転生者のデュエリストは戦いの始まりを告げる   作:兵庫人

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第3話

「あら? あれって愛じゃない?」

 

「何?」

 

 海馬ドームの観客席でデュエルアカデミアの制服を着た女性、天上院明日香は入学試験のデュエルステージに現れた愛の姿を見つけて呟き、その隣にいるデュエルアカデミアの制服を着た男、丸藤亮も愛に気づく。

 

「白上の隣にいるのは受験生か? だとしたら入学試験のデュエルの相手か。……珍しいな」

 

 デュエルアカデミアで上位の成績優秀者が集まるオベリスクブルーの生徒達は、入学試験の手伝いとして実技試験で受験生とデュエルをすることを頼まれる。だがほとんどのオベリスクブルーの生徒は面倒くさがって見学に回っていて、試験デュエルの相手をするのは珍しかったりする。

 

 しかし明日香と亮が受験生と一緒にデュエルステージに現れた愛に注目したのは、それだけが理由ではなかった。

 

「……でもあの受験生、可哀想ね。相手が『あの』愛だったら、何もできずにデュエルが終わってしまうかもしれないわ」

 

「そうだな。『早撃ち(クイックドロウ)』と呼ばれた白上の実力は中々のものだからな」

 

 明日香の言葉に亮が頷くと、二人は愛が相手をする受験生、典正に視線を向けるのであった。

 

 

「それじゃあ、行くわよ。この受験デュエルでは受験生が先行をすることに決まっているから、貴方のターンから始めるわ」

 

「分かった」

 

 愛の説明に典正が頷き、二人はそれぞれの左腕にある機械、カードの情報を読み取って立体映像を作り出すデュエルディスクを起動させると、二人同時にデュエル開始の合図を口にする。

 

『『デュエル!』』

 

 始波典正 LP4000

 

 白上愛 LP4000

 

「俺のターン、ドロー! ……まず俺は永続魔法『炎舞―天璣』をフィールドに出し、その効果でデッキから『炎王獣ヤクシャ』を手札に加えた後、それを攻撃表示で通常召喚! 更に『炎舞―天璣』が場にある限りヤクシャの攻撃力は百ポイントアップする!」

 

 典正がデュエルディスクにカードをセットすると、彼の前方に頭部が彪に似た獣の東南アジア風の鎧を着た戦士が現れた。

 

 炎王獣ヤクシャ 攻撃力1800→1900

 

「更にフィールド魔法『炎王の孤島』を発動! この効果で俺は手札にある『炎王獣キリン』を破壊して、その代わりにデッキから『炎王』がつくモンスターカードを一枚手札に加える。更に『炎王獣キリン』の効果によりデッキから炎属性モンスターを一枚墓地へと送る。そして俺は二枚場にカードを伏せてターンエンド!」

 

「デッキのカードを墓地へ? ……まあ、いいわ。私のターン、ドロー!」

 

 愛は自分のデッキのカードを墓地へ送った典正と、彼が新たに場に出した伏せカードを見て呟くが、すぐに気を取り直して行動を開始する。

 

「私は『BM―4 ボムスパイダー』を攻撃表示で通常召喚! 続けてフィールド魔法『鋼鉄の襲撃者』を場に出してからボムスパイダーのスキル発動! ボムスパイダーは一ターンに一度、自分フィールドの機械族・闇属性モンスター一体と相手フィールドの表側表示のカード一枚を破壊できる! この効果により私のボムスパイダーと貴方のヤクシャを破壊するわ!」

 

 愛がデュエルディスクにカードをセットして宣言すると、彼女の前方に蜘蛛のような外見をした機械が現れ、ボムスパイダーはヤクシャに突撃すると大爆発を起こし、二体のモンスターは同時に破壊された。

 

「鋼鉄の襲撃者の効果発動! 一ターンに一度、自分フィールドの機械族で闇属性のモンスターが、フィールドのカードを破壊した場合、手札から機械族・闇属性モンスター一体を特殊召喚する。来なさい! 『ブローバック・ドラゴン』!」

 

 ボムスパイダーとヤクシャが同時に破壊された瞬間、手札から頭部が拳銃の外見をした機械の竜のモンスターを召喚する愛。だが彼女の行動はまだ続いた。

 

「続けて手札の『デスペラード・リボルバー・ドラゴン』のスキル発動! このカードは自分の機械族・闇属性モンスターが破壊された場合、手札から特殊召喚することができる! 来なさい! デスペラード・リボルバー・ドラゴン!」

 

 愛がデュエルディスクに新たなカードをセットすると、ブローバック・ドラゴンとはまた違った頭部が拳銃の外見をした機械の竜が召喚される。

 

 ブローバック・ドラゴン 攻撃力2300

 

 デスペラード・リボルバー・ドラゴン 攻撃力2800

 

 たった一ターンで相手のモンスターを破壊しつつ、高い攻撃力を持つ上級モンスターを二体も召喚した愛に、受験生だけでなく海馬ドームにいる全ての人間の視線が集まり、それを見ていた明日香が愛に賛辞を送る。

 

「いつ見ても凄いわね。流石は『早撃ち(クイックドロウ)』の愛ね」

 

 白上愛は魔法カードやモンスターの特殊効果を使って上級モンスターを召喚し、早期で決着をつける戦いを得意とするデュエリスト。そして召喚する上級モンスターが銃の外見をしてモンスターであることから「早撃ち(クイックドロウ)」の二つ名で呼ばれているのであった。

 

「……! 俺はヤクシャのスキル発動! ヤクシャが破壊されて墓地に送られた時、俺は自分の手札を一枚破壊して墓地に送る!」

 

