自分のデュエルディスクにデッキをしながら典正は、学生寮の自室での海馬との会話を思い出していた。
《……そうだ。不満と言えば飛行船のデュエルだが、何故『手を抜いて』いた?》
「え? 俺は別に手を抜いてなんかいませんでしたよ?」
《たわけが。ならば何故貴様のデッキには炎王カードが数枚抜けていたのだ? 貴様が本気だったら序盤からあの忌々しい『雛鳥』が飛び、デッキを回していたであろう。そしてあの『猿』がいれば遊城十代、あの対戦相手の『融合』のカードを封じてもっと楽に勝てていたはずだ》
「それは……」
海馬の言葉は完全に的を射ていたため典正が何も言えずにいると、海馬が口を開く。
《貴様のことだ。どうせ力を見せすぎれば周りと溶け込み辛くなるとか、的外れな甘いことを考えていたのだろう》
またしても海馬の言葉は的を射ていた。典正の目的である精霊のカードの使い手を見つけるためには、多くのデュエルアカデミアの生徒と接する必要があり、あまりに力を見せすぎると逆に警戒されるかもしれないと考えた典正は、飛行船での十代とのデュエルで自分のデッキから何枚かカードを抜いていたのであった。
《余裕を持つことと相手を下に見ることは全く違う。精霊のカードの使い手はこれから貴様と共に戦う仲間となる者達だ。その者達とデュエルをする時、飛行船の時のような手を抜いたデュエルをしては真の信頼は得られないと思え》
「……はい」
(まさか海馬さんの忠告がこんなにも早く活かされるなんてな……。二人に会う前にデッキを調整しておいて正解だった)
内心で海馬に感謝している典正のデッキは、飛行船では使っていなかった炎王のカードを加えた彼本来のデッキであった。典正の準備が整ったのを見て亮が話しかける。
「そろそろいいか?」
「はい。始めましょう」
『『デュエル!』』
典正と亮が同時に声を上げ、明日香ただ一人が見守る二人のデュエルが開始された。
始波典正 LP4000
丸藤亮 LP4000
「先行は譲ろう」
「ありがとうございます。それでは早速ドロー! ……『真炎王ポニクス』を召喚!」
「……何?」
「新しいモンスター?」
先行を譲られた典正がデュエルディスクにカードをセットすると彼の前に赤い雛鳥が現れ、それを見て亮と明日香は意外そうな顔をするが、典正の行動はまだ終わりではなかった。
「このカードが召喚・特殊召喚した場合、デッキから『炎王』と名前がつく魔法・罠カードを一枚手札に加えることができる。俺はデッキから永続魔法『炎王の聖域』を手札に加えた後に場に出す。そしてこのカードの発動時の効果処理として、デッキから『炎王の孤島』を一枚自分のフィールドゾーンに置く事ができる」
典正の周りに南国にある島のような風景と古い祭壇の映像が現れ、飛行船のデュエルでは出てこなかったカードの効果を見極めようと亮は典正に意識を集中させる。
「ここで俺は手札の『炎王神獣キリン』のスキル発動! このカードが手札にある場合、このカード以外の自分の手札・フィールドにある炎属性モンスターを一体破壊することで、このカードを特殊召喚できる。俺が破壊するのはポニクス。現れろ、キリン!」
典正がカードをセットするとポニクスが地面から立ち昇った炎の竜巻に飲み込まれ、その竜巻の中から鎧を身に纏った天馬が現れる。
炎王神獣キリン 攻撃力 2400
「また新しいモンスター……それも上級モンスターを一ターン目で……!?」
新しい上級モンスターの召喚に明日香が驚き、亮が納得したように頷いてから典正を見る。
「なるほど。飛行船のデュエルでは実力を隠していたというわけか」
「……そうですね。あのデュエルでは手を抜いていたと言われても仕方がないかもしれません。でも今の俺のデッキは全ての炎王カードを入れた、俺の本気のデッキです。……俺は炎王の孤島の効果で手札のバロンを破壊して、新たに炎王カードを一枚手札に加えてターンエンドです」
「そうか。ではその本気を見せてもらおうか。俺のターン、ドロー! ……俺は魔法カード『融合』を発動! 手札の『サイバー・ドラゴン』二体を融合し、『サイバー・ツイン・ドラゴン』を召喚する!」
サイバー・ツイン・ドラゴン 攻撃力2800
「いきなりサイバー・ツイン・ドラゴンですか……!」
亮の前方に双頭の機械仕掛けの竜が出現し、その召喚に必要なカード三枚を最初から引き当てる引きの強さに典正は驚きを禁じ得なかった。
「更に俺は魔法カード『サイクロン』を発動! 炎王の孤島を破壊する!」
「炎王の孤島を!?」
炎王の孤島は典正のデッキを回すキーカードであるが、破壊されたり除去されれば場のモンスターを全て破壊されるデメリットがある。例の飛行船のデュエルから自分のデッキの弱点を見抜き突いてきた亮に典正は感心する。
(確かサイバー・ツイン・ドラゴンは二回攻撃ができたはず……。炎王の孤島を破壊することでキリンを除去してワンターンキルを狙う気か? だったら……!)
