死にゲー世界の転生者 作:るるるる
「「……」」
沈黙が続く。……いやさっきも見たなこの光景っ!?デジャブなんですけど!
あーもう…なーんで調子に乗って揶揄っちゃうのかなー私……でもレインの反応が可愛すぎるのが悪いよね?
うんレインが悪い私悪くない。
リンネは全ての責任をレインに転嫁した。
「と、取り敢えずさ……」
「は、はい」
「ここから出ない?」
「へ?」
私の提案にぽかーんとするレイン。
……いやでも至極真っ当なこと言ってると思うんだけどな私。
だってここ……。
「いつまでも路地裏って言うのはちょっと……」
「あっ」
そう。ここは路地裏なのだ。
そんなとこにいつまでも居たら気が休まらないなんてものじゃない。
て言うか普通に滅入るしぶっちゃけ危ない。
私もレインもか弱い女の子なんだから。……八重奏者と評価規格外だけど。
「てかなんでレインはこんな所にいたの?馬鹿なの?誘拐とかされたかったの?」
「失礼ですわね!??」
「当然の疑問だと思うけど?来たのが私だったからよかったけど……貴族のご令嬢様なんてゴロツキにとっては格好のカモなんだから一人路地裏にいるのは危ないでしょ」
「う……」
そこで言葉に詰まる彼女を見て私は一つの予感がよぎった。
まさか彼女は……。
「……本当に、誘拐とかそう言うのされたかったの?……何もかも嫌になっちゃったとか?」
アレほど憔悴していて家に居場所がないって言ってたんだ。
自殺願望的なものがあっても不思議ではない。
だがそんな不安とは裏腹に彼女はわたわたと慌てた顔で。
「ち、違いますわ!ただその…どうしても一人になりたかったと言いますか……」
「…じゃ、破滅願望とかそう言うのはなかったんだね?」
「当然ですわ!けど……確かにリンネの言う通りかなり危ない状況でしたのねわたくし……来てくれたのがリンネで、本当によかったですわ」
綻ぶように笑うレイン。……全く、これじゃ怒るに怒れないじゃない。
ま、これからは私が居るから危ない目には合わせ……いや、そうか。彼女は評価規格外なのか。
……じゃあ間違いなく、魔王に狙われるね。私含めて。……多分、存在の感知ぐらいはとっくにしてるんだろうし。
……はー、魔王を含めた幹部連中を倒すのは私一人じゃ無理だし…彼女の力が絶対に必要になるよね。
……危険な目に合わせない、か。
…………………。
「ねっ、レイン」
「?なんですの?」
きょとんと首を傾げながら私を見てくる彼女は、戦いとは無縁の心優しい少女なのだろう。
魔法に憧れ、魔法に焦がれ、魔法学院での生活に夢みる普通の女の子。
叶わないと思い、諦めていたその夢にもしかしたら手が届くかもしれないと初めて希望を身に宿した少女。
そんな彼女に私は。
「さっき言ったよね。レインは評価規格外だって」
「?……ええ、確かにそうおっしゃってましたわね」
…残酷な真実を突きつけるのって辛いなぁ……でも、やらないと滅びるのはこっちだ。
だったら……。
「まず間違いなく、魔王軍と魔王に狙われるよ。……脅威と認識されて」
「!?」
信じられないと目を見開くレイン。
当然だ。なにせいきなりあの魔王に狙われると言われているのだから。
「……な、なんでリンネはそんなことを知っているんですの?」
そう尋ねてくる彼女の声は震えていた。……無理もないよね。
「なんでって…私も狙われてるからだけど」
「……へ?」
憶測でしかないけど、あの魔王は絶対に目をつけてくる。
……すぐに殺しには来ないだろうけどね。
「だって私、八重奏者(エイティアーズ)だし」
「?……!?えええぇぇえぇええぇえぇぇ!?!?!?!?!?」
絶叫が響き渡る。……あれ?私そんな不味いこと言った?
「えっえっえっえっ、エイティアーズですってぇ!?そ、それは本当なんですの!?エイティアーズと言えば伝説、いえ最早神話の域にある存在し得ない概念ですわよ!?」
あっ、そっか。失念してた。……こう言うの、私なんかやっちゃいました?って言うのかな?なーんて。
「本当本当」
「軽いですわね!?」
「えー…じゃ、フィフスティアーズだったら信じてくれる?」
「べ、別に疑ってるわけでは……それに!フィフスティアーズだったらって言ってますけど!フィフスでも御伽話にしか出て来ないような伝説上の存在なんですわよ!?」
む。疑ってるわけではないとか言ってるけど…なんか信じてないみたいな顔してるなー?
……よし、こうなったらちょっと試し撃ちを…空中だったら多分大丈夫だろうし……威力もかなり抑えて……うん、いけるね!
……それに、レインの家は実力主義だし…『御付きになりたければ力を見せてみろ』的展開で一番強いやつと戦わされるってのも有りそうだし……ここらで一発、必殺技を確認しておくのもいいかもしれないよね?ね?
…別に、ただ使ってみたいとか思ってるわけじゃないし、本当だし。
……本当ですよ?魔法ぶっ放してー!とか思ってる訳じゃないですからね?……うん。
そうと決まったら……ふんっ。
「……リ、リンネ?どうしましたの?その、なにか肌がピリピリするような……」
レインが何か言っている様だが今の私には聞こえない。
私は集中している。自身の内側、魔力の流れに。
さっきまで無意識のうちに使えていた魔法を、意識して外側へ引き出す。
取り敢えず五属性…ああ、これか。
「火(ファイア)水(アクア)風(フーラ)雷(ボルト)土(アース)」
「あ、あの……リンネ?リンネ!?なにを、何をやらかす気ですの!?わ、わかったっ分かりましたから!リンネがエイティアーズであることは信じますから!ですからっ……!」
初級でも中級でも上級でもない、ただただその属性を魔力として体外へ放出するだけの最低位の魔法。
だがそれで十分。今必要なのは威力ではなく、私が五重奏者であると言う証拠だけなのだから。
空間に現出した五つの次元の魔法が、私の指先に凝縮されていく。
……最低位なのに、物凄い魔力だな、と私は少し驚きながらも丁寧に、暴発しない様に、魔力を収束させていく。
そして完成するわ荒れ狂う魔力の宝玉。
本来であれば、それぞれの属性の適性者が協力して漸く放てる合体魔法。
最高位の魔法で完成したそれは、当たりさえすれば龍すら殺すと言われるほど。
その名も──
「五次元奏術・クインテッド」
究極の融合魔法が天に向かって放たれた────!
ドガァァァァァァン!!!!
それと同時に物すっごい轟音が天から響き落ちた。
えっ。
「ひきゃあぁああぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?な、なにをしてますのおおぉぉぉぉぉぉぉぉお!?!?!?!?」
「………威力、強くない?」
「当たり前ですの!五次元奏術ですわよ!?究極魔法ですわよ!?それを街中でぶっ放すなんてなに考えてますの!?おバカなんですの!?」
「……てへっ」
「可愛くありませんわよぉぉぉぉぉ!!!!もおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
「……ぐすん」
「あ、いえその…ってその手にはもう引っかかりませんわよ!あっ、こらリンネ!なに一人で逃げようとしてるんですの!?待ってくださいましっ」