死にゲー世界の転生者   作:るるるる

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趣味です。


プロローグ 死にゲー世界の転移者

20xx年某日。とあるゲームが発売された。

 

そのゲームは自由度がかなり高く、ボリュームも満点と言う所謂神ゲーと呼ばれる類のものだ。

 

自他共に認める廃人ゲーマーとして、私はそれはもう当然の様にやり込んだ。華々しい女子高生としての初夏が全てこのゲームに消えるほどに。

 

凄く面白いですこのゲーム。製作陣ありがとう!

 

「一日中やってられるのもあと少しかー…もう少ししたら学校だもんなー……夏休み、永遠に続けばいいのに……」

 

因みにこれは完全に余談だけど、夏休み中私が引き篭もって世界を救っている間に私の友達はかれぴを作ってイチャコラしていたらしい。

 

当てつけの様に彼氏とのツーショット写真が送られまくってたから知ってる。

 

……別に羨ましくなんてないけどね?本当だよ?

……本当です。はい。

 

「彼氏なんていらん。私にはゲームがあればそれでいい……だから一々彼氏とのツーショット送ってくんな!クソッたれ!!」

 

羨ましくはないけどなんかムカつくこの感情、分かる人いるよね?

 

「いいもん…私にはゲームがあるからいいんだもん……」

 

このゲームには主に二つのルートがある。

一つはギルドで仲間を集めて、様々な苦難や逆境を乗り越え魔王軍達と戦っていく王道冒険RPGルート。

 

もう一つは魔法学院に入学して様々なラブでコメディなイベントをこなしながら、仲間(ハーレム)を集めて魔王軍と戦っていく、所謂ギャルゲー(兼乙女ゲー)的な要素が強い恋シュミ系RPGルート。

 

両方とも『なんでそれを一つのゲームに詰め込んだのか訳が分からない。製作陣は頭がおかしい(褒め言葉)』って言われるほどボリュームがエグいらしい。

 

いやほんと、一本ずつ別ゲーとして出しても全然売れるよ?ってレベルでクオリティが天上天下唯我独尊してるらしいから、何故融合して売り出したのかマジで謎、らしい。

 

……らしいらしいと他人事なのは私が専ら前者の冒険者ルートしかプレイしていないからである。

 

恋シュミ系はあんま趣味じゃないからね。偶にやるくらいで丁度いいんだよあれ系は。私、リアルを追求する女の子ですし?冒険者してる方が性に合ってるし。 

 

……別に二次元の人と恋愛している傍らで友達が青春を謳歌しているのに虚しさを感じるからやってないわけじゃないからね。

 

こればっかりは本当にっ!本当だから!!

 

「……誰に言い訳してるの私…連日の徹夜で頭逝っちゃってるのかな…そう言えば独り言もめっちゃ多い……こわっ」

 

さすがの私、天野空輪廻(アマノゾラリンネ)ちゃんでも不眠不休連日ゲーマーフルマラソンは身体に堪えるらしい。私、疲れてるのね……。

 

きっとそうだ。この謎の虚しさも嫉妬心も疲れが生み出した偶像的なものに過ぎないんだ。…きっとそうなんだ……。

 

「疲れてる時は癒しだよね…恋シュミルート、やってみますか……」

 

これは逃げじゃない。未知なる世界を探求するゲーマーとしての行動だ。

 

「そうと決まったら早速…いやでもどうせやるなら最強無敵の美少女主人公がモテまくる学園生活の方が面白そうよね。……よしっ、全属性適正持ちチート主人公当たるまでリセットマラソンスタートだ!」

 

そして私の地獄のリセマラが始まった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ふふふ…次で10000回目……マジでそろそろ終わってくんないかな……死にそうなんですけど」

 

あれから二日経った。癒しを求めて恋シュミルートに移行したのになんでこんな死屍累々としてるの私……。訳分かんないんですけど。

 

「全属性適正持ちとか無理だわ…当たる訳ないわー……なんであんな目標高くしたの私?バカでしょ……」

 

全属性適正持ち。それは基本の火、水、風、雷、土の五つと、希少属性である光、闇、毒の三つ全てに適正があり、扱える事を意味する。

 

「冷静に考えると五属性適正持ちの五重奏者(フィフスティアーズ)でも十分最強だよね…もう妥協してそれでも……ああだめだめっ、ゲーマーとして一度決めたことは貫き通さないと!」

 

このゲームの世界観では、二属性持ちの二重奏者(セカンティアーズ)で秀才、三重奏者(サードティアーズ)で天才。

四重奏者(フォースティアーズ)や五重奏者(フィフスティアーズ)にまでなると、それは御伽話に出て来る伝説上の勇者達を表す単語になってくる。

八重奏者(エイティアーズ)とか最早バグだ。

 

そこまで考えて私にある一つの恐ろしい仮説がよぎった。

 

あれ?これって八重奏者って本当に居るのかな?世界観やシステム上存在しない可能性が……微レ存?

