Ⅴクラス…Ⅳクラスの中でも圧倒的な力を持つものが得る称号。その戦闘力は自然界の頂点捕食者である古竜に匹敵するとも言われている。
(こいつ…つ、強すぎる、馬の最高速度を超える“飛甲虫”を更に超えるスピード、それにパワーは前に戦った砦を崩壊させたゴーレムなんかの比じゃない──)
考えを巡らすする前に大男は飛びかかって来た。認識する間もなく。
「ぐっ!」
なんとか身をよじりギリギリで回避した、その攻撃の強さは粉々になった後ろの岩が物語っていた。
「まだくたばっていないのか?」
大男は続けた。
「せっかく許してやったのに…小僧、なんなんだ?お前は2度も俺の善意を無下にするのか!?施しを受けねぇってのは、俺に喧嘩を売ってるってことでいいんだな!!!」
確かに答え方は悪かったかもしれないが。
(ここまでされるいわれはない!)
ここで宗二は戦うことを決め、剣に手を伸ばした
…が、取る前に…殴り飛ばされた…
(なんだコイツは…あ、明らかに今までのやつと違う、強すぎる)
再生系スキルにより死にはしなかったがある懸念が生まれた。
(もし…
スキルの再生は聖職者のそれとは違う、ただ生物的に再生しているだけなのだ、死ねばおしまいである。
しかし大きく吹っ飛ばされたおかげで…剣を握ることは出来た。
(短期決戦だ…!時間が長引けば一撃で死ぬリスクが高まる、そう先生に教えられた!)
大男は草をかき分け木をなぎ倒しながら接近していた
(奴が来る!)
「小僧ォォォ!」
剣を構えた、そして集中した、今ここでやらねばやられると理解はしていた。
宗二の剣撃が防はがれたことも耐えられたことも一度もなかった。人を切ったことはなかったが──スキルにより水増しされた筋力・技量でどんなものも麩のように切ることが出来た。
(ううっ…殺されるのか俺は)
恐怖心…無くはなかった、むしろその割合のほうが大きい。
しかし!!
殺される恐怖が殺す恐怖を上回り!
躊躇いを焦がし闘争心に火を付けた!!
「死ねぇぇぇっ小僧ぉぉっ!」
「ウワァァァアァァァ!!」
振るった剣が肉に深く食い込んだ。
剣が肉を引き裂いた
「な…」
バキッ
大男の拳が宗二の体に風穴を開けたが──足で踏みとどまり、持ちこたえた!
オードン・ダーツがこれほどまでに斬られるのは初めての経験である、かつてⅤクラスの猛者と戦ったときに
肉の表面が裂かれる程度であった。
そして深く食い込んだ剣はオードンの体を左肩から右の脇腹まで切り裂いた、血しぶきがあたりに吹きこぼれる。しかしそれでも大男は……倒れずこちらを掴みかかってきた。
「ハーッ…ハーッ…小僧…!」
「うあああっ」
思わず剣で腹を深く突き刺した……かに見えたが、剣はちょっぴり刺さっただけだった。先程の切り傷ももはや出血は止まっていた。
まだ早かったのだ"Ⅴ"クラスは、捕まれもはや逃げることもできず拳で完全に殺されるのを待つだけであった。
「待て!」
そう声の先を見ると
「オール…ウィン…様…?」
あの聖騎士オールウィンがそこにいた。
「オールウィン!」
大男がやけに馴れ馴れしい感じで言った
「おいオードンそいつは殺されちゃ困るんだよ、なぁ、今いい店教えてやるから引き渡してくれ」
信じられぬ光景だった、いつもの大仰な口調はどこへ行ったのか、まるで酒場のオジサンのような会話だった。
「仕方ねぇな…奢れよ!」
「もちろんだ、好きな酒もやるよ」
そうすると男はあっさり宗二の手を離した。
「さて…ソウジくん!脱走などはしてはならない、と命じたはずであるが!どういうことかね?なにか気の利いた言い訳でもあるのかね?」
明らかに嫌味な言い方であったため思わず反論──というか思っていたことを吐き出した。
「あのねぇなんなんですかあなた達はぁ!おれら、俺らまだ高校生なのにいきなり魔王たちと戦えって!死ぬかもしれないでしょう!王国は英雄だと称えるけど、それって都合よく動かしたいだけだ…でしょう!ねぇ!えぇ!?」
「……強制はせんよ、戦いたくないのならば──「どうせ必要な時に呼び出すんでしょう!“君がいなければ”だの言って!」
「しかし──」
「うるさい!!」
ボンッ!
そう言うと魔法を地面に打ち込み土煙をおこし、晴れたときには消えていた。
「逃げられたな」
オールウィンは悔しがると言うより、冷や汗をかいて困ったような表情をしていた。
「この大事な時に…!」
すでに将軍ザボーア率いるドラゴンの艦隊は前線に近づきつつあった。
いきなり出てきたオールウィンはすごく偉い聖職者として捉えてくれればいいよ
ザボーアは復活した悪魔の将軍だよ
続くよ