彼女のいる木   作:麟佳さん

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全てを終えて仲間達と過ごしていたキル姫達。
不変な彼女達だが、共に歩む者はそうとは限らない。
最後の時、彼女たちはどう過ごすのか…


彼女達がいた樹

奏官麟佳。寿命につき死去。

 

長い戦乱が終わり、平穏に過ごしていた彼は共に駆けた姫達と暮らしていた。街の人達の理解も得られ、キル姫達もちょっと強い女性として生活をしていた。しかし彼にも寿命というものはある。ある時は姫に、ある時は神に、ある時は奇跡によって人より長く生きていたがそれも終わりを迎える。その日の前日、未来を見ることが出来るカシウスは隊の皆を呼び集め、時が来たことを告げた。覚悟は出来ていた筈だったが、いざ面と向かうと心は揺らいでいた。それを口にするカシウスでさえ、呼び集めてから数分間何も話せなかった。そして当日。男が横たわるベッドは仲間たちによって囲まれていた。

「─────。」

それを見て何かを口にしたい彼だが、困ったことに声が出せない。出た音といえば溜息くらい。仕方無いと彼は微笑む。彼女達に褒められ、頼りにされ、癒やしてきた笑顔だ。少女達もそれに笑顔を返す。それを見た男は瞼を降ろして、残像を眺めながら最後の一息を吐いた。瞬間、全員が悟る。いや感じたが正確だろう。実感としてあったキラーズとバイブスの繋がりが切れたのだ。立ち尽くす者。力が入らず倒れる者。感情のままに泣く者。名残惜しく彼の身体に縋り付く者。形はそれぞれだが、皆が主の死を嘆いた。

 

翌朝。葬儀の準備にあちこち駆け回る姫達。悲しみはまだまだ乗り越えていないが、それで最後の送り出しを疎かにするわけにもいかない。そんな中、一人だけ姿が見えない。レーヴァテインだ。いつも仕事や作業が面倒だと言ってサボることが多々あるので、スケジュール的には当てにしていない。しかし朝食、昼食時はまだしも、日が傾いて来た頃になっても姿が見えない。町民に聞いてみても情報が無い。結局、皆が晩御飯を食べ終えても帰ってこなかった。流石に誰かに襲われたなんてことは無いと思うが、何処かで一人寂しく過ごしているのではないかと想像するのは容易い。夕飯の片付けも終え、葬儀の準備も終えているので、後は各自の時間を過ごせば良いのだが、心が落ち着かずみんな広間に集まっている。このまま帰ってこない仲間を待つのか、探すのか、説教しに行くのかなど考えているうちに時間だけが流れる。

 

「あ、あの…!」

声を上げたのはミストルティン。部屋にいる全員の視線が向いたことに思わずギョッとするが、こらえて言葉を続ける。

「私…レーヴァさんがどこにいるか多分心当たりがあるので探しに行こうかと。」

「いつもの木。そうでしょう?」

「ふぇ?」

返答したのはカシウス。件の木はいつもレーヴァテインが昼寝をしに行くことで知られている。サボりたいとき、気分よく寝たいとき。そして一人でいたいとき。彼女はいつもそこに行く。

「レーヴァさんはいつもお昼寝していますからね。」

「じゃあ、なんで迎えに行かないのですか…?」

「機嫌悪いあいつに突っかかるの怠いからだろ?」

「方天がいっても間違いなく喧嘩になるだけだもんね?」

「いたずらするバカに言われたくはないんだがなぁ?」

ミストルティンの一言をきっかけにいつもの賑わいが戻ってきた。笑って、じゃれあって、

「とにかく。私も含めてどうしたものかと考えてしまった結果、行動に移せなかったのです。ですがミストルティンさんがそう決断してくれたのであれば、私たちは止めることは致しません。何よりあなたが一番の適任なのですから。」