 

「…ってそんな訳ないよねー!うんうん。絶対出る出る絶対出るっ!よーしがんばるぞーっ!!」

 

恐ろしい現実から目を背け、10000回目のリセマラを始める。

 

因みにこのゲームのリセマラはキャラクリや名前を決め終えた後に、主人公の性能や属性などをお祈りするタイプのリセマラだ。

故に見た目だけは既に最強美少女のアマノゾラ・リンネちゃんが完成している。

 

……私はゲームの主人公には自分の本名をつける派の人間。だってその方が没入感あって楽しいもん。

 

だがそれを知った奴は大抵『アイタタタタタッ!』とか言ってきやがる。

そう言うヤツにはデコピンだ。

 

…まあ言ってくるの大体私の友達なんだけど。寧ろアイツしか言ってこないんだけど。あの子本当に友達なのかな……。今度会ったらまたデコピンしてやろ。

 

「八属性は無理でもせめて七属……?……っ!?え!?これって……!!!!で、出たのっ!?遂に出たのっ!?嘘っ!?」

 

学校始まったら必ずデコピンしてやるとしょうもない決意に燃えながら、適当に10000回目のリセマラにチャレンジしていると、突如現れた【八重奏者】と言う特殊テキスト。

 

見間違えかと何度か見返すも、そこに映るのは変わらず【八重奏者】の文字。間違いない、私は引き当てたのだ。最強無敵の究極主人公を!

 

「……しゅごい………♡」

私は恍惚とした表情で夢の様な画面を見つめ続ける。

未だ夢心地で、どこか現実感が湧かない。

だが間違いなくこれは現実なのだ。

 

そのまま暫く時間が経ち、漸く実感が湧いてきた。

 

それと同時に荒ぶる様な喜びの激情!大爆発!!

 

「やったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!私やったああァァァァァァァァァ!!!!!すごいしゅごいすんごいよわたしーっ!!!!天才じゃん!諦めないって大事だねほんとうにっ!!八重奏者なんて居ないかもとか思っててごめんなさーい!!!!しかも?それだけに飽き足らず?よく見たら?魔力カンスト上限推定10000越えの神ステータスだし?他ステの上限も滅茶苦茶高い感じだし最高ね!人生最高の日だわ全くっ、宝くじでも買いに行こうかしら!?それとも競馬っ!?うふふ、今ならなんでもできそうですの!」

 

自分でも何を言ってるか分からないぐらい感情が爆発している。

そりゃそうだ。不眠不休が報われたんだから!

 

「コレで漸くスタートできるぅ!ここから、ここから始まるんだっ!!

わたしのかんがえたさいきょうの低身長ダウナー系黒髪ロング赤メッシュ赤目吊り目クールボイスなアマノゾラ・リンネちゃんによる百合ハー学園ラブコメディが!!

…魔王?知らない子ですねえ……冒険者ルートで何百回も戦ったからもういいの!うんざりなの!!癒しが欲しいのよ私は!!」

 

男を攻略するより可愛い女の子を攻略した方が癒し力は高いよね!

早く学園ラブコメディしたい!癒しが欲しい!!

 

と言うわけで早速……。

 

「ゲームスタート!!!!」

 

それを押した瞬間、ゲームのモニターが異常なほどの光量を発して目に強い痛みが走った。

 

「いっだっ!?は!?え?なに!?なにこれ!?」

 

それだけに飽き足らず、辺りに轟音が響き始め、部屋も少しずつ揺れ始めた。視界もぐわんぐわんと揺らめきだし、空間そのものが捻れているのではないかと錯覚させる程、異様な景色が広がっていく。

 

……意味がわからない。本当に意味がわからない。

 

徹夜でリセマラし続けて夢でも見ているのだろうか?

 

だが、目と頭に走る激しい痛みと耳に響く轟音が、目の前で起こっている''コレ"を現実だと否が応にも押し付けてくる。

 

その痛みと恐怖に耐え切れず、思わず目を瞑ってその場に蹲る。

 

早く…早く終わって……!

