さらに次の日、Aクラスに頼まれた絵を届けることにした。絵の方は最終的に街中にあったおしゃれな喫茶店のオープンテラスの絵にした。
「雄二ー、居る?」
「あ、姫や。久しぶりやな」
「あ、水城。久しぶりだね」
水色のショートカットの髪に銀の入った黒の瞳、絶世の美少女……のごとき美少年。古馴染みの
見た目は美少女だけど口を開くと関西弁に男らしい言動からそこまで女に見られていないあたりが秀吉との違いかな? それから、文月学園生徒会長を務めるほどの秀才。
「これが姫に頼んだっちゅー絵か」
「うん、希望に添えないようだったら描き直すよ」
画材代とかは今回くなちゃん持ちなので。とは言え何回か書き直したりとかはしているんだよね。
「どうやろうな? 翔子ー」
「……どうしたの? 文也」
いつもの如く忍者張りのスピードだなぁ。霧島さんは学年主席を誇る才女で覚えたことは忘れないそうだ。凄いよね。昔は雄二に恋していたらしい。でも、くなちゃんが雄二の彼女になって恋敗れたところに文也が現れた。そこからが凄かったらしいよ。僕は知らないけど。
「姫が描いてきてくれたで」
「……ごめんね。吉井、大変だった?」
「大丈夫だよ。と言うかちょっと手が込んでないのが申し訳ないくらいだよ」
実はあの後クラスに飾る絵も同時進行で描かなくちゃいけなくなってしまったもんだから他のクラスは急いで描き上げることにしたのだ。
「……やっぱり吉井の絵は凄い」
「やな、にしてもなんか吹っ切れたん? 絵が生き生きとしとるで」
「あはは、うん。ちょっとね」
変わったとするなら、あの夜のことだと思う。本当によかったよ。
「代表…って吉井君?」
「あ、秀吉のお姉さん」
「優子でいいって言ってるでしょ」
秀吉のお姉さんこと木下優子さん。秀吉がらみで家にお邪魔させていただいたことが何度かあるのでちょっと話したりしたことがある。呼び方がよそよそしいから名前で呼んでほしいと言われたんだった。
「ごめん。優子さん」
「それで、Aクラスに……あ、描いてくれたんだ」
「あれ? 普通に雄二とくなちゃんの独断かと思ってたのに」
「ううん、吉井君の絵、すごく上手なのを秀吉から聞いてぜひお願いしたいって思ってたの」
優子さん、昔は秀吉に関節技を人目に隠れてかけるような人だったけど秀吉が一生懸命舞台をやっているのを見て間違いだったって気が付いたらしい。それから姉弟仲もよくなったらしいから知ってて当然か。
「これで大丈夫かな?」
「もったいないくらいよ。ありがとう」
「おっはよーってアッキー来てたんだ!」
「あ、くなちゃん。おはよう」
振り返ればおなじみの空色の髪に空色の目の女の子がいた。
「ふむふむ、上出来じゃないか! ボクはうれしいよ」
「そういえば最近遅くまで居残ってるらしいけど大丈夫?」
「うん! 心配してくれてありがとうアッキー」
「ところで雄二は? また、低血圧?」
さて、文武平等の秀才坂本雄二の弱点を教えよう。重度の低血圧だったりする。朝食はコーヒー一杯、その分昼は大量に食べるのだ。で、酷い時だと一時間目ギリギリに来たりする。
「そんなとこだねぇ。寝てるからついつい置いてきちゃったよー」
「そこ! 自分の彼氏だよね?!」
しょうがない。電話入れるか。
電話をするとみんなに言ってから後ろを向いて、雄二の携帯に電話を入れる。四回コールした後にとりあえずは出た。
「雄二? 起きてる?」
『あ゛?』
「寝起きみたいだね。遅刻するよ? 後三十分!!」
『……ぅあ。明久か?』
「そうだよー。薄情な彼女さんの代わりにモーニングコールやってあげてるんだからとっとと起きる!! 後三十分っ!!」
『! うげ』
「急ぎなよ?」
電話を切った。
振り向くと優子さんが話しかけてきた。
「吉井君って坂本君とそこまで仲がいいの?」(じゅるり
「?! 優子さん? なんか悪寒がするけど」
「木下、止めたれ」
「……吉井も雄二も可哀そう」
「え、あ、な、何でもないわよ」
急に悪寒が収まった。何だったんだろう?
「何でもないならいいんだけど。そろそろ教室行くね」
「アッキーありがとうね。無茶ぶり聞いてくれて」
「どういたしまして。じゃあね」
そんなわけでAクラスキャラようやく揃ったかな? え? 久保君? 誰かな?
愛子さんはまだ出番ありません。ちゃんと登場予定です。
雄二の低血圧設定はオリジナルです。原作合宿編で寝相悪いみたいだし基本、朝弱いのかなぁって勝手に解釈しました。蒼も低血圧です。そこまでひどくはないけど。
で、文也も登場。元々は女子キャラでした。霧島さんに彼氏作らなきゃなぁってことでこうなった。「中身が男前な秀吉」がコンセプトです。黙っていればかわいいけど喋ると男らしくて男と認識されるって感じです。隠し設定がもう一つ。後々わかると思います。