転生者のデュエリストは戦いの始まりを告げる   作:兵庫人

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第14話

 黄金卿エルドリッチ。

 

 それは精霊界にある炎王の孤島に封印されている宝玉を狙う二人の侵入者の一人で、典正は昨日も黄金卿と戦っていた。

 

 エルドリッチの戦い方は、様々な罠カードで相手の動きを封じながら自身の分身をモンスターカードで召喚して戦わせるというもので、まさに神楽坂の今の戦い方そのものであった。

 

「俺のターン! 黄金卿でダイレクトアタック!」

 

「ぐわぁっ!? お、俺がラーイエローなんかに……!」

 

 神楽坂は罠カードで動きを封じたオベリスクブルーの相手プレイヤーにモンスターカードで召喚したエルドリッチで攻撃を仕掛け、それによって相手プレイヤーのLPがゼロになると、神楽坂の背後にいるフィールドとは別のエルドリッチが満足気に頷く。恐らくは神楽坂の背後のエルドリッチが本体なのだろう。

 

「うわ~。アイツ、強いな。それに後ろにいるモンスターの格好をした男も格好良いな。翔もそう思うだろ?」

 

「え? ……あのアニキ? 背後の男って誰のことッスか?」

 

 典正が信じられない気持ちで神楽坂とその背後にいるエルドリッチを見ていると、少し離れた場所から重大と翔の会話が聞こえてきた。

 

(十代の奴、エルドリッチが見えているのか? それで俺と十代以外には見えていないみたいだし、やっぱりあのエルドリッチは昨日も戦った精霊のようだな)

 

 十代と翔の会話を聞いて典正は神楽坂の背後にいる精霊が自分の知っているエルドリッチだと確信すると、どうしてエルドリッチが神楽坂と一緒にいるのかと疑問に思い、彼に話を聞いてみることにした。

 

「お疲れ様、神楽坂。ちょっと話を聞きたいんだけどいいか?」

 

「始波? 聞きたいことって、一体何だ?」

 

 オベリスクブルーの生徒とのデュエルを終えて、休憩用のベンチにやって来た神楽坂に典正が話しかける。

 

「そのデッキのことだよ。俺の記憶違いじゃなかったら、そのデッキのカードはどれも高額なレアカードばかりのはずだ。いつの間にそれだけのカードを揃えたんだ?」

 

「ああ、このデッキのことか……」

 

 典正に質問された神楽坂は納得した表情となって、自分の左腕のデュエルディスクに収まっているデッキに視線を向けた。

 

「このデッキは俺が自力で手に入れたデッキじゃなくて、誰かが俺にくれたもの……なんだと思う」

 

「? 思うってどういうことだ?」

 

「今から十日くらい前だったかな? その日、俺が部屋に帰ると机にこのデッキが置かれていたんだ。最初は誰かイタズラかと思って、デュエルアカデミアの事務員の人に渡したんだけど、次の日になるとまた机の上にデッキが置かれていて、しかも同じ事務員の人に渡して話をしたらその人、俺からデッキを受け取った記憶が全くなかったんだ。……そんなことが何回も続いているうちにこのデッキに興味が出てきて、持ち主には悪いと思っているんだけど使わせてもらっているんだ」

 

 デッキを手に入れた経緯を話す神楽坂の後ろを典正が見ると、エルドリッチが神楽坂の肩に手を置いて満足気に頷いており、それを見て典正は事情を理解した。

 

(エルドリッチ……神楽坂を自分のカードの所有者に選んだってことか?)

 

 精霊は自分のカードを使って現実世界に現れることができるが、現実世界に留まり続けるには大量の魔力を必要とする。

 

 そのため現実世界に興味を持ち、留まることを希望する精霊は、比較的魔力が高くてカードを常に携帯している人間、デュエリストの中から自分と相性が良さそうな者を選び、自分のカードを与えて所有者にしようとするのだった。そして精霊と相性が良さそうなデュエリストという点で言えば神楽坂はまさにうってつけな人材と言える。

 

 他者を参考にすれば意図せずとも参考にした人間のコピーデッキを組んで、デュエルになればデッキのコピー元の人間の言動やプレイスタイルをコピーする神楽坂は、観察力と分析力だけでなく感受性も高く、これは精霊と心を通わせるのにとても重要な要素であった。

 

 実際、典正から見てさっきのオベリスクブルーの生徒を相手にした神楽坂のデュエルは、昨日精霊界で戦った時のエルドリッチのデュエルそのもので、背後のエルドリッチの態度から見ても二人の相性は中々良さそうである。

 

「……なあ、始波? いきなりですまないんだが、俺とデュエルをしてくれないか?」

 

 典正が神楽坂の背後にいるエルドリッチを見ながら考え事をしていると、突然神楽坂が典正にデュエルを申し込んできた。

 

「何? いきなりどうしたんだ?」

 

「俺もよく分からないんだが……多分、このデッキを作った人は始波、お前と戦いたいんだと思うんだ。デッキの中にはお前の炎王デッキの対策のようなカードもあったし……。俺はこのデッキのお陰で強くなれた。たからこのデッキにある願いを叶えてやりたいと思ったんだ」

 

「……」

 

 デッキにあるカードからエルドリッチの気持ちを感じ取ったのか神楽がそう言うと、彼の背後にいるエルドリッチが「よく言ってくれた」と言わんばかりに何度も頷き、そんな二人を見て典正も覚悟を決めた。

 

「神楽坂……。分かったよ。そのデュエル、受けるよ。元々俺もお前にデュエルを申し込むつもりだったからな。手間が省けたよ」

 

 神楽坂がプラネットシリーズのカードに相応しいデュエリストなのか。そしてエルドリッチが何故現実世界にやって来たのか。

 

 これらの答えを知るために典正は神楽坂とデュエルを行うのであった。

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