 

その願いが届いたのか否か定かではないが、暫くすると痛みも頭が割れそうな轟音も消え去っていった。

 

「…………?」

 

感じる違和感。先ほどまで蹲っていた筈なのに、何故か自分は今立っている。更に部屋の中に居たはずなのに、肌に感じる強い太陽の熱。

極め付けは周りから聞こえてくる多くの人々の声。

 

もしかして…と思う。これは、所謂有名な"アレ''ではないかと。

 

お願いだから何かの間違いであってくれ…と勇気を振り絞って閉じていた目を開けると……。

 

「……っ」

 

そこに映るのは日本とはまるで違う、まさに異世界とでも言える様な風景で…私が、プレイしていたゲームとそっくりな街並みが広がっていた。

 

「嘘でしょ……え?今の私の声?素敵やん」

 

しかも自身の声は今迄の私ではなく、キャラクリで創造した主人公、アマノゾラ・リンネのクールボイスへと変わっていた。

これはいい…ってそうじゃなくて!どう言うことなのっ!?

 

「意味分かんないんだけど!私夢でも見てるの!?……太陽光まぶしっ」

 

久方ぶりに感じる自然の光にちょっとふらつく。あと熱い。

さっきまでエアコンの効いたお部屋で地獄のリセマラ作業に勤しんでたから落差で余計に辛いんだけど。

 

…夢、だよね?だって、こんなの……。

 

自身に起きた現象に頭が追いつかない。

 

「異世界転…いやでもそんなのフィクションでしか……」

 

考える事が多すぎてふらふらする…頭いたい……。

 

突如訪れたキャパオーバーな出来事に軽く絶望しながらもう一度辺りをよく見回してみる。

 

……なんか強面のおじさんと目が合った。えっ、こわっ。

 

そのおじさんは私を見るなり開口一番に……。

 

「お嬢ちゃん。大丈夫かい?随分と顔色が悪いみたいだが…」

 

ご心配のお言葉をくれた。

 

……うん!人は見た目で判断しちゃいけないよね!失敗失敗!!

 

て言うかよく見たら普通に商売人だし…マジで頭パニクってるなぁ……。

 

ちょっと落ち着いて考えを整理しよう……。

 

「へ?……あっ、いや大丈夫です!ちょっと暑いなぁって思ってただけなんで!」

 

「そうかい?お嬢ちゃんみたいな子供が一人だとおじさん心配だなぁ……親御さんとは一緒じゃないのかい?」

 

子供って…やっぱり今の私の見た目って完全に低身長ダウナー系黒髪ロング赤メッシュの完璧究極美少女アマノゾラ・リンネちゃんなんじゃ……い、いやいやいや!!まさかね!ゲームのアバターに憑依転生するなんてそんな漫画じゃないんだし……あるわけないよね!うんうん!!

 

「こ、子供…いや大丈夫です…こう見えて15越えてるので……」

「え!?そ、そうなのかい?そりゃ悪い事を言ったな……すまんかった」

 

おじさんは申し訳なさそうに謝ってきた。

…本当に人は見かけに寄らないなぁ……そんな優しいおじさんとの会話で少しだけ冷静さを取り戻した私は、ここが本当にゲームを元にした世界なのか情報を集めることにした。

 

「あのー、ところで一つ聞きたいことがあるんですけどー……この国の名前って教えてもらえたりしますか?」

 

国の名前。これが一致したら……もう結構アウトな気がする。

でも聞かないと何も始まらないし…聞くしかないよね。

 

「んん?こりゃまた妙な事を聞くお嬢ちゃんだな。…もしかして暑さで朦朧としちまってるのか?……水、飲むか?」

「あっ、どうもありがと……ってそうじゃなくてですね!この!国のっ!!名前を知りたいんですけど!!」

 

見ず知らずの私に水をくれた親切なおじさんに大声を出すのは失礼だと分かっているけど、こっちも割と必死なので許して欲しい。

 

「うおっ!?どうしたいきなり大声だして!?」

「ごめんなさい!でも死活問題なんです!大事なことなんです!!」

 

泣きそうになりながら迫る私におじさんは慌てながら、声を張り上げた。

 

「お、おい!店前であんまり騒がないでくれ!あんたみたいなお嬢ちゃんと揉めてるってなると周囲の目が痛くなるっ」

 

……確かにそれはそうだ。

私の見た目が本当にアマノゾラ・リンネちゃんだった場合、強面のおじさんが子供を泣かせてる様にしか見えない。

 

うん、普通に事案だし営業妨害だね。

 

「ご、ごめんなさい……で、でもあの、国の…名前……知りたくて……」

 

申し訳なさやら不安やらなんやらが合わさってもう本当に泣きそうになる。そんな私におじさんは困惑した顔をしながらも……。

 

「なんだってそんな事が知りたいのかは分からねえが……この国の名前は''ビギンズエンド''だ。常識だろ?」

 

……ビギンズエンド。完全に一致している。

…他は?他の国や魔法、魔王は?

