召喚大会会場……だと思ってたけど……。
「迷った」
「わぅ(うん)」
僕とわんこは道に迷っていた。気が付いたらこの迷路みたいなところに放り込まれていた。
「地図があるわけでもないしなぁ」
周りを見渡す。見えるのは壁壁壁、手をついて歩いても脱出できなさそうだよ。
《………れは》
「?!」
誰かの声が聞こえた。心の底から悔しがっている声。一体どこから聞こえるんだろう?
《何で俺は表舞台に立てねぇんだよ。あいつらが羨ましい、羨ましい、羨ましい、羨ましい………》
まるでその声に呼応するように化け物が現れた。全身が黒く、目だけが赤い。わんこは耳を伏せて唸っているし、なんかヤバい感じがする。そう、あの美術館みたいだ。
「っ 何この生き物?!」
「わん!(明久っ!)」
世界が一瞬だけ止まって、何か線が描かれた。世界が動き出すと獣たちが全部切られたようになった。
「わんこ、ありがとう」
わんこの頭を撫でる。すると走馬灯のように何かが流れた。
世界を救って、祭られて、誰もが、誰もが、忘れていく。でも、忘れなかった……あの子や彼は……。
「はっ」
「わぅ?(どうしたの?)」
わんこ……いや、この呼び方はちょっとふさわしくないのかもしれない。その人生を視た。人間信じることって大切なんだ。そう、思わされる人生だった。最初から最後までこの子と一緒に進んだ絵師に敬意を称して、この子の名前を呼ぶ。
「何でもないよ。アマ公」
「う?(あれ?)」
「それにしてもさ、どうやって出よう」
何があってもそれが一番の課題だよね。
☆
「暗いし、なにも居ないし、何処ここ」
「わーぅ(ねー)」
かれこれ十分前後迷ってます。
「あの声の主がこの空間の原因って考えればいいんだよね」
「わぅー(多分かな)」
「何で表舞台に立ちたいなんて言うんだろう、表も裏もないと思うんだけど」
「わん(そうだよね)」
人生に表舞台も裏舞台もないよ。あったとしたら何その人生って思うけど。
「別にその人が生きている空間がその人にとっての舞台なんだし」
「うー(そうかな)」
「ん?」
「うーあーうー(その人がどこを表だととらえるかによって違うと思う)」
「そっか、その人にとっては今自分の居る場所は全然表じゃなくて裏だって考えていたら」
「わん(心の中は真っ暗に変わるよ)」
「でも、それって悲しいことだよね」
「わん(たぶん)」
「じゃあ、ますます行かないと」
進もうとする僕に一粒の淡い光が差し込んだ。
《本気で行くつもり?》
「?!」
喋った。しかもさっきとは全くもっての別人だ。
《別に僕は止めやしないけど、上手く行くと思うの?》
「……上手くいくかどうかなんてわからないよ。でもさ、結果がどうにかなればいいんじゃない?」
声の主は若干押し黙る。
《うーん、少しは過程も考えなよ? 結果として死んだときとか》
「死って……」
それは流石に………
《あー、ごめんごめん重い話をしちゃったね。まあ、とりあえずさ。先へ進むならそれについていきなよ》
光に薄い妖精のような羽が生えた。
「これは……」
《ここじゃあこれくらいしか手助けできないけど。急がないと大変なことになるよ》
光の妖精(こう言うのがベストな気がした)が僕の周りを一周してから向こうへと飛んでいく。僕は名前も知らない声の主に感謝した。
「ありがとう」
《どういたしまして、あいつを連れ帰らないといけないから》
☆
「うわぁ、なにこれ」
黒くて暗くて、なんか電気っぽいのがバチバチバチとした変な物体に行きついた。
《……ネガティブネスト、やっぱりかぁ。いい加減にしなよ!》
どうやらこれの正体を知っているらしい。
「お前に何がわかる?」
ふと声に振り向けば紫色の……あれ? 顔はそっくりだけどなんか違う。それに腕もなんか違うし……?
