2024/7/28 文章を一部変えました。
典正と明日香がデュエルフィールドで対峙をすると、周囲の生徒達の視線が集まる。
片方は中等部から優秀な成績を誇り、女生徒ではトップクラスのデュエルの実力と気高さを感じさせる姿から「オベリスクブルーの女王」と呼ばれている明日香。
もう片方は入学試験と飛行船での新入生同士のデュエルで圧倒的とも言える実力を見せた典正。
その典正と明日香がデュエルをするのならば、生徒達の注目が集まるのも仕方がないだろう。
「それじゃあ準備はいいか?」
「ええ、いつでもいいわ。亮……カイザーを倒した実力を見せてちょうだい」
『『…………………………!?』』
デュエルディスクにデッキをセットした典正が聞くと、同じくデュエルディスクにデッキをセットした明日香が答えるのだが、この時の彼女の言葉に周囲の生徒達が驚き言葉を失う。
「………ちょ! ちょっと待ってくださいッス!? い、今何て? 始波君がお兄さんを倒したって言った!?」
絶句する生徒達を代表して翔が信じられないといった表情で明日香に聞くのだが、それに答えたのは明日香ではなく別の人物であった。
「ああ、そうだ。不甲斐ないことにな」
「え、誰……って!? お、お兄さん!」
『『……………!?』』
翔の質問に答えたのは当人である亮で、予想外の人物の登場に生徒達は再び大いに驚くのだが、亮はそんなことは気にもせず典正と明日香を見ながら苦笑する。
「昨日の夜、始波にデュエルを挑まれてそれを受けたのだが、まさかあんなにあっさり負けるとは俺も思わなかった。……こうなればデュエルアカデミア最強という肩書きも返上かもな」
負けたと言うのに悔しがる様子を見せず、むしろどこか楽しそうに言う亮の言葉に今度は典正が苦笑した。
「いや、あれはたまたまこっちにいいカードが回ってきただけですよ? それに昨日の亮先輩はカードを全部使い切っていたから、攻撃が全部通って勝てたんですって」
「フッ。ではそういうことにしておこうか。……それより明日香が待っているぞ?」
亮に言われて典正は、明日香がさっきから自分を見ていることに気づくと待たせていたことを謝る。
「すまない。待たせてしまって」
「気にしていないわ。……行くわよ」
『『デュエル!』』
始波典正 LP4000
天上院明日香 LP4000
典正と明日香、二人同時にデュエル開始の合図を口にすると、最初に典正がカードを引いた。
「先行はもらうぞ。俺のターン、ドロー! ………っ!?」
デッキからカードを一枚引いた典正は自分の手札を確認して思わず目を見開いた。
(手札が全部魔法カードと罠カード……! 不味いな、手札事故を起こしたか? ……いや、まだやりようがある)
手札にモンスターカードが一枚もないことに驚いた典正であったが、すぐに気を取り直すと今ある手札の使い方を考えて実行する。
「……まず俺はフィールド魔法『炎王の孤島』を場に出す。続いて永続魔法『炎舞―天璣』を出し、その効果でデッキから『炎王獣バロン』を手札に加えた後、『炎王の孤島』の効果でそれを破壊してデッキから炎王カードを一枚加える。そして俺は三枚カードを伏せてターンエンドだ」
「私のターンね、ドロー! ……私は手札から『サイバー・プチ・エンジェル』を攻撃表示で通常召喚!」
サイバー・プチ・エンジェル 攻撃力 300
「このカードの召喚に成功したため、私はデッキから一体の『サイバー・エンジェル』モンスター、または儀式魔法『機械天使の儀式』を一枚手札に加えるわ。さらにモンスターの召喚と同時に速攻魔法『アレグロ・トゥール』を発動! 貴方の伏せカードの一枚を破壊するわ!」
明日香はモンスターの召喚と共に、相手の場にある魔法・罠カードを破壊する速攻魔法を発動し典正の場にある三枚のカードの一枚を破壊すると、自分が破壊したカードを確認して眉をひそめる。
