

 

しかしそこで異変が起こる。

行使しようとした力が掻き消えたのだ。

 

(何だ?)

 

現界して初めての戦闘で魔力回路が励起しきっていないのだろうか。そう考え、もう一度能力の行使に踏みきるが

 

「『投影、開(トレース・オ)っ─ッ」バツン

 

これもまた不発

 

(まさか─)

 

「先生、どうかされましたか!」

 

思わず動揺が滲み出る立香の様子にチナツが声をかける。

 

「心配しないで、チナツ。まだ銃弾が飛び交う戦場に慣れていなくてね。少しだけ動揺してしまったんだ。」

 

そう取り繕うも、その内心は大荒れである

というのも英霊藤丸立香のステータスは作家系英霊のそれさえも下回る貧弱ぶりであり、本来の現界では『十二の試練(ゴッド・ハンド)』『勇者の不凋花(アンドレアス・アマラントス)

日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)』などといった超級の宝具達によってそのステータスを補強している。つまり裏を返せば『星の碑文』が使えない状況では生前の自身とさして変わらない身体能力の貧弱英霊が爆誕するのである。

 

加えて不幸にも今回の現界にて彼は何故か受肉を果たしている。本来マスター不在の状況においては好都合なのだが、一般人並の耐久力となってしまった現在では話が変わってくる。なぜならその体をエーテルで構成されている英霊は神秘を伴わない攻撃によってダメージを受けることがないのだが、一度受肉を果たすと神秘を伴わない攻撃でも傷を負うようになってしまう。つまり、今の彼には先程ハスミが述べたように、銃弾一発が致命傷となるのだ。

 

 

(不幸中の幸いと言うべきか、彼女達4人で不良達の対処は出来そうだな。どうにかこの場を切り抜けて霊基の不調を確かめよう。)

 

約一名程問題を抱えてはいるものの一行は不良たちを鎮圧しつつシャーレの部室へと向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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