《わかるわけないよ! でもね、人にとりついた挙句の果てにその人の負を増加させるのは見過ごせない!!》
「声だけは勇ましいな。貴様がここに来れるわけないどないのに」
《うっ それでも、淡くても小さくても
「そこの人間がか?」
《そうだよ。彼には僕には無かったものがいっぱいある。だから大丈夫だよ》
うん、ごめん。過剰に評価されてもしょうがないよ?
でも、この人がこの場所の原因だってわかっただけでもよかったのかもしれない。
「君がこの場所の原因でさっきの声の人を苦しめているってことは理解したよ」
「だからと言って奴とは違い無力なお前に何ができる?」
彼は僕を馬鹿にするように笑った。でもね、
「僕は無力じゃないよ。隣にはアマ公が居るし、外では頑張っている仲間がいる。そのためなら僕は何倍もの力を出せるんだ」
僕は僕の一番の武器を出す。ちっぽけ、でもいつも持っている武器を
「そんな安物で何ができる?」
パレットナイフ、いつでもどこでもいっしょに居る武器なんだ。そして、
「何でも」
一番使い慣れているんだよ。僕はパレットナイフに『上書き』をした。手の中にあるのは一本の絵筆、でもやり方さえ間違えなければ剣にだって勝てるんだ。
「はっ」
彼の右手の中からバチバチと音を立てたエネルギー弾が飛んでくる。こんなの軽いって
世界を一瞬だけ止める。アマ公がやっていたことと一緒、これこそがあの絵師がアマ公と一緒に旅をして盗んだ技術『筆調べ』! 一瞬止まった世界に僕は一本の線を書き足した。世界が動き出した瞬間、エネルギー弾が反射され、驚いた彼に直撃した。
「言ったよ。何でもできるって」
「わん!(明久!)」
「オッケー、アマ公」
絵筆を小手と日本刀に『上書き』した。目の前にはアマ公が描いてくれた道筋が見える。
「はああああああっ」
僕が切りかかり何回か彼を打ち飛びずさる。アマ公の下にすぐに戻れた。彼は痛みに悶絶している。また、道筋が出来上がった。それをなぞり僕は再度切りかかった。
☆
「くっ」
「もう止めよう。意味ないよこんなこと」
「お前…やっぱり奴と同じなんだな」
彼がそういう。奴って……さっきの声の主?
「よーやく来れた!」
「「!?」」
声に振り向けば十歳前後の男の子が居た。髪はブラウンで長い前髪で右目が隠れている。どうやらその下に盗賊が付けていそうな眼帯を付けているようで、徹底した隠しっぷりだ。
「お前、なんで」
「君がさ、他人に迷惑をかけているみたいだから連れ戻しに来たんだよ」
「だから、どうやって」
彼は驚く、そうだよね。さっきまで声だったし。
「僕は奇跡も希望もあるって信じてるからね」
「っ」
「ごめんね。こいつが迷惑をかけたみたいで」
「あ、いや……」
「じゃあ、頑張ってね。ゲームで言ったらまだ中ボスだよ? ボスもラスボスもまだだから気を付けなよ?」
そういうと彼を連れて男の子が消えた。ネガティブネストと呼ばれた黒い塊が消えて、中から淡い紫色の髪の人が落ちてくる。
「あ」
何かを『上書き』するわけにもいかず、僕は受け止める。受け止めた瞬間に何かやわらかいものに当たった感触がした。
「え? ……まさか、女の子?!」
顔をよく見れば男にしては少し柔らかい印象を受ける。そう、水木や秀吉に対してよく感じる違和感と一緒。
びっくり、アヴェンジャーの召喚者は男の子じゃなくって女の子だった。
もーなんわつーづけるーとしょうしゅうりょー?
何となく歌いたくなるほどに続いている気がします。召喚戦争編もぐだぐだに長く続いていた気がする。
綺麗纏められる方法ってないですかね? まあ、話を纏めろってツッコミが来そうですが。今回は珍しくちょっと長くなりました。