死にゲー世界の転生者 作:るるるる
私の荒唐無稽な話にぐっ、と緊張しながらも真剣に聞いてくれる彼女。
…この子、本当にいい子だなぁ……マジで泣かせた奴殲滅したいぐらいにはいい子。ぶっ飛ばしてやりたい。切実にね!
私は返す、レインに全てを伝える為に。そんなに泣かないでいいんだよって伝える為に。
だって、レインは力を持ってる。魔法学院に絶対入れるくらいの力を持ってる。なのにあの扱いは絶対に許せない。マジで許せない、本当にっ!
だから、私は……!
全てぶちまけることにした。それに関して私は全くもって後悔はしていない。だって、レインはほんとに凄いんだ。なのに、それが正当に評価されないのは、たまらなく…たまらなく……っ!悔しくてしょうがないないんだよ!マジで!
そのせいで、とにかく今はイライラしてどうしようなく悔しいんだ!
だって彼女は…彼女は……!!
本当に凄くて優しくて、とっても可愛らしくて、私にとってのヒーローなんだよ。……尊敬してる、本当に。私に出会ってくれてありがとうね、レイン。
……いや待って!?冷静になるとこの独白滅茶苦茶恥ずかしいんですけど!?
……この事は絶対口に出さないぞと決意を固めた。だって死ぬほど恥ずかしいし。
私は割と赤面しながら、とりあえず彼女に言いたいこと全部言ってやる事にした。もうこうなったらヤケクソだよ!言ったれ言ったれ!!
「レインはさ、特別な力を持ってるんだよ。本当に。評価規格外ってのはそれだけとんでもない才能なんだ。……だから、君の夢は絶対叶う!この私が宣言するよ!レインは最高の魔法使いになれるってね!」
レインは私の言葉に嬉しそうに、でも少しだけ泣きそうな顔で……。
……まあそれもそうだよね。
ずっとなりたかった魔法学院の一員になれる可能性が生まれてきたんだから。そりゃ嬉しいし泣きたくもなるよ。長年の夢が叶いそうになってるんだから。
その嬉しさは私には想像出来ないけど、きっと物すっごく嬉しいんだろうなぁ……よかったね、レイン様。
でも正直私はレインを助けてあげられたって実感はこれっぽっちも湧いてこない。だって私は、ただ転生者的なチート知識を振り翳しているだけの卑怯者に過ぎないんだから。
正直ズルだよね、欲しい言葉を与えてあげてるだけなんだから。そりゃ喜んで貰えるよ。ほんと、ずるいよね…マッチポンプってこういう事か……うん、死んだ方が良いかもしれない。
ただのマッチポンプのイキリ女でごめんね。ほんとに。
でも…ズルくても卑怯でも、それで彼女が希望を持って笑顔になってくれるなら、私はそれで構わない。
て言うか彼女の為なら私は鬼畜だろうが外道だろうが、なってみせられる自信がある。
だって、自分の好きな事を語る彼女は本当に、本当に可愛らしくて素敵だった。
あれが彼女の素なんだとしたら、それを潰した周りの環境リアルにぶっ殺。いつか目にもの見せてやるからな覚悟してろよクソッタレ。
「君は絶対に大成する最強の魔法使いになれるよ。……だってレインは神聖調伏持ちで、私の恩人なんだから」
なれるよ、絶対に。本当にそう思う。
これは、好いて欲しいとかそう言うのではなく、本当に心の底から出た本音。
……いや待って!これ結構恥ずい事言ってない!?あー、ダメダメ!平常心平常心……平常心ってなんだっけ。
私がそう一人で自身の内なるなにかと戦っていると、彼女は先ほどまでの嬉しそうな表情から一変、憤慨したような顔を見せて。
「嘘ですわ!わたくしなんかがそんな優秀な人になれる筈有りませんもの!神聖調伏だなんて聞いたこと有りませんし…変な慰めは要りませんわっ!」
ぷりぷりと怒りながら返ってくる返答。まあ当然か……いきなり言われても到底受け入れられないよね。
でも私は嘘は言ってない。レインはなれるんだから。
最強の魔法使いに。
「この状況で嘘が言えるほど私は腐ってないよ。……レインはなれる。絶対に」
きっと今まで希望を持つのが怖かったんだろう。