外出の準備を手早く済ませていると、玄関で弁当箱が渡される。中身はおにぎりが目いっぱい詰め込まれている。

「ミストルティンさん。彼女のことをよろしくお願いします。」

「はい。任せて下さい。」

夜の森へ入っていく。月明かりだけの暗い夜道だが、何年も通り続けた彼女は確かな足取りで進んでいく。森の側の平原は月夜が照らすだけで、樹の下となれば闇。その暗闇でもその純白の髪は僅かな光で輝いていた。いつもの丘、いつもの木、いつもの場所でレーヴァテインは膝を抱えて座っている。顔を伏せており、長い髪がカーテンの様に垂れているためその表情は伺えない。

「……。」

直ぐ側まで来ても特に反応はしない。隣りに座ってみても同じだった。そのまま沈黙が続く。風に揺れる木々のざわめきと、虫たちの鳴き声だけが空間を揺らす。きっとこのまま何もしなければ永遠とこの時間が引き伸ばされて行くのだろう。しかしそれでは来た意味がない。

「レーヴァさんに渡すものがあります。」

差し出されたのはシワの入った封筒。水に濡れたのか、所々撓んでいる。仕方なく受け取るとそこに書かれていたのは『拝啓、私の仲間たちへ』という一文。確認するまでもなく遺書だろう。

「私や他の皆さんは既に読みました。後はレーヴァさんだけです。」

突きつけられた現実に向き合わなければならない。逃げ出したい気持ちはあるが隣りにいるミストルティンはきっと見逃してくれないだろう。心に決めた局面では誰よりも彼女が一番恐ろしい。促すことはせず、叱ることもせず、助け舟を出さず、静かに決断を待ってくれているのだ。もしも方天画戟やグラムあたりが来ていたのなら永遠と言葉を投げつけられるか、遺書の音読を始めていたかもしれない。

「────。」

ため息一つ。顔を上げついでにミストルティンを睨んでみると返ってくるのは柔らかなほほ笑み。どこかの教皇様よりも聖女に見える。やはり逃げ道はなさそうだ。自分の意志でゆっくり呼吸する。数回繰り返した所で手紙に視線を落とした。枚数は11枚。上の書き出しに目を通すとどうやら全員に向けた物と個人に向けたもので分かれている。個人宛は一度ミストルティンに預けて、黙々と読み始めた。

 

 

 この手紙は少しずつ体が動かなくなるのに気づいた時、手遅れになる前に書きました。みんなで見てもいいし、一人ずつ見ても良いです。この紙とは別に個人宛に短めのメッセージも付けてあります。

 封筒には仲間と書きましたが、実際は家族と変わりませんね。色んな事を伝えたい気持ちはあるのですが、文字に起こすのは苦手なので短く、「良い人生を過ごした」と残しておきます。みんなと出会って、この街で暮して、色んな場所を旅して、戦場を駆け抜けて、世界を守ってみたりして。平和な世界で各々が好きなことを始めても、変わらず一緒に暮らしてくれた事はとても嬉しかったです。文字通りの喜怒哀楽が詰まった時間を過ごせたことは財産です。体が動かなくなってからは多くの苦労をかけましたが、きっとみんな進んでやってくれていたのだと思います。そうでなければあんな穏やかな空間はありませんからね。

 

最後に重ねて感謝を伝えたいと思います。

私と共に過ごしてくれて、本当にありがとうございました。大好きな皆の思い出を抱きしめて私は眠っていきます。

皆の新しい未来に幸せが沢山待っていることを願っています。

 

麟佳

 

p.s.

多分最後に読むであろう白髪の娘はきっと不貞腐れてるので、頼りになる人がコレを読ませてあげて下さい。そうしないとあの娘は意地張って我慢してしまいます。大丈夫。そんな所も含めて大好きですよ。

 

 

残りの10枚は一人ひとりに宛てた言葉。欠ける事無くここにあるのはそれも含めてレーヴァテインに読んでほしいからだろう。

 

ロンゴミアント

私の守護者。レーヴァテインと一緒に一番長く過ごしてくれましたね。3人で旅をしていたころは母親や長女の様でいろいろ手間をかけさせました。最後の時まで誠実な従者でいてくれてありがとう。

 

方天画戟

我が隊の一番槍。その激しさに何度救われたか分かりません。気付けば皆の姉貴みたいな感じでしたね。目指す覇王にどれだけ近づけているのかはわかりませんが、私には立派な武人に映っていますよ。

