転生者のデュエリストは戦いの始まりを告げる   作:兵庫人

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第4話

 デュエルアカデミアの入学試験が終わった数日後。典正はとある島にある森の中を歩いていた。

 

 その島はまるで南国の島のように気温が高く、とても日本国内とは思えないのだが、典正はそれを気にすることなく歩いて行くと、木々の中から巨大な人影が現れた。木々の中から現れたのは豹のような頭部と人間の胴体をした戦士、デュエルアカデミアの入学試験で彼が使ったモンスター、ヤクシャであった。

 

 デュエルディスクも使わずにデュエルモンスターズのモンスターが現れたことに典正は慌てふためく……ことはなく、まるで友人のように話しかける。

 

「やあ、ヤクシャ。『あの人達』を見なかった?」

 

「シバか。あの者達だったら、向こうの方で修練を行っていたぞ」

 

 親しげに話しかける典正に、ヤクシャも友人と話すような親しい口調で答えて森の外を指差す。

 

「そうなんだ。ありがとう」

 

 典正は礼を言うとヤクシャが指差した方向へ歩いて行く。

 

 デュエルモンスターズのモンスターであるヤクシャが普通に森を歩いていることから分かるように、この島は日本でなければ現実世界でもなく、精霊達が暮らす精霊界と呼ばれる異世界、その一つである。

 

 今から五年前、典正はフィールド魔法「炎王の孤島」を手に入れたことによって、この精霊界にある炎王の孤島に転移した。

 

 そしてこの炎王の孤島でガルドニクスを初めとする炎王獣と呼ばれる精霊達と共に戦うことによって、典正は魔術師であった前世の記憶に目覚めると同時に魔力を強め、今では自由に現実世界と炎王の孤島を行き来できるだけでなく、他者にも炎王の孤島を行き来する力を与えることもできるようになっていた。今から典正が会う人達も、彼がこの炎王の孤島に転移する力を与えた者達であった。

 

 典正が森を抜けるとそこでは二人の男がデュエルをしており、更にその二人の男から少し離れた所で三人の男がデュエルを観戦していた。

 

「フハハハハッ! 所詮貴様のような凡骨では俺に勝つなど夢のまた夢よ! くらえ! 滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)!」

 

「チックショウ! ……ぐあああっ!?」

 

 デュエルをしている二人の男の片方、白いコートを羽織った男が命じると、彼の前方にいる白いドラゴンが口からエネルギーの砲弾を撃ち出し、もう一人の男の前方にいる黒いドラゴンを粉砕した。それによってデュエルは白いコートを羽織った男の勝利で終わったようで、デュエルを終えるとその場にいた五人の男達は典正の存在に気づいた。

 

「オゥ! 始波ボーイ、お久しぶりデース!」

 

 デュエルモンスターズの産みの親であるI2(インダストリアル・イリュージョン)社の会長、ペガサス・J・クロフォード。

 

「……ふん! この俺を待たせるとは偉くなったものだな? あまりに暇だったので、この凡骨とデュエルをする羽目になったわ。……もっとも、大した暇潰しにはならなかったがな」

 

 デュエルディスクを開発して今のデュエルモンスターズの流行を加速させた海馬コーポレーションの若き総帥、海馬瀬人。

 

「何だと海馬!? 全くコイツはよぉ……カッコ悪いところを見せちまったな、典正?」

 

 多くの強豪デュエリストと数々の激戦を繰り広げた過去を持つプロデュエリスト、城之内克也。

 

「久しぶりだね。典正君」

 

 過去にバトルシティというデュエルモンスターズの大会を制して決闘王(デュエルキング)の称号を得た伝説のデュエリスト、武藤遊戯。

 

「邪魔しているぜ、始波」

 

 そして「千年アイテム」と呼ばれる伝説の呪具によって、遊戯のもう一つの人格的として現代に復活した古代エジプト文明のファラオ、アテム。

 

 デュエルモンスターズ界の伝説の人物達が、この精霊界にて典正を待っていた。

 

「お久しぶりです。皆さん」

 

 典正が遊戯達に頭を下げて挨拶をすると、海馬が鼻を鳴らしてから話しかけてきた。

 

「……ふん! 貴様の入試デュエルは見させてもらった。まあ、及第点と言ったところか。先に結論から言えばお前は合格だ。入学してからはラーイエローに配属後される」

 

 海馬達は典正の入試の時、海馬ドームに来て彼の入試デュエルを見学していて、デュエルアカデミアのスポンサーである海馬は先に合格を言い渡す。

 

「ラーイエローから? ちょっと待てよ海馬? 典正の目的を考えたらオベリスクブルーに配属した方がいいんじゃねぇか?」

 

 海馬の言葉を聞いて城之内が彼に疑問を投げ掛ける。

 

 デュエルアカデミアは完全な実力主義の学園で、デュエリストの実力順にオベリスクブルー、ラーイエロー、オシリスレッドの三つのクラスに分けられ、上位のクラスであれば一部の授業の免除等の優遇処置が得られて学園内の活動の幅が広がる。

 

 典正がデュエルアカデミアに入学する理由は、来るべき戦いに備えて精霊のカードを持って共に戦うデュエリストを見つけ出すことだ。そのためにはオベリスクブルーに配属した方が都合がよいのでは、という城之内の意見に海馬はつまらなそうに首を横に振る。

 

「ふん。だから貴様はいつまで経っても凡骨なのだ、城之内。デュエリストたる者、自らの待遇ぐらい自身の力で掴み取るべきだ。……それにこれは典正を鍛えるためでもある。典正にはデュエリストだけでなく、魔術師としての格を上げてもらう必要があるからな」

 

 海馬は横目でアテムを見ながら、どこか期待するような口調で言う。

 

 海馬が典正を鍛えようとするのにはいずれ来る大きな戦いに備えるだけでなく、もう一つの理由があった。

 

 典正達が今いる精霊界は物質と精神の間……言ってみれば現世と冥界の境界にあり、典正が契約をした炎王獣達は死ぬことで何らかの能力を発揮して復活することもできる、破壊と再生を司る精霊達である。

 

 現世と冥界の境界にある精霊界に自由に行き来することができ、破壊と再生と司る精霊と契約した典正が力をつけることは、ある「奇跡」が実現する可能性が高まることを意味していた。

 

 その奇跡とはすなわち「死者の復活」。

 

「イエース! 始波ボーイには是非ともデュエリストだけでなく魔術師としてもレベルアップしてほしのデース!」

 

 海馬の言葉を聞き、ペガサスは別の方向に視線を向けながらそう言う。ペガサスの視線の先には、少し離れた所で彼に優しげな微笑むを向けている一人の女性があった。

 

「とにかく典正よ。お前の当面の目標はデュエルアカデミアで実力を示し、オベリスクブルーを目指しながら残った九枚の精霊のカードに相応しいデュエリストを探すことだ」

 

「ちょっといいか?」

 

 海馬がそこまで言ったところでアテムが典正に話しかける。

 

「九枚の精霊のカードの使い手……その一人になりそうな奴を見つけたんだが、ソイツの力を試してみてくれないか?」

 

「カードの使い手の候補者? それってもしかして……?」

 

 アテムから一人のデュエリストの力を試してほしいと言われた典正は、そのデュエリストが誰なのか分かった気がしたのだった。

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