彼女のいる木   作:麟佳さん

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三国により管理されるようになった地上。世界を戻すために動くレーヴァテインが出会ったのは、変わり果てた親友だった


彼女のいる森

目にした時の感想は安堵と感動。

このふざけた世界の中とは言え彼女に出会う事が出来た。

「初めまして、レーヴァテインさん。私はC-07、ミストルティン・獣刻・ドリュアスです。」

記憶が無いのは些細な事。他の姫達もそうだったから。寧ろ、彼女の嫋やかな姿は嘗ての臆病な彼女には無かった心の強さを感じ嬉しく思った。

しかし・・・その強さには影があった。

「トレイセーマに仇なす人たちは、一人残らず殺します。」

味方をも巻き込む戦い方や敵への容赦の無さ。そして微笑みながら殲滅する姿にレーヴァは愕然としていた。共に戦場に立った際、レーヴァも巻き込まれる事もあった。それを問い詰めてもトレイセーマの為には仕方のない事と片付けられ、聞く耳を持たない。優しさは影を潜め、狂気に染まった彼女は本当に自分の側にいたミストルティンなのだろうか?疑問が渦巻く中、気付けば自分から彼女と距離を離すようになってしまった・・。あれほど大切に思っていた彼女から離れる事になる事態に声を押し潰して涙を流す事もあった。

使命の為に国を出たが脳裏には森にいる彼女の事がずっと残っていた。

 

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姫達の解放、人理の奪還を目指し活動する麟佳、レーヴァテイン。そして先日辛くも奪還した方天画戟。今回の目的は神器探索とトレイセーマの情勢調査。もし所有する神器に対応する姫が居る場合は解放も行う。

「とは言え、神器もまだまだ少ないから都合よく来てくれるかどうか・・・。」

「そこはあなたの運次第。頼むわよマスター?」

「え゙っ、自分!?」

「そうだ、頼むぜ主君?活きの良い獲物なら歓迎だからよ?」

180弱ある麟佳に肩を回して寄り掛かりながら、声をかける方天。ニヤニヤと口を歪めながら密着し、下から覗き込んでいる。そしてその頭の上には小さな機械竜のムーが乗っていた。

「大丈夫だぜ兄ちゃん、俺とレヴァがいれば・・!」

「うるさい・・!」

ムーが調子乗り出すと同時にレーヴァの飛び回し蹴りが方天の頭上を凪ぎ払い、ムーはそのまま地面に飛ばされていく。

「痛ぇ・・レヴァ!俺がいくら丈夫だからって限度があるぞ!?」

「でもお前、レーヴァの蹴られるの悪い気分じゃねぇだろ?」

「おうよ!あのスベスベした足に触れるのは気持ち・・。」

「レーヴァ~、こいつ踏んでいいか?」

「ぎゃああああ!?」

殺風景な荒野でも、人の少ない町でも、これから入る森でも、賑やかな会話は心に余裕と潤いを与えてくれる。その様子が嘗ての隊を思い出させる。初期からいたオティヌスや方天がムードメーカーとして隊の雰囲気を明るくしてくれていた。真面目なロンゴミアントと、面倒事を嫌い孤立癖のあるレーヴァをも巻き込んで笑い合う日々。そして次に隊に来たのは・・・。

「少し懐かしいね。ミストルが見たら静かに微笑んでそうだね。」

ミストルティン。心優しいが臆病な姫。入隊した頃は人懐っこいオティヌスによく構われていた。そしてある日、森に昼寝に行った際に偶然レーヴァと同じ木で昼寝をしたことから徐々に中が深まり、端から見れば恋仲にも見えるほどの関係性を築いていた。間違いなくレーヴァにとって最も大切な姫である。

「そうね・・。あの娘とまた会わないと。」

「ごめん。今のは我ながら軽率だったよ。今どうなってるか知ってたのに・・。」

「いいのよ。私を励まそうとしてくれたんでしょ?気持ちは嬉しいわ。」

麟佳も今のミストルティンとは一度出会い奇跡的に生還している。この話題にレーヴァが敏感なのも理解しているのについ話してしまった。脳裏に浮かんだ瞬間に自然と発声していたのだ。仲間として親友として、それぞれの心に彼女の変化は二人とも強い印象が残っている。二人の会話を後で見ていた方天画戟は息を一つ吐き、並んで歩く二人の間に入るようにして肩を組む。