 

オティヌス

ムードメーカーといえば君。割とギクシャクしがちだった所に来てくれて本当に助かりました。イタズラの仕返しに脳天チョップを何回叩き込んだやら。これからもみんなの日常を彩ってくださいね。

 

ミストルティン

皆の陰に隠れがちだったのに、いつの間にか隣や前に立つようになってましたね。一番成長を感じたのは間違いなくあなたです。そして誰よりもあきらめが悪くなったのもあなたです。その心の強さを大切にね。

 

グラム

人間不信とか言ってたのはいつのことやら。底なしの元気と根気はまた市の活力でした。頼りない自分を信じてくれて、個性的な仲間たちを信じてくれて、本当にありがとう。その信じる心は次にもつながるはずです。

 

 

ダグダ

優しくて、力持ちでちょっぴり怠けちゃうところが魅力。おんぶしたりされたり楽しかったです。だからって怠けすぎちゃうとダメですよ?非力な私が押しつぶされちゃいますからね。

 

ブリューナク

冷静沈着な参謀、秘書のような立ち回りはまさに完璧でした。時折見せる可愛さもまた完璧を彩るものだと思ってますよ。その知恵がこれからも多くを助けることを願ってます。

 

 

 

ヴァナルガンド

後輩のはずなのに気付けば皆のお母さんになってましたね。自分よりも背が高く、とても優しいからついつい甘えちゃいました。その大きな体と思いやりでこれからもみんなを助けてあげてください。

 

 

カシウス

初対面のインパクトはあなたが一番大きかったかも。不思議な魅力に惹かれて、逆に君も私達に惹かれていって、良い円環になったと思います。時間も世界も超えた先で私を待ってくれていてありがとう。永遠のどこかで、また会えるかもしれないね。

 

レーヴァテイン

ここに来るまで何回蹴られたのやら。でも月日を重ねる度、勢いと思いやりが増してきていました。強くて、美しくて、意地悪で、めんどくさがりで、優しい君が私は大好きです。私の一番の刃。

 

 

 

 

読み終えたレーヴァテインは手紙を丁寧に折りたたんで木に体を預ける。

「もう良いんです。我慢しなくて良いんです。カッコ悪くても良いんです。そんなレーヴァテインという女の子が私も、私達も…。マスターも大好きなんです。」

「──────」

呼吸が荒くなる。弱りきった少女をミストルティンは胸に抱き留める。自分より少し大きいはずだが、今は子供のように小さい。必死に抑えていた感情の堰が切れる。グチャグチャの感情が、彼女の口から聞いたことのない大声で発せられる。

 

大切だった

ウザかった

宝物だった

時々嫌いだった

もっといたかった

ずっと一緒に暮らしたかった

 

喉を痛めながら、思い浮かんだ言葉を片っ端から叫び続ける。口だけでは出し切れない感情は勝手に腕を動かしてミストルティンの身体を叩きつける。その音はよく耳にしていた懐かしい音。マスターにちょっかいかけたり、苛つきを解消する時に聞いた音。体が弱くなってから聞くことは無くなったが、今は全盛期以上の強さで叩かれているかもしれない。ミストルティンの胸元を涙で濡らし、素肌まで届いたがレーヴァテインの涙はまだまだ勢いを止めない。喉を使い切ったのか声は出さないが、背中はまだ弱々しく叩かれている。何時間も経って、ようやく落ち着いた頃には暗い空にわずかに青色が入り始める頃だった。

「ねぇ。」

「はい。」

「手伝ってくれる?ちょっと立てなくってさ。」

「その前にご飯を食べませんか?レーヴァさん何も食べてませんよね。」

「あー、おっけ。食べる。」

流石に空腹だったのか、普段からは考えられないペースで食べ進めるレーヴァテイン。絶望し、泣き疲れ、空っぽになっていた体に活力が満ちていく。そしてまた涙がこぼれる。それもそのはず。これを作ったのはここにいる二人を除いたみんなが作ってくれたのだから。

