明日香とデュエルをした日の夜。典正が眠りについて次に目を覚ますと、そこはラーイエローの学生寮の自室ではなく、どこかの洞窟の中に建てられた祭壇で彼は自分が今いる場所に見覚えがあった。
「ここは……炎王の聖域? ということは……」
「目覚めたか、シバよ」
「あっ、ガルドニクス?」
典正が今いる場所は現実世界ではなく精霊界にある炎王獣達が暮らす孤島、そこの火山に建てられた祭壇で、目を覚ました典正が周囲を見回すと彼の前には炎王神獣ガルドニクスの姿があった。
「どうしたんだ? ガルドニクスから俺を呼ぶなんて珍しいな?」
「うむ……。実はどうやらこの島を狙おうとする意思を感じたのだ。それについてお前にも話しておこうと思ってな」
「この島を狙う……まさかまた海皇軍がやって来るのか?」
ガルドニクスの言葉を聞いて典正は過去の戦いを思い出す。
海皇軍とは海皇龍ポセイドラとその配下のモンスター、そしてポセイドラに敗北して配下となった「
典正の言葉をガルドニクスは首を横に振って否定する。
「いや、海皇軍ではない。この島を狙おうとしている意思は二つ。そしてそのどちらもこの島そのものではなく、この島に封印されている『ある物』を狙っているようだ」
「ある物? それって何だ?」
「シバはこの島の奥にある封印された神殿を知っているか?」
「封印された神殿? ……そう言えば、そんなものもあったような?」
ガルドニクスに聞かれて典正は、この孤島にあるまるで隠すように封印された神殿のことを思い出す。
「あの神殿にはかつての我らの同族が封印されている」
「ガルドニクスの同族? 炎王獣の?」
典正に聞かれてガルドニクスが頷く。
「そうだ。彼の者はかつては我々炎王獣と同じ、破壊と再生の力を持った炎属性モンスターであったのだが、彼の者はある日何らかの理由で我々とは別の存在へと変貌して暴走した。我々は彼の存在を宝玉に変えて神殿に封印したが、彼の者の力は今も健在。例の二つの意思はその力を狙っているようだ」
「……なるほど。それでその二つの意思から宝玉を守る手伝いをしろってことか。分かったよ。それでその宝玉を狙っている二つの意思っていうのはどんな奴らなんだ?」
「この島の神殿に封印された宝玉を狙う二つの意思。それらの名は……」
⭐︎
「『炎王神獣ガルドニクス』を墓地から特殊召喚! ガルドニクスのスキルで場のモンスターを全て破壊してから相手プレイヤーをダイレクトアタック!」
「ぐああっ!」
「『聖炎王ガルドニクス』を特殊召喚! デッキにある『炎王神獣ガルドニクス』を破壊して攻撃力をアップ! 相手の攻撃表示モンスターを攻撃!」
「ぎゃああっ!」
「墓場のモンスターを三体ゲームから除外して墓地から『The blazing MARS』を特殊召喚! 相手プレイヤーにダイレクトアタック!」
「ひぇええっ!?」
明日香とデュエルをした後、ガルドニクスによって精霊界に呼び出された日から数日後。典正はオベリスクブルーの生徒三人を相手にデュエルを行い、その全てのデュエルを二、三ターンで終わらせていた。
その戦いぶりから典正は入学してから一ヶ月も経たないうちに同学年だけでなく、上級生からも一目置かれる存在となったのだが、典正はそれを喜ぶ様子はなかった。
「はぁ……」
「何だか疲れているわね。というか、この最近ずっとその調子じゃない?」
デュエルアカデミアの授業が終わった日の夜。いつもの吹雪に関する情報交換のために灯台元に集まった典正と明日香と亮であったが、疲れたようにため息を吐く典正に明日香が話しかける。
そして明日香の言う通り、典正は最近ずっと疲れた顔をしていたがそれには理由があった。
何しろこの数日は夜寝ると強制的に精霊界にある炎王の孤島に転移させられ、そこにある宝玉を狙う二つの意思とデュエルすることになり、デュエルアカデミアでも毎日のようにオベリスクブルー、ラーイエロー、オシリスレッドの生徒全てとデュエルをしているので休む暇がないのである。
「まぁ、ちょっとな……。鬼のような仮面を被った魔女と黄金の征服者と毎日戦っているから疲れが溜まって……」
典正がうっかり精霊界でのデュエルについて言うと、それを聞いた明日香が首を傾げる。
「鬼のような仮面と黄金? デュエルアカデミアの生徒には変わった生徒もいるけど、そんな人いたかしら? ……でも貴方の最近の噂は聞いているわ。毎日のようにデュエルアカデミアの生徒にデュエルを申し込んでは、その圧倒的な力で倒す『ラーイエローのフェニックス』てね」
「ラーイエローのフェニックス? 何だよそれ?」
初めて聞く異名で呼ばれた典正が聞くと明日香が首を傾げる。
「あら、知らないの? 貴方って今、ラーイエローのフェニックスって異名で呼ばれているのよ? デュエルでは炎属性で何回も復活するモンスターを使っていて、しかもエースモンスターの一体……いいえ二体? があのガルドニクスでしょ? そこから皆、貴方のことをフェニックスって呼んでいるのよ。ああ、ちなみに最初に貴方をフェニックスって呼んだのは亮ね」
「えっ!?」
「礼はいらないぞ」
まさか自分にフェニックスとか言う異名をつけたのが亮だと思わず、典正が亮を見ると亮は何やら的外れなことを言い出し、典正が何を言えばいいか分からずにいると明日香が質問をしてきた。
「それで始波君はどうしてそんなに多くの生徒にデュエルを挑んでいたの?」
「そんなの決まっているだろ? 残り六枚のプラネットシリーズのカード、それの所有者になりそうなデュエリストを探していたんだよ」
明日香に聞かれて典正が今日まで多くのデュエルアカデミアの生徒とデュエルしていた理由を話すと、彼女と亮は納得したように頷いた。
「なるほどな……。確かにいつか来るこの島のレアカードを狙い、吹雪を拐ったかもしれないカードハンターと戦うことを考えたらプラネットシリーズの使い手は一人でも多い方がいいからな。……それで候補者は見つかったのか?」
亮の質問に典正は頷いて答える。
「数人だけは。とりあえず明日にでもその一人にデュエルを申し込むつもりですよ」