死にゲー世界の転生者 作:るるるる
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路地裏でうろちょろしていた私の耳に突如響き渡った女の子の泣き声に、これ完全に事案だろやばくね?と思い全速力で駆け付けた私の目の前に広がっていたのは、荒事でも事件でも何でもなく、『お前絶対貴族のご令嬢様だろ』って格好をしている女の子が座り込んで泣いているだけの衝撃映像だった。……いや、だけって言い方はちょっと良くなかったかもしれないわ。ちょっと反省、すいませんでした。ほんとに悪気とかは一切ないんですよマジで!ちょっと言い訳させて頂きますね!聞いてくださいお願いします!!
あくまで私が言いたかったのはね?女の子が荒くれ者とかにチョメチョメされてる訳ではなく、一人で泣いていただけの被害で収まってて良かったなーって意味での泣いてるだけでよかったって意味の''だけ''だからね!本当に!!
「ひっく…ぐすっ……」
まだ泣いてる…なんかよっぽど辛い事でもあったんだろうか?…あったんだろうなぁ……多分この子上流階級のお嬢様のご貴族様だろうし、それ系の嫌がらせとか家庭内で受けてるのかな……受けてるんだろうなあ多分。受けてなかったらこんなとこで泣いてないもんね。……もしかしてあるあるなのかな貴族内での家庭内のドロドロ争いって。
…アニメとか異世界ものだと割とテンプレだもんなあ……貴族って怖いかもしれんね。偏見だけど。
……いやまだこの子が貴族のご令嬢様って決まった訳じゃないからただの推測に過ぎないけどさ。
「うぅ…ひっぐ……っ」
……これ無視するの流石に人の心案件では?…いや私は別に善人とかじゃないからスルーしても全然心は痛まないんだけどね?本当だよ?……でもまあ、今は一応主人公ですし?一旦取り敢えず話だけでも聞いてあげるくらいはしてもいいかもしれないね?……何より今の私は天涯孤独で身寄りもコネも全くない割と絶望的な状態だし?……ここで媚を売って雇い先とか仕事とか紹介して貰うのも悪くはないかな。……うん!寧ろそれが一番の目的かな!!
この子が可哀想とかそんなの一切思ってないからね!精々利用させてもらうよ!良いとこのお嬢様っぽいしさ!!
…傷心してる女の子(推定七〜八歳)につけ込む中身十五歳の廃人ゲーマーか……うん、クズですねっ!
でも仕方ないの!私も結構生きる為に必死なんだから!!ごめんね!!
「ねえ、こんな所で何してるの?大丈夫?」
「…………?え、え?だ、誰ですの?」
突然話しかけてきた私に不安げな表情を向けてくるお嬢様(仮)。
声を震えているから本当に怖がられてるね。
……うんまあ当然なんだけど。マジで誰だよって感じだからね…仕方ないよね。
そう思案しながら彼女の事をじっと見つめていると、急に顔を青ざめながら頭を下げてきた。
「……あ、あの……その……ご、ごめんなさい……っ」
「え」
そして何故か謝罪の言葉を吐きだす彼女を見て、今までどの様な生活を送ってきたのかが察せられてしまった。
……いやこれくっそ重い過去持ち案件では?…き、キツイなぁ……荷が重いよ私には……。
でもどうにかしないと会話も出来ないからなあ…うーん、どうしよ……。
私は物凄く怯えた顔をしている彼女に対して、どうすれば打ち解けられるか脳内を全力で回した。
「(あっ、これならいけるかもしれない)」
その結果、彼の有名な名乗りで『私怖い人じゃないですよー』的な雰囲気を醸し出す作戦を思いついた。
これならコミカルにいける気がするし、ギャグ方向に持っていけるかもしれない。
よし!やってやりますの!!
「ふっふっふっ…私が誰かだって?教えてやろうではありませんかっ!!」
「ひうっ…きゅ、急に大きな声を出さないでほしいですの……」
「あっ、ごめんね?」
全力でやる為に喉の調子を確かめて、最高のキメポーズを決める準備運動をしていたら
遂テンション上がって前口上を噴出してしまった……。これは反省ですね。
「でもこれは自己紹介をする為に必要な儀式なんだ。許して欲しいな」
「そ、そうなんですの?」
「うん。とっても大事なの」
「初めて知りましたわ……」
「まあ嘘なんだけどね」
「嘘なんですの!?」
意外と怯えずに会話してくれるし結構ノリ良いなこの子。ツッコミ入れてくれたよ。
それに凄く素直だし、この金髪ロールのお嬢様(仮)。すっごく可愛いんですけど。
「素直で可愛いねー」
「か、かわっ!?……ほ、本当にそう思ってますの?」
「……嘘」
「!?」
「…じゃなくて本当かも」
「!!?」
「……やっぱ嘘かも」
「い、意地悪しないでくださいまし!」
なにこの子。本当に素直で可愛いんだけど。こんな子が冷遇されるこの世界の貴族社会ってクソなのでは?