「『激流葬』……! 自分のモンスターもろとも相手のモンスターを破壊するカード。使われたら少し厄介だったわね。でもそうはさせない……私は続いて儀式魔法『機械天使の儀式』を発動! 場のサイバー・プチ・エンジェルと手札の『サイバー・プリマ』を生け贄に捧げて『サイバー・エンジェル-伊舎那-』を召喚!」
明日香が儀式魔法を発動させると彼女の前に、四本の腕を持つ勇ましい機械仕掛けの女神が降臨する。
サイバー・エンジェル-伊舎那- 攻撃力 2500
「このカードが召喚に成功した場合、相手プレイヤーは自身の場にある魔法・罠カードを一枚墓地へ送らなければならない。さあ、カードを一枚捨ててもらうわよ、始波君」
「……分かった」
明日香のモンスターのスキルの効果に従い、典正は自分が伏せた残り二枚のカードの内の一枚、「攻撃の無力化」を墓地に捨てた。
「伊舎那の攻撃! ダイレクトアタックよ!」
「そうはさせない! リバースカードオープン!」
明日香の命に従って伊舎那はその手に持つ槍で典正を貫こうとした時、それにより先に典正は場に残った最後の伏せカードを発動させる。
「罠カード『炎王の結集』発動! 自分の手札・デッキ・墓地からそれぞれ一体ずつ、獣族・獣戦士族・鳥獣族の炎属性モンスターを特殊召喚する! 俺はデッキから『真炎王ポニクス』、墓地から『炎王獣バロン』、そしてバロンを破壊してデッキから手札に加えた『炎王獣キリン』をそれぞれ守備表示で特殊召喚!」
真炎王ポニクス 守備力200
炎王獣バロン 守備力200
炎王獣キリン 守備力200
「モンスターを召喚する罠カード?」
「そう、これが俺の本命。正直な話、これを破壊されてたら厄介だったかもな」
「くっ! 私は一枚カードを伏せてターンエンド」
激流葬でも攻撃の無力化でもなく、炎王の結集の方が本命だと言う典正に、明日香は悔しげな表情を浮かべると攻撃を中止して、カードを一枚伏せてからターンの終了を宣言する。
「炎王の結集の効果により、このカードで特殊召喚されたモンスターを全て破壊。キリンの効果によってデッキから一枚のモンスターカードを墓地へ送る」
明日香のターン終了と同時に、典正は炎王の結集で特殊召喚したポニクスとバロンとキリン、そして更に一枚のモンスターカードを墓地に送る。
「俺のターン、ドロー! ポニクスのスキルにより墓地のポニクスを手札に加え、更にバロンのスキル発動! デッキから炎王カードを一枚手札に加える。……」
自分のターンが始まり、ドローとバロンのスキルで加わった二枚のカードを見た典正は、次に明日香に視線を向けて告げる。
「明日香、悪いけどこのターンで決めさせてもらうぞ?」
「何ですって? ……どういうこと?」
「こういうことだ。俺は炎王の孤島のスキルで手札の炎王カードを一枚破壊してデッキから『炎王神獣キリン』を一枚手札に加える。そしてポニクスを通常召喚した後、炎王神獣キリンのスキル発動! ポニクスを破壊してキリンを特殊召喚する。現れろ、キリン!」
炎王神獣キリン 攻撃力2400
「うおおー!? 何だかあのモンスター! カッコいいな!」
「私とのデュエルで使ったキリンとは少し違う……。新しいモンスター?」
典正が炎王神獣キリンを召喚すると、初めて見るモンスターに十代が興奮した声を上げ、愛が首を傾げながらキリンを注意深く観察する。
だが典正が呼び出すモンスターはこれで終わりではなかった。
「そして! 俺は今さっき墓地に送った『このモンスター』のスキルを発動させる! 炎属性の自分のモンスターが戦闘・効果で破壊された時、このカードを手札・墓地から特殊召喚する。……出番だ、『聖炎王ガルドニクス』!」
聖炎王ガルドニクス 攻撃力2700
