幽霊の分別は2種類らしい。受け売りではあるが。媒介型と非接触型、その2つにカテゴライズされるとのこと。
媒介型はよく幽霊と追いかけっこするゲームとかあるじゃん?で、その時ってあいつ等普通にこっち、人間の体とか物を触れてくるじゃん?死んでる癖に普通に武器とか使うなよと思っていた前世の自分のモヤモヤはこの世界でまあ解消されたのだ。話が逸れたな。要するにこういうタイプの幽霊は何かしらの物資を媒介にして現世に留まっているらしい。大体が死因になった場所や物。其れ等にしがみついている。だから病院とか死人が沢山出る場所はしがみついている幽霊がいっぱい居るんだってさ。ナースやお医者さんも大変だね。死んだ後まで面倒臭いんだから。それはさておきこういう媒介型の幽霊の対処法は至ってシンプルだ。幽霊がしがみついている媒介をぶっ壊す。これに尽きる。すると幽霊はしがみついている岩みたいなのが無くなって、大海に流されるように何処かへ消えていくんだって。病院壊せないだろって?まあそれはそう。でもそういう場所に取り付いてるやつは繋がりみたいなのが薄いんだ。細い糸で繋がるを保ってるみたいな感じがイメージしやすいか?それをチョキンと切ってやると直ぐに消える。簡単でしょ?一般人でも見える人はその糸見えるし、こういうタイプの幽霊の対処は楽である。なまじ包丁とかしっかりした媒介があるやつの方が面倒なんだよな〜。
はい、次は非接触型の幽霊。ぶっちゃけこういうタイプが一番厄介である。人は死ぬと肉体というしがらみから抜け出す。そして普通の人には見えない、触れられない。
「で、だ…」
その非接触型幽霊が目の前に居るこの状況をどうしたものかと悩む。場所は森の奥深く。肝試しやろーぜ!というチャラチャラした男子学生の提案からこんな場所に来てしまった。数は十数人。男女は均等であった。普段は日陰に徹している自分も何故だか招待されてしまった。まあ男子の数合わせに適当に選ばれたんだろーな。知らない仲でもない奴に頼まれたし、めんどくせーなとは思いつつも付き合ってやることにした。どうせ帰ってもやることねーしな。つーわけでホイホイ来たのが地元でもそこそこ有名な自殺名所であった。幾ら吊り橋効果利用しようったって、もう少し良い場所あっただろ…。よりによって自殺名所はないだろ。自殺名所は。そんな事を思いつつも早く終わらせるかーと、どうせ決められたくじの中に手を突っ込む。予想通り集まった中ではあまり人気のない女子を充てがわれましたとさ。
「………」
「………」
沈黙がキツかった。ぶっちゃけ見慣れた幽霊よりもキツかった。地味めで大人しそうな子だから話題とか振らないし、自分もわざわざ会話を弾ませようとするタイプでもないし。初対面だから余計に沈黙がキツかったわ。
「あった」
「…じゃあ帰ろうか」
「あ、うん…」
特にイベントとかもなかった。別に求めてた訳でもないけどさ。何か損した気分。昼間に勝手に置いてきたキーホルダーみたいなのを拾って帰路へ。森から出るまで特に異常なし、と。チラチラと死んだばかりの幽霊が視界に映ったけど、相方は見えない人種らしいので意味もなし。
「先発帰ってきたぞ〜!」
「どうだった!幽霊居たの!?智恵美!」
「…特には」
「なーんだ、つまんないの」
どうやら友人自体は居るらしいな、大人しい子ちゃん。こちとら知り合いに目を合わされただけやぞ。お前誘って来たんだから少しは労えよな。まあこれで面倒臭い肝試しも終わり。先発で行けたのは良かったわ。後は適当に盛り上がってる。カースト上位っぽい人達に任せましょ。幽霊が見えるだけの一般高校生は此処らで寝ときます。終わったら起こしてね。
「──葉…!──葉太!!」
「あー…んん?ああ終わったの?」
「違う!……タキとミキが帰って来ないんだよ…!」
「あ、そうなの?」