私の言葉を中々受け入れてくれない。
でも私は知ってる。神聖調伏がどれほど稀有で、どれほど優秀な魔法なのかを。
……いやまあ厳密に言うと魔法じゃないんだけどねアレ。
私の言葉を未だ信じられない顔で見てくるレインに対して。
「確かにこんなこと唐突に言われて「はいそうですか」って受け入れられないのも分かるよ。でもね、私は君に嘘なんか吐かないよ。
……君には力があって、魔法だってある。誰もが羨むような最上級の魔法がね。……だから、レインは通えるよ。魔法学院に」
彼女に植え付けられた劣等感や境遇は余程根深い物だったのだろう。
ここまで言っても、やはりレインは自身に魔力のような物があるんだと信じてくれない。
彼女は、泣きそうになりながら声を震わせて口を開く。
「……で、ですがわたくしには魔力がなくて…属性だってなくてっ……もしわたくしに、本当にそんな凄い力があるんだとしたらどうして今まで何もおきなかったんですの!?やっぱり嘘なんですわっ」
泣きそうになりながら、ではなかった。彼女は間違いなく泣いていた。
……泣かないでよ、レイン。
「嘘じゃないよ。君には本当に……」
「下手な慰めは要りませんわっ!……あっ、ご、ごめんなさい……」
こんな状況でも、人を気遣える彼女は本当に優しいのだろう。
だからこそ、早く彼女を笑顔にしたい、幸せにしたい。
……神聖調伏とか評価規格外の事とか今はもうどうでもいいか。
とにかく、今彼女に必要な事だけを伝えよう。
それにこれ以上泣かれると私の罪悪感的なあれが天元突破しそうで死にそうだしね!うん、なんか勿体ぶってごめんねレイン様!
申し訳無さそうにチラチラ見てくるレインに、『別に気にしなくてもいいよ』と言いながら、私は彼女の、そんな凄い力があるのならなんで今まで何も起きなかったかについての疑問に答える。
「神聖調伏って言うのはね、宿主の強い心によってその性質や、方向性が変わるかなり特殊な魔法…魔法?なんだよ」
「宿主の…心……?」
「うん。例えばこの力を持って人々を癒したいとかだと回復や支援に特化した能力になるし、逆に魔を滅したいとかだと魔族特効の神聖魔法へと変化する。そんな力なんだ」
まあ対になるあっちの方だと最初から性質も方向性も決まってるんだけどね。
なんせ、こっちの慈愛の女神からの祝福とは違って完全に呪いだし。地獄の女神からの。……まさか居ないだろうな?…いや、大丈夫か。
一つの世界に存在出来る評価規格外はどちらか片方だけだし…大丈夫だよね?もし味方に引き込めれば魔王討伐にかなりの希望が見えてくるけど…敵に回った場合は……い、いやいや!大丈夫だよね!居るわけないよね!あはは!
ふと頭によぎった恐ろしい仮説から全力で現実逃避して、レインとの話に頭を戻す。
「レインに今まで何も起きてなかったのはこの、宿主の心によって性質が変化すると言う特性があったからだね。……まずは神聖調伏を宿していることを自覚する、そしてその後にどう在りたいかを自分で決める。こうして初めて、君にはこの力が発現するんだよ。だから、今まで何一つとしてこの力の片鱗が現れなかったんだ」
なんでこの事を知ってるかって問い詰められたらどう誤魔化そう……まさか『ゲームの知識で知ってました!』って言うわけにもいかないだろうし……うん、全力で知らんぷりしようそうしよう。
「……それは、本当のこと……なんですの?」
不安そうに、だけど何処か期待を込めたように彼女はそう聞いてきた。
…それもそうか。レインにとっては私がなんでこんな事知ってるかってより、自分に魔法が備わってるかもしれないって事の方が重要なんだから。
「うん。本当の事だよ。……よかったね?魔法が使えるようになったら、堂々と学院に通えるじゃん。おめでと、レイン様!」
喜んでくれると思ったら、それとは裏腹に彼女は怯えたように俯いてしまった。
…あ、あれ……どうしたんだろう……私なんか不味いこと言っちゃった……?
