炎王の孤島での遊戯達との話し合いから一ヶ月後。典正の元にデュエルアカデミアの入試の合否判定の手紙がやって来た。
入試の結果は海馬が言っていた通りに合格で、典正は入学後はラーイエローに配属されることとなった。
デュエルアカデミアは海馬コーポレーションが買収した太平洋の孤島にあり、毎年新入生は専用の大型ヘリに乗ってデュエルアカデミアへと向かうのだが、今年はいつもと違っていた。
「おおー! これがあの飛行船『シーホース・アンド・ウッドホース号』の中か!」
今年の新入生は毎年使っている大型ヘリが「突然故障した」らしく、その代わりに海馬コーポレーションが保有する飛行船を使ってデュエルアカデミアへとおり、飛行船の中で典正と同じく入試に合格した十代が感動した声を上げていた。
「この飛行船って、五年前のデュエリストの大会、バトルシティで遊戯さん達がデュエルした舞台になったヤツだろ!? そんな飛行船に乗れるだなんて感動だよな!」
十代だけでなく、他の新入生達もかつて決闘王達が熱いデュエルを繰り広げた飛行船に乗れたことに感動しているのだが、典正だけは素直に感動できずにどこか呆れたような気持ちだった。
(いや……バトルシティの名舞台となった飛行船に乗れたのは嬉しいけど『
一ヶ月前。アテムが典正に精霊のカードの所有者候補を見つけたので力試しをしてほしいと言うと、それを聞いた海馬が「ならばそれに相応しい舞台を用意してやろう!」と言い出したのだ。
最初は何のことか分からず、入学してから新入生同士のデュエル大会でも開催するのかと思っていたのだが、まさかこんな舞台を用意してくるとは思わなかった。
海馬の性格を考えれば、この飛行船に乗っている間にアテムの言っていた精霊のカードの所有者候補と戦うことになるだろうと典正が考えていると、一人の男が典正に話しかけてきた。
「やあ、ちょっといいかい?」
典正に話しかけてきたのは、彼と同じラーイエローの制服を着た男子生徒だった。
「君は?」
「俺は三沢大地。君と同じ今年入学するラーイエローの生徒だよ。入学試験の君のデュエル見せてもらったよ。あの時はもう駄目かと思ったのにいきなり逆転をするだなんて……それにあんな動き方をするデッキなんて見たことがない」
「ありがとう。……俺も君のデュエルを見ていたよ。カードの効果を計算しつくしたいいデュエルだった」
興味深そうにこちらを見てくるラーイエローの生徒、三沢に礼を言いながら典正は、入学試験での三沢のデュエルを思い出す。入学試験の三沢はモンスターの効果、魔法カード、罠カードを使いこなし、試験官に勝利しており、あの時の戦いぶりは受験生の中でも頭一つ抜けているような気がして、そんな彼を見ながら典正をあることを考える。
(三沢大地か……。入試のデュエルを見る限りカードの理解力も高そうだし、正義感で勇気もありそうだ……。アテムさんが言っていた候補者じゃないけど、彼になら精霊のカードを渡しても大丈夫なのかな? ……一度デュエルをしてみてから決めるか?)
一度デュエルをすればそのデュエリストがどんな人間か分かる。
これはアテムと遊戯、海馬と城之内、そしてペガサスから何度も言われてきた言葉であり、この世界の人間の共通認識と言っても過言ではなかった。
三沢が精霊のカードに相応しい人物かどうか、それを見定めるためにデュエルを申し込んでみようかと典正が考えていると、典正達がいる部屋に備え付けられている大型モニターが一人の人物の姿を映し出した。
《ようこそ、新入生諸君!》
「あれは海馬コーポレーションの海馬総帥!?」
モニターに映し出された人物は海馬で、新入生の一人がモニターの中の海馬を見て驚きの声を上げる。しかしモニターの中の海馬は当然ながらそんな新入生の声など聞いておらず話を続ける。
《貴様らデュエルアカデミアの新入生は、次世代のデュエルモンスターズを担うデュエリストとなるべく集まった精鋭達だ! 俺や俺の宿敵のようなデュエリストとなれとまでは言わぬが、それでもデュエルアカデミアの経験を糧としてひとかどのデュエリストとなることを期待している! ……そこでだ!》
海馬はそこで一度言葉を切ると、典正達新入生にある提案を持ちかける。
《まず貴様ら新入生にはここでデュエルを行ってもらう! そのデュエリストがどんな人物なのかはデュエルでのみ語られる! この飛行船でのデュエルはすでにデュエルアカデミアにいる生徒達に見れるよう配信される。さあ、これから共に切磋琢磨する者達に自分がどんなデュエリストか知らしめてみせろ!》
「ここでデュエルを!?」
「そんないきなり!」
「おおー! この飛行船でデュエルできるなんてワクワクするぜ!」
海馬の突然の提案に、一部の生徒を除いて新入生達は戸惑いの表情を浮かべる。あまりにも突然で無茶苦茶な発言だが、海馬の言葉には妙な説得力と他者の関心を惹きつける力があり、これが大企業のトップに立つ人物の実力かと典正は感心すると同時に理解した。
やはりこの飛行船が海馬の用意した、典正とアテムが見つけた精霊のカード所有者候補が戦う舞台なのだと。
《そしてデュエルする新入生なのだが、デュエルアカデミアに到着するまでの時間が有限であるため、デュエルをする人数と組み合わせはこちらで決めさせてもらった。まず最初のデュエルは……ラーイエロー所属、始波典正!》
『『………!』』
「お、おい? アイツって確か……」
「ああ。オベリスクブルーの生徒相手を二ターンで瞬殺した奴だ……!」
典正が最初のデュエルに選ばれると、新入生達の視線が彼に集まりざわめきが生じる。どうやら入学試験での愛とのデュエルは他の新入生達の印象に残っていたらしい。
《そしてもう一人は……オシリスレッド所属、遊城十代!》
続けて海馬が典正の対戦相手を指名すると、指名された十代は飛び上がって喜ぶ。
つまり十代こそが、アテムが見つけた精霊のカードの所有者候補なのであった。