タキとミキ。ぐりとぐらみたいだなと思いながらも話を聞いてく。知り合いの蓮は焦った様子で自分に情報を伝えた。あー…あのイケメン君と美人さんか。美男美女でお似合いだね〜とかしか覚えてなかったわ。
「どんくらい?」
「…もう1時間は経ってる」
「そっかー…」
流石に盛り上がって森の中でイチャコラしてるには長い時間だ。待ち人達も居るんだし、そんなに時間を掛けているのは不自然か。大体距離は徒歩5分。往復で十分くらいの場所にキーホルダーは置かれていた。紆余曲折あっても三十分を過ぎる事はないだろう。何らかのトラブルがあったと考えるのが自然か。
「この辺ヤンキーとか居たっけ?」
「…そういうのが居なさそうな場所にしたから、居ないと思う」
「マジ?」
そんな思惑があったとは知らなかった。捜索隊として二人一組で森の中に入った男子学生達も帰ってきた。知っている範囲を調べたがタキとミキは居なかったとのこと。
「ううっ…」
「大丈夫!?」
1人の女の子する口を抑えて地面に崩れ落ちる。ちらりと見ただけでもかなり顔が青ざめていた。…森の雰囲気が少し変わったな。これは本当に面倒事かもしれないな。はぁ…これなら断っとけば良かったわ。
「…葉太、頼めるか?」
「そうなるよなー」
なまじ前にこういう案件を片付けたのを見られたのが不味かった。最初からもしもとして呼ばれていたのは分かっていたが。いざそうなると面倒くせーという思いが増してくる。
(さっさと連れて帰って逃げよ)
矢張り面倒だなと思った事は断るべきだった。これからはそうしよう。そう思いながら森の中へと再び足を踏み入れる。後ろでギャーギャー叫んでたけど、蓮が適当に説明してくれるだろ。ていうかしろ。面倒臭いから。
「ども、こんなの見なかった?」
『……あっち』
「サンキュー、後で饅頭でも置いておくからな~」
適当な浮遊霊を見つけて写真を見せる。森に入る前に渡された写真データだ。終わったらさっさと消そ。何が悲しくてカップルの写真を保存しなければいけないのか。あ、ちなみにこういう浮遊霊は適当な時間が経つと勝手に成仏する。例え未練が残っていても、力が無けれは踏みとどまれないのが現世である。なので雑魚みたいに説明したが媒介型も上澄みの方なのだ。まあ対処は楽だけども。
『縺?♀縺翫♀縺奇シ?シ!?』
「成仏しろよ~」
媒介になっていたのは縄。自殺した奴なら当たり前か。持っていたライターで燃やしてやれば後は勝手に天国?地獄?に逝く。うーん、媒介型は出るかー。死んでないといいんだけど。じゃないと後々面倒だし。
「あ、居た」
『………』
2人仲良く地面でおねんねしていた。表情が強張っているからさっきの媒介型幽霊にでも出くわしたか?まあ其処はどうでもいいか。スマホから連絡。報連相は大事だからね。つーわけで電話掛けたんだけど…
「はー……マジ…?」
電話が繋がらない。森の中ではあるが電波が届く距離ではある。なのでこれは
『縺阪c笙ェ縺阪c笙ェ♪』
「はぁ…………マジかよ…」
非接触型幽霊だ。
三十六計逃げるに如かず。非接触型幽霊とやり合う等金を貰っても御免被る案件だ。ぐりとぐらには済まないが、自分は逃げさせてもらう。
『騾?£繧峨l縺ェ縺?h』
「ですよねー」
そもそも複数人で見つけられる範囲内に居た2人を、自分が見つけられた事自体が可怪しいのだ。恐らく此処は非接触型幽霊の
「ぐえっ…!?」
そしてこのレベルになると気軽に
(あー…酔う…)
グルングルン、グルングルンと人を玩具のように空中でかき回すのだからたまらない。
『縺イ縺イ縺イ縺イ笙…』
(うーん…こりゃ詰みか?)
媒介型ならどうにか出来るが、非接触型は無理。別段死ぬのは構わないのだが、知らない奴等を助ける為に死ぬのが何か気に食わない。とは言ってもどうにかする術もなく。
「え?」
『お?』
終わりだなーって天を仰いだら何か居た。髭を生やした赤い肌のおっさん。ええ…死ぬ間際に見るのおっさんかよ…。
『其処の霊。少し黙れ』
『!?』
(更に格上…?)
