死にゲー世界の転生者   作:るるるる

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第2話 居場所

「いやー本当に可愛いかったよー?レインお嬢様?」

「ぜ、絶対に嘘ですわ!あまりからかわないでくださいまし!」

 

私の本気の賞賛に顔を真っ赤にしてぷりぷりしているレイン様。可愛い。

そんな彼女を見て、私はちょっとした悪戯心が芽生えてきてしまった。うん、私は悪くない。レイン様が可愛い過ぎるのが悪い。だから私は悪くない。

 

「……ぐすん」

「!?ど、どうしたんですの急に泣き出して!?……も、もしかしてどこか痛いんですの?大丈夫ですの?」

 

ウハー!なにこの子滅茶苦茶優しいんですけど!チャー可愛いんですけど!!……も、もう少しだけイタズラしても…いいよね?

 

「……だってレイン様。私が本気で可愛いって言ってるのに信じてくれなかったんだもん。レイン様は本当に可愛いのに……ぐすぐす」

「う…で、ですが……わたくし可愛いなんて言われたことありませんし……と、とても信じられませんわ……ごめんなさい……」

 

あれ?なんか思ってた反応と違う…もっとこう『か、かわっ!?じょ、冗談はやめてくださいまし!』みたいな可愛い反応を期待してたんだけど……。

 

……あっ、そうか。この子の家庭環境って多分結構冷遇されてる感じの……うん、これは私が軽率で、調子に乗りすぎた。

……やばい、なんか普通に罪悪感的なアレで死にそうなんだけど。

 

冷静に何してんの私?路地裏で一人で泣いてるってだけでかなりの訳あり少女じゃん。そんな子に対して揶揄ったりイタズラしたり、最低すぎるでしょ。……やっぱり性格最悪だなぁ私。案外今のこの状況も、因果応報ってやつなのかもね。

 

「こっちこそごめんね。変な事言ったりして。…でも、可愛いって思ったのは本当だよ。……それだけは信じてほしいな」

「……う、嘘ですわ。わ、わたくしを褒めてくださる方なんて…今まで一人も居ませんでしたもの。…とても、信じられませんわ……」

 

生まれてきてから一度も褒められたことがない。そんな事が本当にあるのだろうか。いや、場合によってはあるのかもしれない。だが、それは彼女には当てはまらないと思う。

だって、レインは優しくて可愛い普通の女の子だ。この短いやり取りの中でもそれだけはハッキリと伝わってくる。

 

そんな彼女が生まれてこの方一度も褒められたことがない?なんの冗談だ。ふざけてんのか貴族社会ってヤツは。

……レインみたいな子を迫害するクソ溜め連中なんて、いっそのこと私が皆殺しに……いや、駄目だ。そんな事をしても何の解決にもならないし、レインも多分喜ばない。要らぬ業を背負わせるだけ。そんなのただの余計なお世話で最悪の行為だ

 

「あ、あの……」

 

それに、全ての貴族が等しくクソであると言う保証もないしね。

自分の目で見てもないのに、"貴族である"と一括りにして見るのは偏見以外の何者でもない。そう言うの、私は嫌いだ。

 

……まあでも、この子を冷遇してるシャングリア家のご貴族様だけは絶対にクソだけどな!そこだけは確信持って言えますわ!没落しろ!!

 

「あ、あのっ……!!」

 

考えに没頭していた私の耳に、レインの声が響き渡る。

 

「うわっ、びっくりした……どうしたの急に大声だして?怒ってるの?」

「ち、違いますわ!ただ、その…突然黙り込んでしまわれたので……わ、わたくしがなにかしてしまったのかと不安で…ごめんなさい……」

 

……彼女は本当にすぐ謝る。何も悪い事をしていないのに。

それはきっと今まで誰からも褒められず、肯定もされず、否定されてばかりの人生を送ってきたからなんだと思う。

 

……これからもずっと、そう生きていくのだろうか?

……それは、なんだか凄く嫌だ。本当にイヤだ。

 

と言うか…物凄く……!

 

「ムカつく」

「え?」

 

ああもうほんっとうにっ!ほんっとうにものすっごくっ!!

 

「ムカつくっ!!腹が立つ!ふざけんなクソが!!滅びろ!!」

「え?え?ど、どうしましたの突然!?な、なにか気に触る事でもありましたの!?も、申し訳ありま……!」

 

まただ!またこの子は自分が悪くないのに謝ろうとしてるっ!

それが無性に腹が立ってどうしようもなく悔しくって、私は……!

 

「謝るな!」

「ぴっ!?」

 

私の怒声に怯えた表情を見せるレイン。そりゃそうだ、なんせ今までのほほんと揶揄ってきたりした相手がいきなり怒り始めたんだから。

彼女は心底怯えた表情で、コチラをびくびくと震えながら見ている。 

 

……ごめんねレイン。でも私は自分勝手な自己中女だからさ、言いたい事全部言わせてもらうね。

 

「レインはさ、なんで自分が悪くない時でもすぐ謝るの?どうして?」

 

答えるまで絶対に逃がさない。そんな私の執念を感じたのか、彼女は泣きそうな顔になりながらも、口を開いてくれた。

 

「……だ、だって…わたくしはいらない子で……なにをしていても怒られて……おまえみたいな落ちこぼれ生まれてこなければよかったって殴られて……でも、謝れば許してくれるんですの……ごめんなさいって言えば許してくれるんですの……ですから、わたくしは……っ」

 

きっと今まで誰にも相談出来なかったんだろう。

全てを話す彼女の顔は本当に苦しそうで、今にも泣き出してしまいそうな雰囲気すら感じた。

 

