十代とのデュエルが終わった後。他の新入生同士のデュエルも終わり、典正達を乗せた飛行船はデュエルアカデミアのある孤島に到着し、典正は今ラーイエローの学生寮にある自室にいた。
《ふん。それでお前はアテムが見つけたという候補者に精霊のカードの一枚を与えたというわけか》
学生寮の自室で典正は海馬と連絡を取っていたのだが、電話の向こうの海馬はどこか不機嫌そうな声でそれを聞いた典正は首を傾げた。
(あれ? 海馬さん、機嫌が悪い? ……もしかして十代に精霊のカードを渡したことを怒っている?)
飛行船でのデュエルの後で典正が十代に渡したカードは、精霊が宿るカードとそれを融合召喚するための素材カードであり、それを渡したことを怒っているのかと考えていると、典正の考えを読んだのか海馬が鼻を鳴らす。
《ふん! 見当違いのことを考えるな。アテムが見つけた候補者を貴様自ら力を見定めた結果、精霊のカードを渡したのだろう? ならば俺から言うことは何もないわ。俺が怒っているのは、汚らわしい盗人共が我がデュエルアカデミアに以前からちょっかいを出していたことだ。……貴様の部屋に用意してやった資料を見てみろ》
「資料って、これですか?」
海馬に言われて典正は自室に置かれていた封筒を開き、そこに入っていた資料に目を通す。その資料はこのデュエルアカデミアの生徒の一人が行方不明になった記録と、それと同時期に活動を開始した非合法な手段でカードを強奪するカードハンターに関する情報であった。
「これって……」
《そうだ。このカードハンターの目的はデュエルアカデミアにある『三枚のカード』であることは明白。そしてそいつはすでにデュエルアカデミアに手を伸ばしている。……やはり貴様には早急に精霊のカードの使い手を見つけてもらわねばならんな。資料にあった二人の生徒達に接触してみろ。俺が見繕った候補者達だ。恐らくは役に立つだろう》
典正がデュエルアカデミアに来た理由は、自分と同じ精霊のカードの使い手を見つけて彼らと共にデュエルアカデミアにある「三枚のカード」を守ることである。その精霊のカード使いの候補者を見つけたと言う海馬の言葉を聞いて典正は、封筒の中にあった二人のデュエルアカデミアの生徒の資料に目を通した。
デュエルアカデミアがある孤島にある港。そこの灯台の下に二人の男女がいた。
一人はこのデュエルアカデミアでも最強と言われ「
もう一人はまだ一年ではあるが、女生徒の中ではすでに上位の実力を持っているとされている天上院明日香。
明日香が灯台元にやって来ると彼女に気づいた亮が話しかける。
「明日香か……。今日は新入生の歓迎会なんだろう? 行かなくて良かったのか?」
「ええ。今日は行く気分になれなかったから」
「……そうか」
明日香の言葉に亮は短く答えると、二人は揃って海を眺める。明日香と亮が毎日のようにこの灯台元で会っているのは、二人とも「ある人物」について探しており、その情報を共有するためであった。
しかし最近は明日香も亮も探している人物についての情報が得られておらず、しばらく二人は無言だったがやがて亮が口を開く。
「そう言えば……今年の新入生は中々面白そうな奴が多いみたいだな?」
海馬が主催した飛行船での新入生同士のデュエルは亮も見ており、その中にそれなりの実力者がいたこと思い出しながら亮は明日香に話しかける。
「これは明日香もうかうかしていられないんじゃないか?」
「そうかもしれないわね。でも、私だってそう簡単に負ける気はないから」
亮の軽口に明日香は自信に満ちた笑みを浮かべて返す。するとその時、二人の元に一人の男が現れた。
「本当にいた。……流石は海馬コーポレーションの捜査資料……正確だな」
「っ!? 誰だ!」
「貴方は……確か、始波君?」
明日香と亮の前に現れたのは、今日デュエルアカデミアに入学したラーイエローの一年、始波典正であった。
「こんばんは。丸藤亮先輩。天上院明日香さん。……今日は二人に話があって来ました」
「俺達の名前を? それに話だと?」
「……私達は貴方と話すことなんてないんだけど?」
名乗ってもいないのに自分達の名前を知っている典正に対して明日香と亮は警戒心を露わにするのだが、それに構わず典正はある人物の名前を口にする。
「天上院吹雪」
『『……………っ!?』』
典正が口に出した名前は明日香と亮がずっと探している人物の名前で、それを出された二人は驚愕の表情を浮かべるのだが、典正は話を続ける。
「オベリスクブルー所属の生徒で成績は中等部の頃からすでにトップクラスで周囲からは『
典正が口に情報は海馬から渡された行方不明となったデュエルアカデミアの生徒の資料にあったもので、彼の言葉を聞いた亮は驚いた顔をした後に頷いてみせた。
「ああ、そうだ。しかし何故君が吹雪のことを知っている? ……もしかして君は吹雪の居場所を知っているのか?」
「……」
典正は僅かな期待を込めて自分を見てくる明日香と亮に首を横に振って答える。
「残念ですけど、天上院吹雪さんの居場所は俺も知りません。……だけどその手がかりになりそうな情報なら知っています」
「本当か!? それは一体何だ!」
「始波君。教えてくれないかしら」
「……少し長くなりますけどいいですか?」
典正がそう聞くと明日香と亮は同時に頷き、それを確認した典正は自分がこのデュエルアカデミアに来た理由から話し始めた。
「まず俺がここに来た理由は、このデュエルアカデミアに秘密裏に保管されている三枚のカードを守るためです。その三枚のカードはかつてバトルシティで決闘王武藤遊戯や海馬瀬人が使ったとされる三枚の神のカードと同等のもので、それを以前存在していたカードを強奪する犯罪集団『グールズ』のような奴らが狙っているそうなんです。そして天上院吹雪さんが行方不明になったのとほぼ同じ時期に一人のカードハンターの存在が確認されました」
「……まさか、そのカードハンターが兄さんと関係しているの?」
明日香の言葉に典正は海馬から渡されたカードハンターの資料に書かれてあった情報を口にする。
「そのカードハンターは『
「……っ!? 吹雪……!」
「兄さん……!」
デッキはデュエリストにとっては命も同然。典正の話を聞いて亮は吹雪のデッキを使っているカードハンターに怒りを燃やし、明日香は悲しそうな表情となる。
「天上院吹雪さんのデッキを使うカードハンターとその仲間達は、いずれここにある三枚のカードを狙ってやって来るはず。……丸藤亮先輩。天上院明日香さん。どうか、俺と一緒にカードハンターと戦ってくれませんか?」
典正が一緒に戦ってくれないかと頼むと、亮は少し考えてから彼に話しかける。
「君……始波典正と言ったか? 君の話は理解した。君がこのデュエルアカデミアにある三枚のレアカードを守ろうとしていること。そのカードを狙うカードハンターが吹雪の行方を知っているかもしれないこと。確かに君と俺達の利害を一致しているかもしれない。……だが、いきなり現れた君の言葉をそのまま鵜呑みにする気にはなれない」
「確かにそうかもしれませんね。……じゃあ、どうしたら信用してくれます?」
亮の言葉に典正はある程度この先の展開を予想しながら聞くと、亮は典正の予想通りの言葉を言う。
「俺とデュエルをしろ。デュエルには自然と人となりが現れる。それを見て君を見極めさせてもらう」
「そうですか。分かりました」
亮が腕にデュエルディスクを装着させてそう言うと、これを予想していた典正は自分もデュエルディスクを装着して了承するのだった。