転生者のデュエリストは戦いの始まりを告げる   作:兵庫人

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第6話

 海馬の提案した新入生同士のデュエルに参加することになった典正と十代は、飛行船の上部にある特設デュエルフィールドに来ていた。そこはかつて海馬や遊戯と言った伝説のデュエリスト達が戦い合った舞台であり、そこに立った十代は喜びの声を上げる。

 

「うおおっ!? ここで遊戯さん達が戦ったのか。こんな所で戦えるだなんて感動だよな! 典正、お前もそう思うだろ?」

 

「そうだな」

 

 典正も遊戯達が戦った伝説の舞台に立ったことに少なからず興奮していて、十代の言葉に頷き答える。

 

「入学試験の時はお前には助けてもらったけど、デュエルでは手を抜かないぜ?」

 

「安心しろ。それは俺も同じだ」

 

 十代の言葉に典正が言葉を返すと、二人は同時にデュエルディスクを構えてデュエル開始の合図を口にする。

 

『『デュエル!』』

 

 始波典正 LP4000

 

 遊城十代 LP4000

 

 

「………」

 

「あら? 貴女も興味があるの、愛?」

 

 典正と十代のデュエルが始まった頃。デュエルアカデミアにあるオベリスクブルーの生徒寮で、愛が大型モニターで典正と十代のデュエルを見ていると、そこに明日香が話しかけてきた。

 

「明日香……貴女もってことは明日香も?」

 

「ええ。片方は入学試験でオベリスクブルーを誇る貴女を倒したデュエリスト、そしてもう片方は同じく入学試験で『あの』クロノス先生を倒したデュエリスト。興味を持っても仕方ないじゃない?」

 

 愛の言葉に明日香はモニターに視線を向けながら答える。

 

 クロノス先生というのはオベリスクブルーの生徒寮の寮長であり、同時にデュエルアカデミアの実技担当の教師で、その実力はプロデュエリストと比べて遜色がないと言われている。十代はそのクロノス先生を入学試験のデュエルで倒しており、典正と同じくらい注目を集めていたのだった。

 

「そうね。このデュエルで典正君と、もう一人の十代君がどんなデュエルを見せてくれるのか興味があるわ」

 

 愛が明日香の隣でモニターを見ながらそう言うと、二人のデュエルが始まろうとしていた。

 

 

「先行はもらうぜ。俺のターン、ドロー! ……俺は『(エレメンタル)・ヒーロー フェザーマン』を守備表示で召喚! そしてカードを一枚伏せてターンエンド!」

 

 フェザーマン 守備力1000

 

 十代が自分のデュエルディスクにカードをセットすると彼の前方に、背中に翼を生やした全身が緑色のヒーロー風の男が現れる。

 

「次は俺の番だ。ドロー! ……俺は魔法カード『炎王の強襲』を発動! このカードは相手フィールドにのみモンスターが存在する場合のみ、デッキから獣族・獣戦士族・鳥獣族の炎属性モンスターを一体特殊召喚できる。……来い! ガルドニクス!」

 

 自分のターンが来た典正がカードをセットすると、デュエルフィールドに黄金の冠と装飾品を身に付けたガルドニクスが現れ、それを見た十代が驚きの表情を浮かべる。

 

「いいっ!? 一ターンでいきなり上級モンスターを召喚?」

 

「まだ終わらないぞ。続けて俺はフィールド魔法『炎王の孤島』を発動し、手札のガルドニクスを破壊。代わりにデッキから『炎王獣バロン』を手札に加えた後に攻撃表示で召喚する」

 

 炎王獣バロン 攻撃力1800

 

 ガルドニクスの隣に現れた、頭部が獅子で胴体が人間の戦士、バロンを見て十代が首を傾げる。

 

「えっ? ガルドニクス、もう一枚あったのか? ……でも、それを何で捨てるんだ?」

 

「さあな? バロンでフェザーマンを攻撃する」

 

 せっかくの上級モンスターのカードを捨てる理由が分からない十代の言葉に答えず典正が命じると、彼の命令に従ってバロンがその両手で持った剣でフェザーマンを一撃で破壊する。するとその直後に十代は伏せていたカードを発動させる。

 

「今だ! 罠カード『ヒーローシグナル』を発動! 自分のモンスターが戦闘で破壊された時に手札・デッキからレベル4以下の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚する。俺はデッキから『E・ヒーロー バーストレディ』 を守備表示で召喚!」

 

 バーストレディ 守備力800

 

「なら俺はガルドニクスでバーストレディを攻撃」

 

 次に典正はガルドニクスにバーストレディを破壊させるが、そこで彼は何かに引っかかった。

 