そんなちょっと慌て始めた私を尻目に、レインは何かに縋るような声で言葉を発した。
「…本当に……本当にわたくしには魔力があるんですの?……本当に……魔法学院に通えるんですの……?」
……ああ、そうか。そうだよね。
ずっと夢見ていたものが叶いそうなんだもんね。
…信じるのは怖い、だけど信じてみたい、そんな気持ちは彼女の全てから伝わってくる。
だから、私はレインに言ってやった。
「断言するよ。君はなれる。……最強の魔法使いに」
「……っ」
迷いなく発した私の言葉に目を見開く彼女。
でも、私は確信している。レインは最強で最高の魔法使いになれるって。
だって彼女は優しくて、誰よりも魔法に夢を見てて、あと可愛い。
……そして何より、私に居場所をくれたヒーローなんだから。
きっとなれる。いや、絶対になれる。そんな気持ちを伝えようとそちらを振り向こうとすると。
「‥…うっ」
「うっ?」
彼女の方から妙な声が聞こえてきた。
えっ、なにこれ?嗚咽?ここに来て?
もし何かの病気だったら不味いと思い、慌ててレインの方を見る。
そしたら……。
「うわあああああああっ…………!!」
彼女は、今までの何処か押し殺した様な、子供離れした泣き方ではなく、
顔を破顔させ、思いっきり泣き叫んでいた。
それこそ子供の様に。
……いやいやいやいやいや!なんで!?いや、なんで!?
「えっ、ちょ!?えっ!?ど、どうしたの!?大丈夫!?」
思わず平静さを忘れ、割りかしパニック状態になりながら彼女に向かって言葉をかける。
しかし……。
「うわあああああああああんっ……ひっぐ、ひっぐっ……!」
レインは一向に泣き止んでくれない!どうすればいいのよこれ!?
そもそもなんで急に泣き出したかも分かんないし!
えーとえーと……!あっ、そうだこれなら泣き止むんじゃない!?
私は体内の魔力を練って指先に放出させた。
「ね、ねえレイン!見て見て!水の魔力で作ったドラゴンさんだよ!可愛いでしょ!?しかもこれ、動くんだよ!?凄くない!?」
土壇場でやったけどほんとに出来たっ!これ凄いね!?
これならきっと笑ってくれるはず……!
「うああああああああああんっ……!」
「ああああああ……!えっと、えっと……じゃ、じゃあこれは!?水の蝶々!綺麗でしょ!?」
「ぐすっ…ひっぐっ……!」
一向に泣き止まないレインに慌てた私は、魔力で動物を形作ってみたり、それを動かしてみたり、とにかく色々してみた。
だけど……。
ダ、ダメだ……!全然泣き止んでくれない……!ど、どうしよう!?私これからどうしたら……!
そこまで考えて、私の頭の中にある一つの妙案が思い浮かんだ。
レインは子供。多分、まだ七歳か八歳くらいの甘えた盛りの子供だ。
今までの何処か大人びた雰囲気で勘違いしていたけど、本当はこんな風に感情を吐露して泣くのが当たり前の年頃の子供なんだ。
そんな泣きじゃくる子供に対して普通の人間がやる事と言えばそれは……!
一つしかないだろう。
「よーしよし……大丈夫だよ……ねっ?だ、だから泣き止んでほしいなーなんて……」
抱きしめて、頭を撫でてあげること。
……うん、大丈夫なはず。私同性だし、犯罪にはならない筈だから……うん、大丈夫だよね?ね?
そんな私の不安とは裏腹に、レインは最初こそビクッとしていたものの、抱きしめて頭をよしよしと撫で続けていたら、恐る恐るだが彼女の方からも抱きしめてくれた。
「……ぐすっ」
……いや、これは抱きしめると言うより抱きついてるのか。
…まだ、子供だもんね。いいんだよ、甘えて。
「よーしよし…思う存分泣いちゃっていいよー?私たち、友達だからね」
私を掴む力がぐっと強くなった。
……これ、別に嫌われてるわけではないよね?
友達ムーブうぜえとか思われてたら私泣いちゃうよ?
そしてそのまま暫く、レインは私に抱き付きながら泣きじゃくるのだった。