 

どれか一つでも否定して欲しくて、ここがゲームを元にした世界ではないと証明して欲しくて、私はおじさんに質問を投げかけ続けた。

 

だがそれらは全て、ここが私のプレイしていたゲームの世界にそっくりだと裏付ける様な結果にしかならなかった。

 

「そう…ですか……どうもありがとうございました……なんか色々すみませんでした……じゃあ、私はこれで」

「ほ、本当に大丈夫かい?」

 

最後まで迷惑にしかならなかった存在の私を心配してくれる優しい人の声を聞きながら、私は街中を進んで行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして今、私は路地裏にいる。少し一人で考えを整理したいからだ。

 

自分で作ったゲームのキャラに憑依して転移…冗談みたいだけど本当なんだもんなー……はは。

 

「こっちには私のこと知ってる人なんて一人も居ないなぁ…天涯孤独ってこう言うこと言うのかな……なーんて」

 

……ここは私がプレイしていたゲームに類似している世界でほぼ間違いないだろう。国の名前も同じだしその他諸々の細かいところも完全一致。……極め付けはこの身体、どう見ても私が作った最強美少女です。本当にありがとうございました。

 

……普通なら最強スペックで無双出来るって喜ぶところなのかもしれない。でもそう呑気なこと言ってられない理由がある。

 

なぜならこのゲーム、主人公の強さやステータスに合わせて敵の強さも再調整されて簡単にクリア出来なくなる所謂死にゲーだからだ。

魔王に至っては主人公の最終スペックの五倍くらい強く設定されてる徹底ぶりです。

 

つまりリセマラでどれほどエゲツナイ性能の主人公を引き当てたとしても、その強さを基準に魔王軍の強さも爆上げされるので脳死無双私ツエープレーは出来ないって言うね……いや、ゲームとしてプレイするなら滅茶苦茶面白い神システムなんだけどさ…それが現実に落とし込まれたら絶望しかない。詰んでる。無理ゲーです。逃げたい。

 

……自分で自分の事を主人公だって思うのは痛々しすぎてちょっとイヤなんだけど…状況証拠的にほぼ間違いなく私が主人公だよねこれ。

窓にチラッと映った姿が完全にわたしがかんがえたさいきょうの主人公、アマノゾラ・リンネちゃんだったもの。うふふ。

 

「現実逃避…してる場合じゃないかなぁ……」

 

……もしこの世界の魔王軍が私の強さを基準に再構成されているとしたら本当にヤバい。絶対勝てない。

 

だって私、ほぼバグみたいな存在の八重奏者(エイティアーズ)だよ?二重奏者(セカンティアーズ)ですら珍しいんだよ?しかも魔力総量カンスト推定値約10000超えの天才美少女なんだよ?そんな私より遥かに強いのがこの世界の魔王軍なんだよ?……勝てるわけねーだろこんなのっ!!くそっ!!

 

……これもしかして人類側が滅ぼされたら私のせいになったりする?……やばい胃が爆散しそうたすけて。

 

「はぁ……どうしよ……逃げたい……お家に帰りたい……」

 

思わず出るため息と弱音。

この世界には私の居場所も、生まれてきた軌跡も何一つとしてない。

それはとても怖くて、恐ろしいこと。

 

そんな折れそうな心を紛らわせるために路地裏を歩き続けていると、少し開けたところに出た。

 

「うわー、なんかこう言うのちょっとファンタジーぽくてテンション上がるわー……ってん?なんか泣き声聞こえない?え?」

 

私の超人的な聴覚が、遠くの方で何処か押し殺す様な、諦めたかの様な女の子の泣き声をキャッチした。

 

……流石に、無視するのは違うよね。

 

声の聞こえる方に向かって走っていく。

 

「私足はっやっ!?……そう言えば初期スペックでも十分化け物だったな……さすが私!あはははっ!!」

 

もう自身の身体ではないその怪物っぷりに、割と現実逃避しながら複雑な道の路地裏を進んでいくと…そこには野生の金髪ロールのお嬢様が座り込んで涙を流していた。

 

「ひっく…ぐすっ……」

 

……なんでよ?

 

 

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