「お前ら辛気臭い顔するなよ。ミストルに会って、神器で解放すりゃいいだけだろ?んな顔してたら出来ることも出来なくなるぜ?笑え笑え♪」

ニカッと笑いながら、二人の顔を交互に見る方天。気が強く荒々しい所もあるが、仲間に対しては強い思いやりを見せてくれる姉御のような立場で接してくれる。

「ありがと方天、ちょっと元気出たよ。」

「そりゃどーも。レーヴァはどうだ、元気でねぇのかぁ?昔みたいに添い寝して、胸でも貸してやろうかぁ♪」

「いらない。おかげで元気出たわよ。」

「そりゃ良かった。こんなメソメソしながら戦闘なんざしたくねぇからな。そら、進め進め。」

二人の表情が解れたところで離れる方天。彼女もまた性格に変化があり、以前よりも傲慢な態度を取ることが多くなった。しかし解放後は仲間を気遣う思いやりを取り戻し、麟佳とレーヴァの二人を支えていた。

「この戦闘狂め・・。そろそろ近郊の森に入るから誰か出てくるかもね。」

「そろそろか・・。今回の探索はどうなるかな?」

会話をしながらしばらく歩くとトレイセーマの森が見えてくる。森に隠れながら首都に向かう算段なのだが、レーヴァは足を踏み入れた瞬間に動きを止めた。

「レーヴァ?どうしたの?」

「いる・・ミストルが。」

「流石はあいつの彼女。分かるもんなんだな。」

方天が軽口を叩くものの、レーヴァの表情は真剣で森の奥を見据えている。その様子から全員がこの森にミストルティンが潜んでいると確信した。この二人の絆はそれほどに強く、レーヴァもミストルティンの解放を願っていた。

「となれば会いに行くしかないね。幸い、彼女の神器は回収できてる。」

「まぁ、俺とレーヴァが居るなら大丈夫だろ?」

「あ!オレのセリフ取ったな!?」

「うるせぇ、お前より前から俺はレーヴァの親友なんだよ。引っ込んでな。」

「むー!」

「二人とも黙って・・。ねぇ、お願いがあるの。」

森から視線を切り、向き直ったレーヴァは小さく頭を下げて一言呟いた。

「私一人で行かせて。」

三人が驚いたのは懇願の内容ではない。レーヴァテインが頭を下げたという点一つ。頭を下げるレーヴァテインはムーはおろか横で戦っていた方天画戟も、マスターとしてずっと寄り添ってきた麟佳も見た覚えがないのだ。そんな彼女がそこまでして頼む内容は単独での行動。

「つまりはここに残ってお前の帰りを待てって事か?」

「そうなるわ。」

「おいおいレヴァ、まさかオレも置いて行くつもりか!?」

「もちろんそのつもり。これは私が決着をつけないといけないの。嘗て逃げてしまった私へのケジメのために。そして・・!」

「大好きなミストルティンを救い出すのは誰かじゃなく、私がやりたい事だから・・だよね?」

「・・・なんでこんな時だけ鋭いのよ、あんたは。」

「自分もびっくりだよ。」

微笑む麟佳に対して、レーヴァは恥ずかしさからそっぽを向くが、少し大袈裟に咳払いした後向き直る。返答を待つ少女に主は静かに頷いて見せ、手を差し出すように促す。レーヴァが手を出すとその白い手に一本の杖を手渡された。木の枝を模した杖、神器・ミストルティンである。麟佳は離した手を杖を受け取ったのレーヴァの手に乗せて呟く。

「自分の気持ちも持っていって欲しい。二人で・・帰って来てよね?」

主の言葉に応えようとすると、もう二つの手が乗せられる。

「主君の分だけじゃ足らないだろ?俺のも持ってけ。なぁに、お前なら余裕だろ?」

「レヴァが言うなら仕方ないな。負けんなよ?このバハムート様のパートナーはレヴァしかあり得ないからな♪」

三人の想いが杖を通してレーヴァに伝わって行く。思いの籠った杖を握りしめて、レーヴァは森の先を見る。

「うん、ありがと。行ってくるわ。」

強い足取りで森に入っていくレーヴァを見送る三人。そこに不安の様子は無くミストルティンと共に帰ってくる未来だけを感じていた。

「ミストルの事となるとホント目の色変わるなレーヴァは。ミストルも幸せ者だなぁ。」

「仲良いのは良いことだよ。自分も癒されてるところもあったからね。きっと二人で戻ってきて、元気な顔を見せてくれるさ。」

「だな♪」

 

 