「……ん? フェザーマンにバーストレディ? ……いや、まさかな。俺はこれでターンエンド」

 

「よし。じゃあ俺のターンだな。ドロー!」

 

「ここで墓地のガルドニクスのスキルを発動させる」

 

 自分のターンが回ってきた十代がカードを引いた瞬間、典正が墓地にあるカードの効果を発動させる。

 

「ガルドニクスは効果で破壊され墓地へ送られた場合、次のスタンバイフェイズにこのカードを墓地から特殊召喚する。更にこの効果で特殊召喚した場合に発動する。フィールドの他のモンスターを全て破壊する」

 

 墓地から二体目のガルドニクスがデュエルフィールドに現れたかと思ったら、二体目のガルドニクスは炎の嵐を起こして一体目のガルドニクスとバロンを破壊し、それを見た十代が驚きの声を上げる。

 

「お、おい!? 自分のモンスターを破壊してどうするつもりなんだ?」

 

 

「彼、一体どういうつもりなのかしら?」

 

 オベリスクブルーの学生寮でデュエルを見ていた明日香も、典正の行動の意図が分からず首を傾げた。

 

 ガルドニクスが墓地から特殊召喚された時に敵味方問わず全てのモンスターを破壊するのは典正が一番分かっているはずなのに、何故彼は自分だけが上級モンスターを含めて複数召喚していた数の優位を捨てたのだろうか?

 

 その理由に最初に気づいたのは愛であった。

 

「……! もしかして彼は……?」

 

「愛? 何か分かったの?」

 

「ええ、多分だけど。……でも、もし私の想像通りだったら彼、十代君はこれから厳しくなるわよ」

 

 愛は明日香の言葉に頷くとモニターの中の典正と十代を見ながらそう言った。

 

 

「よく分からないけど、とにかく俺は魔法カード『融合』発動! 手札にある『E・ヒーロー バブルマン』と『E・ヒーロー クレイマン』を融合させて新たなヒーローを呼び出す! 現れろ! 『E・ヒーロー マッドボールマン』!」

 

 十代が三枚のカードを見せて宣言すると、彼の前に巨大なボールに手足を生やしたようなモンスターが現れた。

 

 マッドボールマン 守備力3000

 

「守備力3000!? 嘘だろ?」

 

「伝説の『青眼の白龍』の攻撃力と同じだぞ!?」

 

 十代のマッドボールマンのステータスを見て、観客の新入生達からざわめきが生じる。モンスターの種類がそれこそ無数にあるデュエルモンスターズの世界では、攻撃力守備力問わず二千を超えるステータスを超えるモンスターは全て上級モンスターとされ、所有しているデュエリストの数もそれほど多くないからである。

 

「俺は更に一枚カードを伏せてターンエンドだ」

 

「……なるほど。マッドボールマンを盾にして反撃のカードを揃える時間を稼ぐつもりか。でも残念だったな。俺のターン、ドロー! そしてスタンバイフェイズに入った瞬間、墓地にあるガルドニクスの効果発動! 現れろ、ガルドニクス!」

 

 典正がカードを引いた次の瞬間、墓地からガルドニクスが現れて炎の嵐を起こし、すでに場にいたガルドニクスと十代のマッドボールマンを一瞬で焼き尽くす。

 

「ああっ!? マッドボールマンが!」

 

 

「やっぱり……。これが典正君の狙いだったのね」

 

「そういうこと……。典正君が狙っていたのは二体のガルドニクスによる、毎ターンのモンスター除去……!」

 

 オベリスクブルーの学生寮で愛と明日香が戦慄した表情で呟く。

 

 片方のガルドニクスが墓地から復活すると同時にもう片方のガルドニクスを破壊すれば、次のターンに破壊されたガルドニクスが復活して片方のガルドニクスを破壊し、また次のターンにこれを繰り返す。そして破壊されるのはガルドニクスだけでなく、他のフィールド上にいるモンスターも全てだ。

 

 二体のガルドニクスはこれから典正と十代のターン開始と同時に自分以外のモンスターを除去していき、これはデュエリストにとってはかなり厄介な展開と言えた。デュエリストの多くは相手プレイヤーのLPを削る方法のほとんどを自分のモンスターに任せており、苦労して召喚したモンスターを次々と破壊されていくのは相手への打撃力の維持に難しくなる以上に、戦意の喪失に繋がると言っても過言ではないだろう。

 

『『………』』

 

 気がつけばいつの間にか、愛と明日香以外のオベリスクブルーの生徒達も集まっていて、モニターの典正と十代のデュエルに注目していたのだった。

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