僕と絵画とSクラス(仮)   作:亜莉守

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第五十八問

さて、帰り道。急に電話がかかってきた。

 

「えっと、急にどうしたんだ?」

『べ、別になんてことはないのよ。ただちょっとウチに来てほしいの』

 

凛からのようだ。凪人は少々警戒しながら尋ねる。

 

「まあ、別にいいけど……親父さん居ないよな」

『……大丈夫よ』

 

一瞬、間があった気がする。

 

「その間が不安だが、まあいいか。アーチャーも一緒に来るか?」

「まあ、しょうがないか」

 

遠坂家ということであれば自分も一緒に居るべきだと判断してアーチャーは答えた。

 

「あ、そうだ。凪乃たちに連絡入れないと」

 

通話が完了した携帯を弄り、再度別の番号に電話を入れた。

 

「あ、凪乃?」

 

                  ★

 

「ええ?! ちょ、お兄ちゃん?!」

 

凪のが慌てるが無情にも電話は切れた。

 

「どうしたの?」

「お兄ちゃん凛の家に行くって」

「……え」

 

凪も固まった。どうする、

凪乃:料理以前の問題。

 凪:出来たとしても超極端。

 

「さて、キャスターに作ってもらいたいところだけど……」

「頑張ったんだし休ませたいわよね……」

 

魔力の使い込みでキャスターはダウン。セイバーは湯浴みをしたいと風呂に籠っている。そもそも戦力ではないし。

そこに電話がかかってきた。もしかしたら兄かもしれない。

 

「もしもし?」

『白波さんのお宅でしょうか』

 

電話をかけてきたのは意外な人物だった。

 

「吉井?」

『あ、凪乃さん? 今、暇?』

「まあ、一応かしら」

 

それどころではなくなっているが。

 

『今から打ち上げやるんだけど一緒にどう?』

「打ち上げ? 何処で?」

『僕の家……下宿だけどね。今バーベキューやってるよ』

「……行く!」

『そう? 待ってるね』

「……うあああああああ!」

 

電話を置いてから思いっきり自己嫌悪に襲われる。いくら打ち上げだからって、絶対に安定して食べられるからって。などなど胸中複雑のようだ。

 

「お姉ちゃん?」

「いや、何でもないわよ」

 

そのまままたうわああああとか叫ぶ姉を見て妹は思う。

 

「お姉ちゃんが珍しい」

 

そして、また電話が鳴った。今度は凪がとる。

 

「あ、電話。もしもし?」

『あ、白波さん?』

「に、西崎君?!」

 

普段より恋い慕っている男性から電話が来たらどうだろうか? 舞い上がるに違いない。そんなわけで凪のテンパり具合は半端なくなる。

 

『吉井からバーベキューの誘いが来たんだけど、白波さんは行くか?』

「! 本当。行く! 絶対に行くよ!!」

 

電話を置くと姉に宣言する。

 

「お姉ちゃん、吉井君の家行ってくる!」

 

それこそダッシュで行く勢いだったが姉の一言でちょっと減速する。

 

「あれ? 凪も?」

「も? えっと、さっきの電話って……」

 

なるほど、それで叫んでいたのか。妹は姉の思考回路をよく知っていた。

 

「べ、別に料理目的じゃないのよ……あ」

 

再度凹む凪乃。

 

「お姉ちゃん。墓穴掘ったね。いいんじゃないかな。このままだと出前だったんだし」

「そ、そうよね」

「ま、僕は西崎君目的だけど」

「……凪って正直ね」

 

西崎に一目ぼれしてからずっと変わらない妹に姉は感心する。

 

「ふふー、恋すると人は変わるのだ。ってねー」

「……暴力的な方向に行かないでほしいわ」

 

某ポニテが脳裏に浮かび、兄の彼女がちらっと浮かんだ。まあ、兄の彼女の方は一回きりか。

 

「行くわけないよ。好きな人に暴力振るうってどういう神経してるのさ? 只の自滅行為だね」

「何で彼女はそういう方向に行ったのかしら」

「しーらない」

 

永遠の謎である。

                   ☆

 

助けてほしい。ここは戦場になってる。

 

「こらっ! キノ、何やってんのよ」

 

深い青のエプロンをつけたギャリーが母さんが置いた櫛を取り上げて言った。

 

「え? 何って。肉を焼こうと……」

「あんたは大人しくしてなさい。あーあ、野菜だけが何で焦げるのよ。肉全然焼けてないし」

 

なんでそうなるの? そっちの方にツッコミを入れたくなった。ふと横眼で別の網を見てみれば……

 

「あ、レオ君。それだと焼き過ぎになるよ」

 

結構焦げかかってるし。まあ、食べれなくはないレベルか

 

「そうなんですか? ガウェインがこうすればおいしいと」

「焼くにも限度ってもんがあるよ。もしかしてあれ? 焼けばなんでも食べれるとかそういう国民性?」

「いえ、別に……」

「しょうがないなぁ。これはこれで大丈夫だけど多分お肉固めだよ」

 

即行で網から降ろして、皿の上に肉と野菜を乗せてレオ君に渡した。

他のも様子見に行った方がいいかな、と思って歩き出そうとすると足元でガウェインさんが膝をつき項垂れていた。

 

「ガウェインさん、何で落ち込んでるんですか?」

「いえ、別に……」

 

ならいいけど。何があったんだろう?