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森を一人歩く白髪の少女。

真っ直ぐ進むその道先で佇んでいるのは桃色の髪に森に馴染む色で彩られたドレスを身に付けた少女。

レーヴァと同じトレイセーマ出身の姫

名はミストルティン・獣刻・ドリュアス

 

「お久しぶりです。レーヴァテインさん。いえ、反逆者レーヴァテイン。」

「久しぶりね。元気そうで何よりよ。」

ミストルティンは微笑んではいるがその瞳は暗い闇に包まれているように光を閉ざしている。

「あなたは見つけ次第抹殺するように言われています。覚悟はよろしいですね?」

首をかしげて返答を待つミストルティン。彼女の漏れ出す殺意に呼応して、森もざわめき始め、動いてもいないのに暗い森の奥深くに進んでいる様な錯覚に陥る。いや錯覚ではない。実際に二人の周囲の植物は蠢き、来た道も急激に育った木が塞いでいた。

「随分な歓迎ね。パーティーでもしてくれるの?」

「そうです。主賓はあなた、もてなすのは私。体が動かなくなるまで楽しんでいただきますね?」

「ふーん、自信満々じゃない。私に勝てるつもりなの?」

「勿論ですよ?あなたと森の側にいるお友達も纏めて国の礎になっていただきます。」

「上等よ。」

 

森の外で帰りを待ち、休息を取っているマスター達。彼らの周りの異変に気付いたのは方天画戟。

「主君。どうやら俺たちも歓迎してくれるみたいだぜ。見てみな。」

「え・・?森が・・広がってる!?」

先ほどまで腰を降ろしていた岩場付近に草が生い茂り、木も生え始めている。

「ミストルの奴、こんな力手に入れてたか。ちょうど退屈してたとこだ。楽しませてもらうぜ?主君はトカゲにのって空飛んでな。」

「余裕なのは良いね。でもここで待つって言ったからさ。でも、いざとなったら頼むよムー。」

「男は趣味じゃねぇが仕方無いなぁ。レヴァの為だぜ?」

「レーヴァがミストルを解放するまで耐えるよ!!」

「応」

「まかせとけ!」

武器を構えて備える彼らの前には拡大を続ける森が迫り、包囲を完了させつつあった。

 

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森の中に響くのは枝葉の触れ合う音、木が軋み動く音、そして

「ふん!せぇい!」

レーヴァテインが紅と黒の彩られた大剣を振るう音。

ミストルティンの操る蔦や木々は前後左右、足元の地面とあらゆる角度から障害排除しようと襲いかかる。その攻撃の間を時に縫うように、時に生成された木を足場に飛び回って避け続けるレーヴァ。その様子は舞台で踊る舞姫と見紛うよう。動く空間を制限するように棘を張り巡らせても剣姫は全てを切り裂き道を切り開いて見せた。

「器用に避けますね。しかし、まだ私も余力はありますよ!」

「そうみたいね。外の方にもリソース裂いても尚この制圧力。随分強くなったじゃない?」

「裏切り者の言葉とはいえ、感謝致します。」

「でも私を倒すには足りないわ。」

避ける事に専念していたレーヴァはミストルティンに向かって走り出す。それを迎撃するように木の槍を打ち出すが、どれもレーヴァの剣舞により打ち落とされ次第に距離を詰められる。

「纏めて倒すのは無理のようですね。なら一つずつ摘み取るまでです。」

 

森の外では麟佳と方天画戟が襲いかかる森を抑えていた。しかし、標的を仕留めないまま森から敵意が消えていく。

「はぁっ、はぁっ・・。終わった!?」

「いや、これは途切れた感じじゃないなぁ。恐らくレーヴァを叩き潰す為に力を集めてるんだろうな。」

「そっか・・後は頼むよ、レーヴァ。」

刀を納めた麟佳は気が抜けたのか、脚から力が抜け倒れそうになるが、方天がすぐに抱き寄せ支える。少し照れ臭そうにしながらも主は森の奥を見ていた。

 

一方、レーヴァが迫られるミストルティンは集束させた力を用いて迎撃の樹槍を束ねて叩きつけた。急激に強化された攻撃に対して咄嗟に防御に入るレーヴァだが押し負けて吹き飛ばされる。そしてレーヴァの後方に蔦を張り巡らせて受け止めた後、手足を縛り付け拘束する。口角を吊り上げながら近づいて行くミストルティン。妖艶さを出しながらも喜びに満ちた恍惚とした表情を見せている。