レーヴァテインの好みな味付けのロンゴミアント。方天画戟はドーンと一番おおきい。控え目だが辛子が入っていたのはオティヌス。不格好だが一生懸命作っただろうグラム。お粥にしようとして止められたのかダグダのは少し水っぽい。ブリューナクのおにぎりはまさに正三角形。お肉を入れるのはヴァナルガンドらしい。薄味だが優しい味のカシウス。みんなが彼女を元気づけるために心を込めて作ったのだ。

「ご馳走様。それじゃ行こっか。」

「はい。」

皆が待つ家に帰ると早朝ということもあり静かだ。玄関に入り、取り敢えず自室に行こうとすると声がかけられる。

「戻ったかレーヴァテイン。」

「おはよ…ブリューナク。」

「自室に戻る前にこちらに来てくれ。構わないか?」

「え?まぁ別に。」

先導されてやってきたのは広間。大机の周りに置かれたソファには仲間達が眠っている。台所から物音が聞こえるので、ここにいないロンゴミアントとヴァナルガンドは朝食を作っているのだろう。

「ナニコレ?飲み会終わり?」

「お前の帰りを待っていたのだ。結局睡魔に勝てずこの通りの結果ではあるが。」

「あ!レーヴァさんおかえりなさ〜い♪」

丁度良いタイミングでヴァナルガンドが出て来た。いや、彼女の鼻が頃合いを嗅ぎ取ったのだろう。

「もー、随分と遅い帰宅ですね。めっ!ですよ?」

「ごめん。」

「いいですよ〜。ほらほら、朝食が丁度できましたよ。皆さんも起きてくださーい!」

ヴァナルガンドの号令で皆モゾモゾと動き始める。そして起き上がった方天画戟、オティヌス、グラムはレーヴァテインを見つけると打ち合わせでもしたかのように同時に飛びかかってきた。回避も受け止める間もなく押し倒されもみくちゃにされている。

「レヴァだーー!」

「テメェ何処行ってやがった!」

「私達心配してたんだよ!?」

「ごめんってば…。謝るから降り…。」

「仕方ない奴だ。」

さんざん叱られると思っていたがあっさりと離れていく。惚けながら立ち上がると背後から何かがぶつかり、体が重くなる。視界の端には編み込まれた金髪がのぞく。

「罰として、今日一日ダグダのおんぶ係だからね~?」

「はぁ。仕方ないけど──、また重くなった?」

「重くなってないよ~!?」

足をバタバタと動かして反論するダグダに重心が揺り動かされる。実際ダグダは平和になってから運動をしていないので重くなっているのは内緒だ。

「ブリューナク。ダグダの運動スケジュールよろしくー。」

「承知した。完璧なプランを提案しよう。」

「そんな〜!?こうなったらお昼寝仲間のヴァドとカシウスもいっしょだからね?」

「がう!?」

カシウスの名前が出たことでそちらに視線を移す。いつもは表情が薄く、何を考えているかは読み取るのは難しいが、今は微笑んでいる。

「どうせカシウスは未来視で把握してたでしょ?」

「いいえ、その必要はないわ。貴女達二人は勿論、ここにいる皆の縁はとても強い。そしてみんなミストルティンを信じて託した。後は待つだけ。」

「そう。」

「帰ってきましたね。レーヴァティン。」

最後に出迎えたのはロンゴミアント。心配する様子などなく、いつもどおりの調子で笑いかけてくれる。

「ただいま。ごめん、手間かけちゃった。」

「あなたに面倒ごとを任されるのは慣れていますから。もう大丈夫なのですね?」

「大丈夫。ちゃんと見送れるよ。」

いつもどおり机を囲んで慌ただしい朝食を終え、マスターの葬儀に向かう。お世話になった町の人々には報告だけ済ませた。棺を地中に埋め、墓石を囲む姫たちが手にしていたのは戦場を共にした神器。

「これが…最後の…。」

「改めてこれは必要なのだろうか…?手をかざす方が効率的に…。」

「でもこちらの方が私達らしいと思いませんか?」

「カシウスのが大きくて平だから一番下で。」

「分かったわ。」

「改めて並べるとダグダのはでっかいよね~。」

「そんな大剣ふりまわすレーヴァもグラムもヤバいんじゃないかな~?」

「うっかり神器ごと叩き潰すんじゃねーぞ?」

「そんなことしないよ、いじわるー!」

「では皆さん。」

墓石に重ねられた10の神器。一人ひとりが最後の思いを込める。時間にして1分ほど、神器は同時に持ち主の懐に帰っていく。

「──うっし!やることやったから、帰って昼飯にしようぜ!」

「はいはーい!あたしハンバーガー!」

「おかゆ食べたーい!」

「家に向かってダッシュだよ~!」

「待って~おんぶして~。」

「まったく騒がしい。我々も準備に向かおう、ミストルティン。」

「はい、頑張ります。」

走り出す者、それを追う者、呆れながら歩む者。そして見守る者。

「賑やかね。」

「そうですね。昔は3人だけでしたから。」

「おせっかいな奴とメンドクサイ奴がずっと一緒だからほんっと怠かった。」

「手のかかる我儘娘でしたね。」

「その円環がここまで大きくなったのね。穏やかで、優しくて、嬉しそう。」

「口に出さなくていいわよ。バーカ。」

はにかむ少女はとても晴れやかで、先行く家族を見据えている。

それからみんなで買出しにいって山ほどの料理を用意した。昨日と打って変わり、食べて飲んで、騒ぎ倒して、陽気な夜を過ごす。

「ねえねえ、みんなはこれからやりたいことってあるの?あたしはここに残って」

「やりたいこと?」

「みんなマスターが大好きだからここに残ってたけど、もういないからさ。もしかしたらやりたいことあるのかなって?」

「オティヌスはなにするの?」

「あたしはここにのこって機械いじりとかしようかなって。」

「俺は最強を目指して旅に出る。世界中の強い奴と競い合うのさ。」

「私も旅をしたい。この世界の円環を観察し、見守っていきたい。」

「ダグダはのんびりゴロゴロしたいな~。」

「ならばブリューナクの補佐を頼むとしよう。町の困りごとを解決するには人では多くても困らない。」

「ええ~!?」

「私もここに残るかな~。信じられる人がたくさんいるのってとても幸せだからさ。」

「私は皆さんや、町の人たちのお世話をしたいのでここに残りたいです。」

「私は…まだ決まっていません…。」

「私は変わらずマスターを守っていきたいと考えています。」

「私は───。」

 

それから数日後。方天画戟は既に意気揚々と飛び出していった。己の目指した強き覇道と主君の穏やかさを探すらしい。カシウスは相変わらずのマイペースで置手紙を残していつの間にか消えていた。きっと彼女のことだから神出鬼没に帰ってくるかもしれない。

そして今は昼を過ぎたころ。拠点の玄関先にはレーヴァテインの愛車である黒いバイクが置かれていた。

「行くのですね。レーヴァテイン。」

「見送りはあなただけ?」

「そうですね。きっと旅行に行くくらいの心持ちなのでしょう。」

「まあ、気が向いたら帰って来るかも。じゃあなんであんたは来たの?」

「親友の門出は見送るべきだと思いましたので。」

「真面目ね。そっちはずっと残る気?」

「皆さん色んな道に進みますが、止まり樹は必要ですので。」

「ふーん、じゃあ任せた。さてと…。」

バイクに跨るレーヴァテイン。動き始めたエンジンは心地の良い快音を響かせる。出発を前にぐるりと周りを見渡す。しばらく離れると思うと、何十年と過ごしたこの場所が急に懐かしく見える。

「すみません、お待たせしました…!」

「大丈夫、待ってない。最後に確認だけど、本当に来るの?長い旅になるかもしれないけど?」

「レーヴァさんがいるなら、何も怖くありません。」

「おっけ。それじゃロンゴ、行ってきます。」

「お二人とも、行ってらっしゃいませ。」

走り出したバイクの影はあっという間に小さくなり、音も去っていく。

「レーヴァさん。まずどこに行くのですか?」

「決めてない。でも、知らないものを見に行きたいかな?」

「それはいいですね。どこまでもついていきます。」

「ありがと。それじゃ、どこまでもついてきてよね。」

 

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