別のところを見れば赤い髪に炎のような格闘服の人が生で肉を食べようとしていた。

 

「あーちょっと、生は」

「別にかまわんだろ」

「はぁ」

 

逆らい難い雰囲気なので退散。もう少し進めば端の方で西崎君が焼いていた。手にはすでに焼けた肉や野菜がある。

 

「西崎君食べてる?」

「あ、吉井。おう、食べてるよ」

「ここだけだね。平和なの」

「?」

「色々あったんだよ」

 

もうそろそろ勘弁していただきたい。

 

「うーぅ(あひひあー)」

 

アマ公がよく焼けた櫛を持ってやってきた。

 

「アマ公どうしたの? それ食べるの?」

「うぅ?(はへはへほ?)」

 

ごめん、何言ってるのかがよくわからないよ。

 

「あれじゃないか? 吉井も食べろってことで」

「え? そうなの?」

「…(こくこく」

 

頷いた。西崎君凄い。アマ公から櫛を貰う。

 

「わざわざありがとうね。アマ公の分焼こうか」

 

新しいのを手に網へと向かう。

 

「わーぅ(わーい)」

「アマテラス、あなたの分焼いたよ」

 

メアリーがよく焼けた櫛を持ってきた。上手に焼いているなぁ。

 

「わぅっ(ホントっ)」

「メアリーの火嫌いすっかり治ったねぇ」

「そうよね。美術館から出た直後は本当に怖かったもの」

 

元絵なのが理由なのかメアリーは火が苦手だった。今ではすっかり治っているけど。虫嫌いは相変わらずだ。

メアリーとアマ公が別のところに取っておいてあるという物を食べに行ってまた僕は一人になった。そこに差し出されたのは肉だけがきれいに乗ったお皿。

 

「やあ、君も食べないかい?」

「あ、じゃあいただきます」

 

安心院さんだ。見るからにおいしそうだ。

 

「……おいしい」

「お褒めに預かり光栄だよ」

「何で母さんは料理関係呪われているが如くダメなんだろう」

「まあ、あれはね………」

 

多分安心院さんも苦労しているに違いない。

ある程度食べ終わると安心院さんがにやりと笑った気がした。

 

「さて、頑張った君にご褒美だ」

「え……」

 

驚いた僕の前に安心院さんの顔が近づく。

 

「??!」

「『口写し(リップサービス)』こんなことするのはキノ以外には初めてだぜ」

「え、え、え、ええええ?!」

 

な、ななななな?!

 

「どんなスキ「なじみー」

 

母さんがこちらへとやってきた。

 

「何だい?」

「見て! ギャリーと一緒に焼いてみたの」

 

そう言って差し出すのはどう見ても普通に焼けた肉と野菜、うそだぁ。

 

「それは凄い。ちゃんと食べれるものが出来たのかい?」

「ええ!」

 

そのまま母さんと安心院さんは行ってしまった。多分、ギャリーと一緒に食べるのだろう。

 

「お、置いて行かれた」

「よ、吉井?」

 

ぽけーとしていると横から知っている声がした。ギギギと顔を横に向ければ凪乃さんだった。何とまぁタイミングの悪い………

 

「………見てた?」

「……ごめんなさい」

 

あー、見られてたか。再度思い返すと気が動転してきた。

 

「い、いいいやいやいや。べ、別にいいんだよ。いきなりでもう何が何だか」

「そうなの。さっき『口写し(リップサービス)』って言ってたから固有スキルか何かかしら?」

 

冷静に検証する凪乃さんを見て少し冷静になれた気がする。

 

「あ、やっぱりそうだよね。びっくりしたぁぁ」

「(……何で、もやもやするんだろう)」

「とりあえず、今更かもしれないけどいらっしゃい」

 

物凄く今更だよね。出迎えなきゃいけない側なのに

 

「お招きありがとう、吉井」

 

凪乃さんは笑って返してくれた。

 





読者様、完璧置いてきぼりの展開申し訳ございません。
でも、『口写し(リップサービス)』ネタはやっておきたかった。

凪乃がそろそろ自覚して……くれなさそうだ。

次回キャラ崩壊(はなは)だしいのでご注意。何を見ればこうなるの? ってくらいにぶっ壊れています。
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