「私じゃなくて自分の手札を破壊? ……まあ、いいわ。私はブローバック・ドラゴンのスキル発動! 一ターンに一度、コイントスを三回行って二回以上表だった場合、相手フィールドのカードを一枚破壊する。……成功!」

 

 典正の行動の意図は分からなかったが、それでも愛が宣言するとブローバック・ドラゴンの頭上に三枚のコインが降り注ぎ、その内の三枚が表を表示して典正のフィールドにある二枚の伏せカードの一枚が破壊される。そして愛は今破壊されたカードを見て呟く。

 

「『激流葬』……。確か、場のフィールドのモンスターを全て破壊する罠カードだったわね。それが使えていたら私のモンスターを全て破壊できていたでしょうけど残念だったわね」

 

 罠カードを破壊された典正を見て、この場にいる全員が彼の敗北を予想して同情するような視線を向ける。……彼と一緒にここにやって来た十代以外は。

 

「……まだだ。典正のあの目はデュエルを諦めていない」

 

 観客席にいる十代の言葉は彼の近くにいた二人の受験生にしか聞こえておらず、愛は決着をつけるべく自分のモンスター達に攻撃を命じようとする。

 

「貴方の戦い……もっとじっくり見たかったけど、残念だわ……。ブローバック・ドラゴン! デスペラード・リボルバー・ドラゴン! 相手プレイヤーにダイレクトアタック!」

 

 愛の命令に二体の機械の竜が頭部の拳銃から弾丸を典正に向けて放つ。するとその時、典正は場に伏せていたもう一枚のカードを発動させる。

 

「罠カード『攻撃の無力化』発動!」

 

 典正が発動したのは、相手モンスターの攻撃宣言時に、その相手モンスターの攻撃を無効にした後、バトルフェイズを終了させるという罠カード。これによってブローバック・ドラゴンとデスペラード・リボルバー・ドラゴンが放った弾丸は、空間に開いた穴の中に吸い込まれていった。

 

「あの受験生、白上の攻撃をしのいだのか?」

 

『『………!?』』

 

 十代以外の全員は典正の敗北を予想していた。だが罠カードを使って敗北を免れた典正を見て亮が思わず驚きの声を上げ、他の者達は言葉を失った。

 

「攻撃の無力化……。そんなカードまで持っていたのね。……ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー! ……愛、悪いけどこのデュエル、このターンで終わらせるぞ」

 

 自分のターンがきてデッキからカードを引いた典正は、愛に向かって勝利を宣言する。

 

「あら、大きく出たわね。その自信、随分といいカードを引いたようね?」

 

「いや? いいカードならもっと前に引いていたよ。それを使う準備が今できたってだけだ。俺は墓地にある『炎王神獣ガルドニクス』のスキル発動! このカードは効果で破壊され墓地へ送られた場合、次のスタンバイフェイズに墓地から特殊召喚できる」

 

「効果で破壊されて墓地に送られる? ……もしかしてあのヤクシャの効果で?」

 

 典正の説明を聞いて愛がいつガルドニクスのカードを墓地に捨てたのかに気づくと、それに典正が頷く。

 

「その通り! さあ不死鳥よ、蘇り現れろ!」

 

「これは……!?」

 

 典正の言葉と同時にデュエルフィールドの炎の竜巻が立ち昇り、竜巻が消えるとそこには黄金の冠と装飾品を身につけた真紅の神鳥の姿があった。

 

「まだこれで終わりじゃないぞ! 炎王神獣ガルドニクスのもう一つのスキル発動! このカードを自身の効果で特殊召喚した場合、フィールドの他のモンスターを全て破壊する!」

 

『『………!?』』

 

 フィールドのモンスターを全て破壊。その凶悪な効果を聞いて愛だけでなく、二人のデュエルを見ていた観客達が言葉を失っていると、ガルドニクスはその大きな翼を羽ばたかせて炎の風を起こし、愛のモンスターを破壊した。

 

「私のモンスター達が……!?」

 

「更に! 俺は炎王の孤島の効果で今ドローした『炎王獣バロン』を破壊して新たな炎王のモンスターを手札に加える。そしてここで俺は墓地にある『このモンスター』のスキル発動! このカードは手札、もしくは墓地に存在する場合、自分の墓地からこのカード以外のモンスター三体を除外することで特殊召喚できる! 現れろ! 『The blazing MARS(ザ・ブレイジング・マーズ)』!」

 

 典正が命じると、デュエルフィールドの地面に地割れが起こるエフェクトが発生し、その地割れの中から上半身が人型で下半身が巨大な怪物の頭部という、異形の姿をしたモンスターが現れた。

 

 このモンスター、The blazing MARSこそが今から五年前に典正が引き当てた世界に十枚しか存在しないレアカードの一枚であり、彼の前世が生み出した星の力を秘めた精霊のカードだった。

 

 そしてThe blazing MARSが宿す力の星は「火星」。火星は古来より戦いを暗示する星で、これより先に大きな戦いが起こることを知る典正が火星の力を宿す精霊のカードを持つことは、ある意味運命だと言えただろう。

 

 炎王神獣ガルドニクス 攻撃力2700

 

 The blazing MARS 攻撃力2600

 

「こ、これは……!」

 

 先程まで相手のモンスターを全て破壊して上級モンスターを二体も従えていたのに、完全に状況が逆転した愛は信じられないといった表情で呟き、それは他の観客達も同様であった。

 

「二体のモンスターでダイレクトアタック!」

 

「……ここまでね」

 

 典正の命令に従いガルドニクスとThe blazing MARSはそれぞれ業火を放ち、諦めの表情を浮かべた愛を二体のモンスターの業火が飲み込んだ。

 

 白上愛 LP4000→1300→−1300

 

 こうして典正と愛の入学デュエルは典正の勝利で終わったのだが、これはこの先に待ち受ける戦いの始まりにすぎなかった。

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