「ふむ、しばらくは腕を痛めないほうがいいね」
「そうですか」
「後何回か同じ圧力をかけていたら折れていたね」
うわぁ、腕が折れるのは嫌だよ。あれ痛いし。
そんなわけで凪乃さんに連れられて病院へとやってきた。決して大きい所じゃなくって診療所って言った方がいいくらいの大きさの。
「よかったわね。吉井」
「それにしても君が異性の友人を連れてくるなんて一体どうしたんだい?」
黒髪に黒縁眼鏡のいたって普通の顔立ち、誰にでも完全平等、それが目の前に居る病院の先生の印象だ。
でも、凪乃さんに対する口調はまるで娘に対する口調。家族か何かかな?
「そんなのどうでもいいでしょ。平和男」
「何度言ったらわかるんだい? 名前はトワイス・ピースマンだ」
「ピースマンなんだから平和男でいいじゃない」
そのまま凪乃さんとピースマンさんのケンカ腰の言い合いが続く。
「ああなっては二人とも話を聞きませんから二人とも行きましょう」
ラニさんに連れられて部屋を出た。
「あ、やっと出てきた」
「イヴ?!」
「一体どこに行ってたの? 心配したじゃない!」
「ちょっとね。明久、腕大丈夫だった?」
「あはは、うーん。まあ、大丈夫だよ」
「そっか、よかった」
イヴは心底安心した顔をする。折れてたらどんな顔をしてたんだろう。
いや、その前にギャリーの方が大変なことになるかも。
「今日は遊びに行くのは控えましょう」
「そうだね。というかお金ないし」
「あれ。明久、お金ないの?」
あ、メアリーには内緒にしてたんだった。
「う、うん。ちょっとね」
「どうせまた画材が足りなくて買ったんでしょ? もうちょっと計画的に使いなさいよ」
ばれていた。いつもそんな感じだからなぁ。
「あはは、ごめんね?」
「ギャリーの借りたらいいじゃない」
「迷惑でしょ。それ」
自分の画材くらいはどうにかしないとね。ギャリーにはギャリーの描きたい絵があるんだし。
「吉井さんは何か作品を作られるのですか?」
「うん、あまり上手じゃないけど」
まだまだなんだよね。もうちょっと上達しないかなぁ。これじゃあ、まだあの絵に届かないよ。
「ううん、明久の絵は上手だよ」
「そうよ。お父さんだって超えられるかもしれないわ」
「そんなわけないじゃん。稀代の天才を超えられたら奇跡だね」
「才能というものは他人のほうがよく気がつくといいます。他人からの評価のほうが正しいのではないですか?」
どうだろう?
「はぁー、平和男でいいじゃない」
凪乃さんが出てきた。かなり疲れた表情している。
「あ、治療代どうしよう」
「いいわよ。あいつ、どうせ善意でやっているし。それに診てもらっただけでしょ?」
「まあ、本当にいいの?」
「あいつ無駄に金持ちだもの平気よ」
そう言って凪乃さんは僕らを引っ張って外へと出た。
「イヴ、そういえばだけど島田さんは?」
「なんかツインテールを縦ロールにした女の子に追いかけられて逃げちゃったよ。私もちょっと追いかけられた」
「何かなその凄い髪形」
なんかドリルみたいな髪型しているイメージが出来たけど。
「とりあえず、今日はもう大丈夫かしら」
「そうだね。今日はもう帰ろうよ。私も遊びに行く途中だったし」
「あ、じゃあ。この辺でお別れかな」
「じゃあね、吉井 また学校で」
「吉井さん、何か悪い運命が見えます。気を付けて」
帰り際に嫌なこと言わないでよ。とりあえず帰ろうかな。
☆
「あら、明久おかえりなさい。メアリーも」
「ただいまー」
「こんにちわ」
「イヴ?! また来たの? 親御さん心配なさっていない?」
「大丈夫だよ。それよりもね」
イヴがさっきの騒ぎを全てギャリーに話した。いやいやいや、黙っておいてほしかったんだけど?!
「ふぅん、ウチの子に何やっているのかしらねその子。というより去年の子でしょ? クラスかわったのにまだちょっかい出しているの?」
ギャリー、怖いよ。正直今この場で一番怖いのギャリーだよ。言い出せるような雰囲気じゃないので何も言えなかった。
「今度ちょっかいかけてきたら許さないんだから!」
「そうね、明久あなたも自分でもちょっとは反抗しなさいよ」
「腕がもげそうなほど痛いのにどう動けっていうのかな?」
「「ごめんなさい」」
「あ、いや。謝れってわけじゃないからね?」
「でも、もう少しくらいは……ね?」
「……うん」
色々とフラグが立っています。
でも、悪い運命に関してはあまり気にしないでください。