おっさんが一言発すると非接触型幽霊は動きを止めた。見てるだけでも分かる完全な上下関係に、また面倒なのが出てきたなと内心思う。
『見えてるのか?小僧』
「あー…まあ、見えてますね」
『ほう、ではこれは?』
「2?」
『正解。成程、細部まで見えてるのか…』
ピースされたからなんだろうと思ったけど、数字であってたのね。それから何回か質問されたけど、正直に答えました。特に逆らう必要もないからね。
『うむうむ、よし!貴様、儂の媒介先になれ!』
「媒介先に?」
『然り。儂の事を見れる者等初めてだ。この機を逃す訳にもいくまいて』
「ええ…面倒臭そう…どうせ何かやる気でしょ、あんた」
『勿論!』
ガハハと大口を開けて笑うおっさん。どうすっかな…。明らかにヤバそうなのを連れてって良いんかね?断れば俺が
『おんしの真の名。それを思い出させてやるぞ?』
「───」
『2度目の生を受けて尚、それが気になるのであろう?』
前世の記憶は曖昧だ。何となく、納得はしていた気がするのだが、肝心の名前と自分がどのような人間だったのかが思い出せなかった。自分が何者なのか。どんな奴だったのか。爺ちゃんはお前はお前だと言ったけど、凄く気になるんだよね。
「りょーかい、俺の名前は葉太。宜しくおっさん」
『おっさんとは失礼な小僧よ…。名前は…そうだな、ヤマさんとでも呼べ。今の儂ではこれくらいが丁度良いだろうしの』
「じゃあヤマさん、取り敢えず目の前
契約は完了した。名前はヤマさんというらしい。何となく引っ掛かる感じはするがスルー。半ば忘れかけていた非接触型幽霊についてヤマさんに聞く。自分としては何方でも良いが。ヤマさんはどうするのだろうか?
『……祓っておくか。充分に殺し、充分に生きたであろう。その魂、黄泉に還る時だ』
先程までの朗らかな表情から一転。非接触型幽霊を一通り見定めるヤマさん。判決は決まったようだ。ヤマさんは自分の方まで近寄ると、
『ほれ、おんしも手伝え』
「…どうやって?」
単純に手に余るんだけど、そういう想いも乗せた瞳だったが。ヤマさんはスルーしてお手伝い方法について説明し始めた。あー…そういや媒介とか言ってたな。
「おーし、じゃあ行くかー」
『初めだからしっかりとやれよ、小僧』
大きかったヤマさんが掌サイズに収まる人魂になる。よく分からんけど、説明された通りにやれば大丈夫だろ。
「ヤマさん、媒介in俺!!」
体の奥深く精神の中へとヤマさんが入ってくるような感覚。閉じられた瞳が開く。その瞳は黒から赤へと変わっていた。
『「真名────。貴様が行く先、このヤマが見定めよう!判決、地獄行きだ!!」』
『雖後□窶ヲ雖後□縺√=縺?シ?シ!!』
ヤマさんの言葉が奥底から自然と紡がれる。名前は何故か聞こえなかった。後から聞いたが、これはヤマさんにしか分からないし理解出来ないんだとか。本当の名前を握られる事は全存在を握られる事に等しい。故に抗えない。非接触型幽霊は苦悶の表情と悲鳴を上げながら、地面から伸びてきた複数の手に絡め取られ、地の底へと消えていくのだった。
「ふぅ……疲れたぁ…」
『まあこんなものか』
これは俺が本当の名前を取り戻す話と、ヤマさんが───に返り咲くまでの道中を綴ったお話。今日はヤマさんとの出会いまで。これにて終了。
葉太
前世の記憶が朧げにある高校生。一度死を体験したためか死生観が緩い。最悪死んでも良いかくらいの心持ち。気がかりは前世の自分がどんな奴だったのか。それだけ。
ヤマさん
クソデカボイスにクソデカボディの赤肌マッチョメン。普段は豪快な性格をしているが、こと死や幽霊の話に関しては真面目な顔を覗かせる。ある理由から───の座から退いている。葉太以外には見えない存在。
媒介型幽霊
何らかの物質を媒介にして現世に留まっている幽霊の総称。簡単な話オーバーソウル幽霊だけ版みたいなイメージ。なので媒介を壊すと倒せる。
非接触型幽霊
見えないものを司る幽霊格の最高位。このクラスになるには生前の素養や、鍛錬等が必要になる。基本的には片方だけだが、素養も鍛錬も熟した非接触型幽霊は脅威の一言でもまだヌルイ。天変地異クラス。今回は素養が高かっただけの非接触型幽霊。それでも危険度はかなり高く、あのまま放っておけば犠牲者は万を越しただろう。ヤマさん曰く結構殺したからそろそろ罪を償う時間だろう。とのことで無事地獄行きになった。
マンキン要素を入れたオリジナル?作品。思い付いたので書き書き。此処までどうも〜。