典正がモンスターのスキルの発動を宣言した瞬間、彼の背後から凄まじい勢いで炎が立ち昇り、炎の中から兜を被り、全身に装身具を身に付けた神鳥、ガルドニクスが現れる。しかし今現れたガルドニクスは、典正が入学試験と飛行船でのデュエルで使ったガルドニクスとは少し外見が違っていた。
「これは……ガルドニクス? でも姿が違うような……?」
「そう。コイツは聖炎王ガルドニクス。炎王神獣ガルドニクスの真の力を発揮した姿だ。そしてガルドニクスのもう一つのスキル発動! ガルドニクスは召喚に成功した時、自分以外の手札・デッキ・場にある獣族・獣戦士族・鳥獣族の炎属性モンスター一体を破壊し、ターン終了時まで、破壊したモンスターの攻撃力の半分だけ攻撃力をアップする。俺が破壊するのはデッキにある『炎王獣バロン』で攻撃力は1800、つまり攻撃力900アップする」
聖炎王ガルドニクス 攻撃力2700→3600
「攻撃力が3000を超えた! 典正の奴、スッゲェな!」
「あれが始波君の本当の実力……?」
「始波の奴、あんなカードまで持っていたとはな……」
『『…………………………!?』』
攻撃力を強化したガルドニクスを見て十代、愛、亮が驚き、他の生徒達にいたっては言葉を失っていた。
「炎王獣キリンのスキルで墓地に送ったThe blazing MARSのスキル発動! 墓地にあるバロン、ポニクス、キリンの三体をゲームから除外することにより、墓地から特殊召喚する! 現れろ、The blazing MARS!」
The blazing MARS 攻撃力2600
(上級モンスターが三体……!? 駄目。これは凌ぎきれない……!)
炎王神獣キリン、聖炎王ガルドニクス、The blazing MARSの三体の上級モンスターを前にした明日香の伏せカードは「ドゥーブルパッセ」。モンスターが受けるダメージをプレイヤーが肩代わりする代わりに、次のターンに攻撃されたモンスターが相手プレイヤーにダイレクトアタックできるようにする罠カード。
当然ながら典正のモンスターの攻撃を防げるものではなく、今の明日香にはもう生き残る術は残されていなかった。
「聖炎王ガルドニクスで伊舎那を攻撃! そしてキリンとThe blazing MARSでダイレクトアタック!」
天上院明日香 LP4000→2900→500→−2100
ガルドニクスの炎で自分を守護する機械天使を破壊された明日香は、その直後に二体のモンスターが放った炎に飲み込まれ、LPを全て失ったのであった。
「全く……あそこまで清々しいくらいに負けると自信がなくなりそうね」
実技の授業が終わった後、典正と明日香と亮の三人は灯台元に集まっており、灯台に着くと明日香が自嘲するような笑みを浮かべてそう言った。
「そこまで気にすることはないだろう。それだったら昨日の俺は始波にかすり傷一つつけることができなかったんだぞ?」
「……そうだったわね」
亮の言葉を聞いて明日香はいくらか気が楽になったのか、先程の自嘲とは違う笑みを浮かべて返事をして、典正が明日香に話しかける。
「それで明日香? デュエルをしてみて俺は信用できそうか? 一緒に戦ってくれるか?」
「ええ、もちろんよ。元々昨日の時から貴方と一緒に戦うつもりだったし、今日のデュエルはちょっとしたけじめをつけるためだったの。……私はどうしても吹雪兄さんを取り戻したい。だから始波君、貴方の力を貸して。その代わり、私と亮も貴方に力を貸すから」
「……」
明日香が真剣な表情で典正を見ながら言うとその隣で亮も無言で頷き、典正も真剣な表情となって頷き返すと彼女に七枚の精霊のカードを差し出す。
「分かった。そう言ってくれて嬉しいよ。……君のカードを一枚選んでくれ」
「ええ。私のカードは……これよ」
明日香は典正が差し出した七枚の精霊のカードから一枚を抜き取り、彼と共に戦うことを約束するのであった。