…いや、まだこの子が貴族って決まった訳じゃないし決めつけるのは良くないよね。……この子の家だけが彼女を冷遇してる可能性もあるし。
その場合は……ねえ?私ナニスルカワカンナイヨ?。
「ごめんね。私の国では可愛い子ほどいじめてみたいってことわざがあるんだ。それで遂やっちゃって……悪気はないの」
「……そのことわざ本当にあってますの?」
中々鋭いな金髪ロールちゃん。
「かすってはいるよ」
「やっぱり嘘ですの!」
なんかいい感じに打ち解けられてきた気がして嬉しいな。……気のせいかもしれないけど。
でも最初の怯えた視線ではなく、どちらかと言うと不思議な生き物を見る様な視線に変わってきていてちょっと嬉しいですの。怖がられるより全然マシだからねこれ!
………このまま…………友達になれたらなー………そうしたら……居場所が、出来るのに。
「…ってちょっと待って!」
「ぴっ!?…こ、今度はなんですの!?」
友達になるならない以前に重大な真実に気づいてしまった。 一番大事な事がまだ終わってないじゃないか!
「……私たちまだ自己紹介も何もしてないじゃん。お互いの名前も知らないよ」
「…あっ、そういえばそうですわね……でもそれはあなたが自己紹介の儀式があるだなんて嘘をついたから流れてしまっただけではないですの?」
「結構ズバッと言うねーお嬢様…大正論だけどさ」
意外とキレのあるツッコミを入れてくる彼女に驚きながらも、少し嬉しくなった。
遠慮がなくなってきてる感じがしてすごく嬉しい。……語彙力ないな私。
「じゃあ言い出しっぺの私からするね。ごほんっ…」
名乗りはいつでも格好良く行きたいのがゲーマーのサガである。
だからこそ息を吸い込み最高の名乗り上げをする為のコンディションを整えて、全力を放出する。
「我が名はリンネ!伝説上の複合属性持ちにして、究極の美貌を誇りしものっ!!」
「………」
…ああ、決まった。これは完全に決まったわ。ポージング、名乗りの口上、何から何まで完璧な名乗りだったわね!
きっと彼女も感動して硬直しているに違いないわ!コチラを見つめて動かないもの!完璧だった証拠ね!!
「ふっ…どうだった?私の名乗り上げは?カッコよかったでしょ?ね?」
「………」
何故か黙り込んで喋らない彼女。…一体どうしたのかしら……もしかして感動しすぎて失神してる?
だとしたら大変ね。
「……その名乗り本当にカッコいいと思ってますの?」
「え?かっこいいでしょ。このカッコよさが分からないなんて余程の世間知らずだよ?馬鹿にされちゃうよ?」
「そ、そうなんですのっ!?…いえ、これもまた嘘なんですのよね?さすがにもう騙されませんわ!」
…………ふむ。
「そっか…私は本気でカッコいいと思ってたんだけどな……信じてもらえないなら仕方ないよね……ごめんね?変な事しちゃって……」
「え!?あ、あの…わたくしの方こそなんだかすいません……でもやっぱりその名乗りは少しおかしいと思いますわ!
わたくしは普通の自己紹介をさせて頂きます!」
くっ…良心に付け込む作戦は失敗しちゃった…!この子の口上聞きたかったのに……!!
「で、では行きますわ。わ、わたくしの名前は……な、なんですのその目は!?」
私の最後の手段。ジト目である。アマノゾラリンネちゃんの目つきは非常に鋭い。
だからこそただのジト目でも結構なプレッシャーとなるのだ。
「うーん、やっぱりどうせだったら私と同じような名乗りしてほしいなー……」
「ええ!?あ、アレをやるんですの!?いやですわ!」
絶対に見たい私は諦めない!完璧美少女スペックのこの身体の利点、全て使わせてもらいますよ!
「本当に…だめぇ?」
究極美少女アバターによるおねだりと上目遣い!これで無理ならもう手段はない……!
「う、うぅ……!」
私の渾身のおねだりに揺らぎ始めている金髪ロールちゃん。これはいけるね!あともうひと押しですの!
「……どうしても…だめ?」
最後は泣き落としだ!自分で言うのもなんだけど今の私庇護欲MAXのチョー可愛い女の子だろうからこれは断るの不可能でしょ!
「……わ、分かりました。やってやりますわ…やればいいんですわよね!?だからその顔やめてくださいまし!
なんだかドキドキしますわ!!」
同性すら魅了するこのアバター、正に最強だね。
「やったー!金髪ロールちゃんのーちょっーといいとこ見ってみたーいっ!!!!」
「な、なんですのそれは!?」
「儀式です」
「またそれですの!?」
ほんとは飲み会とかで使われる悪しき風習なんだけどね。
知らなくていいと思うよ。
「これを言われたら名乗り上げるのがルールなんだよ。オッケーですの?もう一回いきますわよ?」
「う、嘘ではなさそうですわね……わ、分かりましたわ…もうやってやりますわよ!バッチこいですの!!」
……なんかごめんね。私、ちょっと調子乗って悪ノリし過ぎちゃってるねこれ。
あとでちゃんと謝ろう……土下座で許してもらえるかな……。
まあそれはそれとして儀式は遂行するけどね!見たいし!!
「チョロかわ金髪ロールちゃんのーちょっーといいとこ見ってみたーいっ!!!!」
「わ、我が名はレイン・シャングリア・ソティラス!い、一応貴族の娘ですわ!!」
赤面しながらも全力でやるレイン様は非常に可愛らしかったです。
「ひゅー、いいじゃん。結構風格あったよ?可愛い可愛い」
「か、からかわないでくださいまし!」
…本当に可愛かったんだけどなー……いやマジで。