「ふふっ♪ 大口を叩いた割にあっさり捕まえられましたね。どう始末しましょう?首を締め付けましょうか、それとも木でその体を貫きましょうか。」

「はあっ、楽しそうね。」

「あなたを殺せば私は認められるんです。私を必要としてくれるんです。だから・・死んでください・・。」

「あぐっ!?」

宣告の後、急激に締め付けが強くなる。徐々に手足に血が届かなくなり、呼吸も苦しくなり景色が暗くなる。

「私の為に死んでくれるなんて、レーヴァテインさんはなんて優しいのでしょう♪」

 

『レーヴァさんは・・優しいですね♪』

 

声が重なる。

二人で過ごしていた、彼女のいる木。

幸せだったあの頃が走馬灯のように駆け巡る。満面の笑顔をしたミストルティンとその側で歩く自分自身。最期に見る景色がこれならば後悔は・・

 

ある!

 

だって私は・・こんなにも。

彼女を愛しているのだから!

 

「まだまだぁぁあ!!」

その手に剣は無い。しかし主から譲り受けた、彼女に還すべき神器は本来の持ち主ではない魔剣の少女の元で輝きを放ち、縛り付けた枷を弾き飛ばし、傷付いた体に力を与える。

「何ですか、その杖は!?」

「あなたとの繋がり。あなたを愛しているのに、諦められる訳がない。応えてくれたこの杖のためにも!」

「愛?なにを馬鹿な事を!私からも国からも離れた癖に!」

「だから、帰ってきたの。逃げた弱い自分を倒して、あなたを救い出すために!」

右手に剣、左手に杖を持ちミストルティンに走り出すレーヴァテイン。驚きつつも迎撃を開始するミストルティンだが強化した攻撃を繰り出しても、剣の斬撃と杖の障壁によって阻まれる。先程と同じように攻めても効果が無いと判断したミストルティンは動きを制する様に地面一帯からまきびしの様に鋭く尖った枝を生成する。それを見たレーヴァは地面を強く蹴りだして空中に飛び出し、そのままミストルティンに向かうが、それを予期していたミストルティンは大木を束ねた巨大な樹槍を打ち出す。人のサイズを優に越える槍。命中すれば容易く潰されるだろう。

「これで、死になさい!!」

眼前を覆い尽くす様な巨大な凶器。

宙に浮かぶ人では対処不能。しかし、この少女は世界を焼き尽くした魔剣の力と世界を想像した巨竜の力を持つ者。諦めなど無く、全霊を持って剣を撃ち合わせる。

「届け!いや、届けるの!!」

辺りの木々を、大地を揺さぶる衝撃の中で少女は巨大な矛先を真っ二つに叩き割りながら進み続ける。長く続く樹の道。それを抜けた先にあったのは、驚嘆に包まれた少女。最大の一撃を真っ向勝負で打ち破られた驚きで身動きも取れない。

その固まった体に押し付けられたのは・・・

 

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「くそっ、勝てないの・・?」

「あなたの役割は私がやったげる。面倒なのは嫌でしょ?」

イミテーションとの戦闘。淘汰の過程で何度もあった事だが今回は相手が悪い。どれ程足掻いても全て届かない。その結果もう虫の息。振り上げられた剣を見ながら諦めようとしたとき。

「止めてください!」

景色が飛ぶ。目の前の刃は、少女の顔にすりかわっていた。

「あなた、掟を破るつもり?今ならあなただけ見逃してあげるから、そこをどいて。」

「逃げてミストル。これは私の・・。」

「嫌です!レーヴァさんに守られてばかりは嫌なんです!だから、私が守ります!」

傷付いた体を治療されながら、静かに言葉を噛みしめてゆっくりと理解している。

目覚めた力は彼女に強い心をもたらした。

敵に立ち向かう強さを

仲間の前に立つ強さを

 

しかし目の前に迫る凶刃は気だるげに目を開いている。オリジナルに限りなく近づいたミストルティンとは言え、元々戦闘に特化した存在ではない。敗北は濃厚。しかし、彼女が逃げる理由にはならない。決心した彼女は絶対に逃げない。

