「はぁ、バカって絶滅しないのか」
雄二が真剣な顔をして呟いた。
「ど、どうしたの? 急に」
いきなりの事に明久が驚く。ここはいつもながらSクラスの自習室だ。現在は前線基地のほうが正しいといわんばかりの有様になっているが。
「いや、ウチのクラスからも覗き未遂が出てな」
「むしろあれじゃない? 男の煩悩って消えないものだねって方じゃ?」
人間としては正しいよ。と明久がフォローを入れるが、
「いや、もうあれは煩悩じゃねぇと思う。バカだ」
雄二の完璧にあきれ返った目が事実を如実に物語っていた。
「………うん、そうだね。て言うか雄二しっかりして! Aクラスも常識人いないの?!」
雄二が呪詛を呟きそうなほどに壊れているのを目の当たりにして明久が驚く。
「もう嫌だ」
「心壊?!」
「わーぅ?(だいじょーぶ?)」
こてんと首をかしげるアマテラス、その様子を見た雄二がおもむろに抱きついた。
「癒されるな。これ」
「これ言わないで! アマ公だから!!」
癒されるについては何もツッコミを入れない明久だった。
その様子を遠巻きにしながら見ている人々がいった。
「吉井、大変そうだな」
「そうだね。精神安定剤と化している気がするぜ」
「否定できないわ」
白野、凪人、凛の三人だ。
「でもさ、流石におかしくないかな?」
集めた情報を整理していた凪が顔を上げて言った。
「あー、確かに」
凪人も同意する。
「ん?」
話が読めない白野と凛は首をかしげた。
「いくら思春期真っ盛りの煩悩全開とはいえ流石に懲りるってもんでしょ」
「あ、そうかも」
鬼の補習とすら呼ばれる西村先生の補習を受けてもなお覗きをしようとしているのだ。
彼らにだって反省の二文字くらいありそうだが?
「これは要調査かな?」
「だな」
★
Sクラスの自習室の隣部屋はすっかりコンピューターの異空間と化していた。蒼が持ってきた私物の機械類である。
「はぁ、これだけ探しても無理なのね」
凪乃が画面から顔を上げて隣に置いておいたペットボトルに口を付ける。。
「むぅ、ボクでもダメとは」
蒼が顔を膨らませ、万歳をした。
「もう少し頑張りましょう」
メガネの位置を少し直したラニが涼しい顔でまた画面へと向かった。
「それにしてもラニラニもなぎのんも凄いなぁ。ハッカーとしてはボクと同じくらいじゃない?」
「ま、まあね」
ハッカーというよりは
「これくらい出来て当然です」
そんな動揺なんておくびにも出さずにラニは返事をした。
「はー、これでもそれなりにできる方だとは思ってたんだけどなぁ。ま、いいか アッキーのためだし頑張ろう!」
おー、と少々間が抜けた感じで腕を挙げる蒼に凪乃が気になることを聞いた。
「そういえば吉井とは仲がいいわよね。どうしてなの?」
その発言を聞いた蒼が面白そうなものを見つけた表情でにまぁと笑う。
「ん? ん? 嫉妬かにゃ? 可愛いとこあるんだねー」
蒼の面白がる様子に疑問を抱きながら凪乃が応えた。
「嫉妬て何よ。そういうものを感じる関係じゃないわ」
「むー、なぎのんはクールだねぇ」
テレもしないのかー、つまんないなー、表情が如実に語っていた。似たものカップルである。
「私もどういう経緯で友人になったのか気になります」
天才ハッカーと絵好きなだけの一般人、接点はなさそうだが。
「うーん、簡単な話だよ。ボクとアッキーは同じクラスであるとき席替えで隣同士になって仲良くなって、アッキー苛める上級生と中学生を皆でやっつけて、それからずっとの仲だよ」
「真ん中に不穏な言葉があったことにツッコミを入れればいいかしら」
「えー、ふつーじゃない?」
けろっと言う蒼、つくづく明久の周りでは事件がよく起こっているものだ。
「いえ、通常ではあまりないかと」
「うーん? そーかな。まあ、いいや」
話を切り上げ、画面に向かう蒼は考える。
「(皆はボクがアッキーのことは大好きだって思うんだろうなぁ。でもね、ゆーじの方が大好きだよ。アッキーとゆーじならゆーじを取るくらいにさ。アッキー以外気が付いてないんだろうけど)」
そこで蒼のスマホが揺れた。電話がかかってきたのだ。
「んにゃ?」
返事としてそれはどうなのだろう?
『へるぷぷりーず、雄二が壊れた』
その言葉で何があったのか理解した蒼がすぐに応える。
「ありゃ、わかったよー」
二人に一旦向こうへ行こうと声をかけ、蒼は自習室に向かった。
大晦日だよ! 全員集ゴー……冗談です。
すっかり年末ですよ。清涼祭編おわらねぇーとか言ってたころがなつい。
蒼の呼び方は基本ノリです。途中であっさり変わるんだぜ。
おじやと蕎麦食べてくるノシ
そんなわけでして、よいお正月を!!