それを聞いて私は……。

 

「レインはさ、優しいよね。それに可愛い」

「……は?」

 

突如話をぶった斬った私をぽかんと見てくるレインを無視して話を続ける。

 

「見ず知らずの私のこと心配してくれるし、ノリもイイし一緒に居て楽しいし、褒められた時の反応が凄く可愛いし」

「な、なにを言ってますの!?またからかってるんですの!?いい加減にしてくださいまし!……あなたもどうせ他の方と同じでわたくしのことをいじめて楽しんでるだけなんですわ……!もう構わないでくださいましっ!」

 

…………。

 

「別に揶揄ってないよ?本当に思ってる事を言ってるだけ。レインは優しいし可愛い。これは本当に本気で今私が思ってること。……信じられない?」

 

彼女の目を見ながらハッキリと言った私の言葉を、信じられないと言う風に目を見開きながら硬直するレイン。

しばらくその状態が続き、遂に彼女は俯いてしまった。

そのまま長い沈黙が続いて漸く、彼女の口から絞り出すような声が耳に届いた。

 

「…信じ……られませんわ」

「……どうして?」

 

震えた声で答えるレインに、私はあくまで普通の声で問いかける。

 

「…それはっ……」

「…今まで一度も褒められた事がないから私の言うことも信じられないの?」

 

恐らく核心をついたのだろう。俯いていた彼女は勢いよく頭を振り上げ、私に向かって涙ながらに感情をぶつけて来た。

 

「そ、そこまで分かっているのならわざわざ聞かないでくださいっ!本当はあなたもわたくしのことを可愛いだなんて思ってませんわ!優しいだなんてもってのほかです!!どうせ嘘なんですわっ!!どうせ…どうせ……っ」

 

とうとう本格的に泣き始めたレイン。きっと、今まで何度も何度も期待して、その度に裏切られてきたんだろう。その心中は私には分からない。

それでも……。

 

私はレインに言ってやった。

 

「じゃあさ、私のコレが嘘じゃないって分かるまでずっと言い続けるよ。それなら信じてくれる?」

 

「……え?」

 

泣いているのも、怒っているのも忘れ、私の方をぽかんと見つめてくるレイン。

 

……や、やばい!なんか決め台詞っぽく言ったけど実は物凄く恥ずかしいセリフだったのでは!?スベッているのでは!?

……な、なんか滅茶苦茶恥ずかしくなってきたんですけど。

レインもこっち見ながら全然動いてくれないし…ドン引きされてるのでは?は、恥ずかしい……!

と、とにかく沈黙を破らないと!えーと、えーと……ああ、そうだ!あの言葉の意味を解説すればいいんだ!よしっ、言うぞー!

 

「だ、だからその…要は…と、友達に…なろう……みたいな……?」

 

あれぇ!?さっきまで割といい感じに喋れてた筈なのになんで急にこんなしどろもどろになっちゃってるのぉ!?なんでぇ!?

友達ってなにさ!?

 

「……と…も……だち……?」

 

ほらー!レイン様も突然の友達宣言に頭にはてなマーク浮かんじゃってるじゃん!困らせちゃってるじゃん!!さっきまで結構緊迫した空気だったのに一気に霧散しちゃったよ!!どうすんのよこれ!

……せ、説明すれば大丈夫だよね?まだ挽回出来るよね?ね?

 

「だ、だってほら!と、友達だったらずっと一緒にいるし?その間私はレインのこと褒めまくるし?……その内私の言うこと信じてくれるんじゃないかなー、みたいな……別に嫌だったらいいんだけど……」

 

言ってて凄く恥ずかしくなって最後の方小声になっちゃいました……情けないです……。

 

「ふっ、…ふふふっ……あははははっ……!!」

 

自身の余りの格好悪さに絶賛凹み中の私の耳に届いたのは、とても可愛らしく、年相応な楽しげな笑い声だった。

 

……レイン様。そんな顔で笑うんだ……本当に、可愛いなー……。

 

「はーっ…ふふっ、あ、あれだけ堂々と色々と言ってきましたのに、ど、どうして最後はそんなにしどろもどろになるんですの?……ふふっ、あははっ」

 

…………。

 

「ちょ、ちょっと笑いすぎじゃない?私だって真面目だったんだよ?」

「ま、真面目にやってるからこそ面白いんですわっ…ふふふっ」

 

…まあでも、この笑顔が見れたんだから少しの恥くらいは安いもんか……うん。気にしてないからね!全然!!

 

「それで、どう?私と友達にはなってくれるの?私、レインの事褒めて褒めて甘やかす自信があるよ?」

 

これは本当。レイン様を甘やかし隊に入りたいぐらいにはこの子は可愛い。いやマジで冗談抜きに。

 

「…ともだち……ほ、本当にいいんですの?わたくしなんかで……」

「レインじゃないと嫌だなー」

「…ふ、不束者ですがどうかよろしくお願いいたします……!」

「それ結婚…まあいいけど」

 

この世界に来て不幸しか感じなかったけど、レインと会えたことだけは本当に幸福だと思ってるよ私は。

 

「……わたくし、お友達なんて初めてですわ」

「そっか。じゃ、お揃いだね」

「えっ!?ほ、本当ですの?」

「うん。アマノゾラ・リンネとして出来た友達はレインが初めてだよ。よろしくね!」

「は、はい!アマノさん!!」

「出来ればリンネかリンネちゃんって呼んでほしいなー……」

 

 

この世界において、私に居場所をくれてありがと。レイン様。

 

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