「全く、重さが増えてばかりね。下がってミストル。私がちゃんと戦うから。あと、なにかお願いはある?」

「今願っているのは一つです。レーヴァさん、勝ってください!」

「おっけ、おっけ。叶えてあげるからね。」

自然と笑みが漏れる。あんなに臆病風に吹かれていた彼女が仲間を守るために敵の前に立ち、欲望をさらけ出したお願いをするのだ。笑わずにはいられない。

声援は力となり、圧倒的だった力の差を埋めていく。力も、速さも、技もどんどん迫っていく。そして剣戟は対等な二人のぶつかり合いとなった。

「なんなの・・。私が背負ってあげるって言ってるのに・・。」

「ふざけないで。使命だけじゃない。この体にはマスターや仲間達との互いに思い合う心がつまってるの。あんたごときに背負える物なんかじゃない!」

最後の一閃の後、イミテーションは力無く倒れレーヴァの体に吸い込まれて行った。

「はぁ、疲れた・・。でも、約束通り勝ったわ。」

「レーヴァさん、よかったです・・!」

喜びのあまり勢いよく抱きついたミストルティン。そのままの勢いで草原に倒れ、涙を浮かべながらレーヴァの胸に顔を埋めている。レーヴァも腰と背中に腕を回して抱き締めていた。

「もう、泣かないの。あなたのお陰で勝てたんだから。」

「だって・・レーヴァさんがいなくなってしまったらと考えたら怖くて恐くて・・辛かったんです・・。」

「そう、怖かったよね。でも大丈夫よ。だって、ミストルが守ってくれるんでしょ?」

その言葉に目を丸くして見上げるとニッコリとした笑顔が広がる。大好きな彼女の言葉とは顔は心に安心をもたらした。

「私が守ったあなたが、私を守ってくれる。あなたが守った私が、あなたを守る。完璧でしょ?」

「はわぁ・・・・はい!」

 

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映像が途切れたあと、眼にしたのは白銀の髪。力の無い体を抱き締めて、ゆっくり静かに頭をなで続けるレーヴァテインの姿がだった。なにも語らず黙々と確かめるように撫でている。

「レーヴァ・・・さん?」

「えぇ、なぁに?」

声をかけると横にあった頭が正面に移る。その顔は先程の記憶と変わらない、大切な人の笑顔。しかし、それを見るミストルティンは青ざめていく。国に奉ずる気持ちは消滅し、主である麟佳に対する忠誠が生まれると同時に自ら仲間に手を下そうとした過去が彼女を蝕む。

「私・・。レーヴァさんに酷い事を・・。」

「ミストル・・。」

「あぁ!マスター様にも!?どうお詫びすれば・・。」

「ミストル。」

「この命を捧げるしか!」

「はい、そこまで。落ち着きなさい。」

錯乱するミストルティンの頭に軽く手刀を当てるレーヴァ。その後、手を頬に移しポンポンと叩いて宥め始めた。享受してはいるが内心は困惑している。なぜ責めないのかと。答えは向こうからやって来た。

「多分記憶が混濁してるだろうけど、よく思い出して。私もマスターもそんなことして喜ぶと思うの?」

「いえ、そんなことは・・。でも!」

「だから気にすることは何もないわ。でも、そうね。どうしても何かしたいなら・・私を抱き締めてくれない?」

「へ?」

「恥ずかしいから理由は察して・・。撫でるだけでも良いから。」

顔をミストルティンの胸に埋める様に体を預けるレーヴァ。質問しても返事は帰ってこない。もしやと思い確信をついてみる。

「あのひょっとして、レーヴァさん・・甘えたいのですか?」

「悪い?」

顔は見えていないが耳はだんだん赤くなっていく。どうやら当たりのようで腰に回された腕の力が強くなる。要望通りに頭を撫でて見ると小さく声をあげる。ミストルティンの胸に頭をすり付ける様子は猫といって遜色ない。むしろ、気ままに生活していた彼女は元々猫っぽい。

「レーヴァさん、これでよろしいですか?」

「まだ。ずっと我慢してたのよ?こんなんじゃ足りないわ。」

「ふふっ、わかりました。もうしばらく撫でさせてくださいね。なんだか懐かしいです。『あの木』で一緒にお昼寝していたのと同じ感じがします。今みたいにレーヴァさんが泣いていて・・。」

「泣いてないし。良いから続けてよ。」

「はい。納得するまでお付き合いします♪」

「森が静かになったのに帰ってこねぇと思ったら。何やってんだか・・。」

「こんな幸せそうなレヴァ初めて見たぜ。」

「この二人なら仕方ないよね。起きるまで待ってよっか。」

「だな。」

 

木の下で抱き合った二人の少女は穏やかに流れる時間の中で幸せそうに寄り添って眠っていた。

引き離され、歪められた関係は長い時の末に廻り合う。

 

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