「俺は炎王の聖域の効果発動! 自分のフィールドゾーンのカードが効果で破壊される場合、代わりに自分の手札・フィールドの炎属性モンスター一体を破壊できる。俺はこの効果でキリンを破壊する! 更にキリンが破壊され墓地へ送られた場合、自分の手札・墓地からこのカード以外の『炎王』モンスター一体を特殊召喚した後、フィールドのカードを一枚破壊できる。俺は手札から『炎王獣ハヌマーン』を特殊召喚した後、サイバー・ツイン・ドラゴンを破壊する!」
亮のサイクロンの風が止むと典正の前にはキリンの代わりに猿の顔をした戦士、炎王獣ハヌマーンが立っており、キリンは炎の弾丸となってサイバー・ツイン・ドラゴンに迫ろうとしていた。
「そうはさせん! 速攻魔法『融合解除』を発現! サイバー・ツイン・ドラゴンの融合を解除して……」
「それこそさせません! ハヌマーンのスキル発動! 魔法・罠カードの効果が発動した時にその発動を無効にし、このカード以外の自分の手札・フィールドの炎属性モンスター一体を破壊する! 俺は手札のガルドニクスを破壊して融合解除を無効化する!」
「何っ!?」
キリンの破壊効果の対象はサイバー・ツイン・ドラゴン。融合解除を使いサイバー・ツイン・ドラゴンを二体のサイバー・ドラゴンに戻してキリンの破壊効果から逃れようとした亮であったが、ハヌマーンのスキルによって妨害されてサイバー・ツイン・ドラゴンはキリンと共に爆散してしまう。
「まさか魔法カードを無効化するモンスターがいたとはな。……俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー! 俺は墓地のガルドニクスのスキル発動! ガルドニクスを特殊召喚した後に場にある全てのモンスターを破壊! 更に墓地のポニクスのスキル発動! このカードが破壊され墓地へ送られた場合、次のスタンバイフェイズに墓地からこのカードを手札に加える。最後に墓地のバロンのスキル発動! デッキから炎王カードを一枚手札に加える」
「モンスターの破壊と墓地を利用したこのサーチ能力、凄い……!」
「………クス、か」
典正のターン開始と同時にガルドニクスがハヌマーンを破壊しながら現れ、それと同時にドロー以外でも手札を増やしていく典正を見て明日香と亮がそれぞれ呟く。
「俺は二枚目のハヌマーンを場に出してガルドニクスと一緒にダイレクトアタック!」
炎王神獣ガルドニクス 攻撃力2700
炎王獣ハヌマーン 攻撃力1600
「くっ……! リバースカードオープン! 俺は罠カード『リビングデッドの呼び声』を発動!」
迫り来る典正のモンスターを前に亮は伏せていたカードを発動させて墓地のサイバー・ドラゴンを蘇らせ壁を作ろうとするのだが……。
「ハヌマーンのスキル発動! 手札のポニクスを破壊してリビングデッドの呼び声を無効化する!」
「……やっぱりか」
最後の頼みの綱であった罠カードも無効化された亮は苦笑を浮かべると、ガルドニクスとハヌマーンが放った炎に身を包まれた。
丸藤亮 LP4000→2400→-300
「……それでどうでしたか? 俺と一緒に戦ってくれますか?」
デュエルが終わった後、典正が明日香と亮に改めて自分と一緒に戦ってくれるのかと聞くと、亮はそれに頷いてみせた。
「ああ、今のデュエルでお前が嘘をついていないと分かった。むしろ俺の方から一緒に戦わせてくれと頼みたいくらいだ。……明日香は?」
「……ごめんなさい。その答えはまた今度にしてもいいかしら、始波君?」
「うん。俺はそれで構わない。……それじゃあ丸藤先輩、これを」
典正は明日香の言葉に頷くと、亮に八枚の精霊のカードを差し出した。
「これは?」
「デュエルアカデミアに封じられている三枚のカードに対抗するための『プラネットシリーズ』という太陽系の星をモデルにしたカードです。元々十枚あってそのうち一枚は俺が、もう一枚遊城十代っていう新入生が所有者となっています。万が一、三枚のカードが奪われてしまった時のために丸藤先輩にも一枚持っていてほしいんです」
「遊城十代……飛行船での君の対戦相手か。分かった。……俺はこのカードだ」
亮は典正が差し出した八枚の精霊のカードから一枚を選んで抜き取り、典正と共に戦うことを約束してくれたのであった。
残り八枚のプラネットシリーズのうち、一番丸藤亮のデッキと相性が良いカードはどれだと思いますか?
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ThetrippingMERCURY
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ThesplendidVENUS
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ThegrandJUPITER
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ThedespairUranus
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ThesupremacySUN